第2部 少子化社会対策の具体的実施状況
第2章 きめ細かな少子化対策の推進
第1節 結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じ、一人一人を支援する。
3 子育て
(子育ての経済的負担の緩和・教育費負担の軽減)
児童手当の支給
子育て世帯に対する現金給付については2012(平成24)年3月に改正された、児童手当法(昭和46年法律第73号)により、同年4月から新しい制度による児童手当が支給されている。
〈制度内容〉
○支給対象
中学校修了まで(15歳に達した日以後最初の3月31日まで)の児童を養育している方
○支給額(児童1人当たりの月額)
- 所得制限未満の場合
3歳未満 一律15,000円
3歳以上小学校修了前 10,000円
(第3子以降は15,000円)
中学生 一律10,000円 - 所得制限以上の場合
一律5,000円(当分の間の特例給付)
○所得制限
960万円未満(収入ベース)
※夫婦と児童2人の場合
※所得制限は、2012年6月分から適用
○給付総額
約2兆2,299億円(2015年度予算ベース)
幼児教育の無償化の段階的実施
幼稚園については、幼稚園に通う園児の保護者に対する経済的負担の軽減や、公私立幼稚園間における保護者負担の較差の是正を図ることを目的として、入園料や保育料を減免する「就園奨励事業」を実施している地方公共団体に対して、文部科学省がその所要経費の一部を補助している。2014(平成26)年度は、幼稚園と保育所の負担の平準化を図る観点から、保育所と同様に、生活保護世帯の保育料を無償化するとともに、第2子の保護者負担を半額とした上で所得制限を撤廃し、第3子以降の保護者負担無償化についても、所得制限を撤廃している。
高校生等への修学支援
いわゆる高校授業料無償化制度については、2014(平成26)年度から、低所得世帯の生徒への支援や公私間の教育費格差の是正に充てる財源を捻出するため、受給資格要件として、所得制限を設ける制度に改正した。「市町村民税所得割額1」が30万4,200円(年収910万円程度)以上の世帯については、授業料の負担が必要となるが、捻出された財源は、以下の低所得者支援と公私間格差の是正のための施策等に充てることとしている。具体的には、まず、私立学校等の就学支援金の加算の拡充を行った。私立高校生には公立高校の授業料相当の年額約12万円が就学支援金として支給されていたが、年収約250万円未満の世帯の加算を2倍から2.5倍に、年収約250万円から約350万円未満の世帯の加算を1.5倍から2倍に拡充した。また、年収約350万円から約590万円未満の中間所得世帯についても、1.5倍を支給する。また、授業料以外の教育費に関して、国公私立を問わず、低所得世帯の生徒に対する支援として、返済不要の「高校生等奨学給付金(奨学のための給付金)」という新たな補助事業を創設した。加えて、高校未設置の離島の高校生に対する「離島高校生修学支援事業」を拡充した。
1 市町村民税所得割額は、両親の合算。また、年収は両親のうちどちらか一方が働き、高校生1人(16歳以上19歳未満)、中学生1人の4人世帯の場合の目安。以下の年収の目安においても同様。
高等教育段階における教育費負担軽減策の充実等
意欲と能力のある学生等が、経済的理由により進学等を断念することがないよう安心できる環境を整備することは重要である。このため、日本学生支援機構が実施する大学等奨学金事業について、充実に努めているところである。
2014(平成26)年度予算においては、無利子奨学金の新規貸与者を1万2千人増員するとともに、日本人学生の海外留学のための奨学金制度の充実、経済困難を理由とする返還期限猶予制度の制限年数の5年から10年への延長、延滞金賦課率の10%から5%への引下げなど、真に困窮している奨学金返還者に対する救済措置を充実するなど、奨学金制度の改善充実を図ることとしている。国公立大学においては、全大学で授業料免除制度を整備しており、経済的理由などにより、授業料の納付が困難である者などを対象に、修学継続を可能にし、教育を受ける機会を確保している。また、私立学校が行う経済的に修学困難な学生等への授業料減免等を支援している。
(多様な主体による子や孫育てに係る支援)
祖父母等による支援
都市再生機構賃貸住宅においては、子育て世帯や子育て世帯との近居を希望する支援世帯に対して、新築賃貸住宅の募集(抽選)時の当選倍率を20倍に優遇し、また、既存賃貸住宅の募集(先着順)時には、子育て等世帯と支援する親族の世帯の双方が、同一駅圏内(概ね半径2km以内)の都市再生機構賃貸住宅に近居することとなった場合、新たに入居する世帯の家賃を一定期間、割り引く近居促進制度を実施している。
商店街の空き店舗、小中学校の余裕教室、幼稚園等の活用による地域の子育ての拠点づくり
(1)商店街の空き店舗の活用
かつて地域経済の中心であった商店街は、近年、事業環境の変化により停滞傾向にあり、空き店舗の増加等が顕著になっている。商店街の活性化は、地域経済の活性化、地域コミュニティの形成にとって重要な要素であることから、空き店舗等を活用し、地域における子育て支援や親子交流等の機能を担う場の設置を促進することにより、商店街の活性化を図っている例がみられる。
(2)小中学校の余裕教室や幼稚園の活用
近年、少子化に伴う幼児児童生徒数の減少により、学校施設において、クラスルーム等の普通教室としての利用以外にも様々な用途に活用できるゆとりが生じている。学校施設は、地域住民にとって身近な公共施設でもあることから、学校教育に支障がない範囲内で、地域の実情や需要に応じて積極的に活用することが望ましいと考えられる。
このため、小中学校の余裕教室や幼稚園を地域における子育て支援や親子交流の機能を担う場として活用することは有効であると考えられる。
具体的な取組としては、国庫補助を受けて整備された公立学校施設を転用する場合、補助事業完了後10年以上経過していれば国庫納付金を不要とする財産処分手続の大幅な弾力化や、活用事例を紹介したパンフレット作成により、余裕教室の有効活用を促している。
(子供が健康で、安全かつ安心に育つ環境整備)
子育てしやすい住宅の整備
融資、税制を通じた住宅の取得等の支援
良質な持家の取得を促進するため、住宅金融支援機構における証券化支援事業のフラット35Sにより、耐久性・可変性等に優れた住宅に係る金利引下げを行っている。また、住宅ローン減税等の税制措置を講じている。
良質なファミリー向け賃貸住宅の供給促進
子育て世帯等を対象とする公的賃貸住宅の的確な供給や民間賃貸住宅への円滑な入居の支援等の各種施策を一体的に推進し、良質なファミリー向け賃貸住宅の供給を促進している。
地域優良賃貸住宅制度では、賃貸住宅の整備等に要する費用や家賃の減額に要する費用に対し、地方公共団体が助成を行う場合、国としても支援を行っている(2012(平成24)年度末時点管理実績約17.5万戸)。
都市再生機構の民間供給支援型賃貸住宅制度では、機構が整備した敷地を民間事業者に定期借地し、民間事業者による良質なファミリー向け賃貸住宅等の建設・供給を支援している(2013年度末現在で約10,800戸)。
その他、高齢者等が所有する戸建て住宅等を、広い住宅を必要とする子育て世帯等へ賃貸することを円滑化することへの支援や、子育て世帯等の入居を受け入れることとしている民間賃貸住宅の情報提供等の居住支援を行っている。
公的賃貸住宅ストックの有効活用等による居住の安定の確保
公営住宅においては、子育て世帯等について、入居者の選考に際し、地域の実情を踏まえた事業主体の判断により優先入居の取り扱い及び入居収入基準の緩和を行っている。都市再生機構賃貸住宅においては、子育て世帯や子育て世帯との近居を希望する支援世帯に対して、新築賃貸住宅の募集(抽選)時の当選倍率を20倍に優遇し、また、既存賃貸住宅の募集(先着順)時には、子育て等世帯と支援する親族の世帯の双方が、同一駅圏内(概ね半径2km以内)の都市再生機構賃貸住宅に近居することとなった場合、新たに入居する世帯の家賃を一定期間、割り引く近居促進制度を実施している。
公的賃貸住宅と子育て支援施設との一体的整備等の推進
大規模な公営住宅の建替えに際して社会福祉施設等を原則として併設することを求めるとともに、公的賃貸住宅と子育て支援施設等を一体的に整備する事業や子育て世帯等の居住の安定確保に資する先導的な取組に対し、国が直接支援を行っている。
また、市街地再開発事業等において施設建築物内に保育所等を導入した場合の補助等を行っている。
街なか居住等の推進
都心における職住近接により子育て世帯を支援するため、都市部や中心市街地における住宅供給を誘導・促進している。
〈小児医療の充実〉
小児医療の充実
小児医療については、今後の我が国の社会を担う若い生命を守り育て、また、保護者の育児面における安心の確保を図る観点から、休日・夜間を含め、小児救急患者の受入ができる体制の整備が重要となっている。
このため、都道府県が定める医療計画を通じて、小児医療を担う医療機関の機能分担と連携を促進している。特に小児救急医療については、初期救急では、小児初期救急センター、入院を要する救急(二次救急)では、二次医療圏単位で当番制等により小児救急対応が可能な病院を確保する小児救急医療支援事業2や、複数の二次医療圏ごとに小児救急患者を受け入れる病院を確保する小児救急医療拠点病院2、さらに、救命救急(三次救急)では、小児の救命救急医療を担う小児救命救急センターや、急性期にある小児への集中的専門的医療を行う小児集中治療室の整備等の実施を支援している。
また、小児の急病時の保護者等の不安解消等のため、小児の保護者等に対し小児科医等が電話で助言等を行う小児救急電話相談♯8000は、休日・夜間の急な子供のケガや病気に対する家族の判断を助けるためのサービスである。全国共通のダイヤル(#8000)に電話をすることで、看護師や小児科医による緊急度判定とともに、ホームケアや医療機関案内などの情報提供を受けることができる。電話相談体制の整備により、地域の小児救急医療体制の補強と医療機関の機能分化を推進し、患者の症状に応じた適切な医療提供体制を構築することを目的として、2004(平成16)年度より開始され、2010(平成22)年度より全都道府県で事業展開されている。2013(平成25)年度は全国で約56万8千件の相談が寄せられており、2014(平成26)年現在29府県で深夜も実施されている。さらに、小児医療については、近年の累次の診療報酬改定において重点的な評価が行われているところであり、2014(平成26)年度診療報酬改定においても、例えば、先天奇形等を有する新生児について、新生児特定集中治療室管理料等の算定日数上限を延長するなどの措置を講じたところである。
加えて、国民健康保険の資格証明書の取扱いについて、2009(平成21)年4月から資格証明書の交付世帯における中学生以下の被保険者については、資格証明書を交付せず、有効期間が6か月の被保険者証を交付していたが、2010(平成22)年7月からはこの措置の対象を高校生世代まで拡大している。
2 小児救急医療支援事業、小児救急医療拠点病院及び小児救急電話相談事業に対する支援は、2013(平成25)年度まで補助金であったが、2014(平成26)年度より医療提供体制のための新しい財政支援制度において実施可能となっている。
小児慢性特定疾病対策等の充実
(1)小児慢性特定疾病の医療費助成等
2015(平成27)年1月より、児童福祉法の一部を改正する法律(平成26年法律第47号)が施行され、小児慢性特定疾病(※)にかかっている児童等について、健全育成の観点から、患児家庭の医療費の負担軽減を図るため、その医療費の自己負担分の一部を助成する事業を開始した。
(※)以下の<1>~<4>の要件を全て満たし、厚生労働大臣が定めるもの
<1>慢性的に経過する疾病であること、<2>生命を長期に脅かす疾病であること、<3>症状や治療が長期にわたって生活の質を低下させる疾病であること、<4>長期にわたって高額が医療費の負担が続く疾病であること
給付の対象となる疾患は、<1>悪性新生物、<2>慢性腎疾患、<3>慢性呼吸器疾患、<4>慢性心疾患、<5>内分泌疾患、<6>膠原病、<7>糖尿病、<8>先天性代謝異常、<9>血液疾患<10>免疫疾患、<11>神経・筋疾患、<12>慢性消化器疾患、<13>染色体又は遺伝子に変化を伴う症候群及び、<14>皮膚疾患の14疾患群である。また、養育のため病院又は診療所に入院することを必要とする未熟児に対し、その養育に必要な医療の給付等を行っている。
(2)小児慢性特定疾病児童等の自立支援
幼少期から慢性的な疾病にかかっているため、学校生活での教育や社会性の涵養に遅れが見られ、自立を阻害されている児童等について、地域による総合的な支援により自立の促進を図るための、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業を2015(平成27)年1月から実施している。
予防接種の推進
予防接種は、感染症の発生及び流行から国民を守る極めて有効な手段であり、我が国の感染症対策上大きな役割を果たしてきたところである。今後も、予防接種の機会を広く確保するとともに、予防接種施策を適切に実施していくことが重要である。
2013(平成25)年3月の「予防接種法」(昭和23年法律第68号)改正では、新たにHib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウイルス感染症の三ワクチンが定期接種に位置付けられた。また、予防接種に関する基本的な計画の策定、副反応報告制度の定化、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会の設置等の取組が進んだ。引き続き、先進諸国と比べて公的に接種するワクチンの数が少ない、いわゆる「ワクチン・ギャップ」の問題の解消に向け、厚生科学審議会等において「広く接種を促進していくことがのぞましい」とされた水痘、成人用肺炎球菌の二ワクチンについて定期接種化に向けた準備を進めるとともに、おたふくかぜ、B型肝炎の二ワクチンの取扱いについても検討を行う等、予防接種制度の見直し及び充実を図る。
こころの健康づくり
2008(平成20)年度から、経験豊かな退職した養護教諭をスクールヘルスリーダーとして、経験の浅い養護教諭の配置校へ定期的に派遣し、校内での教職員に対する研修、個別の対応が求められる児童、生徒への対応方法等に関する指導等を実施するとともに、スクールヘルスリーダーによる情報交換・知見の向上を図ること等により、児童、生徒が抱える現代的な健康問題に適切に対処できる環境の整備を図っている。
また、子供の日常的な心身の健康状態を把握し、健康問題などについて早期発見・早期対応を図ることができるよう、教員を対象とした指導参考資料を作成するとともに、養護教諭、スクールカウンセラー等を対象に、子供の心のケアの効果的な対応方法等に関するシンポジウムの開催や、児童生徒の心のケア等を図るため、スクールカウンセラーの活用など学校における教育相談体制の充実に努めている。
さらに、児童思春期におけるこころの健康づくり対策としては、児童思春期におけるこころのケアの専門家の養成研修事業を行っており、精神保健福祉センター、児童相談所等では児童思春期の専門相談を実施している。
加えて、様々な子供の心の問題、被虐待児の心のケアや発達障害に対応するため、都道府県域における拠点病院を中核とし、各医療機関や保健福祉機関等と連携した支援体制の構築を図るための事業を2008年度より3か年のモデル事業として実施してきたところであり、2011(平成23)年度以降においては、本モデル事業の成果を踏まえ、「子どもの心の診療ネットワーク事業」として事業の本格実施を行っている。
〈子供の健やかな育ち〉
学校の教育環境の整備等
幼児教育については、「教育基本法」(昭和22年法律第25号)等の改正や、近年の子供の育ちや社会の変化を踏まえ、2008(平成20)年3月に幼稚園教育要領の改訂を行い、2009(平成21)年4月から実施している。幼稚園教育の一層の理解推進を図るため、国及び都道府県において、幼稚園長や幼稚園教諭等を対象とした協議会を開催するとともに、幼児教育の改善・充実のための調査研究を実施し、幼児教育の質の向上を図っている。
また、2010(平成22)年には、「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議」において、子供の発達と学びの連続性を踏まえた幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について検討を行い、同年11月に報告書が取りまとめられた。さらに、2011(平成23)年11月には、第三者評価を含め幼稚園の特性に応じた学校評価を推進するため、「幼稚園における学校評価ガイドライン」を改訂した。
保育所については、子供の視点に立ったサービスの向上を目指し第三者評価事業を推進している。2004(平成16)年5月には、保育を含む福祉サービスの第三者評価事業の普及を図るため、第三者評価事業の推進体制や評価基準の指針を定めた。さらに、保育所の特性に着目した評価基準の指針について、2005(平成17)年5月に通知を発出、2011年3月に一部改正し、周知を図った。また、2009年に告示化された保育所保育指針において、保育所及び保育士の自己評価について、努力義務を新たに定め、2009年3月に「保育所における自己評価ガイドライン」を作成した。
2008(平成20)年3月に小・中学校の学習指導要領を、2009(平成21)年3月に高等学校・特別支援学校の学習指導要領などの改訂を行った。学習指導要領では、子供たちに知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」を育むことをねらいとして、授業時数の増加や指導内容の改善を図っており、2011(平成23)年4月から小学校等、2012(平成24)年4月から中学校等において全面実施、高等学校等においては2013(平成25)年度入学生から年次進行で実施されている。
また、学校の教育環境の根幹である教職員配置については、2011年度及び2012年度に、公立小学校1・2年生の35人以下学級に必要な教職員定数の増を図った。2014(平成26)年度においては、少子化等に伴い教職員定数が減少する一方で、小学校英語の教科化や、特別支援教育の充実のために必要な教職員定数703人の増を図ったほか、補充学習など学力向上等のため、約8,000人の学校サポーターを活用する補習等のための指導員等派遣事業を2013年度に引き続き実施している。
地域ぐるみで子供の教育に取り組む環境の整備
学校、家庭及び地域住民等がそれぞれの役割と責任を自覚しつつ、未来を担う子供たちを健やかに見守り育むことにより、地域や家庭の教育力の向上を図るため、学校支援地域本部や放課後子供教室、家庭教育支援など、地域住民の参画による教育支援の取組を全国で推進している。
(1)学校支援地域本部
地域住民がボランティアとして学校の教育活動を支援し、地域全体で子供を育てる体制づくりを行う学校支援地域本部を2008(平成20)年度より実施しており、学校や地域の実情に応じ、地域住民による学校支援のための様々な活動が行われている(2014(平成26)年度実施か所数:3,746本部)。
(2)地域の豊かな社会資源を活用した土曜日の教育活動の推進
2014(平成26)年度より全ての子供たちの土曜日の教育活動の充実のため、地域の多様な経験や技能を持つ人材・企業等の協力により、土曜日に体系的・継続的な教育プログラムを企画・実施する取組を支援し、教育支援体制の構築を図っている(2014(平成26)年度実施か所数:4,845校)。
(3)放課後子供教室
放課後等に、学校の余裕教室等を活用して、全ての子供を対象として、安全・安心な活動拠点(居場所)を設け、地域の方々の参画を得て、学習活動やスポーツ・文化芸術活動等の体験活動、地域住民との交流活動等の機会を提供する放課後子供教室を実施している(2014年(平成26)度実施か所数:11,991教室)。
(4)家庭教育支援
身近な地域において、全ての親が家庭教育に関する学習や相談ができる体制が整うよう、家庭教育支援チームの組織化等による相談対応、保護者への学習機会や親子参加行事の企画・提供などの家庭教育を支援する活動を実施している(2014(平成26)年度実施か所数:3,344か所)。
また、地域住民、学校、行政、特定非営利活動法人、企業等の協働による社会全体での家庭教育支援の活性化を図るため、効果的な取組事例等を活用した全国的な研究協議を行っている。2014年度においては、全国家庭教育支援研究協議会「これからの時代の家庭教育支援の在り方~つながりが創る豊かな家庭教育~」を開催し、全国的な啓発を行った。そのほか、地域人材を活用した「家庭教育支援チーム」による支援を更に普及し、より効果的な取組を促進するため、ロゴマークの提供等を含む家庭教育支援チームの登録制度の見直しを行った。さらに、家庭教育の基盤となる、食事や睡眠などを始めとする子供の基本的な生活習慣の定着を図るため、「早寝早起き朝ごはん」国民運動を推進している。独立行政法人国立女性教育会館においては、「女性情報ポータル“Winet”(ウィネット)」において、育児・子育て支援に関する情報を提供している。
いじめ防止対策の推進
いじめは、いじめを受けた子供の教育を受ける権利を著しく侵害し、その心身の健全な成長と人格の形成に重大な影響を与えるのみならず、その生命や身体に重大な危険を生じさせるおそれがあるものであるが、どの子供にも、どの学校でも起こり得るものである。
2013(平成25)年6月に成立したいじめ防止対策推進法を踏まえ、文部科学省では同年10月、「いじめの防止等に関する基本的な方針」を策定した。「いじめの防止等のための普及啓発協議会」や、教員を対象とした「いじめの問題に関する指導者養成研修」を開催するなど、同法や方針の周知に取り組んでいる。
また、教育再生実行会議の第一次提言及びいじめ防止対策推進法を踏まえ、いじめの未然防止、早期発見・早期対応や教育相談体制の整備及びインターネットを通じて行われるいじめへの対応を充実するため、2013年度から「いじめ対策等総合推進事業」を実施し、いじめの防止等のための措置を推進している。
スクールサポーターによるいじめ防止対策の推進
退職した警察官等からなるスクールサポーターの学校への訪問活動等により、いじめ事案の早期把握に努めるとともに、把握したいじめ事案の重要性及び緊急性、被害少年及びその保護者等の意向、学校等の対応状況等を踏まえ、学校等と緊密に連携しながら、的確な対応を推進している。2014(平成26)年4月現在、43都道府県で約800人のスクールサポーターが配置されている。
「食育」等の普及・促進及び多様な体験活動の推進
(1)食育の普及促進
2005(平成17)年6月に制定された「食育基本法」(平成17年法律第63号、同年7月施行)において、子供たちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性を育んでいく基礎となるものと位置付けられたところである。
食育基本法では、食育推進会議(会長:内閣総理大臣)が食育推進基本計画(以下この項目において「基本計画」という。)を作成することとされており、2006(平成18)年度から2010(平成22)年度を対象とする最初の基本計画が2006年3月に決定され、これに基づき食育の推進に関する各種施策が行われてきたところである。
なお、2011(平成23)年3月には、2011年度から2015(平成27)年度の5年間を期間とする新たな基本計画が決定され、2013(平成25)年12月には一部改定がなされたところである。
<1>国民運動としての食育の推進
食育基本法の趣旨から、子供たちに対する食育が重要であるとの認識の下、基本計画に基づき、家庭、学校、保育所、地域等において、国民的広がりを持つ運動として食育を推進している。基本計画は、食育推進運動を重点的かつ効果的に実施し、食育の国民への浸透を図るため、毎年6月を「食育月間」として定めている。内閣府では、実施要綱を策定して全国的な推進を図るとともに、2014(平成26)年6月に長野県長野市において第9回食育推進全国大会を開催するなど、食育に関する国民の理解の促進に努めたところである。
また、若い世代の食生活の改善に尽力したボランティアを対象として「食育推進ボランティア表彰」を実施している。2014年度は、10の優秀事例を内閣府特命担当大臣から表彰した。
<2>家庭における食育の推進
「平成17年度乳幼児栄養調査」において、幼児(4歳未満)の約1割に朝食の欠食がみられるなど、乳幼児のいる家庭への食育の必要性が明らかになった。また、「健やか親子21」において食育を推進し、2013(平成25)年の最終評価では、地方公共団体や関係機関等と連携した食育の取組は着実に増加した。なお、2015(平成27)年度からスタートする「健やか親子21(第2次)」においても、子供の生活習慣の形成という観点から、引き続き、朝食を欠食する子供の割合を減らす取組を進める他、家族など誰かと食事をする子供の割合を増やす取組などもあわせて推進していくこととしている。
<3>学校等における食育の推進
学校における食育を推進するためには、学校における指導体制の整備が不可欠である。2005(平成17)年4月に制度化された栄養教諭は、各学校の指導体制の要として、教育に関する資質と栄養に関する専門性を生かして、学校給食の管理を行うとともに、食に関する指導を一体として担うことにより、教育上の高い相乗効果をもたらすことが期待されており、食育の推進に大きな効果を上げている。2014(平成26)年4月現在で、全ての都道府県において5,023人の栄養教諭が配置されている。このほかにも、
- 全国の全ての小学校1年生・3年生・5年生、中学生を対象とした「食生活学習教材」を作成し、配布及びホームページで公開、
- 栄養教諭を中核として、学校、家庭、地域が連携しつつ、学校における食育を推進するための事業の展開など、各種事業を継続的に実施し、学校における食育の推進に努めている。
また、2008(平成20)年3月には、小中学校の学習指導要領の改訂を行い、その総則において、「学校における食育の推進」を明確に位置付けるとともに、家庭科(技術・家庭科)や体育科(保健体育科)、総合的な学習の時間、特別活動など、関連する教科等においても食育に関する記述を充実した。併せて、幼稚園教育要領の改訂も行われ、領域「健康」において、食育の観点からの記述を充実した。
さらに、2009(平成21)年4月には、改正学校給食法(平成20年法律第73号)を施行し、第1条(この法律の目的)において、「学校における食育の推進」を明記するとともに、栄養教諭が学校給食を活用した食に関する指導を行うことや、校長が食に関する指導の全体計画を作成するなど、必要な措置を講ずることを規定した。
児童福祉施設における食事は、入所する子供の健やかな発育・発達及び健康の維持・増進の基盤であるとともに、望ましい食習慣及び生活習慣の形成を図るなど、その果たす役割は極めて大きい。そこで、2009年度に改定された「日本人の食事摂取基準」(2010年版)を受けて、児童福祉施設における食事の提供及び栄養管理のあり方について、子供の健やかな発育・発達を支援する観点から、具体的な食事計画の作成や評価など栄養管理の手法について、専門家による検討を行い、2010年3月に「児童福祉施設における食事の提供ガイド」を取りまとめた。
なお、保育所における食育の推進については、2009年4月に施行された、新たな保育所保育指針(厚生労働省告示第141号)に位置付けられている。
<4>地域における食生活の改善等のための取組の推進
ごはんを中心に、魚、肉、牛乳・乳製品、野菜、海藻、豆類、果物、茶など多様な副食などを組み合わせ、栄養バランスに優れた「日本型食生活」などの健全な食生活の実践や農林漁業体験を通じて食や農林水産業への理解を深める教育ファームなどの食育活動を支援した。さらに、学校給食への地場産物の活用など、地域の特性を活かした取組を促進している。
(2)消費者教育・金融教育等の普及・促進
消費者が被害に遭わないようにし、自らの利益の擁護及び増進のため自主的かつ合理的に行動できる存在となるため、あるいは自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画し、その発展に寄与する存在となるためには、消費者教育(消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育)が重要である。そのような消費者教育を総合的かつ一体的に推進するために、2012(平成24)年12月に「消費者教育の推進に関する法律」(平成24年法律第61号)が施行され、消費者庁に審議会として消費者教育推進会議を置いた(同法第19条)。また、同法に基づき2013(平成25)年6月28日に「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(基本方針)が閣議決定された(同法第9条)。同基本方針の「今後検討すべき課題」を消費者教育推進会議に置かれた3つの小委員会(消費者市民育成小委員会、情報利用促進小委員会、地域連携推進小委員会)で検討し、2015(平成27)年3月に取りまとめを公表した。また、消費者教育ポータルサイトにより、幼児期・小学生期・中学生期・高校生期・成人期(特に若者・成人一般・特に高齢者)というライフステージごと、消費者市民社会の構築、商品等の安全、生活の管理と契約、情報とメディアという領域ごとに、消費者教育用教材や取組事例を提供する等を行っている。
さらに、学校教育においては、2008(平成20)年3月に小・中学校、2009(平成21)年3月に高等学校の学習指導要領を改訂し、例えば、中学校の技術・家庭科において、消費者の基本的な権利と責任について指導することとするなど、消費者教育に関する内容の充実を図った。社会教育においては、2010(平成22)年度に策定した「大学等及び社会教育における消費者教育の指針」の周知や、多様な主体の連携・協働を促進する場である「消費者教育フェスタ」の開催等により、消費者教育の推進を図った。今後も、消費者教育の推進に関する法律や消費者基本計画(2015(平成27)年3月24日閣議決定)、学習指導要領などを踏まえ、学校・家庭・地域における消費者教育を推進することとしている。
また、金融経済教育については、金融リテラシーの向上を通じて、国民一人一人が経済的に自立し、より良い暮らしを送っていくことを可能とするため、例えば、2014(平成26)年6月に金融庁や関係団体から構成される金融経済教育推進会議において、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の内容を項目別・年齢層別に具体化・体系化した「金融リテラシー・マップ(以下マップという)」を公表した。このマップに基づき、金融経済教育の取組を進め、金融リテラシーの向上を図っている。
(3)地域や学校における体験活動、文化・芸術活動
少子化の進展、家庭や地域社会の教育力の低下などの様々な問題が指摘される中、特に、子供たちの精神的な自立の遅れや社会性の不足が顕著になっていることから、次世代を担う子供たちが、規範意識や社会性、他人を思いやる心などを身に付け、豊かな人間性を育むよう、発達の段階などに応じた様々な体験活動の機会を充実させることが求められている。
このため、2001(平成13)年7月には、「社会教育法」(昭和24年法律第207号)、2006(平成18)年6月には「学校教育法」(昭和22年法律第26号)を改正し、青少年に対しボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動、その他の体験活動の充実を図ることが明確化されている。
<1>地域における体験活動の推進
放課後や週末等に小学校の余裕教室等を活用して、子供たちの安全・安心な活動拠点(居場所)を設け、地域の多様な方々の参画を得て、学習活動やスポーツ・文化芸術活動等の体験活動、地域住民との交流活動等の機会を提供する放課後子供教室を実施している。
また、次代を担う青少年の育成を図るため、家庭や企業などへ体験活動に対する理解を求めていくための普及啓発を推進するとともに、青少年の体験活動の評価・顕彰制度の創設や「企業CSRシンポジウム」を開催して企業が社会貢献活動の一環として行う青少年の体験活動の表彰と実践事例の普及等に取り組んでいる。加えて、地域において、家庭・学校・青少年関係団体、特定非営利活動法人等をネットワーク化し、相互の活動情報の交換や事業の共同実施等を円滑化するための「地域プラットフォーム」の形成を支援している。さらに、独立行政法人国立青少年教育振興機構において、全国28か所にある国立青少年教育施設における青少年の体験活動の機会と場の提供や指導者の養成、民間団体が実施する体験活動等に対する「子どもゆめ基金」事業による助成などを通して、青少年の体験活動を推進している。
<2>学校における体験活動の推進
学校教育において児童生徒の健全育成を目的として様々な創意工夫のある農山漁村等における体験活動が行われており、それらの取組を支援している。
<3>文化・芸術活動
子供たちが本物の実演芸術や伝統文化に触れ、日頃味わえない感動や刺激を直接体験することにより、豊かな感性と創造性を育むとともに、我が国の文化を継承、発展させる環境の充実を図るため、子供たちが、小学校・中学校等において、文化芸術団体や芸術家による実演芸術公演を鑑賞し、ワークショップ等を体験することを通じて、子供たちの豊かな感性や発想力を育む取組を推進している。その他、全国高等学校総合文化祭を、2014(平成26)年度は7月に茨城県で開催した。
(4)自然とのふれあい
優れた自然の風景地である国立公園等において、子供たちに自然や環境の大切さを学んでもらえるよう、自然保護官(レンジャー)やパークボランティアの指導・協力の下、自然の中でのマナーの習得、自然環境の再生保全活動などを行う機会を提供している。また、「インターネット自然研究所」や「自然大好きクラブ」などのウェブサイトにより、様々な自然とのふれあいの場やイベント、自然体験活動プログラム等に関する情報を幅広く提供している。
(5)農村漁業体験や都市と農村漁村との交流体験
農山漁村における宿泊体験活動等を通じて子供たちの生きる力を育む「子ども農山漁村交流プロジェクト」を推進している。また、国有林野では、優れた自然景観を有し、森林浴や自然観察、野外スポーツ等に適した森林を「レクリエーションの森」として設定(2014(平成26)年4月1日現在、1,080か所)し、広く国民へ提供するなどの取組を行っている。また、青少年の農山漁村等における自然体験活動を推進するため、青少年が農林水産業体験や自然体験などを通して社会性や主体性を育む交流体験活動等の事業を支援している。
(6)子供の遊び場の確保(公園、水辺、森林)
子供が身近な自然に安心してふれあうことができ、安全で自由に遊べる場所を地域に確保することは、子供の健全な育成のために重要である。子供の遊び場としての役割が求められ都市公園については、各種運動施設や遊戯施設等を有し、手軽にスポーツやレクリエーションを楽しむことができる公園などの整備を推進している。また、都市部にある下水処理場の上部空間や雨水排水路、雨水調整池などを活用した水辺空間の整備を進めるとともに、下水再生水を都市部のせせらぎ水路の水源として送水する等の取組により、都市内において子供たちが水とふれあう場の整備を行っている。河川空間については、身近な水辺等における環境学習・自然体験活動を推進するため市民団体や教育関係者、河川管理者等が一体となった取組体制の整備とともに、水辺での活動に必要な機材(ライフジャケット等)の貸出しや学習プログラムの紹介など、水辺での活動を総合的に支援する仕組みを構築し、必要に応じ、水辺に近づきやすい河岸整備等(水辺の楽校プロジェクト:2013(平成25)年度末285か所登録)をはじめとする「『子どもの水辺』再発見プロジェクト」(2013年度末298か所登録)を実施している。
〈地域の安全の向上〉
災害時の乳幼児等の支援
地方自治体において、総合防災訓練大綱に基づき、乳幼児、妊産婦等を含む要配慮者の参加を得ながら防災訓練を実施している。また、2013(平成25)年6月の災害対策基本法改正において避難所における生活環境の整備等に関する努力義務規定が設けられ、その取組を進める上で参考となるよう主に市町村向けに避難所運営に当たって被災した乳幼児、妊産婦等の要配慮者の支援に関して留意すべき点等も盛り込んだ「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」を内閣府が策定・公表した。2014(平成26)年度においては、同取組指針の実施状況を把握するため、各市町村に対して調査を行うとともに、都道府県等の防災担当者や福祉担当者を対象とする同取組指針の説明や先進的な取組事例の紹介などを実施し、周知徹底を図った。
子供の事故防止
2009(平成21)年12月より、子供の不慮の事故を予防するため、「子どもを事故から守る!プロジェクト」を展開している。具体的には、2010(平成22)年9月より、子供の年齢(月齢)ごとに起こりやすい事故及びその予防策等を、携帯サイト2及びパソコン用ホームページ3で紹介するとともに、子供の不慮の事故を防ぐための注意点や豆知識を、メール配信サービス「子ども安全メールfrom消費者庁」として、毎週1回配信している。また、2011(平成23)年3月より、子供のけがの体験談やけがを防ぐための工夫を募集し、ホームページで紹介している。
さらに、2013(平成25)年1月にはプロジェクトのシンボルキャラクター「アブナイカモ」とテーマソング「おしえてね アブナイカモ」を公表して各地で開催される子供関連イベントに出席するなど、親しみやすい啓発活動を行っている。
(1)遊び場の安全対策の推進
都市公園における遊具については、安全確保に関する基本的な考え方を示した「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」を2014(平成26)年6月に改訂し、各施設管理者への周知徹底を図っている。また、社会資本整備総合交付金等により、子供の遊び場となる都市公園における公園施設の改築等の安全・安心対策に対する支援を実施している。
(2)建築物等の安全対策の推進
建築物や昇降機等における子供の事故を防止し安全を守るためには、建築物等に要求される性能水準を維持し、常時適法な状態に保つことが必要であり、このため、多数の者が利用する特定の特殊建築物等について、建築物等の所有者等による維持保全計画の作成、定期報告制度等を通じ、適切な維持保全及び必要な改修を促進している。
また、類似の事故防止のため、ホームページにより事故情報の提供を行うとともに、社会資本整備審議会建築分科会建築物等事故・災害対策部会及び同審議会昇降機等事故調査部会において、建築物等に係る事故情報について継続的に分析・検討を行い、建築物等の事故防止を図っている。
幼稚園・保育所等における事故の発生・再発防止
2014(平成26)年11月28日に「教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会」の中間とりまとめを公表した。中間とりまとめを踏まえ、重大事故の情報の国への集約の在り方等を、「特定教育・保育施設等における事故の報告等について」において通知した。また、特定教育・保育施設等における事故の発生・再発防止のためのガイドラインや、事故発生時の対応マニュアルについて検討し、策定する。
交通安全教育等の推進
家庭及び関係機関・団体等との連携・協力を図りながら、幼児や小・中・高校生に対し、子供の発達段階に応じた交通安全教育を推進している。
また、チャイルドシートの正しい使用の徹底や、幼児二人同乗用自転車の安全利用の普及、児童又は幼児が自転車に乗車する際のヘルメット及び幼児を自転車に乗せる場合のシートベルトの着用促進などを図っている。
学校においては交通安全に関し、学習指導要領等に基づき、体育・保健体育の時間はもとより、関連する教科・領域や道徳、総合的な学習の時間、特別活動及び自立活動など、教育活動全体を通じて計画的かつ組織的な指導に努めている。
犯罪等の被害の防止
警察においては、子供を対象とした強制わいせつ等の暴力的性犯罪で服役し出所した者について、法務省から情報提供を受け、対象者を訪問して所在確認を行い、必要があれば同意を得て面談を行うなど再犯防止に向けた活動を推進しているほか、都道府県警察本部に設置された「子供女性安全対策班」の活動を始めとする性犯罪等の前兆とみられる声掛け、つきまとい等の段階で行為者を特定し、検挙・指導警告等の措置を講ずる活動を推進している。
また、防犯ボランティア等によるパトロール活動や「子ども110番の家」の活動に対する支援、不審者情報等の迅速な発信及び共有に努めているほか、学校等と連携した被害防止教育、スクールサポーターの派遣等を推進している。
さらに、2014(平成26)年度においても、子供たちが安心して教育を受けるために、学校安全ボランティア等を効果的に活用する仕組みを整備することにより、地域社会全体で、子供の安全を見守る体制の充実を図っている。
文部科学省においては、通学路等で子供たちを見守る体制を強化するため、スクールガード・リーダーの配置やスクールガードの養成、防犯教室の講師となる教職員を対象とした都道府県教育委員会が実施する講習会への支援など、子供が犯罪被害に遭わないための取組を推進している。
(1)インターネットに係る有害環境から子供を守るための取組の推進
インターネットに起因する子供の犯罪被害等を防止するため、関係機関・団体等と連携し、携帯電話事業者に対する保護者へのフィルタリング等の説明強化に関する要請のほか、入学説明会等の機会を捉えた保護者に対する啓発活動や子供に対する情報モラル教育の推進等の取組を推進している。また、文部科学省では、インターネット上のマナーや家庭でのルール作りの重要性を保護者等に対して周知するための学習・参加型のシンポジウムの開催や児童生徒向けの普及啓発資料の作成・配布等を実施している。
特に、コミュニティサイトの利用に起因する犯罪から子供を守るため、警察庁及び関係省庁では、上記の取組のほか、ミニメールの内容確認を始めとするサイト内監視体制の強化及びサイト事業者等への実効性あるゾーニング(サイト内において悪意ある大人を児童に近づけさせないように携帯電話事業者の保有する利用者年齢情報を活用し、大人と児童とのミニメールの送信や検索を制限すること。)の導入に向けた働きかけを行っている。
(2)「安全・安心まちづくり」の推進
警察においては、関係省庁・関係団体等と連携し、防犯に配慮した犯罪の発生しにくい公園、道路、駐輪場等の公共施設等の整備・管理の普及を促進し、併せて、住宅についても防犯に配慮した住宅や防犯性能の高い建物部品の開発・普及を促進するなど犯罪防止に配慮した環境設計を行うことにより、犯罪被害に遭いにくい「安全・安心まちづくり」を推進している。また、子供に対する犯罪の発生が懸念される学校周辺、通学路、公園、地下道、空き家等における危険箇所の把握・改善等の取組を支援するとともに、防犯灯や防犯カメラの整備を促進するなど、子供が犯罪被害に遭いにくいまちづくりを推進している。
子供の健康に影響を与える環境要因の解明
近年、環境中の化学物質等が子供の心身の健康に与える影響への懸念が広がっている。
環境省は、環境中の化学物質等が子供の健康に与える影響を解明するため、2010(平成22)年度より、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を行っている。このエコチル調査は、全国の10万組の親子の協力を得て、血液や尿、母乳などの分析を行うとともに、生まれてくる子供の健康状態を13歳に達するまで追跡する大規模な疫学調査である。調査で得られた生体試料は長期的に保存し、将来的な調査研究にも備える。
この調査は、環境省の企画立案の下に、国立環境研究所がコアセンターとして実施機関となり、国立成育医療研究センターがメディカルサポートセンターとしての医学的支援を行いつつ、全国15地域の大学等によるユニットセンターと協力して実施する。調査期間は、リクルート期間(3年間)と追跡期間(13年間)として、2011(平成23)年1月から2027(平成39)年までを予定している。
2014(平成26)年3月に目標参加登録者数である10万人に到達した。2014年度は、引き続き追跡調査(質問票調査)を実施するとともに、参加者から採取した血液等の生体試料の化学分析及び詳細調査(全国調査10万人の中から抽出された5千人程度を対象として実施する調査)において、ハウスダスト等の環境試料採取を実施している。また、2015(平成27)年度からは、これらに加え、詳細調査において、医師による健康調査、精神発達調査、生体試料採取を実施することとしている。
エコチル調査を実施することで、子供の発育や発達に影響を与える化学物質等の環境要因が明らかになることから、子供特有のばく露や子供の脆弱性を考慮した適正な環境リスク評価・リスク管理を行うことが可能となる。さらには、安全・安心な子育て環境の実現・少子化対策にも資するものである。
(様々な家庭・子供への支援)
〈貧困の状況にある子供への支援〉
子供の貧困対策の推進
OECDでは、2010(平成22)年のOECD加盟国の相対的貧困率を公表しているが、これによると、我が国の相対的貧困率はOECD加盟国34か国中29位と高い水準となっており、子供がいる現役世帯のうち大人が1人の世帯の相対的貧困率が特に高くなっている。
相対的貧困率は可処分所得のみで算定されていることから、この数字だけで貧困の状況全てを測ることはできないが、子供の貧困が解決しなくてはならない状況にあることがうかがえる。
子供の貧困対策については、2013(平成25)年6月に子どもの貧困対策の推進に関する法律が成立し、2014(平成26)年1月17日に施行した。本法では、子供の将来がその生育環境に左右されることのないよう、貧困の状態にある子供が健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図るため、子供の貧困対策を総合的に推進することを目的としている。従来より、生活保護世帯の親子への養育相談・学習支援、子供の居場所づくりの推進や、ひとり親家庭への総合的・包括的な支援など各制度がそれぞれの観点から必要な対策を講じてきたところであるが、本法は、こうした子供の貧困対策を政府が総合的かつ一体となって実施していくため、内閣総理大臣を会長し関係閣僚により構成される「子どもの貧困対策会議」の設置や「子供の貧困対策に関する大綱」を定めることを規定している。政府は、2014年4月に、本法に基づく「子どもの貧困対策会議」を開催し、同会議で「子供の貧困対策に関する大綱」の作成方針を決定し、同年年央を目途に策定を目指すこととした。これを受けて、同年4月から6月にかけて「子供の貧困対策に関する検討会」を開催し、幅広く関係者から意見聴取を行うとともに、総合的な見地から検討・調整を行い、同年8月29日当該大綱を策定(閣議決定)した。大綱では、子供の貧困対策に関する基本的な方針をはじめ、子供の貧困に関する指標、指標の改善に向けた当面の重点施策、子供の貧困に関する調査研究等及び施策の推進体制等を定めている。
また、2015(平成27)年4月2日には、子供の貧困対策を、国民の幅広い理解と協力の下に「子供の未来応援国民運動」として展開していくため、政府、地方公共団体、経済界、労働組合、マスコミ、支援団体等から成る発起人が一堂に会したキックオフイベント「『子供の未来応援国民運動』発起人集会」を開催した。同集会では、国民運動事業の例などを盛り込んだ「子供の未来応援国民運動趣意書」を採択し、今後の国民運動の方向性を示している。
〈ひとり親家庭支援〉
ひとり親家庭への支援を推進する
ひとり親家庭等に対する支援については、
「母子及び父子並びに寡婦福祉法」(昭和39年法律129号)などに基づき、
- <1>保育所の優先入所、日常生活支援事業等の「子育て・生活支援策」、
- <2>母子家庭等就業・自立支援センター事業、母子家庭等自立支援給付金等の「就業支援策」、
- <3>養育費相談支援センター事業の設置等の「養育費の確保策」、
- <4>児童扶養手当の支給、母子父子寡婦福祉資金の貸付けによる「経済的支援策」、
を4本柱とした総合的な自立支援策を展開している。なお、2014(平成26)年4月16日に成立した「次代の社会を担う子どもの健全な育成を図るための次世代育成支援対策推進法等の一部を改正する法律」(平成26年法律第28号)により、2014年10月に「母子及び寡婦福祉法」の法律名が「母子及び父子並びに寡婦福祉法」に改称されるとともに、新たに父子家庭を対象とした福祉資金貸付制度が創設されたほか、高等職業訓練促進給付金・自立支援教育訓練給付金を法律に位置付け、公課禁止、差押え禁止とされた。あわせて、同年12月より、児童扶養手当と公的年金との併給制限が見直され、公的年金の額が児童扶養手当の額を下回る場合は、その差額分の手当を支給できることとされた。
子育て・生活支援
母子及び父子並びに寡婦福祉法において、保育所等の利用調整を行う際のひとり親家庭の子供に対する特別な配慮を地方公共団体に義務付けているほか、従来の放課後児童クラブ、子育て短期支援事業及び一時預かり事業に加えて、2015(平成27)年4月より新たにファミリーサポートセンター事業等の利用についても特別な配慮を地方公共団体に義務付けた。
また、ひとり親が疾病、技能習得のための通学等により、一時的に介護、保育や日常生活に支障が生じた場合に家庭生活支援員(ヘルパー)の派遣等を行うひとり親家庭等日常生活支援事業や、ひとり親家庭に対する育児や健康面等の生活支援に関する相談や講習会の実施、ひとり親家庭の児童の学習支援、児童から気軽に進学相談等を受けることができる大学生等のボランティアの児童の家庭への派遣等の実施、ひとり親家庭が集い、交流や情報交換を行う場所の提供等を行うひとり親家庭等生活向上支援事業を実施している。
就業支援
母子家庭の母等が、よりよい収入・雇用条件等で就労することにより、経済的な自立が図られるようにするため、就業支援を行うことは、非常に重要であり、
- <1>就業相談から就業支援講習会、就業情報の提供等の一貫した就業支援サービス等を提供する母子家庭等就業・自立支援センター事業、
- <2>地方公共団体が指定する教育訓練講座を受講した際に、受講料の一部を支給する自立支援教育訓練給付金事業、
- <3>看護師等の資格取得のために養成機関在学中の生活費の負担を軽減する高等職業訓練促進給付金等事業、
- <4>ひとり親の学び直しを支援することでより良い条件での就職や転職に向けた可能性を広げ、正規雇用を中心とした就業につなげていく高等学校卒業程度認定試験合格支援事業
- <5>個々のひとり親家庭の実情に応じた自立支援プログラムを策定しきめ細かな生活支援や就業支援等を行う母子・父子自立支援プログラム策定事業や、ハローワークと地方公共団体が締結した協定等に基づき、福祉事務所とハローワークが連携して就労支援を行う生活保護受給者等就労自立促進事業
- <6>母子家庭の母等がハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対して、賃金の一部を助成する特定求職者雇用開発助成金、など様々な支援を実施している。
養育費の確保等
離婚したひとり親家庭等にとって養育費の確保は重要であることから、2002(平成14)年の「母子及び寡婦福祉法」の改正により、養育費支払いの責務等を明記するとともに、養育費に関するリーフレット等を配布し扶養義務の履行を確保するための広報を実施している。また、「民事執行法」(昭和54年法律第4号)の改正による強制執行手続の改善が図られてきたところである。
2007(平成19)年度より、地方自治体が設置する母子家庭等就業・自立支援センターに養育費専門相談員を配置し、養育費の取り決めや支払いの履行・強制執行に関する相談・調整や情報提供を行うこととするとともに、国においては養育費相談支援センターを設置し、母子家庭等就業・自立支援センターで受け付けられた困難事例等への対応や、養育費専門相談員等地域で養育費相談に従事している人を対象とする研修、ホームページ等による情報提供を実施している。
2011(平成23)年6月に民法(明治29年法律第89号)が改正され(2012(平成24)年4月1日施行)、協議離婚で定めるべき「子の監護について必要な事項」の具体例として、養育費の分担と親子の面会交流が明示された。面会交流は子の健やかな成長を確保する上で有意義であるなどの観点から、面会交流の実現を支援していく必要がある。このため、2012(平成24)年度から、母子家庭等就業・自立支援事業の新たなメニューとして、取り決めのある面会交流の円滑な実施に向けた支援(相談、日程調整、付添い等)を行う事業を実施し、面会交流に関する相談支援体制の充実も図っている。
経済的支援
ひとり親家庭等の生活の安定と自立の促進に寄与するため、児童扶養手当を支給するほか、ひとり親家庭等の生活や子供の就学に必要な資金等について貸付を行う母子父子寡婦福祉資金貸付金の貸付を行っている。さらに、改正法では、新たに父子家庭を対象とした福祉資金貸付制度が創設された。児童扶養手当法の一部を改正する法律(平成22年法律第40号)により児童扶養手当の支給対象を父子家庭の父にも拡大し(2010(平成22)年8月)、生活保護の母子加算についても引き続き支給した。
〈児童虐待の防止、社会的養護の充実〉
児童虐待防止に向けた普及啓発
2004(平成16)年から毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と位置付け、児童虐待問題に対する社会的関心の喚起を図っており、月間中は、関係府省庁や地方公共団体、関係団体等と連携した集中的な広報・啓発活動を実施している。2014(平成26)年度は、月間標語の公募・決定、「子どもの虐待防止推進全国フォーラム」の開催(11月16日・大分県別府市)、広報用ポスター、リーフレットや児童相談所全国共通ダイヤル紹介しおりの作成・配布、政府広報を活用した各種媒体(ラジオ、インターネットテレビ等)により、児童虐待は社会全体で解決すべき問題であることを周知・啓発した。また、民間団体(児童虐待防止全国ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボン運動」を後援している。
児童虐待の未然防止、重篤化防止のための早期対応
(1)児童虐待防止対策に関する副大臣等会議
児童虐待への対応については、2000(平成12)年11月に施行された「児童虐待の防止等に関する法律」(平成12年法律第82号、以下「児童虐待防止法」という。)及び、「児童福祉法」(昭和22年法律第164号)の累次の改正や民法等の一部を改正する法律(平成23年法律第61号)による親権の停止制度の新設等により、制度的な充実が図られてきた。この間、全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は一貫して増加し、2013(平成25)年度には児童虐待防止法制定直前の約6.3倍に当たる、7万3,802件となっている。子供の生命が奪われるなど重大な児童虐待事件も後を絶たず、虐待による死亡事件も毎年100件程度発生・表面化する中で、児童虐待の防止は社会全体で取り組むべき重要な課題である。
このような状況を踏まえ、2014(平成26)年8月29日に関係府省庁による児童虐待防止対策に関する副大臣等会議が開催され、同年12月26日の同会議において、居住実態が把握できない児童への関係省庁で連携して行う新たな取組と併せて、児童虐待を未然に防ぐとともに、虐待を受けたとしても重篤化する前に迅速に発見し、的確に対応するための対応策について、以下の5項目を柱として取りまとめられた。
- I.妊娠期からの切れ目ない支援のあり方
- II.初期対応の迅速化や的確な対応のための関係機関の連携強化
- III.要保護児童対策地域協議会の機能強化
- IV.児童相談所が、虐待通告や子育ての悩み相談に対して確実に対応できる体制整備
- V.緊急時における安全確認、安全確保の迅速な実施
(2)切れ目のない児童虐待防止対策の推進
児童虐待は、子供の心身の発達及び人格の形成に重大な影響を与えるため、児童虐待の防止に向け、
- <1>虐待の「発生予防」、
- <2>虐待の「早期発見・早期対応」、
- <3>虐待を受けた子供の「保護・自立の支援、保護者への支援」、に至るまでの切れ目のない総合的な支援体制を整備、充実していくことが必要である。
このため、
- <1>発生予防に関しては、生後4か月までの乳児がいる全ての家庭を訪問し、子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握、育児に関する不安や悩みの相談等の援助を行う「乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)」や、養育支援が特に必要であると判断される家庭に対して、保健師・助産師・保育士等が居宅を訪問し、養育に関する相談に応じ、指導、助言等により養育能力を向上させるための支援を行う「養育支援訪問事業」、子育て中の親子が相談・交流できる「地域子育て支援拠点事業」の推進等、
- <2>早期発見・早期対応に関しては、虐待に関する通告の徹底、児童相談所の体制強化のための児童福祉司の確保、市町村の体制強化、専門性向上のための研修やノウハウの共有、「要保護児童対策地域協議会(子供を守る地域ネットワーク)」の機能強化、
- <3>保護・自立の支援、保護者への支援に関しては、社会的養護の質・量の拡充、家族再統合や家族の養育機能の再生・強化に向けた取組を行う保護者支援の推進、親権に係る制度の見直し
などの取組を進めている。
また、児童相談所全国共通ダイヤル(0570-064-000)について、覚えやすい3桁番号にすることで、より広く一般に周知し、児童虐待を受けたと思われる子供を見つけた時などにためらわずに児童相談所に通告・相談ができるように、2015(平成27)年7月1日から、これまでの10桁番号から3桁番号(189)に変更し、運用を開始する。
(3)児童虐待による死亡事例等の検証
児童虐待による死亡事例等について、2004(平成16)年度より、社会保障審議会児童部会の下に設置されている「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」において分析、検証し、事例から明らかになった問題点・課題から具体的な対応策を提言として取りまとめている。2014(平成26)年度においては第10次報告を取りまとめ、望まない妊娠に係る相談体制の充実、相談窓口の周知や、要保護児童対策地域協議会の特性を活かした関係機関における連携の強化、検証報告の積極的な活用による虐待死事例の再発防止などの具体的な対応策の提言を行っている。
(4)学校による取組
学校における児童虐待の早期発見・早期対応体制の充実を図るため、2006(平成18)年、学校等における児童虐待防止に関する国内外の先進的取組について調査研究報告書を取りまとめた。これを踏まえ、教員等向けの研修モデル・プログラムの検討を行い、虐待を受けた子供への支援等について教職員の対応スキルの向上を図るための研修教材を作成し、2009(平成21)年、学校現場においてより幅広い活用が図られるようCD-ROM化し、教育委員会に配布した。
2010(平成22)年3月、文部科学省は、厚生労働省と協議の上、学校等と児童相談所等の相互の連携を強化するため、学校等から児童相談所等への児童の出欠状況等の定期的な情報提供の実施方法等に関する指針を策定し、都道府県・政令指定都市の教育委員会、福祉部門等宛に通知した。2011(平成23)年3月には、同指針に基づく実施状況等を検証し、結果を公表するとともに、2012(平成24)年3月、これらの取組を踏まえ、児童虐待の速やかな通告を一層推進するための留意事項を、都道府県等を通じて、学校教育関係者に通知した。これらの通知を踏まえた早期発見努力義務及び通告義務等については、各種会議を通じて周知徹底を図っている。
また、養護教諭の児童虐待への対応の充実を図る一助とするため、「養護教諭のための児童虐待対応の手引」を作成し、2007(平成19)年12月に配布している。
このほか、児童生徒の相談を受けることができるよう、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用等、教育相談体制の整備を支援している。
社会的養護の充実
社会的養護は、かつては親のない、親に育てられない子供を中心とした施策であったが、現在では、虐待を受けた子供や何らかの障害のある子供への支援を行う施策へと役割が変化しており、一人一人の子供をきめ細やかに支援していけるような社会的資源として、その役割・機能の変化が求められている。
その中で、2010(平成22)年の年末から2011(平成23)年の年始にかけてタイガーマスクの名前で全国各地の児童養護施設等に善意の寄付が相次いだ。社会全体で社会的養護が必要な子供たちを温かく支援していくことが必要であることから、厚生労働省では2011年1月に、「児童養護施設等の社会的養護の課題に関する検討委員会」を開催して、社会的養護の短期的課題と中長期的課題について集中的に検討し、同年7月に、同委員会及び社会保障審議会児童部会社会的養護専門委員会において、「社会的養護の課題と将来像」を取りまとめた。これに沿って、家庭的養護の推進、里親委託・里親支援の推進、施設運営の質の向上、親子関係の再構築の支援、自立支援の充実、子供の権利擁護などを進めている。
家庭的養護の推進
虐待を受けた子供等、家庭での養育に欠ける子供に対しては、可能な限り家庭的な環境の下で愛着関係を形成しつつ養育を行うことが重要であり、原則として、家庭養護(里親、ファミリーホーム)を優先するとともに、児童養護施設等における施設養護も、施設の小規模化、地域分散化を行い、できる限り家庭的な養育環境の形態に変えていく必要がある。
このような観点から、ケア形態の小規模化を図るため、児童養護施設、乳児院、情緒障害児短期治療施設及び児童自立支援施設を対象とした小規模グループケアの実施や、児童養護施設を対象とした地域小規模児童養護施設の設置を進めている。2012(平成24)年11月に厚生労働省雇用均等・児童家庭局長名で「児童養護施設等の小規模化及び家庭的養護の推進について」を各都道府県等あて通知し、施設の小規模化の意義と課題等について取りまとめたほか、ケア形態の小規模化を計画的に推進するため、児童養護施設・乳児院の各施設は施設ごとに施設の小規模化・地域分散化を進める具体的な方策を定めた「家庭的養護推進計画」の策定を求め、都道府県は「都道府県推進計画」を2014(平成26)年度までに策定することとしている。
一方、里親制度においては、要保護児童を里親の家庭に迎え入れ、家庭的な環境の中で養育を行う重要な制度であり、その拡充を図る必要がある。
このため、2011(平成23)年3月には、里親委託優先の原則を明示した「里親委託ガイドライン」を策定した。里親委託率を伸ばしている自治体は、児童相談所への専任の里親担当職員の配置や、里親支援機関の充実、体験発表会や、市町村と連携した広報、特定非営利活動法人や市民活動を通じた口コミなど、様々な努力が行われている。このため、2008(平成20)年度より里親支援機関事業を創設、2012年度より里親支援専門相談員を児童養護施設と乳児院に配置できるようにしたところであり、今後も、里親の孤立化防止など里親支援の体制を整備しながら、里親委託を推進していくこととしている。
現在、日本の社会的養護は、9割が乳児院や児童養護施設、1割が里親やファミリーホームであるが、ケア形態の小規模化や里親制度を推進することにより、今後、十数年かけて、<1>概ね3分の1が里親及びファミリーホームに、<2>概ね3分の1がグループホームに、<3>概ね3分の1が本体施設(児童養護施設は全て小規模ケア)という姿に変えていくこととしている。
施設退所児童等の自立支援策の推進
社会的養護の下で育った子供は、施設等を退所し自立するに当たって、保護者等から支援を受けられない場合が多く、その結果様々な困難に突き当たることが多い。このような子供たちが他の子供たちと公平なスタートが切れるように自立への支援を進めるとともに、自立した後も引き続き子供を受け止め、支えとなるような支援の充実を図ることが必要である。
このため、2009(平成21)年改正後の児童福祉法等においては、児童自立生活援助事業(自立援助ホーム)について、都道府県にその実施を義務付け、費用を負担金で支弁することとした。
また、2010(平成22)年度から、施設を退所した後の地域生活及び自立を支援するとともに、退所した人同士が集まり、意見交換や情報交換・情報発信を行えるような場を提供する「退所児童等アフターケア事業」を実施している。
さらに、施設等を退所する子供等が、親がいない等の事情により身元保証人を得られないため、就職やアパート等の賃借に影響を及ぼすことがないように、2007(平成19)年度から、施設長等が身元保証人となる場合の補助を行う「身元保証人確保対策事業」を実施している。
被措置児童等虐待の防止
施設等に措置された被措置児童等への虐待があった場合には、被措置児童等を保護し、適切な養育環境を確保することが必要である。また、不適切な事業運営や施設運営が行われている場合には、事業者や施設を監督する立場から、児童福祉法に基づき適切な対応が必要となる。
このため、2009(平成21)年に施行された改正児童福祉法では、被措置児童等虐待の防止に関する事項を盛り込み、被措置児童等の権利擁護を図るための仕組みを整備した。また、同年、「被措置児童等虐待対応ガイドライン」を作成し、都道府県の関係部局の連携体制や通告等があった場合の具体的対応等の体制をあらかじめ定めること、都道府県児童福祉審議会の体制を整備することや、関係施設の協議会等との連携・協議を強化し、被措置児童等への周知や子供の権利についての学習機会の確保を図ること等について、都道府県等に対し具体的に示したところである。
社会的養護関係施設における地域支援機能の充実
施設運営の質を向上させるため、「社会的養護の課題と将来像」では、施設種別ごとの運営指針を策定するとともに、社会的養護の施設における第三者評価の義務化、施設長研修の義務化を行うこととされた。これを受け、2011(平成23)年9月に児童福祉施設最低基準を改正し、第三者評価及び施設長研修を義務付けた。
また、2012(平成24)年3月には、児童養護施設、乳児院、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設の5つの施設運営指針と、里親及びファミリーホーム養育指針を策定するとともに、社会的養護関係施設第三者評価の評価基準を策定した。さらに、2012年度予算には、虐待を受けた子供等の増加に対応し、ケアの質を高めるため、社会的養護の施設の児童指導員・保育士等の基本的人員配置を30数年ぶりに引き上げたところであり、引き続き施設機能の充実を進めていくこととしている。
〈障害のある子供等への支援〉
障害のある子供への支援に関して、障害者に関するもっとも基本的な法律である「障害者基本法」には、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、十分な教育を受けられるようにすることや、障害のある子供が可能な限り身近な場所で療育等の支援を受けられるようにすること等を盛り込んでいる。また、政府は、障害の有無にかかわらず国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を実現するため、障害者基本法に基づく「障害者基本計画」に沿って総合的かつ計画的な施策の推進を図っているが、2013年(平成25)年9月には、2011(平成23)年7月成立の改正障害者基本法により内閣府に設置された障害者政策委員会の意見等を踏まえ、2017(平成29)年度までの概ね5年間実施すべき施策をまとめた第3次障害者基本計画を策定した。この中で、教育については、インクルーシブ教育システムを構築することや、療育については、障害児支援の充実などを盛り込んでいる。
さらに2013(平成25)年6月、共生社会の実現に向けて、障害者差別の解消を推進することを目的とした「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が成立した。2015(平成27)年2月24日には、障害者政策委員会でのヒアリング、議論等を経て、同法に基づく、政府における施策の基本的な方向を示す「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」を閣議決定した。
この基本方針には、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する旨や、家庭や学校を始めとする社会のあらゆる機会を活用し、子供の頃から年齢を問わず共に助け合い・学び合う精神を涵養する旨が盛り込まれている。
今後、2016(平成28)年4月の法施行に向けて、基本方針を踏まえて、国の行政機関の長及び独立行政法人等における対応要領、主務大臣における対応指針の作成等を進めるとともに、同法に係る国民への周知広報を行うこととしている。
障害のある子供の保育等
障害のある子供に対して、児童福祉法に基づき、日常生活における基本動作の指導や、集団生活の適応のための支援を行う児童発達支援や保育所等訪問支援を実施している。また、従来から引き続き、家族の休息などができるよう一時的に預かって見守る日中一時支援等を実施している。
また、障害のある子供については、保育所での受入れを促進するため、1974(昭和49)年度より、障害児保育事業において保育所に保育士を加配する事業を実施してきたが、事業開始より相当の年数が経過し、保育所における障害のある子供の受入れが全国的に広く実施されるようになったため、2003(平成15)年度より一般財源化し、2007(平成19)年度より、地方交付税の算定対象を特別児童扶養手当の対象児童から軽度の障害児に広げる等の拡充をしている(2013(平成25)年度実施か所数:15,087か所、対象児童53,322人)。
このほか、障害のある子供を受け入れるにあたり、バリアフリーのための改修等を行う事業や、障害児保育を担当する保育士の資質向上を図るための研修を実施している。
また、幼稚園においても、特別支援教育コーディネーター3の指名などの支援体制を整備するための経費の一部を国が補助するとともに、公立幼稚園において地方財政措置による特別支援教育支援員の配置を進めるなど、障害のある子供の受入れ体制の整備促進を図っているところである。
3 「特別支援教育コーディネーター」とは、各学校における特別支援教育の推進のため、主に、校内委員会・校内研修の企画・運営・関係諸機関・学校との連絡・調整・保護者からの相談窓口などの役割を担う者をいう。
関係機関の連携の強化による支援の実施
障害のある子供やその家族を支えるため、乳幼児期を含めたライフステージに応じた切れ目のない支援を行うことができる地域の支援体制の確立を図ることが必要である。
また、障害のある子供には、その時々に応じて、保健、医療、福祉、教育及び労働など様々な関係者が支援を行うことが必要であり、協議会の活用(子ども部会の設置)等により関係機関や関係者の連携システムを構築していく必要がある。
2015(平成27)年度以降については、障害福祉サービス等において、児童発達支援センター等の専門的療育を実施する事業所と保育所、小学校、就業時における企業等との連携を報酬上評価すること等により関係機関の連携の強化を図ることとしている。
発達障害のある子供への支援の充実
発達障害のある子供への支援については、2005(平成17)年4月に施行された「発達障害者支援法」(平成16年法律第167号)を踏まえ、発達障害のある人の乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援の推進を図るため、保健、医療、福祉、教育及び労働等の制度横断的な関連施策の推進に取り組んでいる。地域生活支援事業の「発達障害者支援体制整備」においては、発達障害のある子供の早期発見に有効とされるスクリーニングツールの導入を促進し、家族対応力の向上を支援するペアレントトレーニング(発達障害者の親が自分の子供の行動を理解したり、発達障害の特性をふまえた褒め方やしかり方を学ぶための支援)を実施しているところである。
また、同じく地域生活支援事業における「巡回支援専門員整備」においては、発達障害等に関する知識を有する専門員が、市町村の保育所等の子供やその親が集まる施設・場を巡回し、施設のスタッフや親に対して、発達障害の早期発見・早期対応のための助言等の支援を実施し、地域における発達障害のある子供に対する支援体制の充実を図っているところである。
「気づき」の段階からの支援
乳幼児健診や子育て家庭の利用する様々な施設・事業において、特別な支援が必要となる可能性のある子供を早期に発見し、適切な専門機関につなぐこと等により、「気づき」の段階からの支援の充実を図っている。
特別支援教育の推進
障害のある子供の教育については、2007(平成19)年4月に改正学校教育法(平成18年法律第80号)が施行され、障害のある子供一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導及び必要な支援を行うという理念の下、特別支援教育制度に転換された。本改正により、小・中学校等においても、発達障害を含む障害のある子供に対する特別支援教育を推進することが法律上明確に規定された。この新しい特別支援教育制度の下、障害のある子供は、その障害の状態等に応じ、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通級による指導等において、一人一人の教育的ニーズに応じた教育を受けている。
この特別支援教育制度への転換や、社会の変化や子供の障害の重度・重複化、多様化等に対応した教育課程の基準の改善として、2009(平成21)年3月に特別支援学校の学習指導要領等を改訂し、
- <1>障害の重度・重複化、多様化への対応、
- <2>一人一人に応じた指導の充実、
- <3>自立と社会参加に向けた職業教育の充実、などを行った。
また、2008(平成20)年及び2009年3月に改訂した幼稚園、小・中・高等学校の学習指導要領等についても、障害の状態等に応じた指導内容・方法の工夫を計画的、組織的に行う旨を規定するなど、特別支援教育に関する記述を充実したところである。
インクルーシブ教育システムの構築という障害者の権利に関する条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方については、中央教育審議会の「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」において専門的な調査審議が行われ、2012(平成24)年7月に、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」として取りまとめられた。報告では、共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の在り方、就学相談・就学先決定の在り方、障害のある子供が十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備、多様な学びの場の整備と学校間連携の推進、特別支援教育を充実させるための教職員の専門性向上等について提言されているところである。
本報告等を踏まえ、2013(平成25)年8月、障害のある児童生徒等の就学先決定について、特別支援学校への就学を原則とせず、障害の状態等を踏まえた総合的な判断を市町村教育委員会が行う仕組みとするなどの学校教育法施行令の改正を行った。
これらの制度改正等の趣旨を踏まえ、障害のある子供に適切な指導や必要な支援を行うためには、特別支援教育にかかわる教員の専門性の向上や、各学校における支援体制の整備を一層充実していくことが重要な課題である。このため、大学への委託により特別支援教育に関する研修を実施し、特別支援教育にかかわる教員の専門性の向上に取り組むとともに、「インクルーシブ教育システム構築モデル事業」、「発達障害に関する教職員の専門性向上事業」等の各種事業の実施や、障害のある子供の学校における生活介助・学習支援等のサポートを行う「特別支援教育支援員」の配置に関する地方財政措置、また、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所における研究、研修、「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」や「発達障害教育情報センター」を通じた情報提供等を通じて、特別支援教育の推進を図っている。
〈ニート、ひきこもり等の子供・若者への支援〉
地域のネットワークを通じた子供・若者への支援
2010(平成22)年4月に施行された「子ども・若者育成支援推進法」(平成21年法律第71号)においては、ニートやひきこもり、不登校等の社会生活を営む上での困難を有する子供・若者に対し、教育、福祉、保健、医療、矯正、更生保護、雇用等様々な機関がネットワークを形成し、それぞれの専門性を生かして若者の就業と自立に向けた支援を行っていくため、地方公共団体に「子ども・若者支援地域協議会」を置くよう努めるものとされている。また、社会生活を円滑に営むことができるようにするために、子供・若者の住居その他の適切な場所において、必要な相談、助言又は指導を行うことが必要とされている。
このため、内閣府では子ども・若者支援地域協議会の設置促進を図る、「子ども・若者支援地域協議会体制整備事業」(2013(平成25)年度:16地域)を実施している。また、困難を有する子供・若者に対する支援に携わる人材養成を図るため、訪問支援(アウトリーチ)研修を始めとする各種研修を実施している。
〈遺児への支援〉
遺児への支援
東日本大震災被災地の子供と家族に対する健康・生活支援として、2014(平成26)年度に「被災した子どもの健康・生活対策等総合支援事業」を創設し、児童精神科医等が巡回相談により子供の心のケア等を行う「親を亡くした子ども等への相談・援助事業」を実施した。
交通事故遺児支援については、自動車事故による交通遺児等の健全な育成を図るため、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA〔ナスバ〕)において、中学校卒業までの遺児等を対象に、育成資金の無利子貸付を行うとともに、公益財団法人交通遺児等育成基金においては、満16歳未満の遺児を加入対象に、育成給付金の支給を満19歳に達するまで行っている。
自死遺児支援については、2006(平成18)年10月に施行された「自殺対策基本法」(平成18年法律第85号)を踏まえ、自殺又は自殺未遂者の親族等に及ぼす深刻な心理的影響が緩和されるよう、当該親族等に対する適切な支援を行うため、遺族のための自助グループ等の地域における活動を支援するなど、地方公共団体との連携の下、自死遺族支援施策の中で関連施策の推進に取り組んでいる。
具体的には、地域自殺対策緊急強化基金を活用して、地方公共団体において、自死遺児支援のためのつどいの開催等の取組を実施している。
〈定住外国人の子供に対する就学支援〉
定住外国人の子供に対する就学支援
2014(平成26)年5月現在、我が国の公立の小学校、中学校、高等学校などに在籍する外国人児童生徒の数は7万3,289人である。また、日本語指導が必要な外国人児童生徒の数は、2014(平成26)年5月現在で2万9,198人であり、前回調査の2012(平成24)年度と比べて2,185人(約8.1%)減少しているが、依然として多数在籍している。
外国人については、保護者が希望する場合には、その子供を公立の義務教育諸学校に無償で就学させることができ、その支援のために以下のような施策を行っている。
- <1>外国人児童生徒等の受入れから卒業後の進路までの一貫した指導・支援体制の構築を図るため、各自治体が行う公立学校への受入促進・日本語指導の充実・支援体制の整備に関する取組を支援する事業を実施
- <2>日本語指導を含む個別の課題解決のために、各都道府県からの申請に応じ、教職員定数を加配措置
- <3>独立行政法人教員研修センターにおいて、外国人児童生徒教育に携わる教員や校長・教頭などの管理職及び指導主事を対象として、日本語指導法等を主な内容とした実践的な研修を実施
- <4>日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施について、学校教育法施行規則の一部を改正し、2014(平成26)年1月14日公布、4月1日施行
- <5>景気後退により、不就学等となっている外国人の子供に対して、日本語などの指導や学習習慣の確保を図るための教室を設け、主に公立学校への円滑な転入が出来るようにする「定住外国人の子供の就学支援事業」を2009(平成21)年度から2014(平成26)年度まで実施