(4)若い子育て世代が地域との関わりを持ちにくい

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(孤立した子育てによる負担感の増大)

 これまでの働き方の問題点の4つ目としては、若い子育て世代が地域との関わりを持ちにくいことが指摘される。
 職場や仕事を優先する働き方のために、近所づきあいや地域活動に十分な時間を割くことができず、地域の中で孤立する若い世帯が増えている。そのような世帯では、出産や子育てを考えるときに、身近に相談できる相手がいないことや、地域にどのような子育て支援のサービスがあるかがわからないために、出産や子育てに対してためらいを感じることとなる。また、実際に子育てを行う際にも子育ての負担感が大きくなっている。子どもを持つ母親の4人に1人は子育ての悩みを相談できる人がおらず、4割の人は困った時に子どもを預けられる人がいない等、地域の中で孤立した子育てによる負担感の大きさがうかがえる。
第1‐4‐8図 地域の中での子どもを通じた付き合い(未就学児の母親)

(子どもの安全が脅かされている)

 さらに、地域の絆が失われてきていることは、子どもの安全に関わる問題にもなっている。子どもに対する犯罪が起きていることから、特に小学校低学年の子どもの安全確保に対する関心が高まっている。そのために、子どもの就学前までは仕事と子育てを両立していた母親が、子どもの小学校就学を契機に離職せざるを得ないという声も聞かれる。
 若い世代が仕事と子育ての両立を実現するためにも、安心して子どもを生み育てやすい環境を作るためにも、地域とのつながりを確保できるような働き方の改革が必要である。

(コラム)女性有業率と合計特殊出生率の関係

 男女共同参画会議の「少子化と男女共同参画に関する専門調査会」の報告書「少子化と男女共同参画に関する社会環境の国内分析報告書」(2006年9月)によると、わが国における合計特殊出生率と女性有業率の関係を時系列で調査した結果、1971年時点では、女性有業率と出生率の間に相関はみられないが、1987(昭和62)年、2002(平成14)年時点では、女性有業率の高い都道府県の方が出生率が高いという正の相関関係がみられる。なお、同専門調査会が昨年行ったOECD諸国の国際比較調査でも、2000(平成12)年時点では出生率と女性労働力率との間に正の相関関係がみられた。また、国際比較調査では出生率が回復してきている国があったが、日本では、全ての都道府県で出生率が低下傾向にある。
 47都道府県を合計特殊出生率の変化率と出生率の水準、女性有業率の水準を用いて類型化をすると、出生率の減少率が小さく、出生率の水準が比較的高く、女性有業率の水準も高い県(タイプ1:熊本県、山形県、長野県、佐賀県、青森県、山梨県、福島県、富山県、鳥取県、岩手県、宮崎県、福井県、三重県、島根県、群馬県、静岡県の16県)と出生率の減少率が大きく、出生率の水準が比較的低く、女性有業率の水準も低い都道府県(タイプ7:徳島県、大阪府、愛媛県、北海道、和歌山県、福岡県、兵庫県、茨城県、広島県、神奈川県、東京都、京都府、宮城県、埼玉県、千葉県、奈良県の16都道府県)の大きく2つのグループに分かれる
 両タイプを比較すると、出生率・女性有業率の水準が低く、出生率の減少率が大きなタイプ7で、社会環境全般について、47都道府県の平均よりも低い水準である。出生率との相関が高い労働時間、家族による支援(世代間支援)、社会の多様性を受け入れる度合いについては、タイプ7の中でも最も出生率の低い東京都では、特に低くなっている。
 また、わが国全体をみると、時系列に長時間労働の進行や女性や若者の非正規化による雇用の不安定化等、仕事と子育ての両立支援環境が厳しくなってきており、長時間労働の是正、地域の社会的な子育て支援体制の整備、雇用不安化への対応が求められる。
4 その他の都道府県は、その中間のタイプ2~6に該当する。

第1‐4‐9図 都道府県における女性有業率と合計特殊出生率:1971年、87年、2002年

第1‐4‐10図 タイプ1とタイプ7及び東京都の社会環境指標

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