4 導入・推進のポイント

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(1)経営者の意思の表明

(両立支援策の取組は経営方針やトップの言動から)

 企業が両立支援策を導入・推進する際にはどのようなポイントがあるだろうか。
 先進的に取り組んでいる企業に対するヒヤリング調査であげられた最も重要なポイントは、経営者自らが率先して推進するという意思を明確に表明し、全社に周知徹底することがあげられた。
 両立支援策の導入に当たっては、制度導入に伴うコスト負担と経営への効果を総合的に評価する必要があるため、経営トップの関与が不可欠である。また、取組を促進するためには、人材の配置や業務プロセスの見直し等も必要となるため、経営方針としての位置づけを明確にすることが重要である。
 経営者の意思を表明する具体的な方法としては、中小企業では経営者と従業員との会合を通じて直接意思を伝えているところもあった。大企業では直接対話を行うことは難しいが、推進のための組織を新たに設置することにより、経営意思を明確化する例もみられた。

(2)管理職の意識改革

(現場の活用を左右する管理職の理解)

 企業の経営者が取組に意欲的で、組織を設置し、制度を充実させたとしても、現場の管理職の理解がなければ、従業員は制度の利用が難しく、実際には活用が進まない。
 企業のトップが経営戦略上の考えからワーク・ライフ・バランスの推進の意思を持ち、若い子育て世代の従業員がワーク・ライフ・バランスのニーズを持っていても、現場の責任者である中間管理職の理解がないために活用が進まないという企業は少なくない。仕事優先の働き方での成功体験を持つ管理職層の意識改革は、ワーク・ライフ・バランスを推進するための重要な課題となっている。
 アンケート調査で両立支援策の利用促進上の問題を尋ねたところ、「代替要員の確保が難しい」(46.7%)、「社会通念上、男性が育児参加しにくい」(45.4%)、「日常的に労働時間が長い部門・事業所がある」(33.3%)、「職場で周りの人の業務量が増える」(30.9%)といった項目が上位にあげられており、現場レベルでの業務遂行体制の見直しや効率的な業務運営等、管理職の役割が大きいことがうかがわれる。
第1‐4‐18図 両立支援策を利用促進する上での問題

(3)職場全体での環境づくり

(職場全体での働き方の見直しが利用しやすい雰囲気を作る)

 また、両立支援策の利用を促進するために必要なこととして、「職場ごとに支援策を利用しやすい雰囲気を醸成する」(50.4%)、「育児支援策を従業員に積極的にPRし、理解を深める」(47.0%)、「管理職が積極的に従業員に利用を呼びかける」(33.6%)などがあげられ、子育て女性だけでなく、男性を含めた職場全体での働き方の見直しの重要性が指摘されている。
第1‐4‐19図 両立支援策の利用促進のための環境づくり

(長時間労働や残業はコストやリスクという共通認識の浸透)

 先進企業の取組としては、残業や休日出勤の禁止、業務効率化のための研修、業務フローの見直し等が行われている。また、全社横断的なプロジェクトチームや委員会を立ち上げ各部門で長時間勤務の抑制を行う取組もみられた。このように男性を含めた働き方の見直しを進める企業では、業務の効率化が図られ、残業代等のコスト削減や、従業員の健康侵害等のリスク削減効果、従業員の価値の多様化や家庭生活の安定による仕事への好影響といった効果が得られている。
 取組を進める企業で共通して指摘されたのは、長時間労働や残業はコストやリスクであり、削減すべきものであるという共通認識を浸透させていくことが重要であり、そのためには管理職をはじめとする従業員の意識改革が必要であるということであった。

(4)労使の連携による継続的な改善

(現場視点で制度を見直す)

 制度の活用を進めるためには、経営者の意思を従業員に浸透させるとともに、実際に制度を利用する従業員や周りの従業員の声を反映して、継続的に改善を図っていくことが重要である。
 先進企業では、経営者と従業員との会合や定期的な労働組合との協議、若い子育て世代による委員会の組織化、従業員アンケート等を通じて、現場の声を聞きながら、より活用しやすい形に制度を見直す例がみられた。

(労使の連携による働き方の改革の実現)

 働き方の改革を実現するためには、両立支援制度を導入するだけではなく、経営者と従業員の双方が主体となって、十分なコミュニケーションを取りながら、双方のニーズを調整し、より効果を上げる推進方法をともに模索していくことが重要である。
 顧客のニーズが多様化し、グローバルな競争が激化する等、企業を取り巻く環境の急速な変化の中、変化に対応できる組織へと企業も改革を迫られている。そのような中で、労使のコミュニケーションを良好に保ち、常に良い方法に自らを変えていくことができる組織こそが、これからの変化の時代に競争力の高い企業になることができるだろう。
 労使の連携により、働き方の改革を実現するとともに、競争力の向上を実現させる先進的な企業の成功事例が増えていくことにより、より多くの企業における取組が進み、男性も女性も仕事と子育てを両立することができる職場環境へと変化していくことが期待される。

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