2 現状の働き方の問題点

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(1)女性が仕事と子育てを両立することが難しい

(子育て期はM字型カーブの谷間)

 これまでの働き方にはどのような問題があるのだろうか。
 最も大きな問題点として、子育て期にある女性が、仕事と子育てを両立することが難しいことが指摘される。
 女性の年齢別労働力率を国別に比較すると、日本では結婚や出産、子育て期に当たる30代で労働力率が低下し、いわゆるM字型カーブの谷間が形成されているのに対して、アメリカやスウェーデン等の欧米先進諸国では子育て期における労働力率の低下はみられず、高原型となっている。なお、韓国は日本と同様にM字型カーブを描いている。
第1‐4‐1図 女性の年齢別労働力率

(出産を契機に7割が退職)

 子どもが1人の女性の場合、出産する1年前には仕事を持っていた人(有職者)のうち約7割が、出産6か月後には無職となっている(厚生労働省「第1回21世紀出生児縦断調査」(平成13年度))。
 出産前に仕事を辞める理由としては、「自分の手で子育てしたかった」(53.6%)が最も多いが、「両立の自信がなかった」(32.8%)、「就労・通勤時間の関係で子を持って働けない」(23.3%)、「育休制度が使えない・使いづらい」(17.9%)等、仕事と子育てを両立できる環境が整っていないことを示唆する回答も多い。
第1‐4‐2図 出産前後の就業状況の変化

第1‐4‐3図 出産前に仕事を辞めた理由

(子育てによって失われるコスト(機会費用)が大きい)

 また、出産を契機にいったん退職してしまうと、子育てが一段落してから再び働こうとしても、以前と同じような条件で働くことが難しい。
 女性の年齢別労働力率の内訳を就業形態別にみると、25~29歳では正社員が女性人口の41.8%を占め、パート・アルバイト(24.2%)を大きく上回っているにもかかわらず、M字型カーブの谷間以降はパート・アルバイトの比率が正社員を上回っており、女性が再就職する場合は正規雇用が難しく、パートタイム等の非正規での雇用が多いことがうかがえる。なお、厚生労働省「第1回21世紀出生児縦断調査」(平成13年度)によれば、常勤であった人が離職して出産1年半後に有職となった場合、約6割はパート、アルバイトとなっている。しかし、非正規雇用と正規雇用では賃金格差が大きいため、『平成17年版 国民生活白書』によると、大卒の女性が就業を継続した場合の生涯所得と出産退職後に子どもが6歳でパート・アルバイトとして再就職した場合の生涯所得とでは2億円以上の差があると試算されている
 このように、出産を契機に退職することによって将来得るはずであった収入を失うことになることから、子育てによって失われるコスト(機会費用)の大きさが指摘されている。
2 就業継続の場合27,645万円、出産退職後に子どもが6歳でパート・アルバイトとして再就職した場合4,913万円(平成17年版 国民生活白書)。

第1‐4‐4図 就業形態別女性の労働力率

(「仕事」か「子ども」かの二者択一)

 また、正社員としての職場復帰が難しいということは、それまで蓄積してきた経験や知識を仕事で発揮することが難しいともいえる。
 働く女性が増大する一方で、仕事と子育ての両立を支える環境が整わないことや、結婚や出産、子育て等により失われる機会費用やキャリアの問題が大きいこと等、「出産・育児」か「仕事」かという二者択一を迫られる状況が、働く女性にとって結婚や出産に対して消極的な姿勢の原因となり、出生率に影響を与えていると思われる。

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