1 地域における子育て支援の拠点等の整備及び機能の充実を図る

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1)乳児の全戸訪問等(こんにちは赤ちゃん事業等)

乳児家庭の孤立化防止や養育上の諸問題への支援を図るため、すべての乳児がいる家庭を訪問し、子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握、相談助言等を行う「乳児家庭全戸訪問事業(旧生後4か月までの全戸訪問事業)」(2009(平成21)年7月現在、1,512市区町村で実施)や、養育支援が必要な家庭に対して、訪問による養育に関する相談、指導・助言等の支援を行う「養育支援訪問事業(旧育児支援家庭訪問事業)」(2009年7月現在、996市区町村で実施)を推進するなどにより、子育て家庭に対する切れ目のない支援を行っている。

また、養育支援訪問事業において、出産後の養育について出産前に支援を行うことが特に必要と認められる妊婦に対する支援を対象としているほか、安心こども基金における地域子育て創生事業により、妊娠出産前の支援の推進を図っている。

2)地域子育て支援拠点の設置促進

身近な場所に子育て親子が気軽に集まって相談や交流ができるよう、2007(平成19)年度より「地域子育て支援拠点事業」を開始し、<1>子育て親子の交流の場の提供と交流の促進、<2>子育て等に関する相談・援助の実施、<3>地域の子育て関連情報の提供、<4>子育て及び子育て支援に関する講習を基本事業として推進している。具体的には、公共施設の空きスペースや商店街の空き店舗等において実施する『ひろば型』、保育所等において実施する『センター型』、民営児童館において実施する『児童館型』の3つの類型により事業展開を図っており、それぞれ特色を生かした取り組みを行っている。

特に『ひろば型』においては、2009(平成21)年度より機能の拡充を図っており、一時預かりや放課後児童クラブなど多様な子育て支援活動を基本事業と一体的に実施することで、『ひろば型』の施設を中心とした関係機関とのネットワーク化を図り、子育て家庭によりきめ細かな支援を行うこととしている。

このような地域における子育て支援の拠点については、量的な拡充とともに、当事者自身が共に支え合い、学び合う地域子育て支援活動の原点に根ざした活動を広げていくことが重要な課題である。

このような認識から、「NPO法人子育て広場全国連絡協議会」が組織され、子育て支援者の資質向上に向け、各種セミナーや研修会の開催などを行っている。

3)ファミリー・サポート・センターの普及促進

乳幼児や小学生の児童を有する子育て中の労働者や主婦などを会員として、送迎や放課後の預かりなどの相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置促進を行っている。2009(平成21)年度は599か所で実施されている。

(2007(平成19)年度末現在の会員数:援助を受けたい会員256,787人、援助を行いたい会員88,107人、両方会員33,945人、活動実績1,540,010件)

また、病児・病後児の預かり、早朝・夜間等の緊急時の預かり、宿泊を伴う預かり等については、従来、国の「緊急サポートネットワーク事業」として実施してきたが、2009年度より、「ファミリー・サポート・センター事業」の中に「病児・緊急対応強化モデル事業」を新設し、市町村の事業として実施している。

なお、これまでの緊急サポートネットワーク事業からの円滑な移行のため、2010(平成22)年度までの2年間の時限措置として、「病児・緊急預かり対応基盤整備事業」を実施している。

4)一時預かり、幼稚園の預かり保育

(1)一時預かり事業の推進

就労形態の多様化に対応する一時的な保育や、専業主婦家庭等の緊急時における保育等の一時預かりサービスに対する需要に対応するため、一時預かり事業を実施している(2009(平成21)年度予算実施箇所数:7,736か所)。

(2)幼稚園における預かり保育

幼稚園の通常の教育時間(標準4時間)の前後や長期休業期間中などに、地域の実態や保護者の要請に応じて、希望する者を対象に行われる「預かり保育」を実施する幼稚園に対して支援を行っている。近年の女性の社会進出の拡大、都市化、核家族化などを背景として、多様化する保護者のニーズに伴い、「預かり保育」への要望が増加していることを受け、2008(平成20)年3月には幼稚園教育要領を改訂し、教育活動として適切な活動となるようその充実を図った。

2008年6月現在、「預かり保育」を実施している幼稚園の割合は、約73%になっている。

5)商店街の空き店舗や小中学校の余裕教室や幼稚園等の活用

(1)商店街の空き店舗の活用

かつて地域経済の中心であった商店街は、近年、事業環境の変化により停滞傾向にあり、空き店舗の増加等が顕著になっている。商店街の活性化は、地域経済の活性化、地域コミュニティの形成にとって重要な要素であり、空き店舗の解消・活用は、商店街における大きな課題となっている。

このため、商店街の空き店舗を活用して、地域社会において子育て支援や親子交流拠点等の機能を担うコミュニティ施設を設置することにより、空き店舗の解消と少子高齢化社会への対応を図り、商店街に賑わいを創出することでその活性化を図るための施策を講じており、2009(平成21)年度には全国の11か所で商店街の空き店舗の活用による子育て支援施設の設置・運営等の取組に対し支援している。

具体的には、商店街振興組合、商工会、商工会議所、社会福祉法人、特定非営利活動法人等が、商店街の活性化を図るために商店街の空き店舗を活用して子育て支援施設や親子交流施設等を設置・運営する場合に、改装費や賃借料等の経費の一部を補助している。

(2)小中学校の余裕教室や幼稚園の活用

近年、少子化に伴う幼児児童生徒数の減少等により、学校施設において、クラスルーム等の普通教室としての利用以外にも様々な用途に活用できるゆとりが生じている。学校施設は、地域住民にとっては身近な公共施設でもあることから、学校教育に支障がない範囲内で、地域の実情や需要に応じて積極的に活用していくことが望ましいと考えられる。

このため、幼稚園や小中学校の余裕教室等を地域における子育て支援や親子交流等の機能を担う場として活用することは有効な選択肢の一つと考えられる。

具体的な取組としては、国庫補助を受けた公立学校施設を転用する際の財産処分手続の大幅な弾力化や、活用事例を紹介したパンフレット作成等により、余裕教室の有効活用を促している。

6)子育て総合支援コーディネーター

現在、各市町村において様々な子育て支援サービスが展開されているが、利用者にとっては、どこに相談したらよいのか、具体的なサービス内容がどのようなものかなど、情報を把握する手段が多岐にわたり的確な情報を得られにくい状況にある。

こうしたことから、一時預かりや地域子育て支援拠点事業等の地域における多様な子育て支援サービス情報を一元的に把握し、利用者への情報提供等を行う子育て支援に関するコーディネート業務については、児童福祉法において、市町村の責務として位置づけられている。

これにより、個々の子育て家庭がその状況に応じた適切なサービスを選択し、利用することを促進するとともに、市町村管内の子育て支援事業の実施状況が十分かどうかが地域住民に開示されることにより、市町村におけるサービス供給体制の整備が推進されることが期待されている。

こうした取組をさらに推進するため、2009(平成21)年には、親の子育てを支援するコーディネーター等を養成するための次世代育成支援人材養成事業を創設した(事業の詳細は「NPO活動等の地域子育て活動の支援」の項を参照)。


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