第1部 少子化対策の現状と課題

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第2章 少子化対策の取組

第3節 少子化対策の新たな取組について【特集】

地方創生の取組と少子化社会対策大綱の策定

人口減少・少子高齢化への危機感

人口減少・少子高齢化に対する問題意識が深まる中、2014(平成26)年1月には経済財政諮問会議の下に「選択する未来」委員会が設置され、世界経済の構造変化に加え、我が国の長期的な人口の減少・構造変化の経済社会への影響等について議論が行われた。また、2014年5月には、民間機関である「日本創成会議・人口減少問題検討分科会」が、大都市圏への人口移動が現在のペースで持続すると仮定した場合、人口の再生産を中心的に担う「20~39歳の女性人口」が2010(平成22)年から2040(平成52)年にかけて半数以下になる地方公共団体は、全体の49.8%に当たる896団体に上るとする分析結果を発表するとともに、こうした自治体を「消滅可能性がある」とした。さらに、地方自治体においては、全国知事会が、2014年7月に、少子化が国家的な危機を招く問題であることを改めて強く認識し、今この時こそ、国と地方が総力を挙げて思い切った政策を展開し、少子化対策の抜本強化に取り組むことが必要であることを広く世の中に訴えるために、「少子化非常事態宣言」を取りまとめ、内閣総理大臣にも要望を提出した。少子化の問題は、我が国の社会・経済・地域など、幅広い分野に大きな影響を与える非常に深刻な問題であり、早急な取組が求められている。

こうした状況を受け、2014年12月には、人口減少問題を克服するため、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」と「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が策定され、2015(平成27)年3月には、新たな少子化社会対策大綱が閣議決定されるなど、少子化に歯止めをかけるための新たな取組が進められている。新たに策定した少子化社会対策大綱と地方創生は、若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえることを基本的な目標とするなど、密接に関係するものであり、連携した取組を進めることとなっている。本節では、両者について概説する。

少子化社会対策大綱

大綱の検討の経緯

少子化社会対策大綱(以下「大綱」という。)は、少子化社会対策基本法に基づく総合的かつ長期的な少子化に対処するための施策の指針であり、これまで2004(平成16)年6月、2010(平成22)年1月に策定されてきた(2010年1月には「子ども・子育てビジョン」として策定)。

2010年1月に策定した大綱において、「おおむね5年後を目途に見直し」を行うとされており、また、骨太方針2014において、「新たな少子化社会対策の大綱を平成26年度中に策定する」とされたことを受け、2014(平成26)年11月に、内閣府特命担当大臣(少子化対策)の下、学識者、医師、地方自治体の長、企業、メディアなど少子化対策に関し優れた見識を有するもので構成される「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」(以下「検討会」という。)を開催した。検討会においては、7回にわたる集中的な審議を行い、幅広い関係者から意見聴取を行うとともに、広く国民から意見を聴き、2015(平成27)年3月に「少子化社会対策大綱の策定に向けた提言」を取りまとめた。この提言を真摯に受け止め、政府として、総合的な見地から検討・調整を図り、同年3月20日に新たな大綱を策定した。

新たな少子化社会対策大綱の主な特徴
【はじめに】

現在の少子化の状況は、個人・地域・企業・国家に至るまで多大な影響を及ぼすものであり、社会経済の根幹を揺るがしかねない危機的状況にある。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」によれば、出生率の水準が変わらなければ、2060(平成72)年の我が国の人口は約8,700万人(現在の約3分の2)となり、65歳以上の高齢者の人口に占める割合は約40%に、生産年齢人口(15~64歳)と高齢者人口(65歳以上)の割合は1.3対1になると推計されている。また、「国土のグランドデザイン2050~対流促進型国土の形成~」(2014(平成26)年7月国土交通省)によれば、人口減少がこのまま進めば、2050(平成62)年には、現在人が住んでいる居住地域の6割以上の地域で人口が半分以下に減少し、うち2割の地域では無居住化すると推計されている。加えて、人口の減少、特に生産年齢人口の減少は、経済や市場規模の縮小や経済成長率の低下につながり、企業の活動にも大きな影響を与える。例えば、2040年代以降には人口が毎年100万人程度(1%程度以上)減少すると推計されており、生産性上昇率が低い現状のままであれば、日本経済全体でプラス成長を続けることは困難になると指摘されている。

一方で、フランスやスウェーデンは、長期にわたる継続的かつ総合的な少子化対策(家族政策)を行うことにより、一旦は低下した出生率が2.0程度までの回復に成功している(第1-1-26図参照)。少子化危機は克服できる課題である。

少子化への対応は遅くなればなるほど将来への影響がより大きくなるものであり、少子化のトレンドを変えるため、直ちに集中的に取り組む必要がある。また、少子化対策の効果があらわれるためには長い時間を要するため、長期的展望に立って、粘り強く少子化対策を進めていくことも必要である。さらに、結婚、妊娠、子供・子育てを大切にする、温かい社会を実現していく必要がある。

【基本的な考え方】

新たな少子化社会対策大綱では、次の5項目を「基本的な考え方」としている。

第1-2-11図 少子化社会対策大綱(概要)~結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざして~

第1-2-11図 少子化社会対策大綱(概要)~結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざして~

(1)結婚や子育てしやすい環境となるよう、社会全体を見直し、これまで以上に少子化対策の充実を図る。

  • 少子化社会は、個人にとっては、結婚や出産を希望しても、実現が困難な社会であると同時に、地域・社会の担い手の減少、現役世代の負担の増加、経済や市場の規模の縮小や経済成長率の低下など、多大な影響を及ぼす深刻な問題である。これまで少子化対策は、主に子育て支援に重点を置いて推進してきたが、こうした従来の枠組みを越えて、新たに、結婚や教育段階における支援を加え、これまで以上に少子化対策の充実を図るとともに、社会のあらゆる分野の制度・システムについて、結婚や子育てしやすい環境を実現する仕組みになっているかという観点から、見直していくことが必要である。

(2)個々人が結婚や子供についての希望を実現できる社会をつくることを基本的な目標とする。

  • 少子化対策における基本的な目標を、個々人が希望する時期に結婚でき、かつ、希望する子供の数と生まれる子供の数との乖離をなくしていくための環境を整備し、国民が希望を実現できる社会をつくることとした。個々人の希望がかない、安全かつ安心して子供を生み育てられる環境を整備することにより、希望する子供の数も増えていくことになれば、少子化の進展に歯止めをかけることにつながる。一方で、もとより、結婚や出産は個人の決定に基づくものであり、個々人の決定に特定の価値観を押し付けたり、プレッシャーを与えたりすることがあってはならないことに留意する。

(3)結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じた切れ目のない取組と地域・企業など社会全体の取組を両輪として、きめ細かく対応する。

  • 少子化の進行は、未婚化・晩婚化の進行や第1子出産年齢の上昇(第1-1-61-1-71-1-81-1-10図参照)、長時間労働、子育て中の孤立感や負担感が大きいことなど、様々な要因が複雑に絡み合っており、きめ細かい少子化対策を網羅的に推進することが重要である。結婚、妊娠・出産、子育てや、さらには、教育や仕事など、一人一人のライフステージの各段階に応じた支援を切れ目なく行うとともに、行政に加え、地域・企業など社会全体として少子化対策を進めていく必要があるとしている。

(4)集中取組期間を設定し、政策を集中投入する。

  • 現在の少子化の状況は、我が国の社会経済の根幹を揺るがしかねない危機的状況にある。少子化への対応が遅くなればなるほど、将来への影響がより大きくなる一方で、直ちに集中して取り組めば、少子化のトレンドを変えることができる。このため、今後5年間を「少子化対策集中取組期間」と位置付け、必要な財源を確保しつつ、政策を抜本的に充実させていくことが必要である。これまで講じてきた政策の効果検証を行うとともに、重点課題を設定し、選択と集中を行いつつ、政策を効果的かつ集中的に投入する。

(5)長期展望に立って、継続的かつ総合的な少子化対策を推進する。

  • フランスやスウェーデンは、子育て支援の充実や仕事との両立支援策など、長期にわたる継続的かつ総合的な少子化対策(家族政策)を行うことにより、一旦は低下した出生率が2.0程度までの回復に成功した。こうした諸外国においては、家族関係支出が対GDP比で3%程度以上であり(第1-1-29図参照)、国民負担率などの違いもあり単純に比較はできないが、こうした諸外国の取組も参考にしながら、長期的な少子化対策を行う上で必要な財源を確保しつつ、少子化対策予算の拡充を図る。特に子育て支援の充実など様々な現物給付の充実が必要であるとしている。

    また、若い人々も含め、全ての世代に安心感と納得感の得られる全世代型の社会保障に転換することをめざして、子育て支援が充実するよう必要な見直しを行っていくとともに、税制の検討に当たっても、子育て支援や少子化対策の観点に配慮していくことが重要である。

第1-2-12図 少子化社会対策大綱(概要)~結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざして~(つづき)

第1-2-12図 少子化社会対策大綱(概要)~結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざして~(つづき)

【重点課題】

少子化社会対策大綱においては、5つの重点課題を設定している。

(1)子育て支援施策を一層充実させる。

核家族化の進展、共働き家庭の増加、働き方の多様化、地域のつながりの希薄化など、子育てをめぐる環境が大きく変化する中、子育て家庭における様々なニーズに対応するとともに、一人一人の子供の健やかな育ちを実現するため、子供や子育て支援の更なる充実を図ることが最も重要である。子育て現役世代をしっかりと応援していくことは、人々の子育ての希望の実現につながるとともに、若い世代が結婚・出産・子育てに対して夢や希望を持つことにつながる。このため、子ども・子育て支援新制度の円滑な実施による、地域の実情と住民のニーズに基づいた幼児教育・保育、地域の子育て支援の「量的拡充」と「質の向上」や、待機児童の解消に向けた取組などを進めることとしている。

〈具体的な施策の例〉

  • 子ども・子育て支援新制度の円滑な実施により、幼児教育・保育・子育て支援の「量的拡充」(待機児童の解消や身近な子育て支援サービスの提供)及び「質の向上」(職員の配置や処遇の改善等)を行う。その際、市町村が住民のニーズを把握し、地域の実情に応じて、利用者支援事業、地域子育て支援拠点、一時預かり、延長保育や病児保育などの多様な保育等、計画的に提供体制の整備を図る。そのために必要な1兆円超程度の財源の確保については、消費税財源から確保する0.7兆円程度を含め、適切に対応する。
  • 「待機児童解消加速化プラン」の推進により、就労希望者の潜在的な保育ニーズに対応し、保育所等の整備や地域型保育事業の活用を含め、2015(平成27)年度から2017(平成29)年度までの3年間で約20万人分の保育の受け皿を確保し、待機児童の解消を目指す。これに伴い、新たに必要となる6.9万人の保育士の確保を図るため、処遇改善や人材育成を含めた「保育士確保プラン」を推進する。
  • 「放課後子ども総合プラン」の実施により、共働き家庭等の「小1の壁」を打破するとともに、次代を担う人材を育成するため、2019(平成31)年度末までに、放課後児童クラブについて、30万人分整備し、受入児童数の拡充を図り、利用を希望するが利用できない児童の解消を目指すとともに、放課後子供教室との一体型を推進する。

(2)若い年齢での結婚・出産の希望が実現できる環境を整備する。

初婚年齢や第1子出産年齢の上昇、若い世代での未婚率の増加が、少子化の大きな要因である(第1-1-61-1-71-1-81-1-10図参照)。特に、非正規雇用労働者の未婚率が、男性で特に高い傾向にあり、30代前半では、正規雇用の未婚率が36.1%であるのに対し、非正規雇用では70.5%となっている。また、25歳から34歳までの男女について独身にとどまっている理由(国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」。項目のうちから3つまで選択。)をみると、「適当な相手にめぐり会わない」(男性46.2%、女性51.3%)、「まだ必要性を感じない」(男性31.2%、女性30.4%)、「自由さや気楽さを失いたくない」(男性25.5%、女性31.1%)、「結婚資金が足りない」(男性30.3%、女性16.5%)などとなっている。また、同調査によれば、理想の子供数を持たない理由について、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」を6割の方が挙げており、特に妻の年齢が30歳未満で83.3%、30~34歳で76.0%となっている一方、妻の年齢の上昇とともに年齢・身体的理由(高年齢で生むのは嫌だから、欲しいけれどもできないから)が高くなっている(第1-1-15図参照)。18歳から34歳の未婚者で結婚を希望する人は約9割いるが、上記の理由等により結婚の希望が実現できていないことや、特に若いうちの経済的理由や30代以降の年齢・身体的理由により理想の子供数を持たない状況にあることから、若者の経済的基盤の安定を図るとともに、結婚に対する取組の支援を行い、若い年齢での結婚・出産の希望が実現できる環境整備に取り組む。

〈具体的な施策の例〉

  • 若者の就労支援や非正規雇用対策の推進などにより若者の雇用の安定を図るとともに、結婚・子育て資金や教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の実施による高齢世代から若者世代への経済的支援の促進や、若年者や低所得者への経済的負担の軽減などにより、若者の経済的基盤の安定を図る。(コラム「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について」参照)
  • 地方自治体、商工会議所等において様々な結婚支援の取組を行っており(コラム「地方自治体による結婚支援の取組事例」参照)、取組が充実するよう、支援を行う。

(3)多子世帯へ一層の配慮を行い、3人以上子供が持てる環境を整備する。

夫婦の約45%が3人以上の子供を持つことを理想としている一方で、国立社会保障・人口問題研究所によれば、1955(昭和30)年生まれの女性のうち子供の数が3人以上である方が約3割であるのに対し、1975(昭和50)年生まれの女性については約15%程度(推計)と低下している。理想の子供数を持たない理由として、第3子以降に関し、71.1%が「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」を理由として挙げるなど、様々な面での経済的負担が第3子以降を持てない最大の理由となっている。3人以上の子供がいる世帯など、多子世帯への配慮については、既に幼児教育・保育に係る保育料の負担の軽減(第2子半額、第3子無償)や、児童手当の第3子以降の増額などの取組を行っているが、全ての子育て家庭を支援していく中で、3人以上子供を持ちたいとの希望を実現するための環境を整備するため、子育て、保育、教育、住居など様々な面での負担軽減の充実や、社会の全ての構成員による多子世帯への配慮の促進に取り組む。

〈具体的な施策の例〉

  • 幼稚園、保育所等の第3子以降の保育料無償化の対象拡大等に向けた検討や多子世帯又は第3子以降を対象とする保育所等の優先利用、住宅政策における多子世帯への配慮なども含め、子育て、保育、教育、住居など様々な面での負担の軽減策の充実に取り組む。
  • 子育て支援パスポート等事業の充実や公共交通機関等における負担の軽減の要請などにより、社会の様々な構成員による多子世帯への配慮を促進する。

(4)男女の働き方改革を進める。

長時間労働などにより、男性の家事・育児への参画が少ないことが、少子化の原因の一つ(第1-1-24図第1-1-25図参照)であり、従来の働き方に関する意識を含めた改革が必要不可欠である。また、「ワーク・ライフ・バランス」や「女性の活躍」の推進により、男女ともに希望すれば働き続けながら子育てができるなど、多様なライフスタイルが選択できる環境をつくることにより、子育てと仕事が二者択一ではなくなり、子供を持つ希望を実現できるようになるとともに、男女が共に働き続けることで若い世帯の経済的基盤が安定することなどの効果が考えられる。このため、長時間労働の是正、人事評価制度の見直しなど経営者・管理職の意識改革、休暇取得などによる男性の出産直後からの育児促進など、男性の意識・行動改革に取り組むとともに、「ワーク・ライフ・バランス」・「女性の活躍」を推進する。

〈具体的な施策の例〉

  • 長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進、人事評価制度の見直しなど経営者・管理職の意識改革、「イクボス」や「子育て」を尊重するような企業文化の醸成などにより働き方の改革を進める。また、男性の育児休業取得や出産直後からの休暇(育児休業に加え、子育て等を目的とした企業独自の休暇制度、年次有給休暇を含む。)の取得を促進するとともに、男性の家事・育児を促進する。
  • 両立支援制度を利用しやすい職場環境の整備、育児休業の取得等を理由とする不利益取扱いの防止、育児休業からの円滑な復帰の支援、有期契約労働者など非正規雇用の労働者に対する支援、テレワークの推進などにより、「ワーク・ライフ・バランス」を推進する。
  • 女性の職業生活における活躍の推進のための法的枠組みの整備、正規・非正規にかかわらず妊娠・出産前後の継続就業の支援、子育て女性等の再就職支援などにより、女性の活躍を推進する。

(5)地域の実情に即した取組を強化する。

少子化の状況や原因は、都市と地方など地域により異なる(第1-1-2図参照)。また、結婚、妊娠・出産、子育ては、人々の暮らしそのものでもある。実効性のある少子化対策を進める上で重要なことは、地域が少子化対策の主役になるという視点を持ち、地域の実情に即した取組を進めていくことである。このため、地域の強みを活かした取組を支援するとともに、少子化対策は地方を創生する上でも極めて重要であり、地方創生と連携した取組を推進する。

【きめ細かな少子化対策の推進】

大綱では、上述の重点課題に加え、長期的視点に立って、きめ細かな少子化対策を総合的に推進することとしており、

  • (1)結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じ、一人一人を支援する。
  • (2)社会全体で行動し、少子化対策を推進する。

を二つの柱としている。

第1-2-13図 少子化社会対策大綱(概要)~結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざして~(つづき)

第1-2-13図 少子化社会対策大綱(概要)~結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざして~(つづき)

(1)結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じ、一人一人を支援する。

(結婚)

結婚に関する希望を実現できるようにするためには、重点課題に掲げた「経済的基盤の安定」や「結婚に対する取組支援」に加えて、さらに総合的な結婚支援の取組が重要である。教育・情報提供やコンサルティングなどを通じて、結婚・出産・子育てや仕事との両立などに関する個人の希望を、より具体的かつ現実的な計画として持つことができるよう支援を行うとともに、結婚や子育てに関する情報について分かりやすくかつ効果的な情報発信を充実する。また、「家族の日」(11月第3日曜日)や「家族の週間」(家族の日の前後1週間)等を通じて、家族や地域の大切さ等について理解の促進を図る。

(妊娠・出産)

母体や子供へのリスクを低減し、安全かつ安心して妊娠・出産ができる環境整備が重要であり、周産期医療の確保・充実、産休中の負担の軽減や産後ケアの充実を始め、「子育て世代包括支援センター」の整備などにより、妊娠から子育てまでの切れ目のない支援体制を構築していく。「子育て世代包括支援センター」は、妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対して総合的相談支援を提供するワンストップ拠点であり、同センターにおいて、保健師等の専門職等が全ての妊産婦等の状況を継続的に把握し、必要に応じて支援プランを作成することにより、妊産婦等に対し切れ目のない支援の実施を図る。

また、妊娠中や出産後も、職場等において必要な配慮を受けながら仕事を継続できることが、妊娠・出産の安心につながることから、マタニティハラスメント防止の取組を充実させる。

不妊治療や不育症治療に関する情報提供や相談体制を強化するための不妊専門相談センターの整備、不妊治療に係る経済的負担の軽減を図るための助成など、不妊治療等への支援を行う。

(子育て)

子育てへの不安が大きいことが、少子化の要因の一つであり、様々な不安や負担を和らげ、全ての子育て家庭が、安全かつ安心して子供を育てられる環境を整備することが重要である。このため、重点分野に掲げた子ども・子育て支援新制度等の子育て支援の充実や、多子世帯への一層の配慮に加え、様々な取組を行う。

理想の子供数を持たない理由として最も多くの方が挙げていることが、子育てや教育にお金がかかりすぎることであり、教育を含む子育ての経済的負担を緩和させるため、児童手当の支給、幼児教育の無償化の段階的実施、高校生等への修学支援、高等教育段階における教育費負担軽減策の充実等に取り組む。

また、三世代同居・近居の促進や特定非営利活動法人、企業等による支援など多様な主体による子や孫育てに係る支援を充実させ、子育てしやすい環境を整備する。さらに、子育てしやすい住宅の整備や、小児医療の充実、地域の安全を向上させる取組により、子供が健康で、安全かつ安心に育つ環境を整備する。

貧困の状況にある子供への支援、ひとり親家庭支援、児童虐待の防止や社会的養護の充実、障害のある子供等への支援、ニート、引きこもり等の子供・若者への支援、様々な事情により遺児となった子供への支援など、様々な家庭・子供への支援を推進する。

(教育)

結婚、妊娠・出産、子育て、仕事を含めた将来のライフデザインを希望どおり描けるようにするためには、その前提となる知識・情報を適切な時期に知ることが重要である。一方で、妊娠適齢期等に関する知識について、日本は他の先進国等と比べて国際的に低い水準であったという調査結果がある。子供を産み育てたいという人々の希望が実現できるようにするため、妊娠や出産などに関する医学的・科学的に正しい知識について、学校教育において適切な教材に盛り込み、教職員の研修を行うことに加えて、家庭や地域での教育、婚姻届提出時や成人式などの機会を活用した、教育課程修了後の社会人等に対する情報提供が行われるよう取組を進める。(コラム「不妊治療と妊娠・出産に関する医学的・科学的に正しい知識の普及啓発について」参照)

(仕事)

結婚、妊娠・出産、子育ての各段階のいずれにおいても、就労を望む場合に、望むタイミングで望む働き方ができるという希望がかなう環境を整備することが重要である。また、若い世代が安心して働ける職場を新たに生み出すことも必要である。このため、個々人の希望を踏まえた正社員化の促進や処遇改善、子供を持ちながら働き続けることができるロールモデルなどの提示、地方創生と連携した地域における雇用の創出などを進める。

(2)社会全体で行動し、少子化対策を推進する。

(結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会づくり)

安心して妊娠・出産、子育てをする上で、妊娠中の方や子供連れで外出する際に生じる様々な支障を取り除き、外出しやすい環境を整備することが重要である。こうした環境整備は、若い世代が妊娠・出産、子育てに対して前向きに考えることにもつながる。このため、マタニティマーク、ベビーカーマークの普及など、妊娠中や子育て時のバリアフリー化を進めるとともに、地域において子供連れにお得なサービスを提供する取組の全国展開などを行う。こうした取組により、結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現に向かっていると考える人の割合が50%以上となることを数値目標として掲げている。

(企業の取組)

少子化対策を推進するに当たり、企業の果たす役割は大きい。従業員が安心して結婚し、子供を生み育てながら働き続けられる環境を整備するとともに、企業が地方自治体や特定非営利活動法人と連携して少子化対策に取り組んでいくことが重要である。このため、次世代育成支援対策推進法も活用し、企業の少子化対策や両立支援の取組の「見える化」や先進事例を他企業へ波及させるための情報共有を進めるとともに、企業が少子化対策に積極的になるインセンティブを付与する取組を進める。(コラム「次世代育成支援対策推進法の延長・拡充」「企業における取組事例」参照)

【施策の推進体制】

本大綱に基づき、「少子化対策集中取組期間」において、国は、内閣総理大臣のリーダーシップの下、政府一体となって早期・集中的な少子化対策に取り組む。また、2015(平成27)年4月から発足する「子ども・子育て本部」を中心に、全省庁を挙げて少子化対策に取り組む体制を構築する。

また、少子化対策の成果について、しっかりと検証・評価を実施するため、国民や住民から分かりやすい形での「見える化」を進めるとともに、 個別施策について2020(平成32)年を目途とした数値目標を設定するとともに、その進捗をフォローアップすることとしている。数値目標の主なものは、第1-2-14図のとおりである。

さらに、大綱については、おおむね5年後を目途に見直しを行うこととしている。

第1-2-14図 少子化社会対策大綱(概要)~結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざして~(つづき)

第1-2-14図 少子化社会対策大綱(概要)~結婚、妊娠、子供・子育てに温かい社会の実現をめざして~(つづき)

地方創生(まち・ひと・しごと創生)

(1)背景

我が国の人口は2008(平成20)年をピークに減少に転じ、今後急速なスピードで減少することが予想されているが、その程度や要因は地域ごとに異なっている。地方では、出生率の低下に加え、3大都市圏、特に東京圏への若い世代を中心とした転出により、年少人口の減少が加速している。さらに過疎地においては既に高齢者でさえも減少に転じている地域がみられる。他方、大都市圏では出生率が地方に比べて低い傾向がある(第1-1-2図参照)。大都市圏の若者の集中が、日本全体の人口減少を一層進行させている。このまま地方が弱体化すれば、地方から大都市への人口流入もいずれなくなり、地方・都市共々衰退することになりかねない。

こうした待ったなしの状況に対処するためには、「東京一極集中」を是正し、地方での自発的な取組を進め、地域特性に即した課題解決を図るとともに、若い世代の就労・結婚・子育ての希望を実現することが求められる。残された時間や選択肢は決して多くない中、国民全体で危機感を共有しつつ地方創生に取り組み、この問題に対する回答を見出す必要がある。

(2)主な取組の経緯について

2014(平成26)年9月3日に発足した第2次安倍改造内閣は、新たに地方創生担当大臣を任命するとともに、同日、閣議決定により、「まち・ひと・しごと創生本部」を内閣に設置した。さらに、同年9月12日には、同本部として「基本方針」をまち・ひと・しごと創生本部として決定し、年内に、「長期ビジョン」と「総合戦略」を取りまとめることとした。

さらに、「まち・ひと・しごと創生法案」を臨時国会に提出し、11月には成立、公布・施行した。同法においては、「まち・ひと・しごと創生」を「国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会の形成、地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保及び地域における魅力ある多様な就業の機会の創出を一体的に推進すること」とし、基本理念や国・地方公共団体の責務等を定めるとともに、まち・ひと・しごと創生総合戦略を定めること等を規定している。また、これまでは閣議決定を根拠としていた「まち・ひと・しごと創生本部」を同法に基づく本部とした。

第1-2-15図 まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」が目指す将来の方向

第1-2-15図 まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」が目指す将来の方向

2014年12月27日、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」(以下「長期ビジョン」という。)と「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(以下「総合戦略」という。)を閣議決定した。長期ビジョンは、日本の人口の現状と将来の姿を示し、人口減少を巡る問題に関する国民の認識の共有を目指すとともに、今後、目指すべき将来の方向を提示することを目的としている。

また、総合戦略は、2015(平成27)年度を初年度とする今後5年間の目標や施策の基本的方向、具体的な施策をまとめたものであり、その付属文書である「アクションプラン(個別施策工程表)」においては、個別施策の「成果目標」と「緊急的取組・2015年度の取組・2016年度以降の取組」を盛り込んでいる。

第1-2-16図 まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」と「総合戦略」の全体像

第1-2-16図 まち・ひと・しごと創生「長期ビジョン」と「総合戦略」の全体像

地方公共団体においては、長期ビジョン及び総合戦略を勘案し、「地方版総合戦略」を策定・推進していくこととしている。

さらに、2014年度補正予算において、地域住民生活等緊急支援のための交付金(4,200億円)を計上し、地方公共団体の地方創生の取組を支援している。

まち・ひと・しごと創生長期ビジョン

長期ビジョンでは、まず、人口問題について国民の認識の共有が最も重要であるとして、2008(平成20)年以降の人口減少の速度が加速度的に高まり、2020年代初めには毎年60万人程度の減少となり、2040年代頃には、毎年100万人程度の減少スピードになるという推計を説明するとともに、人口減少は地方から始まり、都市に広がっていくことを示している。

そして、「待ったなし」の課題である人口減少への対応に当たり、<1>東京一極集中を是正する、<2>若い世代の就労・結婚・子育ての希望を実現する、<3>地域の特性に即した地域課題を解決する、という3つを基本的視点とすることとしている。

また、「目指すべき将来の方向」として、将来にわたって「活力ある日本社会」を維持することであるとし、その実現のために、人口減少に歯止めをかけなければならないとしている。若い世代の希望が実現すると、出生率は1.8程度に向上することが見込まれるとともに、2030年~2040年頃に出生率が人口置換水準(2.07)まで回復するならば、2060(平成72)年に総人口1億人程度を確保し、その後2090年頃には人口が定常状態になることが見込まれることを示している。

まち・ひと・しごと創生総合戦略

地域経済・雇用対策や少子化対策はこれまでもその時々の状況を踏まえ実施され、個々の対策としては一定の成果を上げたものの、大局的には地方の人口流出が止まらず少子化に歯止めがかかっていない。こうした問題意識の下、「総合戦略」の検討に際して、昨年10月、まち・ひと・しごと創生本部事務局内に基本政策検討チームを設置し、各府省庁担当者だけでなく地方公共団体関係者や有識者からヒアリングや意見交換を行った上で、従来の政策の検証が行われた。その結果として、(1)府省庁・制度ごとの「縦割り」構造、(2)地域特性を考慮しない「全国一律」の手法、(3)効果検証を伴わない「バラマキ」、(4)地域に浸透しない「表面的」な施策、(5)「短期的」な成果を求める施策が要因としてあげられた。このため、「まち・ひと・しごと創生」に向けた政策5原則を定め、これに基づいて、施策の整理・検証を進め、「総合戦略」をとりまとめている。

【「まち・ひと・しごと創生」政策5原則】
  • <1>自立性:各施策が一過性の対症療法的なものにとどまらず、構造的な問題に対処し、地方公共団体・民間事業者・個人等の自立につながるようなものであるようにする。
  • <2>将来性:地方が自主的かつ主体的に、夢を持って前向きに取り組むことを支援する施策に重点を置く。
  • <3>地域性:国による画一的手法や「縦割り」的な支援ではなく、各地域の実態に合った施策を支援することとする。
  • <4>直接性:限られた財源や時間の中で、最大限の成果を上げるため、ひとの移転・しごとの創出やまちづくりを直接的に支援する施策を集中的に実施する。
  • <5>結果重視:効果検証の仕組みを伴わないバラマキ型の施策は採用せず、明確なPDCAメカニズムの下に、短期・中期の具体的な数値目標を設定し、政策効果を客観的な指標により検証し、必要な改善等を行う。
【基本目標】
  • (1)2020年までの5年間で地方での若者雇用30万人分創出などにより、「地方における安定的な雇用を創出する」、
  • (2)現状、東京圏に10万人の転入超過があるのに対して、これを2020年までに均衡させるための地方移住や地方出身者の地元での就職率向上などにより、「地方への新しいひとの流れをつくる」、
  • (3)若い世代の経済的安定や、「働き方改革」、結婚・妊娠・出産・子育てについての切れ目のない支援などにより、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」、

また、併せて、この好循環を支える「まち」の活性化として、

  • (4)中山間地域等、地方都市、大都市圏各々の特性に応じた地域づくりなどにより、「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」、

    これらの基本目標ごとに政策5原則に基づいて精査された政策パッケージがまとめられ、それら全てについて具体的な目標やKPIが設定され、事後的な検証を行うPDCAサイクルが組み込まれている。

〈基本目標<3>〉「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」においては、2020年の目標として、

  • 安心して結婚・妊娠・出産・子育てできる社会を達成していると考える人の割合 40%以上(2013年度 19.4%)
  • 第1子出産前後の女性の継続就業率 55%(2010年度 38%)
  • 結婚希望実績指標 80%(2010年度 68%)
  • 夫婦子ども数予定実績指標 95%(2010年度 93%)

などの目標を定めている。

【政策パッケージ】

総合戦略において、国は、「政策パッケージ」の形で、地方が「地方版総合戦略」を策定・実施していくに当たり必要と考えられる支援策を用意している。「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」という基本目標については、(ア)若い世代の経済的安定、(イ)妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援、(ウ)子ども・子育て支援の充実、(エ)仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現(「働き方改革」)の4分野について、2020年までに達成すべき重要業績評価指標(KPI)と、主な施策を記載している。

〈主な施策〉

(ア)若い世代の経済的安定

  • <1>若者雇用対策の推進、「正社員実現加速プロジェクト」の推進
  • <2>「少子化社会対策大綱」と連携した結婚・妊娠・出産・子育ての各段階に対応した総合的な少子化対策の推進

(イ)妊娠・出産・子育ての切れ目のない支援

○「子育て世代包括支援センター」の整備、周産期医療の確保等

(ウ)子ども・子育て支援の充実

○ 子ども・子育て支援の充実(「子ども・子育て支援新制度」の円滑かつ持続的な実施、事業主負担を含め社会全体で費用を負担する仕組みの構築、幼児教育の無償化に向けた取組を財源を確保しながら段階的に実施するなど教育費負担の軽減、社会全体で多子世帯を支援する仕組みの構築や「三世代同居・近居」の支援)

(エ)仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現(働き方改革)

○ 長時間労働の見直し、転勤の実態調査等(育児休業の取得促進、所定外労働時間の削減・年次有給休暇の取得促進・企業の先進的取組の普及支援等の長時間労働を抑制するための総合的な取組、勤務地や職務を限定した多様な正社員の普及、転勤の実態調査を含む働き方の見直し)

【地方におけるまち・ひと・しごと創生の取組への支援】

地方公共団体においては、国が取りまとめた「長期ビジョン」及び「総合戦略」を勘案しながら、「地方人口ビジョン」及び「地方版総合戦略」を策定し、実施していく。地方公共団体が自ら考え、責任を持って戦略を推進していけるよう、国は、「地域経済分析システム」による「情報支援」、「地方創生人材支援制度」や「地方創生コンシェルジュ制度」による「人的支援」、「地域住民生活等緊急支援のための交付金」や、税制・地方財政措置による「財政支援」を切れ目なく展開してくこととしている。

地域住民生活等緊急支援のための交付金は、平成26年度補正予算に4,200億円を計上した。この交付金は生活支援型(2,500億円)と地方創生先行型(1,700億円)の2種類があり、前者については多子世帯支援が、後者については少子化対策がメニュー例として示されている。

第1-2-17図 地方への多様な支援と「切れ目」のない施策の展開

第1-2-17図 地方への多様な支援と「切れ目」のない施策の展開

第1-2-18図 地域住民生活等緊急支援のための交付金の概要

第1-2-18図 地域住民生活等緊急支援のための交付金の概要

コラム 地方自治体による結婚支援事業の取組事例

兵庫県では、少子化の要因の一つである「未婚化・晩婚化」対策、あるいは「若者の自立」支援策として、社会全体で「出会い・結婚」を応援していく必要があることから、1999(平成11)年度に、県内の農山漁村に住む男性と、都市部の女性との出会いの場を創出する「こうのとりの会」を発足。また、2006(平成18)年には、県の出会い・結婚支援事業の拠点施設となる「ひょうご出会いサポートセンター」を開設し、以来、県民の多様なニーズに対応すべく、様々な事業を展開してきた。ここでは、それらの各種取組を紹介する。

ひょうご縁結びプロジェクト(個別お見合い紹介事業)(2011(平成23)年2月~)

独身の男女に対し1対1のお見合いの機会を提供する事業。

会員登録(登録手数料5,000円/年、プロフィール等をシステムへ登録)すれば、県内各地域10か所に設置された「地域出会いサポートセンター」において、プロフィール検索やお見合いをすることができる。

本事業は、開始以降順調に推移し、成婚実績も2014(平成26)年度末には403組に到達した。

「あいサポ」イベント事業

独身の男女が気軽に参加できる出会いイベントの機会を提供する事業。

会員登録(無料)すれば、県内のホテル、レストラン、旅行代理店等の協賛団体が企画するイベントに参加することができる。イベントの内容は、一般的なパーティー形式なものから、ハイキングや料理教室、スポーツ観戦など、バラエティに富み、コミュニケーションが図りやすい企画情報を提供している。また、農山漁村に住む男性と都市部の女性とのイベントも引き続き実施している。

こうのとり大使による活動

センターの事業を広く地域で普及啓発するとともに、各地域の独身男女の出会いを支援する「こうのとり大使」を任命している。現在、県知事から委嘱を受けた約600名の大使が、県内各地でボランティアとして活動している。

「婚活力アップ講座」や「大学生向けライフプランセミナー」等の実施

成婚までの過程で必要となるコミュニケーション能力や交際マナー等の向上を目的とした「婚活力アップ講座」や、結婚観や家庭観を醸成し、早い段階から自らのライフプランを描いてもらうための「大学生向けライフプランセミナー」を開催するなど、側面的な支援も行っている。

これらの取組の結果、2014(平成26)年度、171組が成婚し、2015(平成27)年4月には、通算で成婚数1,000組を突破した。

また、新たな取組として、2015年度、東京出張所の開設も予定するなど、多様なニーズに応じた多彩な事業を展開していく。

コラム 地方自治体による結婚支援事業の取組事例の写真

コラム 不妊治療と妊娠・出産に関する医学的・科学的に正しい知識の普及啓発について

医学的には男性、女性ともに妊娠・出産に適した年齢があることが指摘されており、女性については、30代半ば頃から、年齢が上がるにつれて流産、死産のほか、妊娠に伴う参加合併症として妊娠高血圧症候群、前置胎盤等の様々なリスクが高くなるとともに、出産に至る確率が低くなっていくことが明らかになっている。

近年、我が国においては、結婚年齢、妊娠・出産年齢の上昇や、医療技術の進歩に伴い、体外受精を始めとする不妊治療を受ける方が年々増加してきている。一方で、年齢が高くなるほど、不妊治療を行ったとしても出産に至る確率が下がることが明らかになっている。

不妊治療を受けた方の中には、こうした事実を知らなかったことから、妊娠・出産の時期を遅らせた結果、不妊治療を受けることになった方や、治療の開始が遅れてその効果が出にくくなった方もいるとみられている。

もとより、子供を生むのか生まないのか、いつ生むのか等、妊娠・出産に係る意思決定は、個人が自らの意思で行うことである。

こうした認識の下、希望する妊娠・出産を実現できるためには、妊娠に関する医学的・科学的に正しい知識を持つことが重要である。

このため、少子化社会対策大綱(2014(平成26)年3月20日閣議決定)において、妊娠や出産などに関する医学的・科学的に正しい知識について、学校教育から家庭、地域、社会人段階に至るまで、教育や情報提供に係る取組を充実させることとしている。

コラム 不妊治療と妊娠・出産に関する医学的・科学的に正しい知識の普及啓発についてのグラフ

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