第1部 少子化対策の現状(第1章)

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第1章 少子化をめぐる現状

1 総人口と人口構造の推移

2053年には1億人を割る見込みの総人口

我が国の総人口は、2017(平成29)年で1億2,671万人となっている。年少人口(0~14歳)、生産年齢人口(15~64歳)、高齢者人口(65歳以上)は、それぞれ1,559万人、7,596万人、3,515万人となっており、総人口に占める割合は、それぞれ12.3%、60.0%、27.7%となっている。

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」は、我が国の将来の人口規模や年齢構成等の人口構造の推移を推計している。このうち、中位推計(出生中位・死亡中位)では、合計特殊出生率は、実績値が1.45であった2015(平成27)年から、2024(平成36)年の1.42、2035(平成47)年の1.43を経て、2065(平成77)年には1.44へ推移すると仮定している。最終年次の合計特殊出生率の仮定を前回推計(平成24年1月推計)と比較すると、近年の30~40歳代における出生率上昇等を受けて、前回の1.35(2060(平成72)年)から1.44(2065年)に上昇している。

この中位推計の結果に基づけば、総人口は、2053(平成65)年には1億人を割って9,924万人となり、2065年には8,808万人になる。前回推計結果と比較すると、2065年時点で前回の8,135万人が今回では8,808万人へと673万人増加している。人口が1億人を下回る年次は前回の2048(平成60)年が2053年と5年遅くなっており、人口減少の速度は緩和されたものとなっている。

年齢3区分別の人口規模及び構成の推移をみると、年少人口は、2056(平成68)年には1,000万人を割り、2065年には898万人の規模になるものと推計され、総人口に占める割合は、2065年には10.2%となる。

生産年齢人口は、2056年には5,000万人を割り、2065年には4,529万人となる。総人口に占める割合は、2065年には51.4%となる。

高齢者人口は、2042(平成54)年に3,935万人でピークを迎え、その後減少し、2065年には3,381万人となる。総人口に占める割合は、2065年には38.4%となる。

前回推計結果と比較すると、推計の前提となる合計特殊出生率が上昇した結果、2065年時点で、前回から生産年齢人口は約1割、年少人口は約2割増加したものとなっている。(第1-1-1図)

第1-1-1図 我が国の総人口及び人口構造の推移と見通し

世界と比較して年少人口割合が小さい日本

世界全域の年少人口割合(国連推計)は、26.1%であるが、我が国の総人口に占める年少人口の割合は、12.3%と世界的にみても小さくなっている。日本以外では、ドイツ13.1%、イタリア13.7%、韓国13.9%と、相対的に合計特殊出生率が低い国は年少人口割合が小さくなっている。(第1-1-2表)

第1-1-2表 諸外国における年齢(3区分)別人口の割合

2 出生数、出生率の推移

100万人を割る出生数

我が国の年間の出生数は、第1次ベビーブーム期には約270万人、第2次ベビーブーム期には約210万人であったが、1975(昭和50)年に200万人を割り込み、それ以降、毎年減少し続けた。1984(昭和59)年には150万人を割り込み、1991(平成3)年以降は増加と減少を繰り返しながら、緩やかな減少傾向となっている。

2016(平成28)年の出生数は、97万6,978人となり、1899(明治32)年の統計開始以来、初めて100万人を割った1

合計特殊出生率2をみると、第1次ベビーブーム期には4.3を超えていたが、1950(昭和25)年以降急激に低下した。その後、第2次ベビーブーム期を含め、ほぼ2.1台で推移していたが、1975年に2.0を下回ってから再び低下傾向となった。1989(昭和64、平成元)年にはそれまで最低であった1966(昭和41)年(丙午:ひのえうま)の1.58を下回る1.57を記録し、さらに、2005(平成17)年には過去最低である1.26まで落ち込んだ。近年は微増傾向が続いているが、2016年は、1.44と前年より0.01ポイント下回った3。(第1-1-3図)

第1-1-3図 出生数及び合計特殊出生率の年次推移


1 なお、厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)」によれば、2017(平成29)年の出生数は、94万6,060人となっている。

2 ある期間において測定された女性の年齢別出生率を再生産年齢(通常15~49歳)にわたって合計したもの。

3 なお、厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)」によれは、2017年の合計特殊出生率は、1.43となっている。

諸外国の合計特殊出生率の推移

諸外国(フランス、スウェーデン、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア)の合計特殊出生率の推移をみると、1960年代までは、全ての国で2.0以上の水準であった。その後、1970(昭和45)年から1980(昭和55)年頃にかけて、全体として低下傾向となったが、その背景には、子供の養育コストの増大、結婚・出産に対する価値観の変化、避妊の普及等があったと指摘されている4。1990(平成2)年頃からは、合計特殊出生率が回復する国もみられるようになってきている。(第1-1-4図)

第1-1-4図 諸外国の合計特殊出生率の動き(欧米)

特に、フランスやスウェーデンでは、出生率が1.5~1.6台まで低下した後、回復傾向となり、直近ではフランスが1.92(2016(平成28)年)、スウェーデンが1.85(2016年)となっている。これらの国の家族政策の特徴をみると、フランスでは、かつては家族手当等の経済的支援が中心であったが、1990年代以降、保育の充実へシフトし、その後さらに出産・子育てと就労に関して幅広い選択ができるような環境整備、すなわち「両立支援」を強める方向で政策が進められた。スウェーデンでは、比較的早い時期から、経済的支援と併せ、保育や育児休業制度といった「両立支援」の施策が進められてきた。また、ドイツでは、依然として経済的支援が中心となっているが、近年、「両立支援」へと転換を図り、育児休業制度や保育の充実等を相次いで打ち出している5

また、家族関係社会支出の対GDP比を見てみると、我が国は、1.31%(2015(平成27)年度)となっている。国民負担率6などの違いもあり、単純に比較はできないが、フランスやスウェーデンなどの欧州諸国と比べて低水準となっており、現金給付、現物給付を通じた家族政策全体の財政的な規模が小さいことが指摘されている。(第1-1-5図)

第1-1-5図 各国の家族関係社会支出の対GDP比の比較

次に、アジアの国や地域について、経済成長が著しく、時系列データの利用が可能なタイ、シンガポール、韓国、香港及び台湾の合計特殊出生率の推移をみると、1970年の時点では、いずれの国も我が国の水準を上回っていたが、その後、低下傾向となり、現在では人口置換水準を下回る水準になっている7。合計特殊出生率は、タイが1.4(2013(平成25)年)、シンガポールが1.20(2016年)、韓国が1.17(2016年)、香港が1.21(2016年)、台湾が1.17(2016年)と我が国の1.44(2016年)を下回る水準となっている。(第1-1-6図)

第1-1-6図 諸外国・地域の合計特殊出生率の動き(アジア)


4 van de Kaa(1987)“Europe’s Second Demographic Transition”, Population Bulletin, Vol.42, No.1、阿藤誠(1997)「日本の超少産化現象と価値観変動仮説」人口問題研究53(1)を参照。

5 内閣府経済社会総合研究所編(2005年)「フランスとドイツの家庭生活調査」、(2004年)「スウェーデン家庭生活調査」を参照。

6 財務省「日本の財政関係資料」(平成30年3月)によれば、国民負担率(%)は、日本(42.6)、アメリカ(33.3)、ドイツ(53.2)、フランス(67.1)、スウェーデン(56.9)、イギリス(46.5)となっている(日本は2015年度、それ以外は2015年)。

7 アジア圏では、婚外出産が少ないことにも一部起因しており、未婚化や晩婚化が出生率変化の大きな決定要素となっていると指摘されている(United Nations “World Fertility Report 2013”を参照)。

トピックス:少子化及び人口問題に関する国際会議

2017(平成29)年10月19日、松山内閣府特命担当大臣(少子化対策)は、「少子化及び人口問題に関する国際会議」への出席及び日韓少子化担当大臣会談のため、大韓民国・ソウルを訪問した。

同会議は、深刻な少子化に直面する韓国の保健福祉部が主催し、KIHASA(韓国保健社会研究院)、OECD(経済協力開発機構)、UNFPA(国連人口基金)の共催により開催されたものであり、開会式において、松山大臣は、日本の少子高齢化が危機的な状況にあること、また、これを克服するため、安倍内閣では、待機児童の解消や幼児教育・保育の無償化、高等教育の無償化などに取り組んでいることについて、国際社会に向けてスピーチを行った。

松山大臣は、地域の実情に応じて結婚支援や子育て支援などに取り組む地方公共団体を支援する日本の取組をアピールし、また、急激に進む少子高齢化への対応は、日本固有の問題ではなく全世界的な課題であることから、あらゆる政策手段を尽くし、日本の取組を世界経済の未来に挑戦する新たなモデルとして、世界に発信していく決意を表明した。

同会議では、日韓の局長級をはじめ、OECDやUNFPA、そして日韓の有識者によるプレゼンテーションも行われた。韓国保健福祉部によるプレゼンテーションでは、韓国の出生率が、2000(平成12)年以降、1.1前後と低水準(OECD加盟国の中で最下位)で推移していることや、2006(平成18)年に「第1次少子・高齢化に関する基本プラン」を採択後、5年おきに同プランの見直しを行っており、最新のプランである第3次プラン(2016(平成28)年~2020(平成32)年)では、特に「雇用」、「住居」そして「教育」といった各分野の施策に力を入れていることが紹介された。また、韓国においても、長時間労働や男性の育児休業の取得率の低さが少子化の大きな要因となっているとの指摘があり、少子化克服に向けて、日本と共通の課題が共有された。

さらに、少子高齢化について共通の課題を持つ韓国との間で実施した日韓少子化担当大臣会談では、少子高齢化による人口減少に関して、共同して課題の解決に当たることの重要性について合意し、今後、両国間で、人口問題を克服するための共同研究や、東アジアでの人口問題を議論するプラットフォームの立ち上げに向け検討を進めることとした。

「少子化及び人口問題に関する国際会議」にて出席者との記念撮影

30歳代の出生率が上昇

女性の年齢別出生率を見ると、そのピークの年齢と出生率は、1975(昭和50)年は25歳で0.22、1990(平成2)年は28歳で0.16、2005(平成17)年は30歳で0.10と推移し、ピークの年齢は高くなり、当該年齢の出生率は低下したものの、2016(平成28)年は30歳で0.11とピークの年齢の出生率はやや上昇している。

合計特殊出生率の1970(昭和45)年以降の低下については、例えば25歳時点の出生率を比べてみると、1975年は0.22だったが、2005年は0.06に大幅に下がるなど、20歳代における出生率が低下したことが一因であると考えられる。また、近年の合計特殊出生率の微増傾向については、例えば35歳時点の出生率を比べてみると、2005年は0.06だったが、2016年は0.08となるなど、30~40歳代の年齢別出生率の上昇を反映したものと考えられる。(第1-1-7図)

第1-1-7図 女性の年齢別出生率

3 婚姻・出産の状況

低下傾向が続く婚姻件数、婚姻率

婚姻件数は、第1次ベビーブーム世代が25歳前後の年齢を迎えた1970(昭和45)年から1974(昭和49)年にかけて年間100万組を超え、婚姻率(人口千人当たりの婚姻件数)もおおむね10.0以上であった。その後は、婚姻件数、婚姻率ともに低下傾向となり、1978(昭和53)年以降2010(平成22)年までは、おおよそ年間70万組台で増減を繰り返しながら推移してきたが、2011(平成23)年以降、年間60万組台で推移しており、2016(平成28)年は、62万531組(対前年比14,625組減)と、過去最低となった。婚姻率も5.0と過去最低となり、1970年代前半と比べると半分の水準となっている。(第1-1-8図)

第1-1-8図 婚姻件数及び婚姻率の年次推移

未婚率を年齢(5歳階級)別にみると、2015(平成27)年は、例えば、30~34歳では、男性はおよそ2人に1人(47.1%)、女性はおよそ3人に1人(34.6%)が未婚であり、35~39歳では、男性はおよそ3人に1人(35.0%)、女性はおよそ4人に1人(23.9%)が未婚となっている。長期的にみると未婚率は上昇傾向が続いているが、男性の30~34歳、35~39歳、女性の30~34歳においては、前回調査(2010(平成22)年国勢調査)からおおむね横ばいとなっている。(第1-1-9図)

第1-1-9図 年齢(5歳階級)別未婚率の推移

未婚化の進行

さらに、50歳時の未婚割合8をみると、1970(昭和45)年は、男性1.7%、女性3.3%であった。その後、男性は一貫して上昇する一方、女性は1990(平成2)年まで横ばいであったが、以降上昇を続け、前回調査(2010(平成22)年国勢調査)では男性20.1%、女性10.6%、2015(平成27)年は男性23.4%、女性14.1%と、それぞれ上昇している。2015年の国勢調査の結果に基づいて出された推計は、これまでの未婚化、晩婚化の流れが変わらなければ、今後も50歳時の未婚割合の上昇が続くことを予測している910。(第1-1-10図)

第1-1-10図 50歳時の未婚割合の推移と将来推計


8 45~49歳の未婚率と50~54歳の未婚率の平均。50歳時の未婚割合は生涯未婚率とも呼ばれる。

9 出生率の低下要因は、我が国では婚外出生が依然少ないため、結婚行動の変化(未婚化)と夫婦の出産行動の変化(有配偶出生率の低下)にほぼ分解され、前者の引き下げ効果は、後者の効果に比べてはるかに大きいとの指摘がある(岩澤美帆・金子隆一・佐藤龍三郎(2016)「ポスト人口転換期の出生動向」、佐藤龍三郎・金子隆一編著「ポスト人口転換期の日本」原書房、人口学ライブラリー17を参照)。

10 具体的には、1950年代後半から1970年代前半にかけての合計特殊出生率に相当する数値2.01から2012(平成24)年の1.38までの変化量は、約90%が初婚行動の変化、約10%が夫婦の出生行動の変化で説明できるとされている(2012年の数値の考え方を含め、岩澤美帆(2015)「少子化をもたらした未婚化および夫婦の変化」、高橋重郷・大淵寛編著「人口減少と少子化対策」原書房、人口学ライブラリー16、岩澤美帆・金子隆一・佐藤龍三郎(2016)「ポスト人口転換期の出生動向」、佐藤隆三郎・金子隆一編著「ポスト人口転換期の日本」原書房、人口学ライブラリー17を参照)。

晩婚化、晩産化の進行は鈍化

平均初婚年齢は、長期的にみると夫、妻ともに上昇を続け、晩婚化が進行している。2016(平成28)年で、夫が31.1歳、妻が29.4歳となっており、1985(昭和60)年と比較すると、夫は2.9歳、妻は3.9歳上昇している。前年(2015(平成27)年)との比較では、男女とも横ばいとなっている。

また、出生時の母親の平均年齢を出生順位別にみると、2016年においては、第1子が30.7歳、第2子が32.6歳、第3子が33.6歳と上昇傾向が続いており、1985年と比較すると第1子では4.0歳、第2子では3.5歳、第3子では2.2歳それぞれ上昇している。

さらに、第1子と第2子、第2子と第3子における母親の平均出生時年齢の差を比較すると、1985年にそれぞれ2.4歳、2.3歳であったものが、2016年にはそれぞれ1.9歳、1歳と出生の間隔が短くなっている。(第1-1-11図)

第1-1-11図 平均初婚年齢と出生順位別母の平均年齢の年次推移

年齢(5歳階級)別初婚率について、1990(平成2)年から10年ごと及び直近の2016年の推移をみると、夫は25~29歳で1990年の68.01‰が2016年の48.02‰となるなど下降幅が大きく、35~39歳で1990年の8.25‰が2016年の13.38‰となるなど35歳以上で上昇しているが、その上昇幅は小さい。他方、妻は20~24歳で1990年の54.40‰が2016年の25.55‰となるなど下降幅が大きいが、30~34歳で1990年の12.73‰が2016年の28.07‰となるなど30歳以上で上昇しており、夫に比べてその上昇幅が大きい。(第1-1-12図)

第1-1-12図 年齢(5歳階級)別初婚率

完結出生児数は過去最低の1.94

夫婦の完結出生児数(結婚持続期間が15~19年の初婚どうしの夫婦の平均出生子供数)を見ると、1970年代から2002(平成14)年まで2.2人前後で安定的に推移していたが、2005(平成17)年から減少傾向となり、2015(平成27)年には1.94と、過去最低となっている。(第1-1-13図)

第1-1-13図 完結出生児数の推移

4 結婚をめぐる意識等

結婚に対する意識

「いずれ結婚するつもり」と答えた未婚者(18~34歳)の割合は、2015(平成27)年調査で男性85.7%、女性89.3%となっており、ここ30年間を見ても若干の低下はあるものの、男女ともに依然として高い水準を維持している。(第1-1-14図)

第1-1-14図 未婚者(18~34歳)のうち「いずれ結婚するつもり」と答えた者の割合

また、未婚者(25~34歳)に独身でいる理由を尋ねると、男女ともに「適当な相手にめぐり会わない」(男性:45.3%、女性:51.2%)が最も多く、次に多いのが、男性では「まだ必要性を感じない」(29.5%)や「結婚資金が足りない」(29.1%)であり、女性では「自由さや気楽さを失いたくない」(31.2%)や「まだ必要性を感じない」(23.9%)となっている。さらに、過去の調査と比較すると、男女ともに「異性とうまくつきあえない」という理由が増加傾向にあり、女性では「仕事(学業)にうちこみたい」、「結婚資金が足りない」という理由も増加傾向にある。(第1-1-15図)

第1-1-15図 独身でいる理由

就労形態などによる家族形成状況の違い

若年者(15~34歳)の完全失業率は全年齢計より高い水準になっているものの、近年、男女ともに低下している。最も高かった時期と2017(平成29)年を比較すると、15~24歳の男性では、2003(平成15)年の11.6%から4.7%へと低下しており、25~34歳の男性では2010(平成22)年の6.6%から3.8%へと低下している。15~24歳の女性では2002(平成14)年の8.7%から4.5%へと低下しており、25~34歳の女性では2002年の7.3%から3.5%へと低下している。(第1-1-16図)

第1-1-16図 若年者の完全失業率

また、非正規雇用割合についてみると、男女ともに1990年代から2000年代にかけて上昇傾向にあり、2010年代に入ると概ね横ばいで推移している。2017年における15~24歳の男性では、47.3%と2016(平成28)年と同率となっており、全年齢計(21.7%)よりも高い水準となっている。25~34歳の男性、25~34歳の女性では2016年よりやや低下しており、男女ともに全年齢計よりも低い水準となっている。(第1-1-17図)

第1-1-17図 若年者の非正規雇用割合

さらに、2012(平成24)年の所得分布を1997(平成9)年と比べると、20代では、250万円未満の雇用者の割合が増加しており、30代では、400万円未満の雇用者の割合が増加している。このことから、若い世代の所得分布は、低所得層にシフトしていることがわかる。(第1-1-18図)

第1-1-18図 20代・30代の所得分布

男性の就労形態別有配偶率(2012年時点)をみると、正社員では25~29歳で31.7%、30~34歳で57.8%となっているのに対し、非典型雇用では25~29歳で13.0%、30~34歳で23.3%となっており、正社員の半分以下となっている。また、非典型雇用のうちパート・アルバイトでは25~29歳で7.4%、30~34歳で13.6%であり、正社員の4分の1以下となっているなど、就労形態の違いにより配偶者のいる割合が大きく異なっていることがうかがえる。(第1-1-19図)

第1-1-19図 男性の就労形態別有配偶率

さらに、男性の年収別有配偶率(2012年時点)をみると、いずれの年齢層でも一定水準までは年収が高い人ほど配偶者のいる割合が高い傾向にある。(第1-1-20図)

第1-1-20図 男性の年収別有配偶率

5 出産・子育てをめぐる意識等

出産に対する意識

夫婦にたずねた理想的な子供の数(平均理想子供数)は1987(昭和62)年から低下傾向にあり、2015(平成27)年は2.32人と、過去最低を更新している。また、夫婦が実際に持つつもりの子供の数(平均予定子供数)も、過去最低である2.01人となっている。(第1-1-21図)

第1-1-21図 平均理想子供数と平均予定子供数の推移

予定子供数が理想子供数を下回る夫婦の理想の子供数を持たない理由としては、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(56.3%)が2010(平成22)年の前回調査(60.4%)からは低下したものの最も多く、30~34歳では8割を超えている。次に多いのが、「高年齢で生むのはいやだから」(39.8%)や「欲しいけれどもできないから」(23.5%)であり、それぞれ前回調査から上昇している。これらを年代別にみると、年代が高くなるほど、その割合が高くなる傾向がみられ、40~49歳ではそれぞれ、約5割、約3割となっている。(第1-1-22図)

第1-1-22図 妻の年齢別にみた、理想の子供数を持たない理由

女性の出産前後の就業継続割合は上昇

女性の出産前後の就業をめぐる状況をみると、第1子を出産した既婚女性で、第1子の出産前に就業していた女性のうち、出産後に就業を継続した女性の割合は、これまで4割前後で推移してきたが、2010(平成22)年から2014(平成26)年に第1子を出産した既婚女性では、53.1%へと大幅に上昇した。また、第1子を出産した既婚女性で、第1子の出産前に就業していた女性のうち、育児休業を利用して就業を継続した女性の割合も上昇してきており、2010年から2014年に第1子を出産した既婚女性では、39.2%となっている。(第1-1-23図)

第1-1-23図 第1子出生年別にみた、第1子出産前後の妻の就業変化

「正規の職員」と「パート・派遣」に分けて就業継続の割合をみると、「正規の職員」は69.1%であるのに対し、「パート・派遣」は25.2%となっている(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2015(平成27)年))。

また、末子の妊娠・出産を機に退職した女性にその理由をたずねたところ、正社員では、「家事・育児に専念するため、自発的にやめた」(30.3%)、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさでやめた」(22.5%)が多く挙げられている。非正社員では、「家事・育児に専念するため、自発的にやめた」(46.3%)が特に多い。

「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさでやめた」と回答した人にその理由をたずねると、正社員では、「勤務時間があいそうもなかった」(47.5%)が最も多く、「自分の体力がもたなそうだった」(40.0%)、「育児休業を取れそうもなかった」(35.0%)が続く。

非正社員では、「育児休業を取れそうもなかった」(41.7%)、「つわりや産後の不調など妊娠・出産にともなう体調不良のため」(35.4%)、「自分の体力がもたなそうだった」(33.3%)、「勤務時間があいそうもなかった」(33.3%)が多い。(第1-1-24図)

第1-1-24図 末子妊娠・出産を機に退職した理由

子育て世代の男性の長時間労働

週60時間以上の長時間労働をしている男性は、どの年齢層においても、2005(平成17)年以降概ね減少傾向にある。しかしながら、子育て期にある30代、40代の男性については、2017(平成29)年で、それぞれ15.0%、15.4%が週60時間以上就業しており、ほかの年齢層に比べ高い水準となっている。(第1-1-25図)

第1-1-25図 年齢別就業時間が週60時間以上の男性就業者の割合の推移

また、就業時間が週49時間以上の男性就業者の割合をみると、29.5%となっており、他国と比較して高い割合となっている。(第1-1-26図)

第1-1-26図 男性就業者の長時間労働の割合(国際比較)

男性の家事・育児時間

夫の休日の家事・育児時間と第2子以降の出生状況をみると、両者には正の関係性がみられる。(第1-1-27図)男性が子育てや家事に費やす時間をみると、2016(平成28)年における我が国の6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間は1日当たり83分となっており、2011(平成23)年調査に比べて16分増えているものの、先進国中最低の水準にとどまっている。(第1-1-28図)

第1-1-27図 夫の休日の家事・育児時間別にみた第2子以降の出生の状況

第1-1-28図 6歳未満の子供を持つ夫婦の家事・育児関連時間(1日当たり・国際比較)

6 地域比較

都道府県別合計特殊出生率の動向

2016(平成28)年の全国の合計特殊出生率は1.44であるが、47都道府県別の状況を見ると、これを上回るのは36県、下回るのは11都道府県であった。この中で合計特殊出生率が最も高いのは沖縄県(1.95)であり、次は島根県(1.75)となっている。最も低いのは、東京都(1.24)であり、次いで北海道(1.29)となっている。(第1-1-29図)

第1-1-29図 都道府県別合計特殊出生率(2016年)

都道府県別の年齢別出生率

都道府県別の年齢別出生率をみると、全国の中でも合計特殊出生率の高い沖縄県、島根県は、いずれも20~34歳の出生率が全国水準よりも高くなっている。

一方、全国の中でも合計特殊出世率が低い東京都、北海道はそれぞれ異なる動きをしている。東京都では15~34歳の出生率が全国水準より低いのに対し、35~49歳では高くなっている。北海道では15~29歳の出生率が全国水準並となっているのに対し、30歳以降の年齢では低くなっている。(第1-1-30図)

第1-1-30図 都道府県別の年齢(5歳階級)別出生率(2016年)

都道府県別50歳時の未婚割合

2015(平成27)年の全国の50歳時の未婚割合を見ると、男性で23.4%、女性で14.1%となっているが、47都道府県別の状況を見ると、これを上回るのは男性で17都道県、女性で13都道府県となっている。この中で50歳時の未婚割合が最も高いのは、男性で沖縄県の26.2%、女性で東京都の19.2%となっている。(第1-1-31図)

第1-1-31図 都道府県別50歳時の未婚割合(2015年)

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