2 合計特殊出生率の推移
(少子化の進行)
これらの国々における合計特殊出生率の動きをみてみよう。1960年代までの合計特殊出生率はすべての国で2以上の水準にあった。日本の第一次ベビーブームは短期間で終わったが、アメリカでは50年代から60年代前半までと、長い期間高い出生率を享受するベビーブームが続いた。
1970年から1980年頃にかけて、先進国の合計特殊出生率は全体として低下する傾向となった。子どもの養育コストの増大、結婚・出産に対する価値観の変化、避妊など出生抑制技術の普及などがその背景にあったといわれている。
1990年頃から、合計特殊出生率の動きは国により特有の動きをみせ、2000年以降は、合計特殊出生率の水準に格差はあるものの、多くの国で上昇傾向がみられるようになった。
そこで、主要国(フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア)における最近の動きをみることにする。
1970年から1980年頃にかけて、先進国の合計特殊出生率は全体として低下する傾向となった。子どもの養育コストの増大、結婚・出産に対する価値観の変化、避妊など出生抑制技術の普及などがその背景にあったといわれている。
1990年頃から、合計特殊出生率の動きは国により特有の動きをみせ、2000年以降は、合計特殊出生率の水準に格差はあるものの、多くの国で上昇傾向がみられるようになった。
そこで、主要国(フランス、ドイツ、イタリア、スウェーデン、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア)における最近の動きをみることにする。
(スウェーデンとフランス)
まず、ヨーロッパの主要国で出生率が相当に回復してきた国としてスウェーデンとフランスをあげることができる。スウェーデンでは、1980年代前半に合計特殊出生率が1.6程度に低下した後、回復傾向に入り、1990年頃には2.0を超える水準に達した。しかし、いったん1990年代後半に1.5にまで低下したものの、その後は、回復傾向に入り、特に2000年の1.54から2004年には1.75にまで回復している。
フランスは、もともと主要国の間で出生率が高い国であった。しかし、そのフランスでも、1990年代後半に合計特殊出生率が1.7にまで低下した。その後は反転し、2000年以降では、2000年の1.88から2004年の1.90へと高い水準で推移し、2005年には1.94となっている。
(CSV形式:3KB)
フランスは、もともと主要国の間で出生率が高い国であった。しかし、そのフランスでも、1990年代後半に合計特殊出生率が1.7にまで低下した。その後は反転し、2000年以降では、2000年の1.88から2004年の1.90へと高い水準で推移し、2005年には1.94となっている。
第1‐補‐4表 欧米諸国等の合計特殊出生率の動き
地域
|
国
|
1960年
|
1970年
|
1980年
|
1990年
|
1995年
|
2000年
|
2001年
|
2002年
|
2003年
|
2004年
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
北部ヨーロッパ | デンマーク |
2.57
|
1.95
|
1.55
|
1.67
|
1.80
|
1.77
|
1.74
|
1.72
|
1.76
|
1.78
|
フィンランド |
2.72
|
1.82
|
1.63
|
1.78
|
1.81
|
1.73
|
1.73
|
1.72
|
1.76
|
1.80
|
|
アイスランド |
4.17
|
2.81
|
2.48
|
2.30
|
2.08
|
2.08
|
1.95
|
1.93
|
1.99
|
2.03
|
|
アイルランド |
3.76
|
3.93
|
3.25
|
2.11
|
1.84
|
1.90
|
1.94
|
1.97
|
1.98
|
1.99
|
|
ノルウェー |
2.91
|
2.50
|
1.72
|
1.93
|
1.87
|
1.85
|
1.78
|
1.75
|
1.80
|
1.81
|
|
スウェーデン |
2.20
|
1.92
|
1.68
|
2.13
|
1.73
|
1.54
|
1.57
|
1.65
|
1.71
|
1.75
|
|
イギリス |
2.72
|
2.43
|
1.90
|
1.83
|
1.71
|
1.64
|
1.63
|
1.64
|
1.71
|
1.74
|
|
南部ヨーロッパ | ギリシア |
2.28
|
2.39
|
2.21
|
1.39
|
1.32
|
1.29
|
1.25
|
1.27
|
1.28
|
1.29
|
イタリア |
2.41
|
2.42
|
1.64
|
1.33
|
1.18
|
1.24
|
1.25
|
1.26
|
1.28
|
1.33
|
|
ポルトガル |
3.10
|
2.83
|
2.18
|
1.57
|
1.41
|
1.55
|
1.45
|
1.47
|
1.44
|
1.42
|
|
スペイン |
2.86
|
2.90
|
2.20
|
1.36
|
1.18
|
1.24
|
1.26
|
1.27
|
1.30
|
1.32
|
|
西部ヨーロッパ | オーストリア |
2.69
|
2.29
|
1.65
|
1.46
|
1.42
|
1.36
|
1.33
|
1.40
|
1.38
|
1.42
|
ベルギー |
2.56
|
2.25
|
1.68
|
1.62
|
1.55
|
1.66
|
1.64
|
1.62
|
1.64
|
1.64
|
|
フランス |
2.73
|
2.47
|
1.95
|
1.78
|
1.70
|
1.88
|
1.89
|
1.88
|
1.89
|
1.90
|
|
ドイツ |
2.37
|
2.03
|
1.56
|
1.45
|
1.25
|
1.38
|
1.35
|
1.31
|
1.34
|
1.37
|
|
ルクセンブルク |
2.28
|
1.98
|
1.49
|
1.61
|
1.69
|
1.76
|
1.66
|
1.63
|
1.63
|
1.70
|
|
オランダ |
3.12
|
2.57
|
1.60
|
1.62
|
1.53
|
1.72
|
1.71
|
1.73
|
1.75
|
1.73
|
|
スイス |
2.44
|
2.10
|
1.55
|
1.59
|
1.48
|
1.50
|
1.41
|
1.39
|
1.39
|
1.42
|
|
北アメリカ | カナダ |
3.80
|
2.26
|
1.71
|
1.83
|
1.64
|
1.49
|
1.51
|
1.50
|
1.53
|
|
アメリカ |
3.64
|
2.48
|
1.84
|
2.08
|
1.98
|
2.06
|
2.03
|
2.01
|
2.04
|
2.05
|
|
オセアニア | オーストラリア |
3.45
|
2.86
|
1.90
|
1.91
|
1.82
|
1.75
|
1.73
|
1.76
|
1.75
|
1.77
|
アジア | 日本 |
2.00
|
2.13
|
1.75
|
1.54
|
1.42
|
1.36
|
1.33
|
1.32
|
1.29
|
1.29
|
資料:ヨーロッパはEurostat、アメリカ(1960年のみ)、カナダ(1995年まで)、オーストラリア(1980年まで)はUnited Nations"Demographic Yearbook",その他は各国資料。日本は厚生労働省「人口動態統計」による。 | |||||||||||
注1:地域内の国の並び方は、国連が定めたものによる。ドイツは旧東ドイツを含む。 | |||||||||||
2:アメリカの2004年は速報値。 |
(イギリスやドイツ、アメリカなど)
イギリスの合計特殊出生率をみると、人口置き換え水準を下回ってはいるものの、1980年代後半以降、1.6~1.7の水準で推移してきた。しかし、2001年以降はゆるやかではあるが上昇傾向に入っている。
主要国の中で、出生率が低い水準で推移しているのはドイツとイタリアである。両国では、1980年代以降出生率は主要国の中で最も低い水準に達している。しかし、ドイツでは、1990年代後半以降はわが国と同程度の水準に達していたが、2002年以降は若干上昇し、1.3台で推移している。また、イタリアでも、1995年に合計特殊出生率が1.18になった後、緩やかながら回復傾向に入り、2004年にはわが国を若干上回る水準(1.33)にまで達している。
ヨーロッパ以外についてみると、アメリカでは、1990年以降は合計特殊出生率が2.00を若干上回る傾向にあり、人口置き換え水準に最も近いところに安定的に位置している。特に、2002年以降は若干の上昇傾向にある1。カナダでは2000年以降の合計特殊出生率は若干の上昇傾向にあり、2000年の1.49から2003年の1.53へと推移している。オーストラリアでは、2000年以降の合計特殊出生率は1.7付近で安定しているが、2004年には1.77となり前年(1.75)を若干上回っている。
主要国の中で、出生率が低い水準で推移しているのはドイツとイタリアである。両国では、1980年代以降出生率は主要国の中で最も低い水準に達している。しかし、ドイツでは、1990年代後半以降はわが国と同程度の水準に達していたが、2002年以降は若干上昇し、1.3台で推移している。また、イタリアでも、1995年に合計特殊出生率が1.18になった後、緩やかながら回復傾向に入り、2004年にはわが国を若干上回る水準(1.33)にまで達している。
ヨーロッパ以外についてみると、アメリカでは、1990年以降は合計特殊出生率が2.00を若干上回る傾向にあり、人口置き換え水準に最も近いところに安定的に位置している。特に、2002年以降は若干の上昇傾向にある1。カナダでは2000年以降の合計特殊出生率は若干の上昇傾向にあり、2000年の1.49から2003年の1.53へと推移している。オーストラリアでは、2000年以降の合計特殊出生率は1.7付近で安定しているが、2004年には1.77となり前年(1.75)を若干上回っている。
1 アメリカの2004年の合計特殊出生率は2.05であるが、人種別にみると、白人1.85、アフリカ系が2.01、アジア系が1.90、ヒスパニック系が2.82となっている。ヒスパニック系の出生率が大変高く、全出生数の約23%を占めている。ただし、白人の出生率もわが国の水準(2004年では1.29)を大きく上回っている。
(コラム)ロシアで進む少子化・人口減少
本年7月、サンクトペテルブルクでサミット(先進国首脳会議)を開催したロシアでも、人口減少や少子化の問題を抱えている。そもそも、ロシアの人口は、1950年時点で1億219万人であり、その後、1992年の1億4,831万人まで増加し続けた。しかし、ソビエト崩壊後の経済的不安、国民の健康状態の悪化、そして出生率の低下を背景に、人口は減少しており、2005年現在で1億4,340万人となっている。出生率の動きを合計特殊出生率の水準でみると、1961~62年には2.42であったものが、1973~74年の2.00を経て、1979~80年には1.89となった。その後、1986年~87年には2.19にまで回復したが、1990年には1.89、1999年には1.16にまで低下した。その後、2004年には1.34へと上昇しているが、同じ年のわが国(1.29)を若干上回る程度である。今後のロシアの人口を国連の推計でみると、2020年には1億3,310万人、2050年には1億1,175万人となっている。特に、2050年は同じ年のわが国とあまり変わらない水準(1億59万人)になる見通しである。
こうした人口減少の影響として、ロシアの潜在的な経済成長率が低下しているという指摘のほか、国連の試算によると、現在の水準で労働力人口を2025年まで維持するには毎年63.8万人の移民を受け入れる必要があることが指摘されている。この数値はわが国(61.5万人)やドイツ(47.3万人)、アメリカ(43.1万人)を上回っている。また、ロシア国内の極東地域に属するカムチャッカ州等でも人口減少が特に深刻である。
こうした人口減少の影響として、ロシアの潜在的な経済成長率が低下しているという指摘のほか、国連の試算によると、現在の水準で労働力人口を2025年まで維持するには毎年63.8万人の移民を受け入れる必要があることが指摘されている。この数値はわが国(61.5万人)やドイツ(47.3万人)、アメリカ(43.1万人)を上回っている。また、ロシア国内の極東地域に属するカムチャッカ州等でも人口減少が特に深刻である。