5 子どもと一緒にいる時間の拡大

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(子育てを母親まかせにする日本の父親)

 わが国の子育ての実情をみると、子育てに費やす時間、行っている具体的な世話(食事の準備・片付けや子どものおむつや排せつの世話、日常生活上のしつけ等)、夫婦間の役割分担のいずれをとってみても、母親(妻)が主体となっている。(財)こども未来財団の「平成15年度子育てに関する意識調査報告書」(2004年12月)によれば、子育て中の父母は、子育ての役割分担として、妻が6割、夫が4割を理想とする人が最も多いが、実態は妻が8割、夫が2割という認識が最も多くなっている。育児を行っているという夫自身の自己評価に対して、妻からの評価は総じて低い。他の国々をみても、育児では、夫よりは妻が主体となっているが、わが国の場合、妻に依存している傾向が極端である。
 国立女性教育会館の「平成16年度・17年度家庭教育に関する国際比較調査」によると、日本の父親が平日に子どもと過ごす時間は3.1時間と、調査対象6か国(日本、韓国、タイ、アメリカ、フランス、スウェーデン)の中で韓国(2.8時間)に次いで短い。母親が子どもと過ごす時間をみると、日本は7.6時間で、6か国中最も長く、父親との差は4.5時間で6か国中最大となっている。
 家事や育児の参加状況をみても、たとえば食事の世話について、スウェーデンでは父親のほぼ2人に1人が行うのに対して、韓国では5人に1人、日本では10人に1人と最低の割合となっている。しつけをする父親の割合も6か国中、下から2番目の低率となっている。日本の場合、子育てを母親にまかせがちな状況が浮き彫りとなっている16
 日本の父親が子どもと過ごす時間が短いことの主たる理由として、6か国中最も長い労働時間(1週間当たりの平均労働時間48.9時間)があげられる。父親の半数(53.4%)が、1週間に49時間以上働くと答えており、調査対象の6か国中トップとなっている17。労働時間が長いことや職場での付き合い等から、帰宅時間が遅くなり、子どもとのコミュニケーションの時間がとれなくなっている。
 このように父親が子どもと一緒に過ごす時間が短いということは、子どもの成長にとっても、父親が子育ての喜びを享受するという面からも問題がある。実際、父親自身もこうした状況は望ましくないと考えており、同調査では、父親の約4割が子どもと接する時間が短いことに悩んでいる。1994(平成6)年の調査では「子どもと接する時間が短い」と悩む父親は27.6%であったのに対し、今回の調査では41.3%に増加している。
16 夫婦の子育てについて、わが国では母親(妻)に依存していることは、第5章で紹介する日本、韓国、アメリカ、フランス、スウェーデンの5か国の国際意識調査結果でもあらわれている。
17 『平成18年版 厚生労働白書』によれば、2004年の60時間以上働く人の割合は、25~29歳、30~34歳及び35~39歳で5人に1人以上となっている。

(男性の育児参加の拡大の必要性)

 子どもは、大人の眼からみると、生まれてからめざましい速さで成長していく。最初は目も見えなかったのが見えるようになり、首がすわり、やがてハイハイから立ち上がり、歩き始め、そのうち言葉を覚え、保育所または幼稚園に通い、続いて小学校入学と、大人の時間感覚からすると短期間のうちに成長する。こうした子どもの成長の大事な時間を、20代から30代の若い父親達が長時間労働のため子どもと共有できないというのは、大変残念なことであろう。前述したとおり、そのことを悩んでいるという父親の割合は、10年前の同様の調査結果よりも増加している。
第1‐3‐13図 父親が平日子どもと過ごす時間の国際比較

 また、育児のほとんどを分担している母親にとっても、父親が育児にほとんど参加しない状態は好ましくない。前出のこども未来財団の「平成15年度子育てに関する意識調査」によれば、子育てに関する自信喪失や不安・悩みは約7割の人が経験しているが、特に男性よりも女性において多い。特に、子育て中の女性では2割が自信を失うことが「よくある」と答えている。不安・悩みの内容では、「子どもの病気や発育のこと」「子育てに伴う経済的負担が重い」が多いが、「子どもに思わず手をあげてしまうことがある」「子どもが泣き止まない・言うことを聞かない」ということをあげる女性も少なからずあり、母親の孤立した子育てが生じる不安や悩みを解決するためにも、父親の育児参加が必要である。
第1‐3‐14図 家事・育児の父親の参加率

 少子化対策の面でも、父親である夫の家事・育児時間が増加している夫婦の方が、そうでない夫婦よりも出産する割合が高いというデータがある。厚生労働省の「第3回21世紀成年者縦断調査」結果によると、2002(平成14)年当時子どもがほしいと考えていた夫婦のうち、夫の休日の家事・育児時間が増加した夫婦では、30.4%に子どもが生まれた。しかし、それが減少した夫婦で子どもが生まれたのは20.2%であった。特に、第2子はそれぞれ22.0%と12.4%であった。
 また、同様に、夫の1日当たりの仕事時間が10時間以上であった夫婦のうち、仕事時間が増加した場合で子どもが生まれたのは22.0%であったのに対し、仕事時間が減少した場合には6.6ポイント多い28.4%に子どもが生まれている。
第1‐3‐15図 夫の家事・育児時間の増減別にみた出生の状況

(育児休業の利用促進や行動計画の実施等、企業の取組の推進)

 以上の点から、家事や育児を行うことが極端に制約される職場の働き方を是正し、親子、特に父親と子どもがともに過ごす時間を増やすことができるように、これまでの働き方を見直し、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が図られるように努めることが必要である。
 育児・介護休業法では、性別にかかわりなく育児休業を取得することができるが、現状では、2005(平成17)年の男性の育児休業取得率は0.5%(2004(平成16)年は0.56%)にすぎず、女性の取得率72.3%と比較してもかなり低率となっている18。また、子育て世代である30代の男性の4人に1人は、週60時間以上の勤務時間となっているという長時間労働の問題もある。男性の育児休業の取得促進や育児期間中の長時間労働の是正は、まず、企業経営者の意識改革と企業としての従業員に対する子育て支援の充実が不可欠である。
 2005年4月から、次世代育成支援対策推進法に基づく企業の行動計画の策定・推進が施行されており、各企業において従業員の仕事と家庭・育児の両立支援策が本格化するきざしが現れている。育児休業の取得促進をはじめ、育児休業制度の対象期間の拡大や育児期間中の勤務時間の短縮、勤務時間の多様化など、詳細については第4章で解説しているが、景気拡大が続く中で産業分野によっては人材不足が懸念されていることから、優秀な人材確保のためにも、仕事と育児の両立支援策の充実が必要となっている19
 新しい少子化対策では、男性の育児休業の利用促進や子育て期の短時間勤務制度の強化、在宅勤務の推進など育児休業法の改正の検討、さらには次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画の公表と従業員300人以下の企業の行動計画の策定促進等を掲げている。
18 育児・介護休業法では妻がいわゆる専業主婦の場合には育児休業の対象から除外することもできるが、妻が専業主婦であっても育児休業を取ることができるように就業規則を改定する企業もあらわれている。なお、一般職の国家公務員の場合、育児休業の取得状況は男性1.0%、女性92.4%となっている(2005年度)。
19 行動計画に定めた目標を達成したことなど一定の要件を満たす事業所は、申請により厚生労働大臣から「次世代認定マーク」を受けることができる。認定の要件として、育児休業に関しては、計画期間内に男性の育児休業取得者がおり、かつ、女性の育児休業取得率が70%以上とされている。

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