第1節 近年の出生率等の状況
1.出生数、出生率の推移
(出生数と合計特殊出生率の推移)
2010(平成22)年の出生数、107万1,304人(前年は107万0,035人)、合計特殊出生率は1.39(前年は1.37)となった。2005年から上昇に転じていることについては、大きく分けて2つの理由があるとみられており、(1)第1‐2‐2図のとおり、2005年時点で出産を控えていた世代が、それ以降、比較的高年齢(30~40代)で出産をしているという傾向が見られたこと、(2)第1‐2‐3図のとおり、世代ごとの比較で見ても、出生率を押し下げる要因である、<1>最終的に結婚しない者の割合(生涯未婚率)の増加、<2>結婚した者が一生で生む子どもの数の減少といった動きが想定していたよりも緩んでいる傾向が見られていることがある。第1章 第1節でみたように、子ども・子育てビジョンにおける12の主要施策を基にしている目指すべき社会の姿の達成度への評価はまだ低く、結婚や出産・子育てに関する国民の希望がかなう社会の実現に向けて、引き続き子ども・子育て支援策の推進が求められている。
(年少人口と高齢者人口の推移)
我が国における年少人口(0~14歳)は、出生数の減少により、第2次世界大戦後、減少傾向が続き、1997(平成9)年には、高齢者人口(65歳以上)よりも少なくなった。2010年総務省「国勢調査」によると、年少人口は1,680万3千人(総人口に占める割合は13.2%)であるのに対し、高齢者人口は2,924万6千人(同23.0%)となっている。
2.婚姻・出産等の状況
(未婚化・非婚化の進行)
2010(平成22)年の総務省「国勢調査」によると、25~39歳の未婚率は男女ともに引き続き上昇し、男性では、25~29歳で71.8%、30~34歳で47.3%、35~39歳で35.6%、女性では、25~29歳で60.3%、30~34歳で34.5%、35~39歳で23.1%となっている。さらに、生涯未婚率を30年前と比較すると、男性は2.60%(1980(昭和55)年)から20.14%(2010年)、女性は4.45%(1980年)から10.61%(2010年)へ上昇している。
(晩婚化、晩産化の進行)
日本人の平均初婚年齢は、2010年で、夫が30.5歳(対前年比0.1歳上昇)、妻が28.8歳(同0.2歳上昇)と上昇傾向を続けており、結婚年齢が高くなる晩婚化が進行している。1980年には、夫が27.8歳、妻が25.2歳であったので、30年間に、夫は2.7歳、妻は3.6歳、平均初婚年齢が上昇していることになる。
出生したときの母親の平均年齢をみると、2010年の場合、第1子が29.9歳、第2子が31.8歳、第3子が33.2歳であり、30年前の1980年と比較すると、3.5歳、3.1歳、2.6歳上昇している。
(人工妊娠中絶の状況)
人工妊娠中絶件数及び人工妊娠中絶実施率(15歳以上50歳未満女子人口千対)の平成22年度までの動向を見ると、件数、実施率共に総じて減少傾向にある。
3.諸外国における出生率の状況
主な国(アメリカ、フランス、スウェーデン、イギリス、イタリア、ドイツ)の合計特殊出生率の推移をみると、1960年代までは、すべての国で2.0以上の水準であった。その後、低下傾向となったものの、ここ数年では回復する国もみられるようになってきている。
直近ではフランスが2.01(2010年)、スウェーデンが1.98(2010年)となっている。これらの国々は、出産・子育てと就労に関して幅広い選択ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向で政策が進められている。
4.結婚、出産、子育てをめぐる状況
(結婚に対する意識)
国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第14回出生動向基本調査結婚と出産に関する全国調査(独身者調査)」(2011(平成23)年)によると、第1‐2‐9図のとおり、いずれは結婚しようと考える未婚者の割合は、男性は86.3%、女性は89.4%と、依然として高い水準にある。しかし、「一生結婚するつもりはない」とする未婚者は第9回調査以降、男性、女性ともに緩やかな増加傾向にあり、男性9.4%、女性6.8%となり、独身志向を表す未婚者が増えた形となっている。
未婚者に対して独身にとどまっている理由をたずねたところ、第1‐2‐10図のとおり、18~24歳では「まだ若すぎる」(男性47.3%、女性41.6%)、「まだ必要性を感じない」(男性38.5%、女性40.7%)、「仕事(学業)にうちこみたい」(男性35.4%、女性39.4%)など、結婚するための積極的な動機がないという「結婚しない理由」が多く挙げられている一方、25~34歳では、「適当な相手にめぐり会わない」(男性46.2%、女性51.3%)を中心に、結婚の条件が整わないという「結婚できない理由」へ傾向が変化している。しかし、「結婚しない理由」のうち、「必要性を感じない」(男性31.2%、女性30.4%)、「自由さや気楽さを失いたくない」(男性25.5%、女性31.1%)について、独身にとどまっている理由としてあげた25~34歳の未婚者は多い。25~34歳の男性では、「結婚資金が足りない」をあげた割合(30.3%)が、女性に比べ(16.5%)高くなっている。
また、結婚する意志のある未婚者が結婚相手に求める条件としては、男女とも「人柄」を重視または考慮する人が最も多い(男性95.1%、女性98.2%)。次いで、男性は「家事の能力」(93.1%)、「仕事への理解」(89.0%)、「容姿」(82.4%)などとなっている一方、女性は「家事の能力」(96.4%)、「経済力」(93.9%)、「仕事への理解」(92.7%)、「職業」(85.8%)となっている。
女性では、男性よりも「経済力」「職業」を考慮・重視する割合(「経済力」(男性38.7%、女性93.9%)、「職業」(男性43.4%、女性85.8%))が高い。そのうち「経済力」を「重視する」割合は第12回調査の33.9%から42.0%、「職業」を「重視する」割合は22.6%から31.9%と増加している。
また、男性でも、「経済力」を考慮・重視する割合が、第12回調査の29.5%から38.7%と増加している。
(出産に対する意識)
国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第14回出生動向基本調査結婚と出産に関する全国調査(夫婦調査)」(2012(平成24)年)によると、第1‐2‐12図のとおり、夫婦にたずねた理想的な子どもの数(平均理想子ども数)は、前回の第13回調査に引き続き低下し、調査開始以降最も低い2.42人となった。また、夫婦が実際に持つつもりの子どもの数(平均予定子ども数)も、初めて2.1を下回り、2.07人となっている。
理想の子ども数を持たない理由として、最も多いのが、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(総数60.4%)であり、前回の第13回調査(65.9%)に比べ若干減少している。年代別にみると、若い世代ほど割合が高くなる傾向がみられる。次に多いのが、「高年齢で生むのはいやだから」(総数35.1%)であり、年代別にみると、年代が高くなるほど、割合が高くなる傾向がみられる。
(若い世代の所得の伸び悩み)
子育て世代の所得分布をみると、30代では、1997(平成9)年には年収が500~699万円の雇用者の割合が最も多かったが、2007(平成19)年には300万円台の雇用者が最も多くなっており、この10年間で低所得層にシフトしていることがわかる。
また、生活保護世帯に占める世帯主が39歳以下である生活保護世帯数の割合は2009年で9.0%となっている。
(就労形態などによる家族形成状況の違い)
若年者の雇用をめぐる環境をみると、完全失業率及び非正規雇用割合ともに、全年齢計を上回る水準で推移している。また、非典型雇用者の有配偶率は低く、30~34歳の男性においては、非典型雇用の人の有配偶率は正社員の人の半分程度となっているなど、就労形態の違いにより家庭を持てる割合が大きく異なっていることがうかがえる。
また、内閣府が実施した「結婚・家族形成に関する調査」(2011(平成23)年)によると、既婚者(結婚3年以内)の割合を年収別に20代、30代の男性についてみると、300万円未満では8~10%である一方、300万円以上の各階層は25~40%となっており、300万円を境に大きな差がみられる。
これらのことから、結婚に対する個人の希望を実現できる社会に向け、若者に対する就労支援が求められていることがわかる。
(依然として厳しい女性の就労継続)
女性の就労をめぐる環境をみると、出産前に仕事をしていた女性の約6割が出産を機に退職している。また、女性の育児休業利用者の割合は堅調に推移しているものの(2011(平成23)年は87.8%)、育児休業を取らずに就業を継続している女性の割合も考慮すると、出産前後で就労継続をしている女性の割合は、この20年間ほとんど変化しておらず、出産に伴う女性の就労継続は依然として厳しい。
(子育て世代の男性の長時間労働)
男性について週60時間以上の長時間労働をしている人は、どの年代においても、2005(平成17)年以降減少傾向にある。しかしながら、子育て期にある30代男性については、約5人に1人が週60時間以上の就業となっており、他の年代に比べ最も高い水準となっている。
加えて、育児時間を国際比較してみると、6歳未満の子どもをもつ夫の育児時間は、1日平均約30分程度しかなく、欧米諸国と比較して半分程度となっている。家事の時間を加えても、我が国の子育て期の夫の家事・育児にかける時間は1日平均1時間程度となっており、欧米諸国と比べて3分の1程度となるなど、男性の育児参加が進んでいないことがわかる。
5.家族関係社会支出の国際比較
我が国は、欧州諸国に比べて現金給付、現物給付を通じて家族政策全体の財政的な規模が小さいことが指摘されている。家族関係社会支出の対GDP比をみると、我が国は、0.79%(2007(平成19)年)となっており、フランスやスウェーデンなどの欧州諸国と比べておよそ4分の1となっている。
また、我が国の教育機関に対する公財政支出の対GDP比は、OECD加盟国(31か国)中最下位となっている。