第2節 人口構成の変化と持続可能な社会保障改革
半世紀前には65歳以上のお年寄り1人をおよそ9人の現役世代で支える「胴上げ」型の社会だった日本は、近年3人で1人の「騎馬戦」型の社会になり、このままでは、2050年には、国民の4割が高齢者となって、高齢者1人を1.2人の現役世代が支える「肩車」型の社会が到来することが見込まれている。
「新成長戦略」(2010年6月18日閣議決定)においては、高齢化の進展により労働供給は減少せざるを得ず、供給能力の伸びを表す潜在成長率は、過去10年の平均(約1%)を下回るおそれがあるという指摘もある。
一方で、現在の社会保障制度は、現在でも全体として給付に見合う負担を確保できておらず、今後、人口構成の変化が一層進んでいく社会にあっても、社会保障を持続可能なもとするために、給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心というという現在の社会保障制度を見直し、給付・負担両面で、人口構成の変化に対応した世代間・世代内の公平が確保された制度へと改革していくことが必要である。また、今後は、給付面で子ども・子育て支援などを中心に未来への投資という性格を強め、全世代対応型の制度としていくとともに、負担面で年齢を問わず負担能力に応じた負担を求めていくなど、制度を支える基盤を強化していくことが必要である。 そのためには、国民すべてが人生様々な段階で受益者となり得る社会保障を支える経費は国民全体で分かち合わなければならない。社会保障の安定財源確保と財政健全化は、財政赤字や債務残高の増大による、企業の資金調達や設備投資への圧迫や、将来の社会保障などへの不安を通じた家計の消費の抑制などといった成長の阻害要因を減少させ、人々が安心して消費や経済活動を行うことを可能とし、新たな成長の基盤を築く意義を有する。 このような社会保障改革で目指すべき社会は、制度が出産・子育てを含めた生き方や働き方に中立的で選択できる社会、子どもが家族や社会と関わり良質な環境の中でしっかりと育つ社会などである。