コラム:被災地における子ども・子育て支援活動
東日本大震災では、地方自治体やNPO、ボランティア団体などが、子どもや、子どもを抱える方に対して支援を行っている。
【幼稚園と保育所の無料化:岩手県釜石市】
岩手県釜石市では、子育て世代の経済的負担を軽減し、住民の流出に歯止めをかけるため、幼稚園と保育所の保育料を無料化する方向で検討している。
釜石市では、2009(平成21)年度から、きょうだいが同時に幼稚園又は保育所に通園する場合は、2人目以降の子どもの保育料を無料化しているが(幼稚園は2010(平成22)年度から)、東日本大震災により、住宅や職を失ったために、子育て世代が市外に流出することが懸念されている。釜石市は、財源が厳しい中これを市の存亡の危機と捉え、こうした取組を通じて子育てしやすい環境づくりに積極的であるという姿勢を打ち出すことで、復興の中心的役割を担う子育て世代の市外への流出に歯止めをかけたいと考えている。
【アレルギー対応食品の支援:特定非営利活動法人アトピッ子地球の子ネットワーク】
避難所など普段と異なる環境で過ごすことでアトピーの症状が悪化したり、被災により卵や乳などのアレルギーの原因食物を含まない「アレルギー対応食」の入手ができず、塩むすびや大根などの限られた食物のみを食べて数週間しのぐといった状況のアレルギー性疾患の方がいる。
特定非営利活動法人アトピッ子地球の子ネットワーク(東京都)は、こうした状況にいる方を支援するため、企業や医師、団体などからの支援や物資提供を受け、被災地や避難先にいるアレルギー疾患の方に、食物アレルギー用の食物を始め、ぜんそくやアトピー性皮膚炎のケア用品などを、無料で提供する支援活動を行っている。
【乳幼児の一時避難支援:特定非営利活動法人全国商店街まちづくり実行委員会ほか】
特定非営利活動法人全国商店街まちづくり実行委員会、特定非営利活動法人日本ファーストエイドソサェティなど4つの団体が、新潟県湯沢町と連携して「赤ちゃん一時避難プロジェクト」を実施している。これは、被災地の厳しい環境におかれている赤ちゃんや小さなお子さんと、そのお母さんを始めとする家族を対象に、民間の宿泊施設への受け入れや継続的な医療サポートを、無料で提供するプロジェクトである。このプロジェクト受け入れ数(2011(平成23)年5月18日現在)は、115組337人(うち、0歳児51人、1~3歳児105人)となっている。
【子どもたちのこころのケア:特定非営利活動法人チャイルドライン支援センター】
チャイルドラインとは、18歳までの子どもたちがかけてきた電話に対して、説教やアドバイスを行うのではなく、「子どもにそっと寄り添い、そっと子どもの声を聴く」というのが特色である。
チャイルドラインの全国展開を支援している特定非営利活動法人チャイルドライン支援センターでは、今回の東日本大震災により尋常ではない体験をしながらも自分の気持ちを話せず我慢している子どもたちや、避難所で電話がかけられない状況にある子どもたちがいること、また、チャイルドラインがまだ知られていない地域があることから、緊急措置を講じることとした。一つは、チャイルドラインを知らせるカードの避難所などでの配布、一つは、避難所などにおいて、子どもが安心して電話をかけることができるブースなどの設置を行政等に求める活動である。
また、全国からかけられるフリーダイヤルの専用電話番号※を設け、被災した子どもたちを始め、一人でも多くの子どもたちの「話したい」「打ち明けたい」と思うことに耳を傾け、その心に寄り添う取組を行っている。
※ 0120-99-7777(月曜日~木曜日、16時~21時 ※栃木県、埼玉県、東京都、山梨県、愛知県では日曜日も利用可能)