2 産科・小児科医療体制の確保
(産科医の現状)
母子保健の充実や医療体制の整備等により、わが国の乳児死亡率(出生児1,000に対するゼロ歳児死亡数の比率)は2.8(2005年)と、世界で最も低い数値となっている8。また、妊産婦死亡率(出産10万対)は、昭和30(1955)年代から大きく低下し、当時は150前後の高さであったのが、1988(昭和63)年に一桁台となり、2005年は5.7となっている。
出生の場所をみると、全体の51.4%が病院であり、次いで診療所(47.4%)、助産所(1.0%)、自宅(0.2%)となっている(2005年)。1975(昭和50)年と比較をすると、病院・診療所の割合が高まり、助産所、自宅での出生数は大幅に減少している。
一方、少子化の進行の中で、産婦人科医の数が減少傾向にある。1970(昭和45)年には医師総数が11万8,990人で、そのうち産婦人科医は1万3,841人であったが、2004(平成16)年には医師総数は27万371人と1970年と比べて2倍以上に増加したものの、産婦人科医は1万163人と減少している。最近10年間(1994年から2004年)でみても、医師総数は約4万人増加したが、産婦人科医は876人減少(7.9%減)している。
また、日本産科婦人科学会の調査では、産科や産婦人科を掲げる医療機関4,733施設のうち、実際に分娩を扱っているのは、3,056施設と全体の65%にすぎない。また、常勤の医師数も7,873人となっている。1施設当たりの常勤産科医数は全国平均2.58人であるが、大学病院を除くと2.05人と少ない。(数字はいずれも2005年12月1日現在)。
出生の場所をみると、全体の51.4%が病院であり、次いで診療所(47.4%)、助産所(1.0%)、自宅(0.2%)となっている(2005年)。1975(昭和50)年と比較をすると、病院・診療所の割合が高まり、助産所、自宅での出生数は大幅に減少している。
一方、少子化の進行の中で、産婦人科医の数が減少傾向にある。1970(昭和45)年には医師総数が11万8,990人で、そのうち産婦人科医は1万3,841人であったが、2004(平成16)年には医師総数は27万371人と1970年と比べて2倍以上に増加したものの、産婦人科医は1万163人と減少している。最近10年間(1994年から2004年)でみても、医師総数は約4万人増加したが、産婦人科医は876人減少(7.9%減)している。
また、日本産科婦人科学会の調査では、産科や産婦人科を掲げる医療機関4,733施設のうち、実際に分娩を扱っているのは、3,056施設と全体の65%にすぎない。また、常勤の医師数も7,873人となっている。1施設当たりの常勤産科医数は全国平均2.58人であるが、大学病院を除くと2.05人と少ない。(数字はいずれも2005年12月1日現在)。
8 主要国の乳児死亡率は、アメリカ6.9、イギリス5.3、フランス4.4、ドイツ4.2である(いずれも2003年)。World Population Prospects: The 2004 Revisionによれば、2000~2005年の乳児死亡率は、世界平均で57.0、先進地域では7.7、発展途上国では62.4と推計されている。
第1‐3‐4図 分娩取扱い施設数(都道府県別)

(産科医療システムの充実)
このように産科医の減少から、地域によっては、産科医院の廃業、産科の閉鎖等により、身近なところでお産ができる場所がないという深刻な「産科医不足問題」が生じている。
医師総数全体が増えているにもかかわらず産科医が減少している背景には、出生数の減少による需要減のほか、長時間の拘束や当直・自宅待機等が多いという苛酷な労働環境の問題があり、また近隣の産科が減少すると残されたところがますます忙しくなるという労働環境悪化の悪循環もみられる。さらに、産婦人科・産科では女性医師の割合が22%と高い9が、女性医師の仕事と育児の両立の困難さという課題がある。
新しい少子化対策では、産科医等の確保等産科医療システムの充実を図るために、地域における産科医療機能の集約化や重点化、周産期医療のネットワーク(一般の産科病院等と高次の医療機関との連携体制)の構築等、産科医・助産師等の確保や産科医療・助産の提供体制の充実に努めるほか、女性医師等の仕事と育児の両立支援や再就職支援等に努めることとしている10。
このほか、助産師が主体的に出産の補助を行う院内助産システムの取組や、出産時の医療事故に対する訴訟の増大に対応して、医師等の無過失補償制度の検討等も重要である。
医師総数全体が増えているにもかかわらず産科医が減少している背景には、出生数の減少による需要減のほか、長時間の拘束や当直・自宅待機等が多いという苛酷な労働環境の問題があり、また近隣の産科が減少すると残されたところがますます忙しくなるという労働環境悪化の悪循環もみられる。さらに、産婦人科・産科では女性医師の割合が22%と高い9が、女性医師の仕事と育児の両立の困難さという課題がある。
新しい少子化対策では、産科医等の確保等産科医療システムの充実を図るために、地域における産科医療機能の集約化や重点化、周産期医療のネットワーク(一般の産科病院等と高次の医療機関との連携体制)の構築等、産科医・助産師等の確保や産科医療・助産の提供体制の充実に努めるほか、女性医師等の仕事と育児の両立支援や再就職支援等に努めることとしている10。
このほか、助産師が主体的に出産の補助を行う院内助産システムの取組や、出産時の医療事故に対する訴訟の増大に対応して、医師等の無過失補償制度の検討等も重要である。
9 医師総数約27万人のうち、女性は約4万4,600人(16.4%)とまだ少ないが、最近の医師国家試験の合格者に占める女性の割合は、1991年の19.2%から2004年には33.7%と、3人に1人は女性となっている。女性医師の比率は、産婦人科・産科で22%、小児科で31%と高い。
10 2006年8月31日、厚生労働省等、地域医療に関する関係省庁連絡会議は「新医師確保総合対策」をまとめ、小児科・産科をはじめ急性期の医療をチームで担う拠点病院づくり、医師派遣等を行う地域医療協支援中央会議(仮称)の設置、医師不足地域における医師養成数の暫定的上乗せ等の措置を講ずることとしている。
10 2006年8月31日、厚生労働省等、地域医療に関する関係省庁連絡会議は「新医師確保総合対策」をまとめ、小児科・産科をはじめ急性期の医療をチームで担う拠点病院づくり、医師派遣等を行う地域医療協支援中央会議(仮称)の設置、医師不足地域における医師養成数の暫定的上乗せ等の措置を講ずることとしている。
(小児医療システムの充実)
産科医の確保、産科医療システムの充実と並んで、小児科医の確保、小児医療システムの充実も重要である。小児科医をとりまく状況も産科医の場合と似ている。
小児科医では産科医以上に女性医師が占める割合が高いが、深夜の急患や緊急の呼び出しが多い医療環境や、育児休業や病院内の託児施設が未整備なことも多いため、家庭と育児の両立が困難となり、出産等を契機に離職する女性医師が多い。このことが小児科医不足に拍車をかけることになる。
新しい少子化対策では、小児医療システムの充実として、地域における小児科医療機能の集約化や重点化等、小児科医の確保に努めるほか、女性医師の仕事と育児の両立支援や再就職支援等に努めること、さらに、小児救急医療の体制整備を進めることとしている。
小児科医では産科医以上に女性医師が占める割合が高いが、深夜の急患や緊急の呼び出しが多い医療環境や、育児休業や病院内の託児施設が未整備なことも多いため、家庭と育児の両立が困難となり、出産等を契機に離職する女性医師が多い。このことが小児科医不足に拍車をかけることになる。
新しい少子化対策では、小児医療システムの充実として、地域における小児科医療機能の集約化や重点化等、小児科医の確保に努めるほか、女性医師の仕事と育児の両立支援や再就職支援等に努めること、さらに、小児救急医療の体制整備を進めることとしている。
(コラム)女性医師の仕事と育児の両立支援
医師国家試験合格者の3人に1人が女性、全医師の6人に1人が女性という現状の中で、女性医師が、仕事と家庭・育児の両立が困難という理由で医療現場から離れていくことは、本人のキャリアはもちろんのこと、医師となるまでに多額の教育投資を行ってきたことを考えれば社会にとっても大きな損失である。
産科医・小児科医の確保のためのひとつの方法として、女性医師の仕事と育児の両立支援を推進する必要がある。具体的な方法としては、病院内託児所の設置、勤務時間のフレックス化などの働きやすい職場づくりや、育児休業の取得促進のための代替要員の確保、離職した後の速やかな再就職支援等が考えられる。 たとえば、大阪厚生年金病院では、2年前から、フレックス勤務や宿直の免除など柔軟な勤務制度を導入しており、現在、産婦人科、内科など8人の女性医師が利用している。東京女子医大病院では、本年8月下旬から再教育研修センターを設立し、子育てを終えて復職を望む女性医師向けに研修を行うこととしている。厚生労働省では、2006年度中に「女性医師バンク」を創設して、復職のあっせんや研修支援に取り組むこととしている。 第1‐3‐5表 医師に占める女性の割合の増大
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