コラム

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コラム:地域少子化対策強化交付金を活用した取組

我が国の危機的な少子化問題に対応するため、結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目ない支援」を行うことを目的に、地域の実情に応じた先駆的な取組を行う地方公共団体を支援するため、2013(平成25)年度補正予算において地域少子化対策強化交付金が創設された。この交付金を活用し、地方公共団体は、以下の4点を盛り込んだ計画を策定し、事業を実施することとした。

  • <1>結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援を行うための仕組みの構築
  • <2>結婚に向けた情報提供等
  • <3>妊娠・出産に関する情報提供
  • <4>結婚・妊娠・出産・育児をしやすい地域づくりに向けた環境整備

この交付金に対しては、全ての都道府県から応募があり、地域の実情に応じて少子化対策の取組への機運が高まりつつある。

また、2014(平成26)年度補正予算においても、この交付金について予算措置され、上記の4点に加え、

  • <5>少子化対策への前向きな機運の醸成

を新たに追加し、引き続き、地域の実情に応じた先駆的な取組を行う地方公共団体を支援することとなっている。

ここでは、2013年度補正予算に計上された交付金を活用した事業を紹介する。

地域少子化対策強化交付金(2014(平成26)年度補正予算)

大学連携による人材育成カリキュラム作成と研修事業(兵庫県)

地域あるいは個人における課題は多種多様であり、結婚から子育てまでの総合案内が必要となるため、子育て支援拠点等の支援者に対し、結婚から子育て支援までの体系的研修プログラムを策定・研修した。

子育て支援分野に造詣の深い県内大学の学識者で構成する「ひょうご地域子育て支援大学間連絡協議会」の全面的な協力を得て、研修プログラムを策定し、子育て支援リーダー、スタッフ等を対象に専門性の高い研修を実施することにより、支援人材の育成及び資質向上を図った。

研修においては、子育て支援者の役割、対象者の特性・ニーズと活用できる資源を知る目的と方法、相談分析の目的と方法、個別対応の手法など、結婚、妊娠・出産、子育ての「切れ目のない支援」を実現するための手法を学ぶ。

また、策定した研修プログラムは、県ホームページ等で公開し、市町が研修で自由に活用できるようにすることにより、広域的な支援人材の育成に役立てる。

専門性の高い研修を実施し、汎用性の高いプログラムを開発するため、「ひょうご地域子育て支援大学間連絡協議会」のほか、効果的な研修機能を有する認定特定非営利活動法人とも連携のうえ、事業を実施した。

今後は、公表した研修プログラムにより、各地域において広域的に人材育成を図ることで、研修修了者を中心に経験と知識が継承され、地域の実情に合わせた事業展開が図られることが期待される。

研修の様子

愛顔(えがお)の婚活サポート事業(愛媛県)

2010(平成20)年11月に開設した「えひめ結婚支援センター」の利用者や成婚報告者の平均年齢は35歳前後と晩婚化が顕著になっているほか、うまくカップルになれない、婚活に踏み切れない、自信がないなどの声も多く、出会いの場に参加する以前の独身者個々のスキルアップ・意識改革を行っていく必要があった。

一方で、成婚事例や好アドバイス等の記録など6年間培った各種データがあるが、これらを利用者に還元できず、成婚に向けた活動に活かしきれていなかった。

そこで、独身者及び地域で婚活を支援する者向けに、有識者による基調講演を始め、コミュニケーション能力向上などのワークショップの実施、婚活力を高める好アドバイスや成婚事例等の紹介など基礎編・応用編の啓発講座を開催するとともに、えひめ結婚支援センターの結婚支援システムに蓄積されたビッグデータ及び関連データを分析し、成婚に至るモデルケース、婚活力を高める好アドバイスなどをまとめ、ホームページや小冊子で情報発信した。さらに、地域で切れ目ない婚活を応援するために、婚活を応援する団体の掘り起こしと育成を実施した。

実施に当たっては、地元大学や国の研究機関の支援を得ることにより、客観的なデータ分析を行い、結婚支援のための精度の高い支援情報データベースを構築できた。

今後も、えひめ結婚支援センターを核に、県民総ぐるみの活動を展開していく。

基調講演の様子

まちなかマタニティ普及啓発事業(富山県魚津市)

魚津市ではマタニティマークの認知度が低く、母子健康手帳交付時に初めてマークを知る人が多かった。

そこで、母子保健推進員や子育て中のママなどによる調査隊をつくり、公共施設や観光施設などで、たくさんの親子がよく利用し、マークのPRに効果的で望ましい箇所を提案してもらい、マークの設置と紹介掲示を行い啓発を図った。

また、調査隊が、市内を巡回し、ショッピングセンター、公園、児童センター、観光施設などのオムツ替えシート、子供用トイレの設置など妊産婦や子育てに配慮した施設の場所や内容を調査し、調査結果を分かりやすく紹介する冊子「まちなかマタニティ&キッズマップ」を作成し配布を行った。

「まちなかマタニティ&キッズマップ」は、妊婦や母親ばかりでなく、父親にも活用してもらい育児参加を促進するとともに、子育て支援関係者、市内施設、企業に配布を行い、妊娠・出産に理解・関心を深めてもらえるように活用を図った。

まちなかマタニティ&キッズマップ

男性の育児参加を促すイクメン企業同盟活動推進事業(広島県)

県内の男性の育児休業取得率は、全国平均を上回る状況となっているが、女性との格差は未だ大きい現状があり、女性が仕事と子育てを両立しながら、第2子以降も安心して子供を生み、育てられる環境を整備するため、男性の育児参加の促進を図り、女性の家事・育児の負担を軽減する必要があった。

一方で、広島県が2013(平成25)年度に県内企業に対して実施した「企業訪問事前調査」では、男性の育児休業取得について「業務が忙しい」等を取得が進まない理由に多くあげており、消極的な企業が多かった。

男性の育児参加のためには、男性自身の意識改革に加え、企業経営者の理解が不可欠であり、経営者のリーダーシップの下、各企業の風土や制度へ男性の育児参加を反映させるよう啓発していく必要がある。

このため、2014(平成26)年3月に結成したイクメン企業同盟(イクメンを応援する企業経営者の同盟)の活動を展開し、企業経営者自らが主体的に職場の働き方改革を目指す行動を起こすとともに、ほかの企業の経営者にも取組を呼びかけ、輪を広げることにより、社会全体に対しても男性の意識改革、行動変容を促し、男性も積極的に育児に参加する社会をつくるための取組を行った。

今後も、イクメン企業同盟の活動を強化するとともに、経営者のみならず、企業の管理職が“イクボス”となるための取組などを進め、男性の家事・育児参画を促進し、男女ともに仕事と子育ての両立ができる環境づくりを推進する。

イクメン企業同盟のサイト

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