2 アジアの主な国における少子化対策の動向

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(出生率の評価と政策スタンス)

 アジアの国・地域では、我が国よりも少子化が急速に進行しているところもみられる。各国では、この事実をどのように認識し、どのような政策スタンスに立っているのであろうか。
 国連の資料によると、出生率の水準に対する主なアジア諸国(韓国、シンガポール、中国、タイ)の現在(2005年)の認識は、韓国、シンガポールでは、自国の出生率を「低すぎる」と認識している。一方、中国、タイでは「満足な水準」と認識している。
 また、政策スタンス(出生率に影響を与える政策に対する態度)については、「低すぎる」と認識している韓国、シンガポールは、我が国と同様、「回復させる」というスタンスに立っている。一方、「満足な水準」と認識している中国、タイでは「維持する」というスタンスに立っている。
 以下では、自国の出生率を低すぎると認識し、出生率を回復させるという政策スタンスをとっている韓国、シンガポールの少子化対策を概観する。

(韓国の少子化対策)

 韓国では、2000(平成12)年以降の出生率の低下が著しく、「将来人口の特別推計」(2005年1月)によると、韓国の人口は2020(平成32)年をピークに減少する見通しとなっている。
 この状況に危機感を持った韓国政府は、2003(平成15)年12月に大統領府に「高齢化と未来社会委員会」を設置し、2004(平成16)年1月に「少子・高齢社会対応のための国家戦略」、同年6月に「育児支援法案」が策定された。2005(平成17)年9月に同委員会は「低出産高齢化社会委員会」に改編され、2006(平成18)年7月には「少子高齢社会基本計画」が策定された。この計画には、保育サービスの充実、経済的支援の強化、妊娠・出産に対する支援等が盛り込まれており、低出産対策として今後5年間に約19兆ウォン(約2.5兆円)を投入することとしている。韓国では、これらの施策により、合計特殊出生率を2010(平成22)年までにOECD諸国の平均である1.6まで回復させることを目標に掲げている。
 現在、韓国で実施されている少子化対策の概要は、以下のとおりである。
 出産休暇は、90日間の産前・産後休暇の取得が可能である。このうち、60日分については、有給休暇として事業主から給与が支給され、残り30日分については、一般会計及び雇用保険から135万ウォン(約17万9千円)を上限として産休手当が支給される。
 育児休業は、子どもが1歳に達するまでの間、取得可能である。育児休業中の所得保障については、雇用保険から月40万ウォン(約5万3千円)の育児手当が支給される。また、育児休業中の代替要員を雇用した企業に対しては補助金が支給される。
 保育サービスは、公営と民営の保育所のほか、事業所内保育所と家庭型(小規模)保育所が制度化されている。特に事業所内保育所については、常用雇用労働者500人以上又は女性労働者300人以上の事業所に対し、その設置が義務付けられている。
 経済的支援は、税制における「家族扶養控除」のほか、「教育費控除」(幼稚園や保育園などの費用の所得控除制度)があるが、我が国の児童手当に相当する制度はなく、「少子高齢社会基本計画」でも児童手当の導入の検討が盛り込まれている。

(シンガポールの少子化対策)

 シンガポールでも、2001(平成13)年以降の出生率の低下が著しく、様々な少子化対策が講じられている。
 シンガポールでは、特にユニークな政策として、独身者対策としての国営「お見合い(出会いの場提供)センター」が知られていたが、今後、それを廃止し、民間のお見合い産業に対して補助金等によって間接的に支援する仕組みに移行する予定である。
 出産休暇は、産前4週間、産後8週間の計12週間の取得が可能である。第1子、第2子の場合、最初の8週間については、事業主は給与を支払うこととなっている。また、残りの4週間についても有給で取得できるようにするため、企業に対し、最大で1万シンガポールドル(約80万1千円)の助成金が政府から支給される。第3子以降の場合、12週間すべてについて、最大で3万シンガポールドル(約240万2千円)の助成金が政府から支給される。
 育児休業は、子どもが7歳に達するまでの間、年に2日間、有給休暇を取得することができる。
 保育サービスは、保育所が設置されているほか、ベビーシッター等の家庭保育者も利用可能である。特に一部の保育所では、家庭保育者を育成・派遣している。
 経済的支援として、ベビーボーナスと税制をあげることができる。
 ベビーボーナスは、子どもの出生時の現金給付と政府の補助も加わった積み立て制度から構成されている。前者は、第1子、第2子は3,000シンガポールドル(約24万円)、第3子以降は6,000シンガポールドル(約48万円)が支給される。後者は、第2子以降を対象とし、子どもが6歳になるまでの間、親からの貯蓄と同額の補助が政府から支給され、専用口座に積み立てられる。この専用口座に積み立てられた金額は、指定された保育所や幼稚園の保育料等の支払いに充てることができる。
 税制では、扶養控除のほか、同居している祖父母や外国人メイドを対象とした保育者控除や税額控除が実施されている。
 扶養控除としては、「扶養子ども控除」と「就業母親子ども控除」がある。前者は、16歳未満の子ども1人につき、一定額を所得から控除するもの、後者は、就業している母親に対し、所得の一定割合を控除するものである。
 同居している祖父母や外国人メイドを対象とした保育者控除としては、「祖父母控除」と「外国人メイド控除」がある。前者は、就業している女性が子どもの保育を父母や祖父母に頼んだ場合に一定額を所得から控除するもの、後者は、既婚又は子どもを持つ女性が、外国人メイドを雇用した場合、一定額を所得から控除するものである。
 税額控除については、「扶養者税額控除」があり、第2子以降を対象に一定額を税額控除している。

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