第2章 出生率等の現状
第1節 近年の出生率等の状況
1.出生数、出生率の推移
(出生数と合計特殊出生率の推移)
2010(平成22)年の出生数(概数)、107万1,306人(前年は107万0,035人)、合計特殊出生率(概数値)は1.39(前年は1.37(確定数))となった。
(年少人口と高齢者人口の推移)
我が国における年少人口(0~14歳)は、出生数の減少により、第2次世界大戦後、減少傾向が続き、1997(平成9)年には、高齢者人口(65歳以上)よりも少なくなった。総務省「人口推計(平成22年10月1日現在(人口速報を基準とする確定値))」によると、年少人口は1,696万1千人(総人口に占める割合は13.2%)であるのに対し、高齢者人口は2,957万8千人(同23.1%)となっている。
(都道府県別にみた合計特殊出生率)
2010年の全国の合計特殊出生率は概数値で1.39であるが、47都道府県別の状況をみると、これを上回るのは27県、下回るのは16都道府県であった。この中で合計特殊出生率が最も高いのは沖縄県(1.83)であり、最も低いのは、東京都(1.12)となっている。
2.婚姻・出産の状況
(未婚化・非婚化の進行)
婚姻件数は、1970(昭和45)年から1974(昭和49)年にかけて年間100万組を超え、婚姻率(人口千対)も概ね10.0以上であった。その後は、婚姻件数、婚姻率ともに低下傾向となり、1978(昭和53)年以降は年間70万組台(1987(昭和62)年のみ60万組台)で増減を繰り返しながら推移してきた。2010(平成22)年は概数値で70万213組(対前年比7,521組減)と前年より減少した。婚姻率も5.5(概数値)で前年の5.6から0.1下回り、過去最低を記録した。
2005(平成17)年の総務省「国勢調査」によると、25~39歳の未婚率は男女ともに引き続き上昇し、男性では、25~29歳で71.4%、30~34歳で47.1%、35~39歳で30.0%、女性では、25~29歳で59.0%、30~34歳で32.0%、35~39歳で18.4%となっている。さらに、生涯未婚率を30年前と比較すると、男性は2.12%(1975(昭和50)年)から15.96%(2005年)、女性は4.32%(1975年)から7.25%(2005年)へ上昇している。
(晩婚化、晩産化の進行)
日本人の平均初婚年齢は、2010年(概数値)で、夫が30.5歳(対前年比0.1歳上昇)、妻が28.8歳(同0.2歳上昇)と上昇傾向を続けており、結婚年齢が高くなる晩婚化が進行している。1975年には、夫が27.0歳、妻が24.7歳であったので、35年間に、夫は3.5歳、妻は4.1歳、平均初婚年齢が上昇していることになる。
出生したときの母親の平均年齢をみると、2010年(概数値)の場合、第1子が29.9歳、第2子が31.8歳、第3子が33.2歳であり、35年前の1975年と比較すると、4.2歳、3.8歳、2.9歳遅くなっている。
3.諸外国における出生率の状況
主な国(アメリカ、フランス、スウェーデン、イギリス、イタリア、ドイツ)の合計特殊出生率の推移をみると、1960年代までは、すべての国で2.0以上の水準であった。その後、低下傾向となったものの、ここ数年では回復する国もみられるようになってきている。
直近ではフランスが1.99(2009年)、スウェーデンが1.94(2009年)となっている。これらの国々は、出産・子育てと就労に関して幅広い選択ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向で政策が進められている。
4.結婚、出産、子育てをめぐる状況
(結婚に対する意識)
将来結婚したいと考えている人は、男性は約83%、女性は約90%と高い割合となっている。特に、「すぐにでも結婚したい」又は「2~3年以内に結婚したい」と考える人は、男性は約3割、女性は約4割となっている。
将来結婚したいと考えている人に結婚生活を送る上での不安についてきいてみると、男女ともに半数以上が「経済的に十分な生活ができるかどうか」をあげているが、女性については、「配偶者の親族とのつきあい」、「出産・子育て」、「配偶者や自分の親の介護」などの家庭的役割を果たすことへの負担感をあげる人が男性より非常に多い。結婚意欲がみられる一方で、こうしたことが結婚を踏みとどまる背景になっていることがうかがわれる。
(出産に対する意識)
希望する子どもの数と実際の子どもの数について、各国(日本、韓国、アメリカ、フランス、スウェーデン)とも、今いる子ども数(平均)は1.1~1.4人、希望する子どもの数(平均)は2.2~2.4人であり、各国で大きな差はみられない。
しかし、子どもを増やすかについては、各国により大きな違いがみられ、日本では、「希望する子どもの数になるまで子どもを増やしたい」と回答した人の割合は42.8%、一方で「今よりも子どもを増やさない、または、増やせない」と回答した人は47.5%となっている。
その理由についてみると、日本では男女ともに「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」をあげる人がもっとも多く、男性は約45%、女性は約40%となっており、次いで「自分または配偶者が高年齢で生むのがいやだから」をあげる人が多い(男性26.8%、女性35.1%)。加えて、女性については、「働きながら子育てできる職場環境がない」をあげる人が26.3%と多くなっている。
(若い世代の所得の伸び悩み)
子育て世代の所得分布をみると、30代では、1997(平成9)年には年収が500~699万円の雇用者の割合が最も多かったが、2007(平成19)年には300万円台の雇用者が最も多くなっており、この10年間で低所得層にシフトしていることがわかる。
(就労形態などによる家族形成状況の違い)
若年者の雇用をめぐる環境をみると、完全失業率及び非正規雇用割合ともに、全年齢計を上回る水準で推移している。また、非典型雇用者の有配偶率は低く、30~34歳の男性においては、非典型雇用の人の有配偶率は正社員の人の半分程度となっているなど、就労形態の違いにより家庭を持てる割合が大きく異なっていることがうかがえる。
また、内閣府が実施した「結婚・家族形成に関する調査」(2011(平成23)年)によると、既婚者(結婚3年以内)の割合を年収別に20代、30代の男性についてみると、300万円未満では8~10%である一方、300万円以上の各階層は25~40%となっており、300万円を境に大きな差がみられる。
これらのことから、結婚に対する個人の希望を実現できる社会に向け、若者に対する就労支援が求められていることがわかる。
(依然として厳しい女性の就労継続)
女性の就労をめぐる環境をみると、出産前に仕事をしていた女性の約6割が出産を機に退職している。また、女性の育児休業利用者の割合は堅調に推移しているものの(2009(平成21)年は85.6%)、育児休業を取らずに就業を継続している女性の割合も考慮すると、出産前後で就労継続をしている女性の割合は、この20年間ほとんど変化しておらず、出産に伴う女性の就労継続は依然として厳しい。
(子育て世代の男性の長時間労働)
男性について週60時間以上の長時間労働をしている人は、どの年代においても、2005(平成17)年以降減少傾向にある。しかしながら、子育て期にある30代男性については、約5人に1人が週60時間以上の就業となっており、他の年代に比べもっとも高い水準となっている。
加えて、育児時間を国際比較してみると、6歳未満の子どもをもつ夫の育児時間は、1日平均約30分程度しかなく、欧米諸国と比較して半分程度となっている。家事の時間を加えても、我が国の子育て期の夫の家事・育児にかける時間は1日平均1時間程度となっており、欧米諸国と比べて3分の1程度となるなど、男性の育児参加が進んでいないことがわかる。
5.家族関係社会支出の国際比較
我が国は、欧州諸国に比べて現金給付、現物給付を通じて家族政策全体の財政的な規模が小さいことが指摘されている。家族関係社会支出の対GDP比をみると、我が国は、0.79%(2007(平成19)年)となっており、フランスやスウェーデンなどの欧州諸国と比べておよそ4分の1となっている。