2 未婚化・晩婚化の進行   (未婚化の進行)  婚姻件数は、第1次ベビーブーム世代が、かつて結婚適齢期といわれていた25歳前後の年齢を迎えた1970(昭和45)年から1974(昭和49)年にかけて、年間100万組を超え、婚姻率(人口千対)もおおむね10.0以上と「結婚ブーム」を現出した。その後は、婚姻件数、婚姻率ともに低下傾向となり、1978(昭和53)年以降は年間70万組台(1987(昭和62)年のみ60万組台)で増減を繰り返しながら推移してきた。2002(平成14)年からは4年連続で減少していたが、2006(平成18)年は73万971組(対前年比1万6,706組増)と5年ぶりに増加に転じた。婚姻率も過去最低だった2004(平成16)年、2005(平成17)年の5.7より0.1上昇し、5.8となったが、「結婚ブーム」であった1970年代前半と比べると半分近くまで落ち込んでいる。  また、2005年の総務省「国勢調査」によると、25〜39歳の未婚率は男女ともに引き続き上昇している。男性では、25〜29歳で71.4%、30〜34歳で47.1%、35〜39歳で30.0%、女性では、25〜29歳で59.0%、30〜34歳で32.0%、35〜39歳で18.4%となっている。30年前の1975(昭和50)年においては、30代の男性・女性ともに約9割が結婚していたことを考えると、この間、未婚化が急速に進行していることがわかる。さらに、生涯未婚率を30年前と比較すると、男性は2.1%(1975年)から15.4%(2005年)、女性は4.3%(1975年)から6.8%(2005年)へ上昇している。  厚生労働省「人口動態統計」によると、我が国では、2006年に生まれた子どものうち、98%は嫡出子(法律上の婚姻をした夫婦間に出生した子)であり、嫡出でない子(いわゆる婚外子)の割合は2%にすぎない9。したがって、子どもは男女が結婚してから生まれる場合が大半である我が国において、結婚しない人の割合が増加すれば、出生数の減少に直接的な影響を与えることになる。 第1-1-7図 婚姻件数及び婚姻率の年次推移 (晩婚化、晩産化の進行)  日本人の平均初婚年齢は、2006年で、夫が30.0歳(対前年比0.2歳上昇)、妻が28.2歳(同0.2歳上昇)と上昇傾向を続けており、結婚年齢が高くなる晩婚化が進行している。1975年には、夫が27.0歳、妻が24.7歳であったので、ほぼ30年間に、夫は3.0歳、妻は3.5歳、平均初婚年齢が上昇していることになる。  また、初婚の妻の年齢(各歳)別婚姻件数の構成割合を1986(昭和61)年から10年ごとにみると、ピーク時の年齢が上昇するとともに、その山も低くなっていることがわかる。 第1-1-8図 初婚の妻の年齢(各歳)別婚姻件数の割合  また、初婚年齢が遅くなるという晩婚化が進行すると、それに伴い、出生したときの母親の平均年齢も遅くなるという晩産化の傾向があらわれる。2006年の場合、第1子が29.2歳、第2子が31.2歳、第3子が32.8歳であり、ほぼ30年前の1975年と比較すると、それぞれ3.5歳、3.2歳、2.5歳遅くなっている。高年齢になると、出産を控える傾向にあることから、晩婚化や晩産化は少子化の原因となる。 第1-1-9図 平均初婚年齢と母親の平均出生時年齢の年次推移 コラム 諸外国における少子化の状況  我が国は、戦後、出生数と合計特殊出生率が急速に低下し、現在でも少子化傾向が続いているが、諸外国における少子化の状況はどのようになっているのであろうか。  主な国(アメリカ10、フランス、スウェーデン、イギリス、イタリア、ドイツ)の合計特殊出生率の推移をみると、1960年代までは、すべての国で2.0以上の水準であった。その後、1970(昭和45)年から1980(昭和55)年頃にかけて、全体として低下傾向となったが、その背景には、子どもの養育コストの増大、結婚・出産に対する価値観の変化、避妊など出生抑制技術の普及等があったと指摘されている。1990(平成2)年頃からは、出生率の動きは国によって特有の動きをみせ、ここ数年では回復する国もみられるようになってきている。  特に、フランスやスウェーデンでは、出生率が1.6台まで低下した後、回復傾向となり、直近ではフランスが1.98(2007年(速報値))、スウェーデンが1.85(2006年)となっている。これらの国の家族政策の特徴をみると、フランスでは、かつては家族手当等の経済的支援が中心であったが、1990年代以降、保育サービスの充実へシフトし、その後さらに出産・子育てと就労に関して幅広い選択ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向で政策が進められている。スウェーデンでは、比較的早い時期から、経済的支援とあわせ、保育サービスや育児休業制度といった「両立支援」の施策が進められてきた。また、ドイツでは、依然として経済的支援が中心となっているが、近年、両立支援へと転換を図り、育児休業制度や保育サービスの充実等を相次いで打ち出している。  このように、1990年代以降の欧州諸国(特にフランス、スウェーデン、ドイツ)では、家族関係社会支出の規模やその内訳は国によって様々であるものの、仕事と育児・家庭に対する「両立支援」を軸に展開する傾向がみられる。 第1-1-10図 主な国の合計特殊出生率の動き  次に、アジアの国や地域について、経済成長が著しく、時系列データの利用が可能なタイ、シンガポール、韓国、香港及び台湾の出生率の推移をみると、次の図のとおりである。1970年の時点では、いずれの国も我が国の水準を上回っていたが、その後、出生率は低下傾向となり、現在では人口置換水準を下回る水準になっている。タイの1.90(2005年)を除けば、我が国の1.32(2006年)を下回る水準となっており、シンガポールが1.25(2005年)、韓国が1.26(2007年(速報値))、台湾が1.12(2006年)、香港が0.98(2006年)となっている。  このように、日本以外の東アジアの主な国や地域においても、「超少子化」ともいえる状況が発生しており、近年、韓国やシンガポールでは、自国の出生率を低すぎると認識し、出生率を回復させるという政策スタンスをとっている。 第1-1-11図 アジアの主な国・地域における合計特殊出生率の動き 9 欧米諸国における嫡出でない子の割合は30〜50%台の水準であるが、その背景には、男女のカップルが法律上の結婚に至るまでに同棲という事実婚の状態を経ることが多いこと、嫡出でない子であっても法的には嫡出子とほぼ同じ権利を享受できること、結婚形式の多様化に対する社会一般の受け入れなどが考えられる。 10 アメリカの2006年の合計特殊出生率は2.10であるが、人種別にみると、白人1.86、アフリカ系2.11、アジア系1.91、ヒスパニック系2.96となっている。ヒスパニック系の出生率が大変高く、全出生数の約24%を占めているが、白人の出生率も我が国の水準(2006年で1.32)を大きく上回っている。