2 家庭における子育て・親子関係への支援、地域の様々な主体による子育てへの配慮
(夫婦間の家事・育児の分担度合い、育児不安の度合い)
特別部会の議論の整理において示されている各種の調査・研究結果によると、子どものいる世帯で夫の家事・育児の分担度合いが低い場合に、出産意欲が弱まり、また、夫の労働時間が長いと家事・育児参加が減少する結果となっており、家事・育児の分担とワーク・ライフ・バランスが裏表の関係になっている。前節でみたとおり、我が国の男性の家事・育児時間は、他の先進諸国と比べて極めて短いが、既婚男性のワーク・ライフ・バランスに関する希望をみると、約8割が家事(育児)・プライベートを仕事と同等以上にしたいという希望を持っている(第1‐3‐6図参照)。
また、夫の家事・育児の分担は妻の就業継続とも密接に関係しており、夫の育児遂行率が高い夫婦の方が、妻の継続就業割合が高い結果となっている。
男性の育児分担が非常に少ない現状の中で、母親の育児不安の程度が高まると出産意欲が弱まる結果となっている。子どもが1人いる父親についてみても、母親ほど顕著ではないがおおむね同様の関係がみられる。
また、父母ともに、配偶者の育児や子どもとの関わりに対する満足度が高い場合には育児不安は低くなる、保育所・幼稚園から母親に対するサポート度が高いほど育児不安は低くなる結果となっており、育児不安の軽減のためには家庭内あるいは地域の育児を支えるサポートの充実が重要と考えられる。
また、夫の家事・育児の分担は妻の就業継続とも密接に関係しており、夫の育児遂行率が高い夫婦の方が、妻の継続就業割合が高い結果となっている。
男性の育児分担が非常に少ない現状の中で、母親の育児不安の程度が高まると出産意欲が弱まる結果となっている。子どもが1人いる父親についてみても、母親ほど顕著ではないがおおむね同様の関係がみられる。
また、父母ともに、配偶者の育児や子どもとの関わりに対する満足度が高い場合には育児不安は低くなる、保育所・幼稚園から母親に対するサポート度が高いほど育児不安は低くなる結果となっており、育児不安の軽減のためには家庭内あるいは地域の育児を支えるサポートの充実が重要と考えられる。
(地域子育て支援の基本的なメニューの面的な整備)
専業主婦(夫)や育児休業中の者、短時間勤務など多様な働き方で就労しながら子どもと関わる時間を持つ者など、個々人が選択するライフスタイル、ライフサイクルに合わせて、すべての家庭に共通する家庭における子育て、あるいは親子関係への支援体制を構築することが必要である。
各種の子育て支援事業に関しては、各地方公共団体で次世代育成支援行動計画が策定され、計画的な整備が進められつつあるが、各市町村における整備状況には地域差も大きく、国全体で打ち出されている各種の支援メニューが、個々人の生活圏の単位では必ずしも利用可能な状態にはなっていない。
近年、生後4か月までの乳児のいるすべての家庭に対する「生後4か月までの全戸訪問事業」(こんにちは赤ちゃん事業)3(第1‐3‐12図)、子育て中の誰もが利用できる「地域子育て支援拠点」4、専業主婦(夫)や育児休業中の者のニーズにも対応する「一時預かり」5、養育支援が必要な家庭に対する「訪問支援」をはじめとした継続的な支援を進めているところであるが、さらに地域子育て支援の基本的なメニューとして位置づけ、子育て家庭の生活圏ごとに、面的に整備していくことが必要である。
また、身近な地域において親の多くが集まる機会を活用して学習機会や情報を提供するなど、きめ細かな家庭教育への支援が必要である。
各種の子育て支援事業に関しては、各地方公共団体で次世代育成支援行動計画が策定され、計画的な整備が進められつつあるが、各市町村における整備状況には地域差も大きく、国全体で打ち出されている各種の支援メニューが、個々人の生活圏の単位では必ずしも利用可能な状態にはなっていない。
近年、生後4か月までの乳児のいるすべての家庭に対する「生後4か月までの全戸訪問事業」(こんにちは赤ちゃん事業)3(第1‐3‐12図)、子育て中の誰もが利用できる「地域子育て支援拠点」4、専業主婦(夫)や育児休業中の者のニーズにも対応する「一時預かり」5、養育支援が必要な家庭に対する「訪問支援」をはじめとした継続的な支援を進めているところであるが、さらに地域子育て支援の基本的なメニューとして位置づけ、子育て家庭の生活圏ごとに、面的に整備していくことが必要である。
また、身近な地域において親の多くが集まる機会を活用して学習機会や情報を提供するなど、きめ細かな家庭教育への支援が必要である。
3 生後4か月までの乳児がいるすべての家庭を訪問し、子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握を行う事業。
4 地域における子育て支援の拠点となるつどいの広場事業及び地域子育て支援センター事業については、昨年6月の「新しい少子化対策について」の決定を受け、「子ども・子育て応援プラン」では、2009(平成21年度)までに6,000か所整備とされていた目標を本年度(平成19年度)に前倒しして実施することとされ、このため、児童館の活用も図り、新たに「地域子育て支援事業」(「ひろば型」、「センター型」、「児童館型」)として再編し、それぞれの機能を活かしながら、地域子育て支援拠点の整備の拡充が図られている。
5 従来の保育所での一時保育や特定保育(親の就労形態の多様化等に対応するため、週2、3日程度又は午前か午後のみ必要に応じて柔軟に利用できる保育サービス)に加えて、在宅子育て家庭でも駅周辺、商業施設内などの利便性の高いところなどで利用できる一時預かりサービス。
4 地域における子育て支援の拠点となるつどいの広場事業及び地域子育て支援センター事業については、昨年6月の「新しい少子化対策について」の決定を受け、「子ども・子育て応援プラン」では、2009(平成21年度)までに6,000か所整備とされていた目標を本年度(平成19年度)に前倒しして実施することとされ、このため、児童館の活用も図り、新たに「地域子育て支援事業」(「ひろば型」、「センター型」、「児童館型」)として再編し、それぞれの機能を活かしながら、地域子育て支援拠点の整備の拡充が図られている。
5 従来の保育所での一時保育や特定保育(親の就労形態の多様化等に対応するため、週2、3日程度又は午前か午後のみ必要に応じて柔軟に利用できる保育サービス)に加えて、在宅子育て家庭でも駅周辺、商業施設内などの利便性の高いところなどで利用できる一時預かりサービス。
第1‐3‐12図 生後4か月までの全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業。平成19年4月より実施。)の概要

(当事者主体の取組の重視)
地域の子育て支援を進めていくに当たっては、親の子育て負担の軽減という観点のみならず、ワーク・ライフ・バランスの実現が図られる中で、親の役割の肩代わりではなく、父親・母親がともに協力し、主体的に参画していくことを促すことが重要である。NPO等による特定の課題解決に向けた取組や、自治会等地域の住民組織による子育て支援活動などが展開されつつあるが、このような子どもを育む地域住民のつながりの構築と人材の育成を図り、これらと行政とが協働して子育て支援活動を展開する中で、地域の人々のつながりに支えられ、親が自ら学び育ち、つながりの輪に加わっていくことを基本に置いた「当事者主体」の事業展開を図っていくことが必要である。
コラム 子育ての楽しさや悩みの分かちあいを通した地域のつながり
少子化の背景の一つとして、最近の都市化や核家族化に加え、地域の人間関係の希薄化等による子育て中の親(特に母親)の育児への不安感や負担感の増大、育児の孤立化があげられるが、育児の孤立化の問題は何も都市部だけの問題とは限らない。秘境の地といわれる熊本県の旧泉村(2005(平成17)年7月の合併により現在は八代市泉町。)は、人口2,529人(年少255、老年962)、面積266.59km2、出生数11人の村であるが、2005年から「つどいの広場」が設置されている。
広場を利用する方の声として「近所に同年代の子どもを持つ母親がいない」「市の中心部から離れているので、育児サークルや育児の講習会等への参加が困難」であったので非常に助かるといった声が聞かれる。また、つどいの広場事業に取り組んでいるスタッフの方の話では、「絵本の読み聞かせなど地域の方にもボランティアで参加してもらい、子どもたちの成長を気にかけていただいている」、「つどいの広場での活動の様子をケーブルテレビで放映しているので、泉町の子どもたちの姿を見ることができ、地域のお年寄りも楽しみにしている。また、今では隣町から遊びに来る親子もいて、子どもも大人も喜んで通っている」との声が聞かれる。
財団法人こども未来財団「平成18年度 子育てに関する意識調査」によれば、子育てに対する孤立感を解消するには、「子育てについて相談できる相手がいれば」、「大変なのは自分だけではなく、他の親も同じように悩みを抱えていることが分かれば」との意見が多い。また、この調査報告書によると、つどいの広場・子育てサロンを利用している母親ほど自分自身への子育てへの満足度も高い結果となっている。ただし、満足度の高さは親仲間の交流やつどいの広場・子育てサロンの利用による「効果」だけではなく、むしろ、子育てに前向きで自分自身の子育てに満足している母親は、外部とのコミュニケーションにも積極的であり、子育て仲間や協力者を見つけてますます子育てを楽しむことができる、というプラスの循環が起こっているのではないかとの分析がなされている。
子どもが幼稚園・小学校に入ると子どもを通じた親同士の交流により、地域の様々な情報が得られるようになるが、それ以前の子どもが0~3歳くらいの子育て期間では、社会全体で子どもの数が減っていく中、同年代の子どもを周りで探すことも難しく、また、母親は他の地域から嫁いできた場合も多く、夫婦がともにその地域の出身であるとは限らない。周りに親戚や頼れる知人もおらず、市役所や保育所、保健所等の公的機関に相談するのも躊躇され、なかなか地域にとけ込めないまま孤立して子育てをしているのは、都市部も過疎地域も変わらない子育て風景である。地域の子育て支援拠点施設(つどいの広場、地域子育て支援センター等)は、子育て中の親子が気軽に集い、そこで地域の子育て支援に関わる様々な人(子育て支援経験のある高齢者、児童民生委員、母子保健員等)や、公的機関の者(保育士、保健師、助産師等)と知り合えるきっかけづくりにもなることから、地域の中で生活していくことの安心感が持てる意味でも非常に期待される。
広場を利用する方の声として「近所に同年代の子どもを持つ母親がいない」「市の中心部から離れているので、育児サークルや育児の講習会等への参加が困難」であったので非常に助かるといった声が聞かれる。また、つどいの広場事業に取り組んでいるスタッフの方の話では、「絵本の読み聞かせなど地域の方にもボランティアで参加してもらい、子どもたちの成長を気にかけていただいている」、「つどいの広場での活動の様子をケーブルテレビで放映しているので、泉町の子どもたちの姿を見ることができ、地域のお年寄りも楽しみにしている。また、今では隣町から遊びに来る親子もいて、子どもも大人も喜んで通っている」との声が聞かれる。
財団法人こども未来財団「平成18年度 子育てに関する意識調査」によれば、子育てに対する孤立感を解消するには、「子育てについて相談できる相手がいれば」、「大変なのは自分だけではなく、他の親も同じように悩みを抱えていることが分かれば」との意見が多い。また、この調査報告書によると、つどいの広場・子育てサロンを利用している母親ほど自分自身への子育てへの満足度も高い結果となっている。ただし、満足度の高さは親仲間の交流やつどいの広場・子育てサロンの利用による「効果」だけではなく、むしろ、子育てに前向きで自分自身の子育てに満足している母親は、外部とのコミュニケーションにも積極的であり、子育て仲間や協力者を見つけてますます子育てを楽しむことができる、というプラスの循環が起こっているのではないかとの分析がなされている。
子どもが幼稚園・小学校に入ると子どもを通じた親同士の交流により、地域の様々な情報が得られるようになるが、それ以前の子どもが0~3歳くらいの子育て期間では、社会全体で子どもの数が減っていく中、同年代の子どもを周りで探すことも難しく、また、母親は他の地域から嫁いできた場合も多く、夫婦がともにその地域の出身であるとは限らない。周りに親戚や頼れる知人もおらず、市役所や保育所、保健所等の公的機関に相談するのも躊躇され、なかなか地域にとけ込めないまま孤立して子育てをしているのは、都市部も過疎地域も変わらない子育て風景である。地域の子育て支援拠点施設(つどいの広場、地域子育て支援センター等)は、子育て中の親子が気軽に集い、そこで地域の子育て支援に関わる様々な人(子育て支援経験のある高齢者、児童民生委員、母子保健員等)や、公的機関の者(保育士、保健師、助産師等)と知り合えるきっかけづくりにもなることから、地域の中で生活していくことの安心感が持てる意味でも非常に期待される。
第1‐3‐13図 孤立感を解消するには

第1‐3‐14図 母親・父親別 つどいの広場や子育てサロンの利用状況

第1‐3‐15図 母親・自分の子育てへの満足度別 つどいの広場や子育てサロンの利用状況

(地域における子育て支援の取組)
平成19年版 国民生活白書(内閣府)によれば、ここ数年、子どもを通じた交流が少なくなっている中で、子どもを持つ親同士が交流できる「場」をつくる、NPO等の子育て当事者による地域における子育て支援活動が、全国的に急速な広がりをみせている。在宅で子育てをしている親にとっては地域の子ども同士の交流や親の情報交換、リフレッシュになり、働く親にとっては地域の中で友人や仲間をみつけるきっかけづくりになっていることが紹介されている。
こうしたNPO等の活動は、地域で子育ての支援を求めている人と支援できる人をつなぎ、地域のコミュニケーション再生の機能を果たしている。
子育て支援のために望まれている地域活動としては、子育ての悩みを相談したり、親同士で会話したりできる仲間づくりがあげられている。子育ての伝承や子育て風景をみたり体感したりする機会が減っている現在においては、こうした期待に地域が応え、地域のつながりを深めることが重要である。
こうしたNPO等の活動は、地域で子育ての支援を求めている人と支援できる人をつなぎ、地域のコミュニケーション再生の機能を果たしている。
子育て支援のために望まれている地域活動としては、子育ての悩みを相談したり、親同士で会話したりできる仲間づくりがあげられている。子育ての伝承や子育て風景をみたり体感したりする機会が減っている現在においては、こうした期待に地域が応え、地域のつながりを深めることが重要である。
第1‐3‐16図 子育て支援のために望まれる地域活動

(企業活動と子育て支援活動との連携、協働)
社会全体で子育てしやすい地域づくりを進めていく上では、働く者が子育てしやすい環境整備や、地域の子育て家庭が利用しやすい商品・サービスの提供、子育て世帯への優遇措置の適用など、企業活動の中に子育て支援の要素を織り込んでいくことが求められる。
一部の地方公共団体では、これらの取組を進める企業に対して、「子育て応援の店」の登録制度を設けたり、入札資格における配慮等が行われているが、このように、地域づくりの中で企業による子育て支援をバックアップする取組を普及していくことが必要である。
あわせて、こうした取組が地域で進められていることが、子育て家庭に情報として伝わることが重要であり、一部地方公共団体で取り組まれているように、子育て当事者の参画の下で、「子育て支援サイト」や「子育てマップ」の作成などの方法で、子育て家庭に伝わりやすい形で情報発信することも有効である。
一部の地方公共団体では、これらの取組を進める企業に対して、「子育て応援の店」の登録制度を設けたり、入札資格における配慮等が行われているが、このように、地域づくりの中で企業による子育て支援をバックアップする取組を普及していくことが必要である。
あわせて、こうした取組が地域で進められていることが、子育て家庭に情報として伝わることが重要であり、一部地方公共団体で取り組まれているように、子育て当事者の参画の下で、「子育て支援サイト」や「子育てマップ」の作成などの方法で、子育て家庭に伝わりやすい形で情報発信することも有効である。