2 安全に安心して暮らせるよう、子育てバリアフリーなどを推進する

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1)子育てバリアフリーの推進

(1)ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進

「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に基づき制定された、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号、以下「バリアフリー新法」という。)においては、従前の内容に加え、<1>身体障害者のみならず、知的・精神・発達障害者を含むすべての障害者を含むことを明らかにするため、対象者を「高齢者、障害者等」とし、<2>移動等円滑化基準適合義務及び既設の施設における移動等円滑化基準適合努力義務を課す対象施設に、路外駐車場、都市公園等を追加、<3>市町村が作成する基本構想における策定対象エリア(重点整備地区)を拡大するとともに、同地区内の特定事業の範囲として路外駐車場、都市公園、建築物を追加、<4>移動等円滑化経路を整備・管理する場合の協定制度(移動等円滑化経路協定制度)を創設、<5>基本構想の策定に係る協議会制度及び住民等による作成提案制度の創設等の内容の拡充が図られている。

また、バリアフリー新法に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(平成18年国家公安委員会、総務省、国土交通省告示第1号、以下「基本方針」という。)が新法と同時に施行された。基本方針においては、2010(平成22)年までの移動等円滑化の目標値を定めるほか、当事者ニーズに即した施設の整備や教育訓練を行うことの必要性、市町村の定める基本構想における協議会の活用等当事者参画を図ることの必要性、心のバリアフリー及びスパイラルアップといった国、国民等の責務に関する事項等を定めている。

(2)建築物におけるバリアフリー化の推進

不特定多数の者等が利用する建築物について、一定規模以上の新築・増改築・用途変更をしようとする際に建築主に基準への適合義務を課すことにより、建築物のバリアフリー化を推進している。なお、誘導的な建築計画については所管行政庁が認定をすることができ、これにより認定を受けた一定の建築物について、補助制度、税制上の特例等の支援措置を講じることにより、整備の促進を図っている。2008(平成20)年度までに4,000件を超える建築物について認定がなされている。

また、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」により、妊産婦や児童・乳幼児等に配慮した建築空間、設備等によるバリアフリー対応を促進している。これにより、乳幼児連れの人が利用する施設に対する、乳幼児用いす、乳幼児等用ベッド、授乳のためのスペース、多機能トイレの設置等の他に、建物入口に近い位置に妊産婦や乳幼児連れの人等が利用できる駐車スペースの確保や屋内通路等への手すりの設置、劇場等の客席・観覧席における乳幼児連れの人に対応した区画された観覧室の設置等が図られている。

(3)公共交通機関のバリアフリー化の推進

バリアフリー新法に基づき、旅客施設の新設・大規模な改良及び車両等の新規導入の際に公共交通事業者等が適合させるべき基準を定めた「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令」(平成18年国土交通省令第111号)が新法と同時に施行された。また、公共交通機関の旅客施設・車両等の望ましい整備内容等を示す「バリアフリー整備ガイドライン(旅客施設編・車両等編)」を策定し、2007(平成19)年7月に公表した。

以上に加え、補助・税制・融資等の各種支援により公共交通機関のバリアフリー化の促進が図られているところであり、例えば、旅客施設における段差の解消、多機能トイレ(おむつ交換シート等)の設置、乗合バス車両におけるノンステップバス及び路面電車における低床式車両(LRV)の導入等が進められている。

(4)都市公園、自然公園及び河川空間等のバリアフリー化の推進

バリアフリー新法に基づき、「移動等円滑化のために必要な特定公園施設の設置に関する基準を定める省令(平成18年国土交通省令第115号)」が新法と同時に施行され、より一層のバリアフリー化の促進が図られることとなった。また、公園管理者が行う園路や便所、休憩所等の公園施設のバリアフリー化に対する支援を充実させるため、2009(平成21)年度に「都市公園安全・安心対策緊急総合支援事業」を創設し、妊婦、子ども及び子ども連れの人をはじめとした、すべての人々の健康運動や遊びの場、休息、交流の場等となる都市公園の整備を推進している。

また、河川の近隣に病院や福祉施設などが立地している地区等において、水辺にアプローチしやすいよう、管理用通路、緩傾斜堤の整備等バリアフリー化対策を実施することにより、高齢者、障害者、子ども等を含むすべての人々が安心して河川を訪れ、憩い親しめる河川空間の整備を行っている。さらに、妊婦、子ども及び子ども連れの人が日常生活の中で海辺に近づき、身近に自然とふれあえるようにするため、海岸保全施設のバリアフリー化を推進している。

都市公園におけるバリアフリー化された休憩所の例

2)道路交通環境の整備

妊婦、子ども及び子ども連れの人などが安全にかつ安心して通行することができるよう、生活道路等において、都道府県公安委員会による信号機等の整備、道路管理者による歩道、ハンプ(車両の低速走行等を促すための道路に設ける盛り上がり(凸部)のこと。)、シケイン(車両通行領域の線形をジグザグまたは蛇行させて低速走行を促すもの。)の整備、交差点のコンパクト化等を重点的に実施し、歩行空間の整備及び通過交通の進入や速度の抑制に努めている。

あわせて、バリアフリー新法に基づき、都道府県公安委員会では、音響信号機、歩行者感応信号機等のバリアフリー対応型信号機の整備を推進するとともに、道路管理者では、幅の広い歩道の整備や、歩道の段差・勾配の改善、昇降装置の付いた立体横断施設の設置等に取り組み、歩行空間のバリアフリー化に努めている。

3)交通安全教育等の推進

家庭及び関係機関・団体等との連携・協力を図りながら、幼児や小・中・高校生に対し、子どもの発達段階に応じた交通安全教育を推進している。

また、チャイルドシートの正しい使用の徹底や、幼児二人同乗用自転車の安全利用の普及などを図っているところである。

4)子ども目線のものづくりの推進(キッズデザインの推進)

子どもの安全・安心と健やかな成長発達につながる生活環境の創出を目指したデザインである「キッズデザイン」の開発・普及を推進している。2007(平成19)年度に、キッズデザインに優れた製品や取組等を表彰する「キッズデザイン賞」を創設し、特定非営利活動法人キッズデザイン協議会において運営がなされている。キッズデザイン賞の受賞作品には「キッズデザインマーク」の使用が認められる。第3回目にあたる2009(平成21)年においては、企業、自治体、研究機関などから合わせて302点の応募があり、そのうち182点が受賞した。

また、子どもを安心して生み育てられる生活環境を整備するため、子どもの事故情報の収集・分析・共有等を行い、子どもの事故予防を図る「安全知識循環型社会構築事業」を実施している。子どもの不慮の事故を無くすことを目指し、病院や保護者等から子どもの事故情報を収集してデータベース化を行うとともに、専門家・研究所・企業による分析を行い、事故防止策等の情報を保護者など社会全体へ発信していくことにより、事故防止に向け参加型の安全知識の循環を推進している。この事業で得られた成果を事故情報の発信・共有用ホームページ「キッズデザインの輪」において公開している。

第2-3-2図 キッズデザインマーク

「キッズデザイン賞」の内閣府特命担当大臣(少子化対策)賞の創設について

「子ども・子育てビジョン」において、子どもと子育てを国、地方、企業、地域、NPO、家庭、個人など社会全体で応援することが必要とされており、子ども目線でのものづくりの推進(キッズデザインの推進)が掲げられている。

キッズデザイン賞は、<1>子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン、<2>子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン、<3>子どもたちを生み育てやすいデザインを顕彰するために「特定非営利活動法人キッズデザイン協議会」が2007(平成19)年度から実施しており、第4回目に当たる2010(平成22)年度からは、経済産業大臣賞に加え、内閣府特命担当大臣(少子化対策)賞が交付されることとなった。

キッズデザイン賞は3つの基本理念から構成されており、<1>子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン(「キッズセーフティ賞」、「ユニバーサルセーフティ賞」)、<2>子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン(「フューチャーアクション賞」、「フューチャープロダクツ賞」)については経済産業大臣賞、<3>子どもたちを生み育てやすいデザイン(「ソーシャルキッズサポート賞」、「ソーシャルキッズプロダクツ賞」)については内閣府特命担当大臣(少子化対策)賞が授与される予定である。

キッズデザイン賞構成の図


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