第1部 少子化対策の現状(第2章 第4節 3)

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第2章 少子化対策の取組(第4節 3)

第4節 男性の家事・育児参画の推進~子育て目的の休暇の取得を中心に~【特集】(3)

3 子育て目的の休暇を取得しやすい職場とは

ここからは、「2016年委託調査」で明らかになった配偶者の出産直後の休暇の取得者・非取得者の職場の特徴をもとに、休暇を取りやすい職場について探ってみたい。

(1)休暇取得促進のために必要なこと

「2016年委託調査」で、配偶者の出産直後の休暇取得を促進するために必要なことをきいたところ、最も多くの男性が「休暇を取りやすい職場であれば」と回答し(回答者の54.1%)、他にも職場に関する回答が続いている。(第1-2-36図)

第1-2-36図 休暇を取得するために必要なこと(複数回答)

(2)休暇取得者の職場の特徴
ア 制度(配偶者出産休暇制度)

前述(2・(3)ア、第1-2-33図)のとおり、配偶者の出産直後の休暇取得に際し、配偶者出産休暇1を利用した人が多いところ、「2016年委託調査」によれば、休暇取得者は、非取得者に比べ、職場に「配偶者出産休暇制度があった」と回答した割合が高い。(第1-2-37図)

第1-2-37図 末子出産当時の勤務先における配偶者出産休暇制度整備状況

この結果からすると、職場において、配偶者出産休暇制度が整備されているほど、取得につながっている傾向がうかがえる2


1 配偶者の出産の際に、病院の入院・退院等の付き添いなどのために、男性労働者に与えられる年次有給休暇制度以外の特別休暇で、事業所の就業規則等で定められるもの。なお、事業所によって、制度がない場合もある。(再掲)

2 2017(平成29)年3月31日に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」(平成29年法律第14号)により、2017年10月1日から事業主に対し、育児目的休暇の新設の努力義務が課されることになった。この「育児目的休暇」は、具体的には配偶者出産休暇等が想定される。

イ ワーク・ライフ・バランス

また、ワーク・ライフ・バランスに関する取組についてみると、休暇取得者は、非取得者に比べ、職場において「残業の削減や有給休暇の取得促進」「産前・産後休業、育児休業などの制度の周知」など、ワーク・ライフ・バランスに関する取組を「進めていた(「積極的に進めていた」+「まあ進めていた」)」と回答した割合が高い。(第1-2-38図)

第1-2-38図 職場におけるワーク・ライフ・バランスに関する取組の推進状況

ウ 上司の特徴

さらに、上司の特徴についてみると、休暇取得者は、非取得者に比べ、上司が「率先して有給休暇を取得するようにしている」「男性の子育て参加に対して理解がある」と回答した割合が高い。(第1-2-39図、第1-2-40図)

第1-2-39図 〈上司の特徴〉率先して有給休暇を取得するようにしている

第1-2-40図 〈上司の特徴〉男性の子育て参加に対して理解がある

エ 〈制度〉〈ワーク・ライフ・バランスの取組〉〈上司の理解〉の全てが揃うと取得者が8割を超える

休暇取得者・非取得者の職場の特徴について、<1>配偶者出産休暇制度の有無、<2>ワーク・ライフ・バランスに関する取組の推進状況、<3>上司の理解を組み合わせて休暇取得率を比較すると、<1>~<3>が整っているほど休暇取得者の割合が高く、各要素が欠けるにつれ休暇取得率は下がっていくという結果が出ており(第1-2-41図)、休暇取得率は、職場の条件(制度、ワーク・ライフ・バランスの取組、上司の理解)が整っていればいるほど高くなることが分かる。

第1-2-41図 〈配偶者出産休暇制度〉〈ワーク・ライフ・バランスの取組〉〈上司の理解〉の組み合わせ別休暇取得率

(3)小括

以上から、配偶者の出産直後の休暇取得を促進するためには、職場における「配偶者出産休暇制度」、「ワーク・ライフ・バランスに関する取組」、「上司の理解」の3条件を整えていくことが重要といえる3

なお、育児休業についても、「2017年内閣府経済社会総合研究所分析」において、育児のための短時間勤務制度や、男性の子育て参加の推進などの取組、直属の上司や職場が育児休業取得に対する理解を示すことが男性の育児休業取得を促進すると分析されており、育児休業の取得促進のためにも「制度」、「取組」、「上司の理解」の3条件を整えていくことが重要と考えられる。


3 休暇制度の整備及びその周知に関しては、2017(平成29)年3月31日に成立した「雇用保険法等の一部を改正する法律」(平成29年法律第14号)における育児・介護休業法の改正により、2017年10月1日から、事業主に対し、次の努力義務が課されることになった。
<1>育児休業等の個別周知
労働者やその配偶者が妊娠・出産したこと等を知った場合に、その者に対し、個別に育児休業等に関する制度(育児休業中・休業後の待遇や労働条件等)を知らせる努力義務
<2>育児目的休暇の新設
配偶者出産休暇や子の行事参加のための休暇等、未就学児を育てながら働く労働者が子育てしやすいよう、育児に関する目的で利用できる休暇制度を設ける努力義務

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