3 結婚、出産、子育てをめぐる最近の状況
「子ども・子育てビジョン」の背景にある結婚、出産、子育てをめぐる最近の情勢についてみることとする。
(若年者の非正規雇用の増加)
若年者の雇用をめぐる環境をみると、完全失業率及び非正規雇用割合ともに、全年齢計を上回る水準で推移している。また、非正規雇用者の有配偶率は低く、30~34歳の男性においては、非正規雇用の者の有配偶率は正規雇用の者の半分程度となっているなど、就労形態の違いにより家庭を持てる割合が大きく異なっていることが伺える。
(若い世代の所得の伸び悩み)
20代、30代といった子育て世代の所得分布をみると、20代では、1997(平成9)年には年収が300万円台の雇用者の割合が最も多かったが、2007(平成19)年には200万円台前半の雇用者が最も多くなっている。また、30代では、1997年には年収が500~699万円の雇用者の割合が最も多かったが、2007年には300万円台の雇用者が最も多くなっている。このように子育て世代の所得分布は、この10年間で下方にシフトしていることがわかる。
(依然として厳しい女性の就労継続)
女性の就労をめぐる環境をみると、出産前に仕事をしていた女性の約6割が出産を機に退職している。また、女性の育児休業利用者の割合は堅調に増加傾向にあるものの(2008(平成20)年は90.6%)、育休を取らずに就業を継続している女性の割合も考慮すると、出産前後で就労継続をしている女性の割合は、この20年間ほとんど変化しておらず、出産に伴う女性の就労継続は依然として厳しいことがうかがえる。
(子育て世代の男性の長時間労働)
子育て期にある30代男性の働き方をみると、約4人に1人は週60時間以上の就業となっている。また、60時間以上就業している者の割合も過去10年間で増加するなど、労働時間の長時間化の傾向がみられる。加えて、育児時間を国際比較してみると、6歳未満の子どもを持つ男性の育児時間は、1日平均約30分程度しかなく、欧米諸国と比較して半分程度となっている。家事の時間を加えても、我が国の子育て期の男性の家事・育児にかける時間は1日平均1時間程度となっており、欧米諸国と比べて3分の1程度となるなど、男性の育児参加が進んでいないことがわかる。
(いわゆる「子どもの貧困」)
若い世代の所得が低下傾向にあるなか、近年、いわゆる「子どもの貧困」問題が懸念されている。2009(平成21)年11月に厚生労働省から発表された相対的貧困率についてみると、子どもがいる現役世帯の世帯員の相対的貧困率は、2007年の調査で12.2%、そのうち、ひとり親世帯については54.3%となっている。また、OECD加盟国で比較した相対的貧困率についてみると、我が国はOECD諸国の中でも高い水準であり、その改善が課題となっている。
相対的貧困率とは?
「相対的貧困率」とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)の貧困線(中央値の半分)に満たない世帯員の割合である。可処分所得とは、所得から所得税、住民税、社会保険料及び固定資産税を差し引いたものをいう。また、保育サービスのような社会保障給付による現物給付が含まれていないことを注意する必要がある。
(共働き世帯の増加)
1990年代半ばより共働き世帯数が専業主婦(夫)世帯を上回り、近年更に増加傾向にある。これとともに、保育所待機児童の問題が深刻化する一方、幼稚園の充足率は低下し、就学前児童の受け皿が時代に合わなくなってきているとの指摘がある。
このような流れを受け、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ認定こども園の整備が、2006(平成18)年の制度発足以来進められてきた。認定こども園に対する評価は高く、保護者の9割近くが制度を推進していくべきと考えている(2010(平成22)年4月現在の認定件数は532)。その一方で、「財政支援が不十分」、「会計処理や申請手続きが煩雑」、「省庁間や自治体間の連携が不十分」等の指摘がある。このため、「認定こども園制度のあり方に関する検討会報告書」(2009年3月)を踏まえ、財政支援の充実のために、「安心こども基金」等により「幼稚園型の保育所機能部分」、「保育所型の幼稚園機能部分」、「地方裁量型」への新たな財政措置が実現したところであり、また二重行政の解消のために、会計処理の簡素化を行い、補助金等の窓口・申請・執行手続きの一本化を促進するとともに、窓口の一本化、書類の重複の整理、監査事務の簡素化など、手続きの一本化・簡素化に取り組んでいるところである。
(お産の場の減少)
産婦人科及び産科医療施設の推移をみると、この10年間減少傾向にあり、身近なお産の場が減少していることがうかがえる。