第1節 就学前の児童の教育・保育を充実する

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1 新待機児童ゼロ作戦

2001(平成13)年7月に閣議決定された「仕事と子育ての両立支援策の方針について」に盛り込まれた「待機児童ゼロ作戦」に基づき、保育所、保育ママ、幼稚園による預かり保育等を活用し、2002(平成14)年度からの3年間で目標を上回る約15万6,000人の受入児童数の拡大を達成した。

こうした結果、待機児童数は2003(平成15)年をピークに4年連続で減少してきたが、2008(平成20)年4月1日現在では5年ぶりに増加に転じ1万9,550人となっている。なお、待機児童数を年齢区分別に見ると、低年齢児(0~2歳)の待機児童数全体に占める割合は約8割となっている。

また、待機児童の解消に向け、2004(平成16)年12月に策定された「子ども・子育て応援プラン」に基づき、2005(平成17)年度から2007年度までの3年間で集中的に受け入れ児童数の増大を図るとともに、「児童福祉法の一部を改正する法律」(平成15年法律第121号)により、2006(平成18)年4月1日に待機児童が50人以上いる市区町村(81市区町村)は、2006年度までに策定した保育の実施の事業等の供給体制の確保に関する計画を基に、待機児童の計画的な解消を図ることとしている。

また、保育所における児童の受入増を図るため、保育所の緊急整備のほか、保育所の認可要件等の規制緩和を推進している。

保育所の認可要件については、2000(平成12)年からそれまで市町村と社会福祉法人に限定していた設置主体の制限を撤廃し、株式会社、NPO、学校法人等多様な主体による保育所の設置を可能としている。

また、保育所の設置運営を効率的かつ計画的に促進するため、2001年の児童福祉法改正により、保育需要が増大する市町村においては、市町村自らの公有財産(学校、公営団地等の公共施設の余裕スペース等)の貸付け、保育所の運営業務の委託等の措置を積極的に講ずることとされ、さらに2004年の児童福祉法改正により、保育料の収納事務について、私人への委託を可能としている。

さらに、2008年2月、「子どもと家族を応援する日本」重点戦略(以下「重点戦略」という。)の策定を受け、重点戦略に盛り込まれた仕事と生活の調和やサービスの質の確保等の視点を踏まえ、保育所等の待機児童の解消をはじめとする保育施設を質・量ともに充実・確保し、推進するための「新待機児童ゼロ作戦」を展開することとし、2008年度からの3年間を集中重点期間として、取組をすすめることとしている。なお、2008年度補正予算において、「新待機児童ゼロ作戦」による保育所の整備等、認定こども園等の新たな保育需要への対応及び保育の質の向上のための研修などを実施し、子どもを安心して育てることができるような体制整備を行うための「安心こども基金」を都道府県に造成した。

現行施策における追加的施策として、


[1]  保育所の定員の弾力化については、一定程度認められているが、実態を踏まえ、この措置を十分活用して対応するよう、再度地方自治体に要請
[2] 家庭的保育事業(保育ママ)については、対象児の年齢を引上げるとともに(3歳未満から就学前までに拡大)、家庭的保育者の要件で「養育する就学前児童がいない等」の要件を撤廃すること等を行い、家庭的保育事業の実施拡大を図ることにより、待機児童の受入を促進
[3] 「安心こども基金」において、児童福祉施設最低基準を満たす認可外保育施設が新たに賃貸形態で保育を行う場合に、開設準備費(改修費及び家賃に係る初年度費用分)を補助

を行ったところである。

第2-4-1表 年齢区分別待機児童数

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第2-4-2図 待機児童数の推移

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2 多様なニーズに合わせた保育サービス

(1)保育所におけるサービス等

多様な保育ニーズに対応するため、延長保育、夜間保育、病児・病後児保育事業等についても、引き続き推進を図っている。

延長保育については、保護者の長時間の通勤等、長時間の保育に対する需要に対応するため、通常の開所時間(11時間)を超えて保育を実施する事業であり、当該事業を実施している民間保育所に対して必要な補助を行っている(2007年度実施箇所数:9,450か所)。

おおむね午後10時頃まで開所する夜間保育所に対しても必要な補助を行っている(2008年度予算実施箇所数:80か所)。

また、保護者が就労している場合等において、子どもが病気の際に自宅での保育が困難な場合がある。こうした保育需要に対応するため、病院・保育所等において病気の児童を一時的に保育するほか、保育中に体調不良となった児童への緊急対応等を行うことで、安心して子育てができる環境を整備し、もって児童の福祉の向上を図ることを目的とする病児・病後児保育事業を実施している(2008年度予算実施箇所数:1,307か所)。

さらに、都市部を中心とした保育サービスの供給増を図るため、地域の保育資源として認可外保育施設が認可保育所に移行するために必要な経費を助成している。

また、親の就労形態の多様化(パート就労の増大等)や育児の孤立化に伴う子どもの保育需要の変化に対応するため、2003(平成15)年度から週2、3日程度又は午前か午後のみなど必要に応じて柔軟に利用できる保育サービスとして特定保育事業を創設した(2008年度予算実施箇所数:1,890か所)。

さらに、保育需要の増に対応するための応急措置として、2000(平成12)年度から家庭的保育事業(保育ママ。保育所との連携又は保育所での一体的な実施により、保育者の居宅において少人数の就学前児童を保育する)を実施する市区町村に対し、必要な経費の補助を行っている(2008年度予算対象児童数:2,500人)。なお、家庭的保育事業(保育ママ)は、2008年11月に成立した「児童福祉法等の一部を改正する法律」により、2010(平成22)年度から、児童福祉法上の事業として法律上位置付けられることとなった。

(2)幼稚園における預かり保育

幼稚園の通常の教育時間(標準4時間)の前後や長期休業期間中などに、地域の実態や保護者の要請に応じて、希望する者を対象に行われる「預かり保育」を実施する幼稚園に対して支援を行っている。2008年3月には幼稚園教育要領を改訂し、教育活動として適切な活動となるようその充実を図った。

近年の女性の社会進出の拡大、都市化、核家族化などを背景として、多様化する保護者のニーズに伴い、「預かり保育」への要望が増加しており、2008年6月現在、「預かり保育」を実施している幼稚園の割合は、約73%になった。

第2-4-3表 預かり保育実施状況

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3 幼稚園と保育所の連携と認定こども園

(1)幼稚園と保育所の連携

幼稚園と保育所については、地域や保護者の多様なニーズに応じた設置・運営が求められており、1998(平成10)年以降、施設の共用化、資格の併有促進等の連携を図っている。

1998年3月の「幼稚園と保育所の施設の共用化等に関する指針」により、幼稚園と保育所を合築、併設して設置する場合に両施設が有効に活用されるようその取扱いを定めた(2008(平成20)年5月現在共用化事例:471件)。

2002(平成14)年に保育士資格と幼稚園教諭免許を同時に取得しやすくするための保育士資格の養成課程の見直しなどを行うとともに、2008(平成20)年に幼稚園教育要領と保育所保育指針を改訂し、その内容についてはこれまで以上に整合性を図っている。また、2005(平成17)年度より、幼稚園教諭免許所有者が保育士資格を取得する場合に一定の科目について試験を免除しており、保育士資格所有者が幼稚園教諭免許を取得する方策として、幼稚園教員資格認定試験を実施している。

幼稚園における幼稚園児及び保育所児等の合同活動事業など、幼稚園と保育所の連携に関して2003(平成15)年4月に設けた構造改革特別区域における特例措置について、2005年5月に全国展開を行った。

また、2008年3月にそれぞれ改訂された幼稚園教育要領と保育所保育指針において内容の整合性を図るなど、幼稚園と保育所の連携をさらに進めている。

(2)認定こども園

近年の急速な少子化の進行や家庭・地域を取り巻く環境の変化に伴い、多様化するニーズに柔軟かつ適切に対応するため、2006(平成18)年6月に「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」が成立し、同年10月から施行された。

この法律では、幼稚園、保育所等のうち、


[1]  就学前の子どもに教育・保育を提供する機能(保育に欠ける子どもも欠けない子どもも受け入れて教育・保育を一体的に行う機能)
[2] 地域における子育て支援を行う機能(すべての子育て家庭を対象に、子育て不安に対応した相談や親子のつどいの場の提供などを行う機能)を備える施設について、都道府県が「認定こども園」として認定する仕組みとしている(2008年4月1日現在認定件数:229件)。

文部科学省と厚生労働省が2008年3月に実施した地方公共団体、施設、保護者に対する認定こども園制度に係る実態調査によると、施設を利用している保護者の8割近く、認定を受けた施設の9割以上が認定こども園を評価している。また、保護者の9割近くが制度を推進していくべきと回答している。一方、施設や地方公共団体からは、財政的支援が十分ではない、会計処理の簡素化が必要などの課題も指摘されている。

これを受けて、[1]認定こども園に対する、幼稚園・保育所の枠組みを超えた新たな財政措置、[2]2008年7月に文部科学省及び厚生労働省の両省局長級検討会で取りまとめられた、会計処理の改善や制度の普及啓発などの改善方策に基づいた運用改善に取り組んでいる。あわせて、同年10月に内閣府特命担当大臣(少子化対策)、文部科学大臣、厚生労働大臣の3大臣合意により立ち上げた「認定こども園制度の在り方に関する検討会」において、[1]財政支援の充実、[2]会計処理等における二重行政の解消、[3]教育と保育の総合的な提供の推進、[4]家庭や地域の子育て支援機能の強化、[5]質の向上への対応などの認定こども園における課題について議論を進めており、2009年3月に報告をとりまとめた。

第2-4-4表 認定こども園の認定件数(2008年4月1日現在)

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4 幼稚園及び保育所の評価と情報提供の推進

幼稚園における学校評価については、2002(平成14)年に施行された「幼稚園設置基準」において、自己評価の実施とその評価の公表に努めるとともに、積極的な情報提供を行うこととされていた。2007(平成19)年6月に「学校教育法」を改正し、学校評価に関する根拠規定を新設した。同年10月に学校教育法施行規則を改正し、[1]自己評価を行い、その結果を公表すること。[2]保護者など学校関係者による評価を行うとともにその結果を公表するよう努めること。[3]自己評価の結果・学校関係者評価の結果を設置者に報告することについて規定した。これらを踏まえ2008(平成20)年3月に「幼稚園における学校評価ガイドライン」を作成した。

保育所については、児童の視点に立ったサービスの向上を目指し第三者評価事業を推進している。2004(平成16)年5月には、保育を含む福祉サービスの第三者評価事業の普及を図るため、第三者評価事業の推進体制や評価基準の指針を定めた。さらに、保育所の特性に着目した評価基準の指針について、2005(平成17)年5月に通知を発出し、周知を図った。また、改定した保育所保育指針において、保育所及び保育士の自己評価について、努力義務が新たに定められた。

5 事業所内託児施設の設置の推進

労働者のための託児施設を事業所内に設置・運営及び増築等を行う事業主または事業主団体に、その費用の2分の1(中小企業事業主の場合、設置及び運営については3分の2(2010(平成22)年3月31日までの暫定措置))を支給する(両立支援レベルアップ助成金 事業所内託児施設設置・運営コース)ことにより、事業主の取組を支援している(2008(平成20)年度予算助成件数:541件)。

また、企業の子育て支援の推進を図る観点から、法人が2007(平成19)年4月1日から2009(平成21)年3月31日までの間に、一定の要件の下、事業所内託児施設を新設した場合、当該施設及びこれと同時に設置する一定の器具備品について、5年間20%(次世代育成支援対策推進法に規定する中小事業主については30%)の割増償却ができる税制上の優遇措置も講じられている。なお、この措置を2年間延長し、2011(平成23)年3月31日までに設置した施設を対象とすることとしている。

さらに、特に中小企業の取組を支援するため、事業所内託児施設を整備しようとする中小企業者を対象として、株式会社日本政策金融公庫から、貸付期間15年以内(据置期間:2年以内)、基準利率で資金を融資する制度(中小企業事業(貸付限度:7億2,000万円)・国民生活事業(貸付限度:7,200万円))を2007年度から引き続き実施している。



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