第2部 少子化社会対策の具体的実施状況
第2章 きめ細かな少子化対策の推進
第1節 結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じ、一人一人を支援する。
4 教育
性に関する科学的な知識の普及
生涯を通じた女性の健康支援事業では、保健所、市町村保健センター等において、妊娠、避妊や性感染症を含めた女性の心身の健康に関する相談指導のほか、女性のライフステージに応じた健康教育等を実施している。
また、性感染症に関する特定感染症予防指針においては、性感染症は、10代半ばから20代にかけての若年層における発生の割合が高いことから、性感染症から自分の身体を守るための正確な情報提供を適切な媒体を用いて行うことで、広く理解を得ることが重要であり、保健所等が行う健康教育にあっては、教育関係者及び保護者等と十分に連携し、学校における教育と連動した普及啓発を行うこととしている。
さらに、学習指導要領においては、学校における性に関する指導は、児童生徒の発達の段階に応じて性に関する知識を理解させるとともに、生命の尊重や自己及び他者の個性を尊重し、相手を思いやり、望ましい人間関係を構築するなど、適切な行動を取ることができるようにすることを目的とされており、体育科、保健体育科、特別活動、道徳などを中心に学校教育活動全体を通じて指導することとしている。なお、指導に当たっては、児童生徒の発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮すること、集団指導と個別指導の連携を密にして効果的に行うことなどに配慮することが大切である。
政府では、学校において適切な性に関する指導が実施されるよう、各地域における指導者養成と普及を目的とした研修会等を行ったところである。
妊娠や家庭・家族の役割に関する教育・啓発普及
学習指導要領においては、学校における性に関する指導として、児童生徒が妊娠、出産などに関する知識を確実に身に付け、適切な行動を取ることができるようにすることを目的とされており、これに基づき保健体育科を中心に学校教育活動全体を通して指導が行われている。
また、児童生徒に、家族の一員として家庭生活を大切にする心情をはぐくむことや、子育てや心の安らぎなどの家庭の機能を理解させるとともに、これからの生活を展望し、課題をもって主体的によりよい生活を工夫できる能力と態度を身に付けさせることが重要である。このため、小学校、中学校、高等学校において、発達の段階を踏まえ、関連の深い教科を中心に、家庭・家族の役割への理解を深める教育がなされている。
2008(平成20)年3月には小・中学校、2009(平成21)年3月には高等学校の学習指導要領を改訂し、家庭と家族の役割に気付かせる実践的・体験的な学習活動を一層重視するなど、教育内容の充実を図っている。
(1)乳幼児とふれあう機会の提供
乳幼児と接する機会の少ない中学生、高校生等が、乳幼児と出会い、ふれあうことは、他者への関心や共感能力を高め、乳幼児を身近な存在として意識し、愛着の感情を醸成するとともに、乳幼児へのイメージが膨らみ、将来、親となり子育てに関わる際の予備知識を得る重要な機会であることから、中学生及び高校生等が乳幼児と出会い、ふれあう機会を広げるための取組を推進している。
(2)学校・家庭・地域における取組の推進
将来の親となる世代が子供や家庭について考え、子供とともに育つ機会を提供するとともに、国民一人ひとりが家庭や子育ての意義について理解を深められるようにするため、学校教育においては、子供たちに乳幼児との触れ合いの機会をできるだけ多く提供し、将来親となった際に必要となる子育ての基本的な知識・技能・態度等を習得させるとともに、少子化とそれがもたらす社会への影響、子育てや男女が協力して家庭を築くことの大切さなどについても理解を深めさせることが重要である。
このため、小学校、中学校、高等学校の各学校段階で、関係教科、道徳、総合的な学習の時間及び特別活動等において相互の連携を図りながら子育てへの理解を深める教育が実施されている。
また、道徳教育用教材「心のノート」の全面改訂を行うとともに、学校・地域の実情などに応じた多様な道徳教育を支援するため、道徳教材の活用をはじめ、道徳教育充実のための外部講師派遣、保護者・地域との連携など地方自治体による多様な事業への支援を行う「道徳教育総合支援事業」を実施しており、生命を大切にする心や思いやりの心、協力し合う態度を育成する道徳教育の一層の推進を図っている。家庭や地域における取組としては、夫婦で共同して子育てをすることの大切さや命の大切さなどについて、保護者が理解を深められるよう、地域が主体的に実施する家庭教育に関する取組を支援している。
キャリア教育の推進
男女ともに、ライフイベントを踏まえて多様な選択肢の中から自分の生き方を考えることができるよう、男女共同参画の視点からのキャリア教育を推進するため、高校生を対象としたブックレットの普及を進めるとともに、学生を対象に男女の働き方や家庭生活について考えるワークショップを実施した。