1 長時間労働の抑制、テレワークの活用等、働き方の見直しに向けた環境整備を図る

[目次]  [戻る]  [次へ]


1)「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」・「仕事と生活の調和推進のための行動指針」に基づく取組の推進

2007(平成19)年12月に政労使の合意により策定された、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(以下「憲章」という。)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(以下「行動指針」という。)に基づき、官民が一体となって仕事と生活の調和実現のための取組を進めている。

「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」の下に設置された「仕事と生活の調和連携推進・評価部会」では、関係者間の連携を図るとともに、仕事と生活の調和の推進に向けた取組状況の点検・評価を行っている。また、経済状況の悪化の中で、仕事と生活の調和に向けた取組が停滞することを懸念する声が聞かれることから、「緊急宣言―今こそ仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進を―」を仕事と生活の調和関係省庁連携推進会議と合同で取りまとめるなど、政労使による仕事と生活の調和の推進に向けた取組を行っている。2009(平成21)年8月には、取組の更なる展開を図るとともに国民一人ひとりに仕事と生活の調和に対する理解を深めるため、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2009」をとりまとめた。

内閣府では、仕事と生活の調和に向けた社会的気運を醸成するため、2008(平成20)年6月から、「カエル!ジャパン(Change!JPN)」をキーワードに、国民参加型のキャンペーンを展開している(2009年5月現在の登録件数は、企業、団体186件、地方公共団体96件、個人633件)。 また、各職場における取組を後押しするため、2009年10月から、メールマガジン「『カエル!ジャパン』通信」の配信を開始し、企業が取組を進める上で必要となるノウハウや好事例についての情報を提供している(2010(平成22)年2月末現在の配信登録件数は2,365件)。この他、地方公共団体の取組状況を取りまとめるとともに、ワーク・ライフ・バランスに関する文献・論文、統計・調査のリスト及びダイジェストのアーカイブ化を進め、これらの情報を内閣府の仕事と生活の調和ポータルサイト等で提供することにより、仕事と生活の調和に関する情報の集積を図っている。

2)長時間労働の抑制及び年次有給休暇の取得促進

労働時間対策としては、単に労働時間の短縮を図るだけではなく、労働時間等の設定を労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへと改善を図ることが重要である。近年、いわゆる「労働時間分布の長短二極化」の進展、年次有給休暇の取得率の低水準での推移、長い労働時間等の業務に起因する脳・心臓疾患に係る労災認定件数の高水準での推移、育児・介護や自己啓発などの労働者の抱える事情の多様化などの課題が発生している。これらを踏まえ、「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」に基づき、労働時間等の設定の改善に向けた労使の自主的な取組を促進することにより、仕事と生活の調和を推進している。2009(平成21)年度は、「明日の安心と成長のための緊急経済対策」(平成21年12月閣議決定)等を踏まえ、年次有給休暇の取得を促進するために同ガイドラインの改正を行った(2010(平成22)年4月1日から適用)。

さらに、時間外労働の削減については、時間外労働の限度基準が遵守されるよう、周知徹底を図っている。

2008(平成20)年には、長時間労働を抑制するとともに、生活時間を確保しながら働くことができるようにすることを目的として同年12月に「労働基準法の一部を改正する法律」が成立し、2010年度からは、1か月60時間を超える時間外労働の割増賃金について、現行の25%以上から50%以上に引き上げられ、年次有給休暇の年休取得について、現行は日単位であるところを、労使協定を締結した場合には、5日分を限度として、時間単位での年休取得が可能とされた。

  1. 事業主等が、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」(平成4年法律第90号)に基づき、労働時間等の設定の改善(労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項について、労働者の生活と健康に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへ改善すること)について適切に対処するために必要な事項を定めたもの。

3)労働時間等の設定の改善に取り組む中小企業に対する支援・助成

「憲章」及び「行動指針」を踏まえ、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進など企業における取組の促進を図っている。

具体的には

・労働時間等の見直しに向けた職場意識の改善に積極的に取り組む中小企業を支援する職場意識改善助成金の支給

・労働時間等の見直しを団体的取組として行おうとする中小企業に対し労働時間等設定改善推進助成金の支給

等を行っている。

なお、前述の「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」の改正も踏まえ、職場意識改善助成金の拡充を行った(2010(平成22)年4月1日から適用)。

4)ライフスタイルに応じた多様な働き方の選択肢の確保

少子高齢化、大幅な労働力人口減少の中で、貴重な労働力を確保し、労働生産性を高め、経済の成長を持続させるためには、ライフスタイルに応じた多様な働き方の選択肢を確保するとともに、働き・貢献に見合った公正な待遇を実現することが重要である。

雇用者総数の約26.9%を占める、パートタイム労働者については、その能力を一層有効に発揮することができる雇用環境を整備するため、2008(平成20)年4月より施行されている改正パートタイム労働法に基づき、事業主への行政指導等を実施するとともに、パートタイム労働者の均衡待遇の確保等に取り組む事業主等に対する助成金の支給を通じて、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を推進している。

また、フルタイム正社員より所定労働時間(日数)が短いながら、正社員としての待遇が得られる短時間正社員制度については、「憲章」において、国は、「短時間正社員制度」等多様な働き方を推進するための条件整備を行うこととされるとともに、「短時間勤務を選択できる事業所の割合(短時間正社員制度等)」を、2012(平成24)年には10%、2017(平成29)年には25%とする数値目標が設定されている(「行動指針」)。

こうした中、厚生労働省では、制度を導入した事業主に対する助成金の支給に加え、インターネット上に「短時間正社員制度導入支援ナビ」を開設し、短時間正社員制度の概要や取組事例等についての情報提供を行うなど、短時間正社員制度の導入支援を行っている。

5)テレワークの推進

情報通信技術を活用した、時間と場所にとらわれない柔軟な働き方であるテレワークは、職住近接の実現による通勤負担の軽減のみならず、特に育児や介護、障害等の個々の事情を抱える人にとって仕事と生活の調和の実現に有効な働き方として、社会的な期待や関心も大きいものとなっている。国土交通省の推計によれば、テレワーカー(週8時間以上情報通信技術を活用して、職場以外で勤務した人)の就業者全体に占める割合は、2002(平成14)年度に6.1%、2005(平成17)年度に10.4%、2008(平成20)年度に15.2%と着実に増加しており、テレワークが広まってきていることがうかがえる。

2010(平成22)年までにテレワーカーを就業者人口の2割とする目標の実現に向けて、2007(平成19)年5月に「テレワーク人口倍増アクションプラン」(テレワーク推進に関する関係省庁連絡会議決定、IT戦略本部了承)を策定し、政府一体となってテレワークの普及を推進している。

このような中で、政府が自ら率先してテレワークを導入する観点から、総務省がテレワークを本格導入しているほか、経済産業省、国土交通省など複数の省庁においてテレワークを試行しているところである。また、総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省が呼びかけ人となり、産学官協働でテレワークの普及促進を図ることを目的とする「テレワーク推進フォーラム」(2005年11月設立)と連携して、「企業のためのテレワーク導入・運用ガイドブック」(2008年度改訂)等を活用し、テレワーク導入の意義や効果を広く浸透させるための普及活動を行っている。

そのほか、テレワークのうち、事業主と雇用関係にある者が、労働時間の全部又は一部について自宅等で業務に従事する勤務形態について、テレワーク試行・体験プロジェクト(多くの企業等に安心・安全で簡易なツールにより、テレワークを試行・体験いただく機会の提供)や先進的テレワークシステムモデル実験等の実施、「テレワーク環境整備税制」による支援、セミナーの開催等を通じた普及促進のための事業を実施している。また、適正な労働条件下でのテレワークの普及促進のため、「在宅勤務ガイドライン(情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン)」について、2008年に事業場外みなし労働時間制の適用要件等の明確化などの改正を行い、事業主等への周知・啓発を行った。また、全国5都市(札幌、東京、名古屋、大阪、福岡)に相談センターを設置するとともに、事業主・労働者等を対象としたセミナーを全国7都市(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡)で実施している。

さらに、在宅で自営的に、文章入力、テープ起こし等比較的単純・定型的な作業を行う在宅ワークについて、契約をめぐるトラブルの発生を未然に防止するため、契約に関する最低限のルールを定めた「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」を策定し、周知・啓発を図っている。さらに、在宅ワーカーを対象に、インターネット上で能力診断や能力開発、再就職・就業に役立つ情報を提供するサイトを運用するとともに、セミナーの開催、トラブル・健康相談等への対応などの支援事業を実施している。

  1. 外回りの営業など事業場外で労働する場合で労働時間の算定が困難な場合に、原則として所定労働時間労働したものとみなす制度。

6)農業経営体等における女性が働きやすい環境づくりの推進

農山漁村の女性は、仕事に加え家事・育児等の負担が大きいことから、出産・育児期の女性の負担を軽減し、農林漁業経営及び地域社会活動への参画を支援するため、家族経営協定の締結の促進、シンポジウム等の開催、農山漁村における子育て支援活動の優良事例の紹介、子育て支援に携わる担当者への情報提供などを行っている。


[目次]  [戻る]  [次へ]