第1節 近年の少子化の状況(3/3)
3 諸外国における少子化の状況
主な国(アメリカ12、フランス、スウェーデン、イギリス、イタリア、ドイツ)の合計特殊出生率の推移をみると、1960年代までは、すべての国で2.0以上の水準であった。その後、1970(昭和45)年から1980(昭和55)年頃にかけて、全体として低下傾向となったが、その背景には、子どもの養育コストの増大、結婚・出産に対する価値観の変化、避妊など出生抑制技術の普及等があったと指摘されている。1990(平成2)年頃からは、出生率の動きは国によって特有の動きをみせ、ここ数年では回復する国もみられるようになってきている。
特に、フランスやスウェーデンでは、出生率が1.6台まで低下した後、回復傾向となり、直近ではフランスが2.02(2008(平成20)年(速報値))、スウェーデンが1.91(2008年)となっている。これらの国の家族政策の特徴をみると、フランスでは、かつては家族手当等の経済的支援が中心であったが、1990年代以降、保育サービスの充実へシフトし、その後さらに出産・子育てと就労に関して幅広い選択ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向で政策が進められている。スウェーデンでは、比較的早い時期から、経済的支援とあわせ、保育サービスや育児休業制度といった「両立支援」の施策が進められてきた。また、ドイツでは、依然として経済的支援が中心となっているが、近年、両立支援へと転換を図り、育児休業制度や保育サービスの充実等を相次いで打ち出している。
このように、1990年代以降の欧州諸国(特にフランス、スウェーデン、ドイツ)では、家族関係社会支出の規模やその内訳は国によって様々であるものの、仕事と育児・家庭に対する「両立支援」を軸に展開する傾向がみられる。
次に、アジアの国や地域について、経済成長が著しく、時系列データの利用が可能なタイ、シンガポール、韓国、香港及び台湾の出生率の推移をみると、第1‐1‐15図のとおりである。1970年の時点では、いずれの国も我が国の水準を上回っていたが、その後、出生率は低下傾向となり、現在では人口置換水準を下回る水準になっている。タイの1.90(2005(平成17)年)を除けば、我が国の1.34(2007年)を下回る水準となっており、シンガポールが1.29(2007年)、韓国が1.19(2008年(速報値))、台湾が1.10(2007年)、香港が1.02(2007年)となっている。
このように、日本以外の東アジアの主な国や地域においても、「超少子化」ともいえる状況が発生しており、近年、韓国やシンガポールでは、自国の出生率を低すぎると認識し、出生率を回復させるという政策スタンスをとっている。
第1-1-14図 主な国の合計特殊出生率の動き
主な国の合計特殊出生率の動き(CSV形式:4KB)
第1-1-15図 アジアの主な国・地域における合計特殊出生率の動き
アジアの主な国・地域における合計特殊出生率の動き(CSV形式:1KB)
12 | アメリカの2006年の合計特殊出生率は2.10であるが、人種別にみると、白人1.86、アフリカ系2.11、アジア系1.91、ヒスパニック系2.96となっている。ヒスパニック系の出生率が大変高く、全出生数の約24%を占めているが、白人の出生率も我が国の水準(2007年で1.34)を大きく上回っている。 |