第2部 少子化対策の具体的実施状況(第1章 第1節 2)
第1章 重点課題(第1節 2)
第1節 子育て支援施策の一層の充実(2)
2 待機児童の解消
待機児童の現状
政府は、待機児童問題を最優先課題と位置付け、2013(平成25)年4月に「待機児童解消加速化プラン」を策定し、2013年度から2017(平成29)年度末までの5年間で新たに50万人分の保育の受け皿整備を行う目標を掲げた。同プランに基づき、2013年度から2017年度末までの5年間で、企業主導型保育事業とあわせて、合計約53.5万人分の保育の受け皿拡大を達成し、政府目標である50万人分を達成した。
その結果、保育所等待機児童数については、2018(平成30)年4月時点において1万9,895人(対前年比6,186人減)となっており、10年ぶりに2万人を下回った。(第2-1-4図、第2-1-5図、第2-1-6表)
子育て安心プラン等
今後も25歳から44歳の女性の就業率が上昇し、その就業率と相関して保育の利用申込み率も伸びることが見込まれることから、2017(平成29)年6月に「子育て安心プラン」を公表し、2020(令和2)年度末までに待機児童の解消を図るとともに、女性就業率8割に対応できるよう、約32万人分の受け皿整備を行うこととした。(第2-1-7図)
2017年に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」においては、同プランの実現に必要な企業主導型保育事業と保育の運営費(0~2歳児相当分)について、事業主拠出金の増額分を充てることとしており、拠出金の率の上限を引き上げる等の必要な措置を講ずるため、2018(平成30)年通常国会(第196回国会)に、「子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案」を提出し、同年3月に成立した。
また、実際の保育の受け皿整備を行うに当たっては、保育の実施主体である市区町村が潜在的ニーズも含めた保育ニーズを的確に把握し、それを整備計画に反映していくことが重要である。このため、「子育て安心プラン」に基づき整備計画を作成する際には、「保育コンシェルジュ」などを活用しながら、潜在的な保育ニーズの把握に積極的に取り組むよう、市区町村に対し2017年12月に通知した。
そして、2018年より、各地方公共団体の「子育て安心プラン実施計画」を厚生労働省ホームページ1に公表し、各地方公共団体の市区町村全域・保育提供区域ごとの整備量の見込み等の「見える化」を行った。
上記の対策に加え、UR賃貸住宅では、地方公共団体と連携しつつ、団地再生事業等により生じた整備敷地や既存の空き店舗等の活用による、子育て支援施設(保育所、幼稚園、学童保育など)の設置に努めており、2017年度末現在で627件の実績がある。
また、2017年の「都市公園法」(昭和31年法律第79号)の改正により、これまで国家戦略特区において限定的に認められてきた、保育所等の設置にかかる都市公園における占用特例が一般措置化された。これによっても保育の受け皿拡大が期待される。
1 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01174.html
「保育人材確保対策」の推進
保育の受け皿拡大を進める中、保育の担い手となる保育人材の確保のため、処遇改善や新規資格取得支援、就業継続支援、離職者の再就職支援など、総合的な対策を講じることとしている。(第2-1-8図)
特に保育士の処遇改善は毎年度取り組んでおり、2017(平成29)年度当初予算では全職員の処遇を2%改善した。また、一律の処遇改善に加え、努力が評価され、将来に希望が持てるよう技能・経験に応じたキャリアアップの仕組みを構築した。具体的には、経験年数が概ね7年以上の中堅職員に対しては月額4万円、経験年数が概ね3年以上の職員に対しては月額5千円の処遇改善を行っている。また、2017年12月8日に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」に基づき、2019(平成31)年4月から更に1%の処遇改善を行うこととしている。
2018(平成30)年度当初予算においては、保育士資格取得事業の対象者の拡大や、保育士試験による資格取得支援事業の支給対象期間を拡大するとともに、保育補助者の雇い上げ支援及び保育体制強化事業の拡充を行った。
また、2018年度第2次補正予算においては、保育士の業務負担軽減を図るため、保育園等におけるICT化の推進を支援するとともに、保育士資格の取得や保育園等への再就職を目指す者等に対する修学資金の貸付等の支援を盛り込んだ。
2019年度当初予算においては、特に潜在保育士等の復職に向けた支援を強化することとし、保育士・保育所支援センターにマッチングシステムを導入することでより細かなマッチングを行うための支援や、離職後のブランクが長くなった潜在保育士の復職に係る不安を解消するための研修等に要する費用の支援を行うこととしている。
こうした総合的な支援に力を尽くし、更なる保育人材の確保に取り組んでいくこととしている。