1 今後の人口構造の変化と地域・家族をめぐる課題

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(地域・家族をめぐる課題)

 前節でも述べたように、国民一人ひとりが労働者として仕事上の責任を果たしつつ、生活者として家族生活など個人や家族のライフステージに応じた多様な希望の実現を可能とする「ワーク・ライフ・バランス」の実現が少子化対策における最優先課題となっている。このような認識のもと、地域・家族をめぐる課題を考えると、「多様で公正な働き方の選択肢が充実し、結婚や出産・子育てと就労をめぐって様々な選択ができるような環境整備が進められる動きの中で、どのような選択をとったとしても、子どもの成長を育むという家族の機能が果たされるよう、地域が家族を支援する体制を構築すること」と整理できる。
 このため、多様な働き方の選択と、結婚や出産・子育てとが、二者択一にならないよう、社会的な制度や地域の子育て支援のサービス基盤を整備していくことが求められている。
 また、家庭における子育ては、どのようなライフスタイルを選択していたとしても、すべての人に共通する営みであるが、これまで家族の役割に委ねられ、支援の必要性の十分な認識が共有されてこなかったため、特に、専業主婦の育児不安が強いままの状態が続いている。地域における人のつながりが希薄化する中で、家庭における子育てを地域が支え、子どもの育ちを保障する体制の構築の必要性が高まっており、また、このような支援は、専業主婦に限らず、多様な働き方で就労する男性にも、女性にも、共通する課題であり、企業を含めた地域社会全体での取組が求められている。
 さらに、近年、児童虐待が増加しているが、その背景には、子育ての孤立化の深まりや、子育て家庭を取り巻く経済的な状況の不安定化、様々な障害のある子どもに対する社会的支援の不足等がある。「すべての子ども、すべての家族を応援する」という観点からは、こうした様々な事情により困難な状況にある子どもや家族への支援についても、地域における子育て支援の延長線上の課題として取り組まなければならない。
 このように、すべての子どもの育ちを支え、子どもの成長を育むすべての家族を、子育て中の人もそうでない人も含めて地域全体で支えていくということが、今日の地域・家族をめぐって取り組むべき課題となっている。また、こうした取組は、地域社会の構成員が力をあわせる中で営まれる活動であり、地域コミュニティの再生につながるという意味からも重要である。

(世帯構成や地域社会の姿等、生活の状況の変化)

 特別部会の議論の整理では、新人口推計にみられる人口構造の変化は、単なる人口減少にとどまらず、社会経済の状況や世帯の状況、地域社会の姿などにも大きな影響を与えることが指摘されている。
2055(平成67)年には、50歳代以上の者の属する世帯のうち4割以上が「単身かつ無子世帯」となることも想定されるが、単身世帯は、世帯員相互のインフォーマルな支援が期待できないことから相対的に失業や疾病・災害といった社会的リスクに弱く、社会システムによる支援がより必要であり、経済的にも可処分所得減少の影響を受けやすい。こうした単身世帯の増大は、介護問題をはじめとした支援を要する世帯の増大や負担能力の減少など、社会全体に大きな影響を及ぼすことが懸念される。
 同様に、毎年の出生数は、2030(平成42)年には約70万人、2055年には50万人弱となる見通しであり、通常の地域社会において平日昼間に目にする子どもの数は少なくなり、地域社会の支え手も相当部分が高齢者になることが想定される。
 また、子どもの立場でみても、「仲間と一緒に豊かに育つ」という健全な育成環境が確保されなくなるおそれがあり、社会全体としてみても、文化の継承者が少なくなり、未来への希望が持ちにくくなることが懸念される。
 また、父親が長時間労働等により子育てに十分時間をかけることができない職場環境や、家庭・地域における子育てに対するサポートが十分受けられない状況が続けば、育児不安や孤立感を持つ母親の数が増加し、その影響を受ける子どもの心の問題も深刻化する可能性がある。
 今後、このような世帯や地域社会の姿、暮らしの変化を踏まえ、地域における子育て支援の在り方を検討していくことが求められている。

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