7 仕事と生活の調和推進のための行動指針

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平成19年12月18日
ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議決定

1 行動指針の性格

本行動指針は、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下「憲章」という。)で示す「仕事と生活の調和が実現した社会」を実現するため、企業や働く者、国民の効果的な取組、国や地方公共団体の施策の方針を定める。

2 「仕事と生活の調和が実現した社会」に必要とされる諸条件

憲章で示した「仕事と生活の調和が実現した社会の姿」の具体的な3つの社会が実現するために必要な条件はそれぞれ以下のとおりである。

[1]就労による経済的自立が可能な社会

・若者が学校から職業に円滑に移行できること。
・若者や母子家庭の母等が、就業を通じて経済的自立を図ることができること。
・意欲と能力に応じ、非正規雇用から正規雇用へ移行できること。
・就業形態に関わらず、公正な処遇や能力開発機会が確保されること。

[2]健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会

・企業や社会において、健康で豊かな生活ができるための時間を確保することの重要性が認識されていること。
・労働時間関係法令が遵守されていること。
・健康を害するような長時間労働がなく、年次有給休暇の取得が促進されていること。
・メリハリのきいた業務の進め方などにより時間当たり生産性も向上していること。

・取引先との契約や消費など職場以外のあらゆる場面で仕事と生活の調和が考慮されていること。

[3]多様な働き方・生き方が選択できる社会

・子育て中の親、働く意欲のある女性や高齢者などが、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様で柔軟な働き方が可能となる制度があり、実際に利用できること。
・多様な働き方に対応した育児、介護、地域活動、職業能力の形成等を支える社会的基盤が整備されていること。
・就業形態に関わらず、公正な処遇や能力開発機会が確保されること(再掲)。

3 各主体の取組

仕事と生活の調和の実現の取組は、個々の企業の実情に合った効果的な進め方を労使で話し合い、自主的に取り組んでいくことが基本であるが、我が国の社会を持続可能で確かなものとすることに関わるものであることから、国と地方公共団体も、企業や働く者、国民の取組を積極的に支援するとともに、多様な働き方に対応した子育て支援や介護などのための社会的基盤づくりを積極的に行う。

(1)企業、働く者の取組

(総論)

・経営トップがリーダーシップを発揮し、職場風土改革のための意識改革、柔軟な働き方の実現等に取り組む。
・労使で仕事と生活の調和の実現に向けた目標を定めて、これに計画的に取り組み、点検する仕組みを作り、着実に実行する。
・労使で働き方を見直し、業務の進め方・内容の見直しや個人の能力向上等によって、時間当たり生産性の向上に努める。企業は、雇用管理制度や人事評価制度の改革に努める。働く者も、職場の一員として、自らの働き方を見直し、時間制約の中でメリハリのある働き方に努める。
・管理職は率先して職場風土改革に取り組み、働く者も職場の一員としてこれに努める。
・経営者、管理職、働く者は、自らの企業内のみならず、関連企業や取引先の仕事と生活の調和にも配慮する。
・働く者は、将来を見据えた自己啓発・能力開発に取り組み、企業はその取組を支援する。
・労使団体等は連携して、民間主導の仕事と生活の調和に向けた気運の醸成などを行う。
・労使は、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ、労働契約を締結し、又は変更すべきものとする。

(就労による経済的自立)

・就職困難者等を一定期間試行雇用するトライアル雇用などを活用しつつ、人物本位による正当な評価に基づく採用を行う。
・パート労働者等については正規雇用へ移行しうる制度づくり等を行う。
・就業形態に関わらず、公正な処遇や積極的な能力開発を行う。

(健康で豊かな生活のための時間の確保)

・時間外指導基準を含め、労働時間関連法令の遵守を徹底する。
・労使で長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進など、労働時間等の設定改善のための業務の見直しや要員確保に取り組む。
・社会全体の仕事と生活の調和に資するため、取引先への計画的な発注、納期設定に努める。

(多様な働き方の選択)

・育児・介護休業、短時間勤務、短時間正社員制度、テレワーク、在宅就業など個人の置かれた状況に応じた柔軟な働き方を支える制度の整備、それらを利用しやすい職場風土づくりを進める。
・女性や高齢者等が再就職や継続就業できる機会を提供する。
・就業形態に関わらず、公正な処遇や積極的な能力開発を行う。

(2)国民の取組

・国民一人ひとりが、個々人の多様性を理解し、互いに尊重し合う。
・自らの仕事と生活の調和の在り方について考え、周囲の理解を得ながらその実現を目指す。
・家庭や地域の中での自らの役割を認識し、積極的な役割を果たす。
・消費者の一人として、サービスを提供する労働者の働き方に配慮する。

(3)国の取組

(総論)

・全国や地域での国民の理解や政労使の合意形成を促進する。
・次世代育成に対する企業の取組促進のための対策の検討等を進め、生活の時間の確保や多様な働き方を可能とする雇用環境整備を目指した制度的枠組みを構築する。
・働き方に中立的な税・社会保障制度の在り方を検討する。
・経済全体の生産性の向上を図っていく観点から、中小企業等の生産性向上(地域資源活用促進プログラムによる新事業創出支援、ITを活用した財務会計の整備、下請適正取引等の推進や資金供給の円滑化等)など包括的な取組を引き続き着実に推進する。
・先進企業の好事例等の情報の収集・提供・助言、中小企業等が行う労働時間等設定改善の支援等、仕事と生活の調和の実現に取り組む企業を支援する。
・労働基準法、労働契約法、パートタイム労働法等関係法令の周知を図るとともに、法令遵守のための監督指導を強化する。
・顕彰制度や企業の取組の診断・点検を支援すること等により、積極的取組企業の社会的な評価を推進する。
・働く者等の自己啓発や能力開発の取組を支援する。

(就労による経済的自立)

・一人ひとりの勤労観、職業観を育てるキャリア教育を学齢期から行う。
・フリーターの常用雇用化を支援する。
・若者や母子家庭の母等、経済的自立が困難な者の就労を支援する。

(健康で豊かな生活のための時間の確保)

・労使による長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進など、労働時間等の設定改善の取組を支援する。
・家事サービス等についての情報提供に対する支援をする。

(多様な働き方の選択)

・育児・介護休業、短時間勤務、短時間正社員制度、テレワークといった多様な働き方を推進するとともに、パート労働者の均衡待遇の推進、働く意欲と能力のある女性や高齢者の再就職や就業継続の支援、促進等、その多様な働き方を推進するための条件を整備する。
・在宅就業の環境整備のための枠組みを検討する。
・男性の育児休業の取得促進方策の検討等を進め、男性の子育て参加の支援・促進を図る。
・多様な働き方に対応した保育サービスの充実等多様な子育て支援を推進する。
・地方公共団体等による育児・介護の社会的基盤づくりを支援する。
・多様な教育訓練システムの充実等、職業能力の形成支援に係る労働市場の社会的基盤を整備する。

(4)地方公共団体の取組

・地方の実情に即した、仕事と生活の調和の実現に向けた住民の理解や合意形成を促進する。NPO等の活動を通じて中小企業経営者等の取組の促進を図る。
・仕事と生活の調和を実現している企業を社会的に評価する。
・多様な働き方に対応した保育サービスの充実等多様な子育て支援を展開する。
・地域の実情に応じて、育児・介護等を行う家族を支える社会的基盤を形成する。

4 仕事と生活の調和の実現の進捗状況の点検・評価

数値目標の設定や「仕事と生活の調和」実現度指標の活用により、仕事と生活の調和した社会の実現に向けた全体としての進捗状況を把握・評価し、政策への反映を図る。また、憲章、本行動指針の点検・評価を行うため、学識経験者、労使の代表で構成される検討の場を設け、数値目標や「仕事と生活の調和」実現度指標についても必要に応じて見直すこととする。

5 数値目標(別紙1)

仕事と生活の調和した社会の実現に向けた企業、働く者、国民、国及び地方公共団体の取組を推進するための社会全体の目標として、政策によって一定の影響を及ぼすことができる項目について数値目標を設定する。この数値目標は、社会全体として達成することを目指す目標であり、個々の個人や企業に課されるものではない。10年後の目標値は、取組が進んだ場合に達成される水準([1]個人の希望が実現した場合を想定して推計した水準、又は、[2]施策の推進によって現状値や過去の傾向を押し上げた場合を想定して推計した水準等)を設定することを基本とし、また、その実現に向けての中間的な目標値として5年後の数値目標を設定する。

6 「仕事と生活の調和」実現度指標の在り方(別紙2)

「仕事と生活の調和」実現度指標とは、我が国の社会全体でみた[1]個人の暮らし全般に渡る仕事と生活の調和の実現状況(個人の実現度指標)と、[2]それを促進するための環境の整備状況(環境整備指標)を数量的に把握するものである。個人の実現度指標については、「I 仕事・働き方」、「II 家庭生活」、「III 地域・社会活動」、「IV 学習や趣味・娯楽等」、「V 健康・休養」の5分野ごとに中項目、小項目を設け、環境整備指標については分野を設けず1つの指標とする。「仕事と生活の調和」実現度指標では、本行動指針で数値目標とされた指標を含む別紙2の構成要素に掲げられた指標を合成して作成する。この「仕事と生活の調和」実現度指標は、目標として設定するものではなく、仕事と生活の調和の進展度合いを測るものである。なお、憲章で定める「就労による経済的自立が可能な社会」、「健康で豊かな生活のための時間が確保できる社会」、「多様な働き方・生き方が選択できる社会」の3つの社会の姿の実現状況も本指標により把握することができる。


別紙1

数値目標


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指標(現状値)の算定方法等

[3]フリーターの数

【総務省「労働力調査(詳細結果)」(平成18年平均)】15歳から34歳までで、男性は卒業者、女性は卒業で未婚の者のうち、[1]雇用者のうち「パート・アルバイト」の者、[2]完全失業者のうち探している仕事の形態が「パート・アルバイト」の者、[3]非労働力人口のうち希望する仕事の形態が「パート・アルバイト」で家事も通学も就業内定もしていない「その他」の者の合計

[4]労働時間等の課題について労使が話し合いの機会を設けている割合

【厚生労働省「平成19年労働時間等の設定の改善の促進を通じた仕事と生活の調和に関する意識調査」】企業規模30人以上の農林漁業を除く全業種から無作為に抽出した企業における、「労働時間等設定改善委員会をはじめとする労使間の話し合いの機会」を「設けている」と回答した企業の割合
注)労働時間等設定改善委員会での話し合い以外にも、例えば、プロジェクトチームの組織化、労働組合との 定期協議の実施、労使懇談会の開催等が含まれる。

[5]週労働時間60時間以上の雇用者の割合

【総務省「労働力調査」(平成18年)】非農林業雇用者(休業者を除く)総数に占める週間就業時間(年平均結果)が60時間以上の者の割合

[6]年次有給休暇取得率

【厚生労働省「就労条件総合調査」(平成19年)】企業規模30人以上の企業における、全取得日数/全付与日数(繰越日数を含まない)
注)10年後の目標値としての「完全取得」とは、労働者が自ら希望する留保分を考慮したものである。

[7]メンタルヘルスケアに取り組んでいる事業所割合

【厚生労働省「労働者健康状況調査」(平成14年)】10人以上規模事業所における「心の健康対策(メンタルヘルスケア)に取り組んでいる」と回答した事業所割合
注)「心の健康対策(メンタルヘルスケア)」の取組内容としては、「相談(カウンセリング)の実施」、「定期健康診断における問診」、「職場環境の改善」のほか、「労働者に対する教育研修、情報提供」、「労働者の日常的に接する管理監督者に対する教育研修、情報提供」、「事業所内の産業保健スタッフ、人事労務担当者に対する教育研修、情報提供」なども含まれる。

[8]テレワーカー比率

【国土交通省「テレワーク実態調査」(平成17年度)】就業者人口(総務省「就業構造基本調査」(平成14年)の有業者総数)に占めるテレワーカー(注)の割合
注)テレワーク実態調査におけるテレワーカーの定義
○以下のA.B.C.D.の4つの条件をすべて満たす人

A.ふだん収入を伴う仕事を行っている

B.仕事で電子メールなどのIT(ネットワーク)を使用している

C.ITを利用する仕事場所が複数ある、又は1ヶ所だけの場合は自分の所属する部署のある場所以外である

D.自分の所属する部署以外で仕事を行う時間が、1週間あたり8時間以上である

[9]短時間勤務を選択できる事業所の割合(短時間正社員制度等)

「短時間正社員」の定義:フルタイム正社員より一週間の所定労働時間が短い正社員をいい、[1]フルタイム正社員が育児・介護に加え、地域活動、自己啓発その他何らかの理由により短時間・短日勤務を一定期間行う場合と、[2]正社員の所定労働時間を恒常的に短くする場合の双方を含む。
「短時間勤務を選択できる事業所の割合」としては、短時間正社員制度を就業規則に明文化している場合に加え、そのような働き方が選択できる状態になっている場合も含まれるように調査を実施する予定。
(参考)

人事院「平成17年民間企業の勤務条件制度等調査の結果について」によれば、100人以上の企業における育児・介護以外の事由を認める短時間勤務制がある企業数割合は8.6%以下 → 自己啓発(1.9%)、地域活動(1.6%)、高齢者の退職準備(1.7%)、その他の事由(2.3%)(以上複数回答)、事由を問わず認める(1.1%)

[10]自己啓発を行っている労働者の割合

【厚生労働省「職業能力開発基本調査」(平成18年度)】従業員規模30人以上の企業から無作為に抽出した事業所の従業員における「自己啓発を行った」と回答した者の割合
注)職業能力開発基本調査における用語の定義

正社員:常用労働者のうち、一般に「正社員」、「正職員」などと呼ばれている人をいう。

非正社員:常用労働者のうち、一般に「正社員」、「正職員」などと呼ばれている人以外の人をいう(「嘱託」、「パートタイマー」、「アルバイト」又はそれに近い名称で呼ばれている人など)。

自己啓発:労働者が職業生活を継続するために行う、職業に関する能力を自発的に開発し、向上させるための活動(職業に関係ない趣味、娯楽、スポーツ、健康増進等のためのものは含まない)。

[11]第1子出産前後の女性の継続就業率

【国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」(平成17年)】2000年から2004年の間に第1子を出産した女性について、第1子妊娠前に就業していた者に占める第1子1歳時にも就業していた者の割合

[12]保育等の子育てサービスを提供している割合―保育サービス(3歳未満児)―

【厚生労働省「福祉行政報告例」(平成19年4月)、総務省「人口推計年報」(平成18年)】保育所利用児童数/3歳未満人口 

保育等の子育てサービスを提供している割合―放課後児童クラブ(小学1年~小学3年)―

【文部科学省「学校基本調査」(平成19年)、厚生労働省雇用均等・児童家庭局育成環境課調査(平成19年)】放課後児童クラブ登録児童数/小学校1~3年生の就学児童数
注)保育等の子育てサービスを提供している割合は、他の目標の進捗状況によって目標の達成が左右される。

[13]男女の育児休業取得率

【厚生労働省「女性雇用管理基本調査」(平成17年度)】5人以上規模事業所における2004年4月1日から2005年3月31日までの1年間の出産者又は配偶者が出産した者に占める育児休業取得者(2005年10月1日までに育児休業を開始した者)の割合

[14]6歳未満の子どもをもつ男性の育児・家事関連時間

【総務省「社会生活基本調査」(平成18年)】6歳未満の子どもをもつ男性の1日当たりの「家事」、「介護・看護」、「育児」、「買い物」の合計の時間


別紙2

「仕事と生活の調和」実現度指標について

「仕事と生活の調和」実現度指標は、我が国の社会全体でみた[1]個人の暮らし全般に渡る仕事と生活の調和の実現状況と、[2]それを促進するための環境の整備状況を数量的に把握し、その進展度合いを測定するものである。

I.個人の実現度指標

「個人の実現度指標」は、5分野毎に指標を測定する。各5分野別の指標は更に、中項目、小項目指標に分かれる。小項目指標を行動指針における「仕事と生活の調和が実現した社会の姿」で整理することにより、その状況を把握することが可能となる。なお、各指標は、本行動指針で定める数値目標のほか、仕事と生活の調和に関連する統計(構成要素)を合成することにより作成する。

仕事と生活の調和が実現した社会の姿

II.環境整備指標

環境整備指標については、分野を設けず一つの指標として測定する。なお、同指標は、本行動指針で定める数値目標のほか、仕事と生活の調和に関連する統計(構成要素)を合成することにより作成する。

仕事と生活の調和が実現した社会の姿


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