第2部 少子化社会対策の具体的実施状況
第1章 重点課題
第1節 子育て支援施策を一層充実させる。
1 子ども・子育て支援新制度の円滑な実施
地域の実情に応じた幼児教育・保育・子育て支援の質・量の充実
社会保障・税一体改革においては、社会保障に要する費用の主な財源となる消費税(国分)の充当先が、従来の高齢者向けの3経費(基礎年金、老人医療、介護)から、少子化対策を含む社会保障4経費(年金、医療、介護、少子化対策)に拡大されることとなった。
この子育て分野の受け皿となる、新たな次世代育成支援のための包括的・一元的な制度の構築については、少子化社会対策基本法第7条に基づく大綱(「子ども・子育てビジョン」)においても検討することとされ、政府法案を2012(平成24)年通常国会に提出した。その後、国会の審議過程で認定こども園制度の改善など、修正等がなされ、同年8月10日、子ども・子育て関連3法(「子ども・子育て支援法」、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律」、「子ども・子育て支援法及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」)が成立し、同月22日に公布された。
子ども・子育て関連3法に基づく子ども・子育て支援新制度(以下「新制度」という。)では、「保護者が子育てについての第一義的責任を有する」という基本的な認識のもとに、幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援を総合的に推進することとしている。具体的には、<1>認定こども園、幼稚園、保育所を通じた共通の給付(「施設型給付」)及び小規模保育等への給付(「地域型保育給付」)の創設、<2>認定こども園制度の改善、<3>地域の実情に応じた子ども・子育て支援の充実を図ることとしている。実施主体は基礎自治体である市町村であり、地域の実情等に応じて幼児期の学校教育・保育、地域の子ども・子育て支援に必要な給付・事業を計画的に実施していくこととしている。
新制度の2015(平成27)年4月からの施行開始に向け、これまで、新制度における施設・事業の各種基準の策定や、給付額の算定基準となる公定価格の単価提示等の取組を行ってきたところである。また、2015年度予算においては、消費税10%への引上げが2017(平成29)年4月に延期されたものの、所要の量的拡充のみならず、消費税10%への引上げにより確保する0.7兆円程度の財源の確保を前提に実施を予定していた「質の向上」に係る事項を全て実施するために必要な予算が計上されたところである。
加えて、2014(平成26)年度は、新制度への円滑な移行を図るため、市町村の行う保育緊急確保事業を支援した。この中で小規模保育支援等の待機児童解消加速化プランの推進や、放課後児童クラブの充実等の新制度における「地域子ども・子育て支援事業」の先行的な実施を図っている。
また、新制度の施行にあわせて、内閣府に「子ども・子育て本部」を設置し、認定こども園、幼稚園、保育所に対する共通の給付や小規模保育等への給付等の財政支援を内閣府に一本化することとしている。一方で、学校教育法体系及び児童福祉法体系との整合性を確保する観点から、文部科学省及び厚生労働省と引き続き密接な連携を図りながら事務を実施していくこととしている。
地域のニーズに対応した多様な子育て支援の充実
1)利用者支援事業
子育て家庭や妊産婦が、教育・保育施設や地域子ども・子育て支援事業、保健・医療・福祉等の関係機関を円滑に利用できるよう、身近な場所での相談や情報提供、助言等必要な支援をするとともに、関係機関との連絡調整、連携・協働の体制づくり等を行う「利用者支援事業」を新制度施行にあわせて創設した(2014(平成26)年度は、保育緊急確保事業として実施)。
本事業は子育て家庭の個別ニーズを把握し、教育・保育施設及び地域子育て支援事業等の利用に当たっての情報集約・提供、相談、利用支援・援助を行う「利用者支援」及び子育て支援などの関係機関との連絡調整、連携・協働の体制づくりを行い、地域の子育て資源の育成、地域課題の発見・共有、地域で必要な社会資源の開発等を行う「地域連携」の主に2つの機能があり、その両方を実施する「基本型」と、主に「利用者支援」のみを実施する「特定型」、保健師等の専門職が全ての妊産婦等を対象に「利用者支援」と「地域連携」をともに実施する「母子保健型」の3つの類型を設け、妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対して支援を図っている。
2)地域子育て支援拠点の設置促進
子育て家庭等の負担感・不安感を軽減するため、育児不安に対する相談・援助や、親子が気軽に集うことのできる場の提供等を行う「地域子育て支援拠点事業」を促進しており、子ども・子育てビジョン策定時点において約7,100か所であった地域子育て支援拠点(市町村単独分を含む)は、2013(平成25)年度において8,201か所で実施されている。
また、幼稚園が、地域の実態や保護者の要請などを踏まえ、地域における幼児期の教育のセンターとしての役割を果たすため、例えば、子育て相談の実施、子育てに関する情報 の提供、未就園児の親子登園の実施、保護者同士の交流の機会の提供、園庭・園舎の開 放、子育て公開講座の開催、地域の子育てサークル等との交流などの子育て支援活動を 実施する際に支援を行っている。このような子育て支援活動を実施している幼稚園の割合 は、2011(平成23)年度現在、約87%になっている。
3)一時預かり、幼稚園の預かり保育
(1)一時預かり事業の推進
就労形態の多様化に対応する一時的な保育や、専業主婦家庭等の緊急時における保育等の一時預かりサービスに対する需要に対応するため、一時預かり事業を実施している(2014(平成26)年度実施か所数:8,803か所)。
また、新制度の施行に伴い、2015(平成27)年度から、事業の普及を図るため事業類型等を見直し、<1>一般型(基幹型加算を含む。)、<2>余裕活用型、<3>幼稚園型、<4>居宅訪問型に再編した。
(2)幼稚園における預かり保育の推進
幼稚園の通常の教育時間(標準4時間)の前後や長期休業期間中などに、地域の実態や保護者の要請に応じて、希望する人を対象に 行われる「預かり保育」を実施する幼稚園に対して支援を行っている。近年の女性の社会 進出の拡大、都市化、核家族化などを背景として、多様化する保護者のニーズに伴い、「預かり保育」への要望が増加していることを受け、2008(平成20)年3月には幼稚園教育要領を改訂し、教育活動として適切な活動となるようその充実を図った。
2012(平成24)年6月現在、「預かり保育」を実施している幼稚園の割合は、約81%になっている。
4)多様な保育サービスの提供
多様な保育ニーズに対応するため、延長保育、夜間保育、病児保育等についても、引き続き推進を図っている。なお、新制度においては、延長保育、病児保育については、「地域子ども・子育て支援事業」に位置付けられた。また、家庭的保育及び事業所内保育については、新たに市町村の認可事業(地域型保育事業)として地域型保育給付の対象となるとともに、夜間保育及び特定保育については、新たに施設型給付費により対応することとなった。
(1)延長保育
保護者の就労形態の多様化等に伴う延長保育の需要に対応するため、11時間の開所時間を超えて保育を実施する事業であり、当該事業を実施している民間保育所に対して必要な補助を行っている(2013(平成25)年度実施か所数:18,150か所(うち公立5,489か所、民間12,661か所))。
(2)夜間保育
おおむね午後10時頃まで開所する夜間保育所に対して必要な補助を行っている(2014(平成26)年度実施か所数:85か所)。
(3)病児保育
保護者が就労している場合等において、子供が病気の際や病気の回復期に、自宅での保育が困難な場合がある。こうした保育需要に対応するため、病院・保育所等において病気の児童を一時的に保育するほか、保育中に体調不良となった児童への緊急対応並びに病気の児童の自宅に訪問し一時的に保育する等により、安心して子育てができる環境を整備し、もって児童の福祉の向上を図ることを目的とする病児保育事業を実施している(2014(平成26)年度実施か所数:1,839か所)。
(4)特定保育
保護者の就労形態の多様化(パート就労の増大等)に伴う子供の保育需要の変化に対応するため、週2、3日程度又は午前か午後のみなど必要に応じて柔軟に利用できる保育として特定保育事業を実施してきたところ(2014(平成26)年度実施か所数:1,586か所)。子ども・子育て支援新制度においては、新たに施設型給付費(保育短時間認定)として必要な補助を行う。
(5)事業所内保育
事業所内保育施設については、労働者のための保育施設を事業所内に設置・運営及び増築等を行う事業主又は事業主団体に、その費用の一部を助成している(2013(平成25)年度助成件数:765件)。
(6)家庭的保育
保育需要の増加に対応するため、保育所等と連携しながら、保育者の居宅等において少人数の就学前児童を保育する(2013(平成25)年度実施児童数:4,465人)。また、複数の家庭的保育者が同一の場所で実施する「グループ型小規模保育事業」については、2015(平成27)年度から「小規模保育事業(C型)」として実施することとなった。
5)ファミリー・サポート・センターの普及促進
乳幼児や小学生等の児童を有する子育て中の労働者や主婦などを会員として、送迎や放課後の預かりなどの相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置促進を行っている。2013(平成25)年度は738か所で実施されている。
また、2009(平成21)年度からは、病児・病後児の預かり、早朝・夜間等の緊急時の預 かりなどの事業(病児・緊急対応強化事業)を行っている。2013年度は132か所で実施さ れている。
(2013年度末現在の会員数:援助を受けたい会員466,287人、援助を行いたい会員123,173人、両方会員43,595人)