第6節 児童虐待防止対策を推進する

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1 児童虐待の現状

児童虐待への対応については、2000(平成12)年11月に「児童虐待の防止等に関する法律」(以下、「児童虐待防止法」という。)が施行されたが、その後、2004(平成16)年には、児童虐待防止法及び児童福祉法の改正が行われ、制度的な対応について充実が図られてきたところである。しかしながら、子どもの生命が奪われるなど重大な児童虐待事件が跡を絶たず、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数も増加を続け、2007(平成19)年度には児童虐待防止法制定直前の約3.5倍に当たる4万639件となるなど、依然として、社会全体で早急に取り組むべき重要な課題となっている。

第2-4-8図 児童虐待相談対応件数の年次推移

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2 児童虐待防止対策の取組状況

児童虐待は、子どもの心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与えるため、児童虐待の防止に向け、虐待の「発生予防」から「早期発見・早期対応」、さらには虐待を受けた子どもの「保護・自立支援」に至るまでの切れ目のない総合的な支援体制を整備、充実していくことが必要である。

このため、

[1]  発生予防に関しては、生後4か月までの乳児のいるすべての家庭を訪問し、子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握を行う「生後4か月までの全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」や、養育支援が必要な家庭に対して、訪問による養育に関する相談、指導・助言や育児・家事の援助等を行う「育児支援家庭訪問事業」の推進、子育て中の親子が相談・交流できる「地域子育て支援拠点」の整備
[2] 早期発見・早期対応に関しては、市町村における「子どもを守る地域ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)」の設置促進及び機能強化、児童福祉司の配置の充実など児童相談所の体制強化、虐待をした親自身への再発防止対策として、家族再統合や家族の養育機能の再生・強化に向けた取組を行う親支援の推進
[3] 保護・自立支援に関しては、児童養護施設等の小規模ケアの推進、個別対応職員や家庭支援専門相談員の配置等、ケア担当職員の質的・量的充実、里親委託の推進、身元保証人を確保するための事業

などの取組を進めている。

3 児童虐待防止法及び児童福祉法の改正

2007(平成19)年には、児童虐待防止法及び児童福祉法の改正が行われ、2008(平成20)年4月に施行された。主な改正事項は、次のとおりである。なお、これに伴い、児童相談所運営指針の改正等が行われている。

[1]  児童の安全確認等のため、裁判官の許可状を得た上で、解錠等を伴う立入を可能とする立入調査等の強化
[2] 保護者に対する面会・通信等の制限の強化、都道府県知事が保護者に対し児童へのつきまといや児童の住居等付近でのはいかいを禁止できる制度の創設等
[3] 保護者に対する指導に従わない場合の措置の明確化

また、2008年11月、新たな子育て支援サービスの創設、虐待を受けた子ども等に対する家庭的環境における養育の充実等の措置を講ずる「児童福祉法等の一部を改正する法律」が成立した。主な内容としては、

[1]  すべての乳児のいる家庭を訪問することにより、子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握、相談助言等の援助を行う「乳児家庭全戸訪問事業」や、養育支援が必要な家庭に対して、訪問による養育に関する相談、指導・助言等の支援を行う「養育支援訪問事業」、乳幼児とその保護者が相互の交流を行う場所を開設し、子育てについての相談、情報提供、助言等の援助を行う「地域子育て支援拠点事業」等の子育て支援サービスの法定化
[2] 子どもを守る地域ネットワーク(要保護児童対策地域協議会)の機能強化
[3] 里親制度の改正及び小規模住居型児童養育事業の創設等家庭的養護の拡充、家庭支援機能の強化、年長児の自立支援策の見直し、施設内虐待(被措置児童等虐待)の防止等の規定等

が盛り込まれたところである(一部を除き2009(平成21)年4月1日から施行)。

4 児童虐待防止に向けた広報啓発の取組

毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付け、児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図るため、その期間中、関係府省庁や地方公共団体、関係団体等と連携した集中的な広報・啓発活動を実施している。2008(平成20)年度においては、月間標語の公募・決定、全国フォーラムの開催(11月2~3日・滋賀県大津市)、広報啓発ポスター・チラシの作成、配布及び政府広報を活用した各種媒体(テレビ、新聞、雑誌等)による広報啓発などを実施した。また、児童虐待防止の啓発を図ることを目的に、民間団体(特定非営利活動法人児童虐待防止全国ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボンキャンペーン」について後援を行っている。

5 児童虐待の事例検証等の取組

児童虐待による死亡事例等の検証は、事件の再発防止と対策を講ずる上での課題を抽出するために重要な意義を持つことから、社会保障審議会児童部会の下に設置されている「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」において、2004(平成16)年より実施されており、これまで4次にわたる報告がとりまとめられている。2008(平成20)年6月、同検証委員会において、第1次から4次までの報告の総括報告書がとりまとめられた。

また、学校における児童虐待の早期発見・早期対応体制の充実を図るため、2005(平成17)年度より、学校等における児童虐待防止に関する国内外の先進的取組について調査研究を実施し、2006(平成18)年5月に報告書をとりまとめた。この調査研究の成果を踏まえ、教員等向けの研修モデル・プログラムの検討を行い、虐待を受けた子どもへの支援等について教職員の対応スキルの向上を図るよう、研修教材を作成し、2009(平成21)年1月に配布した。

さらに、養護教諭の児童虐待への対応の充実を図る一助とするため、「養護教諭のための児童虐待対応の手引き」を作成し、2007(平成19)年12月に配布した。


コラム オレンジリボン・キャンペーン

オレンジリボンには、子ども虐待の現状を広く国民に知らせ、虐待を受けた子どもたちが幸福になれるように、という気持ちが込められています。

この児童虐待防止のシンボルである「オレンジリボン」を通じて、11月の児童虐待防止推進月間を中心に、民間団体、地方公共団体、国が連携し、一体となったキャンペーンを展開することにより、社会全体として子ども虐待を防止する機運を高めることとしています。

第2-4-9図 オレンジリボンについて



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