第2節 欧米諸国の少子化の動向

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1 欧米諸国等の合計特殊出生率の水準

○我が国を含む欧米等の先進地域に属する国々では、合計特殊出生率は人口置換水準(2.1程度)を下回っている。2005(平成17)年の合計特殊出生率の水準をみると、アイスランドとアメリカが2.05と最も高く、フランス、アイルランド、ノルウェー、オーストラリア、デンマーク、フィンランドが1.8から1.9台、次いで、スウェーデン、イギリス、ルクセンブルク、オランダは1.7台となっている。一方、ギリシア、イタリア、スペイン、ドイツなどは、1.2から1.3台の低い水準である。

2 合計特殊出生率の動き

○欧米等の先進諸国における合計特殊出生率の推移をみると、1960年代までの合計特殊出生率はすべての国で2以上の水準にあった。その後、全体として低下傾向となったが、1990(平成2)年頃からは、合計特殊出生率の動きは国によって特有の動きをみせ、2000(平成12)年以降、出生率が回復する国もみられるようになってきている。
第1‐補‐3図 主な国の合計特殊出生率の動き

3 欧米諸国の政策の動向

○ヨーロッパ諸国でも、児童手当のような子育て家庭に対する経済的支援のほか、育児休業制度や保育サービスのような仕事と育児・家庭に対する両立支援策が行われているが、これらの施策は、低下した出生率にどのように対応するかという「少子化対策」としてよりも、子どもやその家族に対して社会的に支援を行うことを目的とした「児童・家族政策」として位置づけられている。
○欧米諸国における家族関係社会支出の規模(対GDP比)をみると、スウェーデン、フランス、イギリスなどでは、我が国と比べて非常に高い水準となっている。こうした給付が可能になっている背景には、高い国民負担率がある。また、家族関係社会支出の内訳をみると、近年出生率が回復しているフランスやスウェーデンでは、子育てに対する現金給付として国際的に比較しても手厚い児童(家族)手当が支給されているが、それよりもさらに大きい公的支出が保育や就学前教育に対してなされている。特に、1990年代以降では、仕事と育児・家庭に対する「両立支援」を軸に展開する傾向がみられる。
第1‐補‐4図 各国の家族関係社会支出の対GDP比(2003年)

○育児休業制度は、欧米の主要国で制度化されている。フランスやドイツでは、3歳までの間、最長3年間の休業が可能である。スウェーデンでは、1歳6か月まで全日休暇、8歳まで部分休暇の取得が可能である。育児休業中の所得保障については、両親あわせて最高480日間の給付を受けることが可能であり、最初の390日間のうち、配偶者に譲ることができない休業日数が、父親、母親それぞれ60日間割り当てられている(パパクオータ、ママクオータ)。
○保育サービスの状況をみると、フランスでは、フルタイムで働く女性が多く、集団託児所のほか、ファミリー保育所や認定保育ママなどの在宅での保育サービスが充実している。スウェーデンは、最も保育サービスが充実しており、集団的な施設保育を行う保育所のほか、家庭的保育を行うファミリー保育などが実施されている。イギリスやドイツでは、保育サービスの整備が遅れているが、近年では法整備など、保育サービスの充実が図られている。
○子どものいる世帯に対する経済的支援としては、現金給付と税制(各種控除制度)がある。フランスでは、欧米諸国で最も経済的支援が手厚いといわれており、第2子以降の20歳未満の子どもに対して支給される「家族手当」や、「乳幼児迎え入れ手当」などがあるほか、税制においても、所得税の課税にN分N乗方式が用いられている。

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