2 地域住民の力の活用、民間団体の支援、世代間交流を促進する

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1)NPO活動等の地域子育て活動の支援

子育てやしつけに関する悩みや不安を解消するためには、子どもを持つ親と地域の子育て経験者が交流する機会を設けるなど、子育て支援のネットワークづくりが重要である。

このため、友人のような関係で子育て相談に応じる存在としてこれまで全国的に配置されてきた「子育てサポーター」の資質向上を図る「子育てサポーターリーダー」の養成を行い、子育てに関する相談体制の充実を図っている。

また、2009(平成21)年には、親の子育てを支援するコーディネーターや地域の子育て支援事業に参画する者を養成するため、次世代育成支援人材養成事業を創設した。具体的には、地域の様々な次世代育成支援の取組を把握し、親の子育てを支援するコーディネーター的役割を果たす者や、地域の子育て支援事業の担い手となる者に必要な理解や知識などを得るための研修を実施しており、事業初年度である2009年には全国57か所で実施されたところである。

さらに、2009年度の補正予算により創設された、安心こども基金(地域子育て創生事業)において子育て支援を担うNPO等の立ち上げ支援や母親クラブ・育児サークルの活動支援に取り組んでおり、地域子育て支援活動の充実を図っている。

2)地域の退職者や高齢者等の人材活用・世代間交流

高齢者の就労機会・社会参加の場を提供するシルバー人材センターにおいて、乳幼児の世話や保育施設との送迎などの育児支援、就学児童に対する放課後・土日における学習・生活指導等の支援を行う高齢者活用子育て支援事業を実施しており、経験豊かな高齢者が地域における子育ての担い手として活躍されている。

また、母親クラブや子育てサークルなど、地域住民の自主的な参加により活動している地域組織においては、登下校時の子どもの見守り活動や公園の遊具の安全点検、親子やお年寄りとの交流機会の提供、子どもとともに食の大切さを学ぶ文化活動などを行い、子どもを地域全体で支え、見守り、育てる活動を積極的に展開している。

3)企業参加型の子育て支援

少子化が進行する中、社会全体で子育て家庭を応援すべく、子どもを生み育てやすい環境作りを地域が一体となって進めていく必要がある。現在、地方公共団体においては、企業の協賛を得ながら「企業参画型の子育て支援事業」として、子育て家庭に対する各種割引等のサービスを提供するパスポート事業等の取組を推進している。

4)官民連携子育て人材育成

企業や地域における子育て支援の一層の推進を図り、働き方の見直しや仕事と家庭・子育ての両立を促進するため、企業経営者、勤労者等を含む社会全体の意識改革を図る官民一体となった国民的運動を推進している。

社会全体で子育てを支える自治体・企業で実施する子育て支援事業
~「企業参画型の子育て支援事業」に関する取組状況等調査の結果~

●「企業参画型の子育て支援事業」について

社会全体で子育てを支える事業の一つに、自治体が企業の協賛を得ながら子育て家庭にサービスを提供する「企業参画型の子育て支援事業」の実施がある。具体的には、自治体が発行する優待カードで各種割引サービスなどを受けることができるもので、現在52 道府県市で実施されている。

内閣府では、この事業の取組状況の実態や推進に当たっての課題等を整理し、今後の取組の一層の推進に役立てるべく、下記のような3つの調査を実施した。

<1>地方自治体における取組状況等の調査:自治体を対象として、郵送調査を実施。129自治体から回答(2009年10月21日~11月9日)。

<2>企業に対するアンケート調査: 子育て支援事業を行っていると思われる企業(1,000社)を対象として、郵送調査を実施。292社から回答(2009年10月21日~11月9日)。

<3>国民に対するインターネット調査: 18歳未満の子どものいる男女を対象に、登録モニターへのアンケート調査を実施。10,000人から回答(2009年10月23日~11月6日)。

詳細は 「企業参画型の子育て支援事業」に関する取組状況等調査

●子育て支援の内容は多様

子育て家庭が利用したいと思う優待サービスの中では、料金割引が多いが、「金銭」「物品」に係るサービスだけでなく、「場所」「時間・機会」「人・情報」に係るサービスの利用希望も多いことがわかる。

協賛企業の業種は飲食店、サービス業など様々でその幅も広がってきている。それに伴い、サービス内容も子育て支援の観点から工夫されている。

利用者が「利用したい」と思う優待サービス

(複数回答)

・【金銭】料金割引(買取割増)・・・・・87.1%

・【金銭】ポイントサービス・・・・・54.9%

・【物品】プレゼント(粗品の提供)・・・・・46.6%

・【物品】おまけや大盛り等のサービス・・・・・41.9%

・【時間・機会】予約の優遇・・・・・34.4%

・【金銭】金利の優遇・・・・・30.2%

・【場所】駐車スペースの優遇・・・・・24.0%

・【場所】休憩所・遊び場の提供・・・・・22.5%

・【時間・機会】レジ待ちの優遇・・・・・21.5%

・【人・情報】子守りサービス・・・・・19.5%

・【場所】座席などの優遇・・・・・19.0%

● 利用者の事業への期待は大きく、協賛企業も今後も積極的に取り組みたいとの意向

取組の効果としては、「子育て家庭への経済的負担の軽減」が最も多く、次いで、「子育て支援をしている企業のPR効果/イメージアップ」、「子育てをしている親の精神的負担(孤立感)の軽減」と続く。特に、子育て家庭の経済的負担だけではなく、精神的負担の軽減にもつながっているのは注目に値するといえる。

利用者は、協賛企業やサービス内容の拡大を期待しており、協賛企業の今後の事業展開の意向は、「今まで通り継続していきたい」と現状維持を考えている企業が7割程度を占める。次いで、「協賛する自治体を広げ、協賛店舗を拡大していきたい」、「優待サービスの内容を充実させていきたい」となっており、この取組について、現状維持を考えている企業と、拡大又はサービス内容の充実を図り積極的に取り組みたいとする企業を合わせると9割程度(91.7%)を占めている。

● 事業継続には課題もある

一方で、企業側の意見を見ると取組への課題も示されている。

協賛するに当たっては、「フランチャイズチェーンのため、統一したサービス提供が困難」(注)、「対象者と一般顧客とのサービス内容に差が出る」などが懸念されている。また、取組の継続のためには、「自治体による積極的なPRが必要」であることや「自治体ごとにサービス内容が異なる」ことなどが課題として挙げられている。

社会全体で子育てを支援すべく、今後の事業の普及と拡大には行政と企業がさらに一体となって議論をし、共に取り組むことが必要である。

(注)フランチャイズは、多くの場合看板を貸した個人経営であるため、そのデメリットとして直営店に比べ質の維持が難しく、戦略転換に時間がかかるといわれている。本件では割引サービスを提供する際の内容やノウハウを徹底することが、直営店に比べて難しいという回答が出てきたものと推察できる。

子育て支援に自治体、企業担当者等が参加して全国大会を実施
~「平成21年度 企業参加の子育て支援事業全国会議」の開催報告の概要~

現在、地方自治体においては、企業の協賛を得ながら「企業参画型の子育て支援事業」として、具体的には、子育て家庭に対する各種割引等のサービスを提供するパスポート事業等の取組を推進している。当事業の課題などを明らかにしながら、今後の取組の一層の推進を図るべく、「企業参加の子育て支援事業全国会議」(2010(平成22)年2月5日)を開催した。地方自治体や当事業に関心のある企業やNPOが参加したこの会議では、自治体と企業からの取組報告とパネルディスカッションが行われた。取組報告の概要は下記の通り。

「企業参加の子育て支援事業全国会議」の写真

ホームページでの紹介は 自治体・企業・NPOによる「子育て支援連携事業」

自治体の取組として、先進的に当事業に取り組んでいる「埼玉県」と「石川県」の事例。

・パパ・ママ応援ショップ制度は、店舗等の協力を得て子育て家庭を優待するもので、9,919店舗(2009(平成21)年12月末)が協賛している。全国でも数が最も多い。

・カード配布の対象は、中学校修了までの子どもを持つ家庭(約63万世帯)及び出産予定家庭。

【埼玉県】「パパ・ママ応援ショップ制度」

埼玉県のマスコット コバトン

・地域、企業、行政が一体となって子育て家庭を応援しようという気運を醸成し、子育て家庭が「地域に支えられている」、「子どもを持って良かった」と実感できる社会の形成を目指している。

・「制度をPRするイベントの開催」、「パパ・ママ応援ショップ賞(2008(平成20)年度)」の開催などで、県民の利用促進の工夫をしている。広報が非常に重要だと認識

・パパ・ママ応援ショップ制度の今後の課題としては、さらなる協賛店の拡大、他県との連携、知的財産権の保護。

・プレミアム・パスポート事業は2006(平成18)年1月1日から石川県においてスタート。事業目的としては多子所帯の経済的負担の軽減もあるが、企業に子育て支援に積極的に参画してもらうきっかけづくり。

【石川県】「プレミアム・パスポート事業」

プレミアム・パスポート事業 石川県

・カードを配布するのは、将来の人口増加にもつながる18歳未満の子どもが3人以上いる所帯。パスポート利用数は1万5,202所帯。

・現在、協賛店舗は1,916店舗、企業に協賛金を1店舗あたり5,000円の負担をしてもらっている。

・財団の職員、県の職員が本当に1店舗1店舗、1社1社お願いをしながらご協力いただいた。粘り強い地道な作戦で、少しずつ店舗が増えてきた。

企業の取組として、パスポート事業を複数の自治体と連携して取り組んでいるファーストフードチェーンの「A社」、石川県内で積極的にパスポート事業に取り組んでいるスーパーマーケットチェーンの「B社」の事例。

【A社】「A社の子育て支援活動『パパ・ママ応援ショップ』」

・パスポート事業と呼ばれるパパ・ママ応援ショップの導入のきっかけは、埼玉県子育て支援課より紹介いただいたこと。2007(平成19)年11月1日より実施。セットの割引で、埼玉県内では全店舗(236店:2009年12月末)で対応している。

・全国1,200店舗で実施しているが、1つの部署だけでこれらの店舗をコントロールするのは非常に難しく、社内連携が必要となる。担当部署だけの仕事にはせず、会社全体で取り組む組織を構築。本社機能は連携して直営/FC本部(店舗)をサポートしている。

・当事業は上場企業のCSR的な責任として、社会貢献の一貫として活動しているもの。利益や売上を上げようとは考えていない。

・ 社会貢献活動は、今後もより多くの自治体と連携をし、拡大をしていきたい。子育ての支援に今以上に社会的責任を果たす企業でありたい。

【B社】「企業参加の子育て支援事業 B社の取組」

・石川県で事業を展開し、県内に18店舗あり。宅配事業部も隣接。社長は石川県の「子育てにやさしい企業推進協議会」の会長。

・当事業は2006年1月より開始。参加目的としては、子育てへの不安・負担を軽減して「企業の社会貢献を果たす」、雇用を創出して主婦の社会進出の場を提供し、「収入の面でも支援できる環境を造る」というもの。

・内容は、買い物ポイントでの還元。対象外のお客様に不公平感を抱かせず、対象のお客様に対し家計負担を軽減すべく導入。利用率は年々高まり、集客効果はあった。

・石川県は過疎化、県民人口の減少という2つの問題がある。B社は石川県でしか事業しておらず、県内で人口増加(少しでも減らない)のお手伝いをしたいと考えた。

・石川県が子育てにやさしい県だと、転勤者がそのまま石川県にいていただく、また石川県に生まれて、離れても石川県に戻る気持ちになる、というように協力していきたい。

 企業の取組として、自治体や企業と連携しながら次世代育成の活動をサポートしている広告代理店の「C社」から子育て市場についての紹介、「子育て家電」の事業に取り組んでいる電機メーカーの「D社」からその宣伝キャンペーンの紹介。

【C社】「ジセダイ市場動向について~拡大する子ども市場~」

・次世代育成はあらゆる社会テーマを考える基盤となる共通の重要な視点・目標だと考え、あえて次世代をカタカナで「ジセダイ」としている。

・ジセダイの市場動向として、様々な変化がある。高齢出産の増加や子育て積極参加パパが珍しくない「親の変化」、晩婚・少子化の影響で、8ポケッツから∞ポケッツと、血縁者だけでなく周辺の人も関わるような「周囲の大人の変化」、新しい視点の子育て商品・情報が誕生した「モノ・情報の変化」、インターネットを使う子ども増の「子どもの変化」などがある。

・少子化でも、子どもにかける費用は増加傾向で、従来の“子ども市場(12兆円)”を超える市場拡大と、質の変化がある。

・企業活動も変化してきている。CM表現が多様化し、ターゲットも従来の母親だけでなく、父・祖父母など、子どもを核にして拡大している。

・民間企業ではこのチャンスを逃さずに自社のビジネスにつなげる、自治体ではこの企業ニーズを逃すことなく連携の幅を広げることを期待する。

【D社】「子育て家電について」

・家電製品の販売促進としての「子育て家電キャンペーン」は、2006年に食器洗い乾燥機の拡販を行うためにスタートした。

・2007年ごろから、シングルマザーの増加や子どもを生むのが不安といった、社会や意識の変化が見られた。この背景から子育て家電のターゲットを、現役の母親だけでなくこれから親になる層にまで広げた。

・2007年以降は、子育て目線の機能を搭載した家電商品を使うことで、「子育て家族の親子のつながり」を大切に表現した広告展開を、これから母親になる人には、子育て家電が子育ての負担を軽減でき、生みたい気持ちを応援するような広告展開を行った。

・WEBでも様々な人の様々な子育ての声を紹介し、現役の母親からこれから母親になる人に向けてのコンテンツを充実させている。

・当社の商品企画や開発部門では、育児をしながら仕事をしている女性が、子育てに役立つアイディアを新機能に搭載するなど活躍している。

D社の写真

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