第2章 仕事と家庭の両立支援と働き方の見直し
第1節 企業等におけるもう一段の取組を推進する
1. 一般事業主による次世代育成支援対策に関する取組の推進
●次世代法に基づき、一般事業主行動計画の届出が義務づけられている常時雇用する労働者の数が300人を超える企業の届出率は、2008(平成20)年12月末現在で98.0%、努力義務である300人以下の企業の届出数は、16,405社となっている。
●2008年には、次世代法の一部が改正され施行される予定となっている。一般事業主行動計画に関する主な改正事項は以下のとおりである。
[1]一般事業主行動計画の策定・届出の義務付け対象を労働者数301人以上企業から101人以上企業へ拡大(2011(平成23)年4月1日施行)
[2]一般事業主行動計画の策定・届出が義務付けとなっている企業について、当該行動計画の公表及び従業員への周知を義務付け(2009(平成21)年4月1日施行)
2.ファミリー・フレンドリー企業の普及促進
●仕事と育児・介護とが両立できる様々な制度を持ち、多様な働き方を労働者が選択できるような取組を行う企業を讃えるとともに、これを広く国民に周知するため、ファミリー・フレンドリー企業に対する表彰(厚生労働大臣賞及び都道府県労働局長賞)を実施している。
第2節 育児休業制度等についての取組を推進する
1.仕事と子育ての両立のための制度の一層の定着促進・充実
●労働政策審議会雇用均等分科会において育児・介護休業法の見直しについて議論を行い、2008(平成20)年12月に同審議会により建議が行われた。建議においては、[1]短時間勤務制度、所定外労働の免除の義務化、[2]父母ともに育児休業を取得する場合の休業可能期間の延長、[3]子の看護休暇の拡充や介護のための短期の休暇制度の創設などが提言されており、厚生労働省では、この建議に基づき、育児・介護休業法の見直しに向けた検討を進めている。また、2007(平成19)年10月からの暫定措置として、雇用の継続を援助、促進するための育児休業給付の給付率を休業前賃金の40%から50%に引き上げることとした。
2.子育てをしながら働きやすい雇用環境の整備
●2007(平成19)年4月から、育児休業取得者等に対して独自に経済的支援を行った事業主を対象に育児休業取得促進等助成金を支給している。2008(平成20)年10月にとりまとめられた「生活対策」においては、育児休業取得者等が初めて出た場合に、中小企業事業主に対する助成金の支給対象範囲を5人目まで拡大するとともに、2人目以降の支給額を増額(育児休業:60万円→80万円等)した。また、労働者が利用した育児サービス費用を負担するための中小企業事業主に対する助成金について、助成率及び助成限度額の引上げを行った(助成率:2分の1→4分の3、限度額:30万円→40万円(1人当たり)、360万円→480万円(1事業主当たり))。
第3節 男性の子育て参加促進のための父親プログラム等を普及する
●2005(平成17)年より、男性の育児休業取得を促進するなど、男性の育児参加を可能とするような職場づくりに向けたモデル的な取組を行う事業主に対して助成することにより、男性の育児参加を支援している。また、男性の仕事と育児の両立に関する意識啓発を促進するため、2008(平成20)年度に育児期の男性が仕事と家庭が両立可能な働き方を設計・実践するためのハンドブック「父親のワーク・ライフ・バランス~応援します!仕事と子育て両立パパ~」を作成・配布したところである。
第4節 労働時間の短縮等仕事と生活の調和のとれた働き方の実現に向けた環境整備を図る
1.仕事と生活の調和の考え方の浸透のための取組
●「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」に基づき、2008(平成20)年1月に内閣府に設置された「仕事と生活の調和推進室」を中心に、政労使・地方公共団体との連携の下、様々な取組を展開している。また、同年11月からは、先進的な取組を行っている企業を訪問し、そこで得られた成果を、優れたロールモデルとして収集・発信することを通じて、全国的な取組の底上げを目指す活動を展開している。加えて、同年6月には、「ひとつ、働き方を変えてみよう」とのキャッチフレーズの下、「カエル!ジャパン」キャンペーンを展開している。
2.長時間労働の抑制や年次有給休暇の取得促進等、仕事と生活の調和に向けた取組
●長時間労働を抑制するとともに、生活時間を確保しながら働くことができるようにすることを目的として2008(平成20)年12月に「労働基準法の一部を改正する法律」が成立し、2010(平成22)年度からは、1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金について、現行の25%から50%に引上げること、年休取得について、現行は日単位であるところを、労使協定を締結した場合には、5日分を限度として、時間単位での年休取得を可能とすることとしている。
3.ライフスタイルに応じた多様な働き方の推進
●近年、パートタイム労働者は増加し、従来のような補助的な業務ではなく、役職に就くなど職場において基幹的役割を果たす者も増加している一方で、パートタイム労働者の待遇がその働き・貢献に見合ったものになっていない場合もあり、正社員との不合理な待遇の格差を解消し、働き・貢献に見合った公正な待遇を確保することが課題となっている。こうしたことから、働き方の実態に応じた通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保や通常の労働者への転換の推進等を内容とする改正パートタイム労働法が2008(平成20)年4月1日から施行されている。
●短時間正社員制度については、自らのライフスタイルやライフステージに応じた多様な働き方を実現する制度として、その普及や定着が期待されていることから、制度を導入した事業主に対する助成金の支給に加え、インターネット上に「短時間正社員制度導入支援ナビ」を開設し、短時間正社員制度の概要や取組事例等についての情報提供を行うなど、短時間正社員制度の導入支援を行っている。
4.テレワークの推進
●2010(平成22)年までにテレワーカーを就業者人口の2割とする目標の実現に向けて、2007(平成19)年5月に「テレワーク人口倍増アクションプラン」(テレワーク推進に関する関係省庁連絡会議決定、IT戦略本部了承)を策定し、政府一体となってテレワークの普及を推進している。
●テレワークのうち、事業主と雇用関係にある者が、労働時間の全部又は一部について自宅等で業務に従事する勤務形態について、テレワーク試行・体験プロジェクトの実施や、「テレワーク環境整備税制」による支援、セミナーの開催等を通じた普及促進のための事業を実施している。
5.公務員の働き方の見直し
●2008(平成20)年8月の人事院勧告を受けて、国家公務員の勤務時間は1日15分、1週1時間15分短縮された(2009(平成21)年4月1日施行)。また、超過勤務の縮減については、同勧告時の公務員人事管理に関する報告において、職業生活と家庭生活の調和の観点からも、喫緊に取り組む必要のある重要課題であり、政府全体として計画的に在庁時間削減に取り組む必要があることについて言及した。
●地方公務員については、多様な働き方を導入するため、「地方公務員法及び地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律の一部を改正する法律」により、任期付短時間勤務職員制度を創設し、制度の周知を図っている。
6.農山漁村での両立支援
●出産・育児期の女性の負担を軽減し、農林漁業経営及び地域社会活動への参画を支援するため、シンポジウム等の開催、農山漁村における子育て支援活動の優良事例の紹介、子育て支援に携わる担当者への情報提供などを行っている。
第5節 妊娠・出産しても安心して働き続けられる職場環境の整備を進める
●男女雇用機会均等法は、妊娠・出産等を理由とする不利益な取扱いを禁止するとともに、妊娠中及び産後一年以内の解雇について、事業主が妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを証明しない限り無効とすること等を定めており、同法に違反する事業主に対し指導を行い、是正を図っている。
第6節 再就職等を促進する
●2008(平成20)年度においては、地方の中核的な都市のハローワークにマザーズコーナー(60か所)を設置し、子育てしながら早期の就職を希望している者等に対してきめ細かな就職支援を実施している。
●子育て支援を行う民間の団体と連携して、再チャレンジを目指す女性向けの情報提供を行う講座の開発を行うとともに、総合的な支援情報ポータルサイト「女性いきいき応援ナビ」を通じて子育て等でいったん退職した女性等の再就職・起業支援を推進している。