第11節 妊娠・出産の支援体制、周産期医療体制を充実する

[目次]  [戻る]  [次へ]


1 安心・安全な出産の確保

妊産婦にやさしい環境をつくるため、「マタニティマーク」の普及の推進、各地方公共団体における妊婦健診に係る公費負担の拡充、安全・安心なお産の場を確保するための研究事業などを実施している。なお、その際、妊産婦と産科医や助産師などの関係者との信頼・協力関係の構築も重要である。

とりわけ、近年、妊娠中に健診を全く受診しない妊婦の存在が社会問題となっているが、妊婦健診については、現在、妊婦健診の公費助成を充実するための地方財政措置を講じ、健康な妊娠、出産を迎える上で最低限必要な5回を基準とした公費負担の拡充について、厚生労働省が各地方公共団体に対して実施を促し、その充実を図っている6

さらに、2008(平成20)年度第2次補正予算において、費用の心配をしないで妊娠・出産できるようにするため、妊婦健診を必要な回数(14回程度)受けられるように、2010(平成22)年度までの間、地方財政措置されていない残りの9回分について、国庫補助、地方財政措置により2分の1ずつ支援することとしたところである。

また、妊婦健診の適正な受診、妊娠の早期届出(それに伴う母子健康手帳の早期交付)について、政府広報、リーフレットの作成・配布等を通じて広く国民に周知を図っている。

2009(平成21)年1月からは、安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、分娩に係る医療事故により脳性麻痺となった子及びその家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、事故原因の分析を行い、将来の同種事故の防止に資する情報を提供することなどにより、紛争の防止・早期解決及び産科医療の質の向上を図ることを目的とする「産科医療補償制度」の運用が開始されている。なお、この制度では、在胎週数22週以降の出産1件ごとに分娩機関が3万円の掛金を負担することから、分娩費の上昇が見込まれるため、健康保険から支給される出産育児一時金等も、同出産については3万円(35万円から38万円)引上げられたところである。

また、出産育児一時金については、2009年10月から2010(平成22)年度までの間、緊急の少子化対策として更に4万円引き上げられることとされた。

第2-4-11図 マタニティマーク

2 周産期医療体制の充実

リスクの高い妊産婦や新生児などに高度な医療が適切に提供されるよう、総合周産期母子医療センターを中核とする周産期医療ネットワークを整備し、地域の分娩施設等と高次の医療施設との連携体制の確保などを図っている(2008(平成20)年度において、45都道府県で整備済み)。

成育医療分野では、国の医療政策として、国立成育医療センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関等とが協力しつつ、医療の質の向上のための研究の推進や標準的医療等の普及に取り組んでいる。

特に、国立成育医療センターでは、生殖、妊娠、胎児期、周産期、新生児期、小児期、思春期、成人期に至る一連のサイクルに関わるすべての身体的、精神的疾患を対象として、治療に直結した臨床研究、それに密接に関連する高度先駆的医療、医療従事者への教育研修及び全国の中核的な医療機関等への医療情報の発信に取り組んでいる。

3 周産期救急搬送受入体制の確保

周産期救急医療については、総合周産期母子医療センターや地域周産期母子医療センターの整備等を進めてきたところであり、これにより妊産婦死亡率や新生児死亡率の改善が図られてきた。しかし、2008(平成20)年に東京都で、妊婦の救急搬送において医療機関への受入れまでに多くの照会を要した事案が発生した。これを受け、厚生労働省から各都道府県に対し、周産期母子医療センターの診療体制、地域の医療機関との連携状況等を確認し、必要があれば改善を図るよう依頼するとともに、周産期救急医療の在り方等について「周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会」で検討を行った。2009(平成21)年3月に同懇談会の報告書が取りまとめられ、周産期医療対策事業の見直しや救急医療・周産期医療に対する財政支援、地域の実情に応じたNICUの整備、救急患者搬送体制の整備などが提言されたところであり、同報告書を踏まえ、周産期救急医療の確保に取り組んでいくこととしている。


 6  市町村における妊婦健診の公費負担は平均5.5回(2008年4月現在)となっているが、今後、各地方公共団体において更なる公費負担の充実が図られることが必要である。なお、一部の市町村では里帰り先においても公費負担による健診が受けられるよう、きめ細やかな対応がなされている。


[目次]  [戻る]  [次へ]