第2部 少子化対策の具体的実施状況(第1章 第2節 1)

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第1章 重点課題(第2節 1)

第2節 結婚・出産の希望が実現できる環境の整備(1)

1 経済的基盤の安定

(若者の雇用の安定)
若者の就労支援

24歳以下の若者の完全失業率は、2018(平成30)年には3.6%(前年差1.0ポイント減)、25~34歳については3.4%(前年差0.3ポイント減)と、前年より回復している。また、フリーター数は、2018年平均で143万人(前年差9万人減)となっている。

2018年度に引き続き、2019(平成31、令和元)年度においても、新卒者・既卒者の就職支援やフリーター等の正社員就職の推進等の各種対策を積極的に推進する。

・学校段階から職場定着に至るまでの総合的・継続的なキャリア形成支援策

初等中等教育段階においては、子供たちが、社会の一員としての役割を果たすとともに、それぞれの個性、持ち味を最大限発揮しながら、自立して生きていくことができるよう、後期中等教育修了までに、生涯にわたる多様なキャリア形成に共通して必要な能力や態度を培うキャリア教育の推進が求められている。

文部科学省では、関係省庁等とも連携し、学校におけるキャリア教育・職業教育を推進している。具体的には、教員向けの手引き等の配布や研修用動画の配信、小学校からの起業体験や中学校の職場体験活動、高等学校におけるインターンシップを促進するとともに、児童生徒が主体的に進路を選択することができるよう、児童生徒が活動を記録し蓄積する教材としてキャリア・パスポートの例示資料等を作成するなど、学校における体系的なキャリア教育の充実を図っている。また、「学校が望む支援」と「地域・社会や産業界等が提供できる支援」を書き込めるサイト(「子供と社会の架け橋となるポータルサイト1」)を運営するなど、学校と地域・社会や産業界等との円滑な連携に向けた取組を行っている。

このほか、2017(平成29)年度から、学力格差の解消及び高校中退者等の進学・就労に資するよう、高校中退者等を対象に、高等学校卒業程度の学力を身に付けさせるための学習相談及び学習支援のモデルとなる取組について実践研究を行うとともに、その研究成果の全国展開を図るための事業を実施している。

経済産業省では、「キャリア教育民間コーディネーター育成・評価システム開発事業」を実施し、同事業により設立された一般社団法人キャリア教育コーディネーターネットワーク協議会がコーディネーターの育成・研修事業や認定等を行っている。

また、2011(平成23)年度より文部科学省、厚生労働省及び経済産業省の3省合同で「キャリア教育推進連携シンポジウム」を毎年開催し、キャリア教育の充実・発展に尽力し、顕著な功績が認められる学校等に対し文部科学大臣表彰、先進的な教育支援活動を行う企業・経済団体等に対し経済産業大臣表彰(「キャリア教育アワード」)を行い、同時に、学校、地域の産業界及び地方公共団体等の関係者が連携・協働してキャリア教育を行う取組を文部科学省及び経済産業省の両省で表彰する「キャリア教育推進連携表彰」を行っている。

高等教育段階においては、若年者雇用が社会的問題となる中で、高い職業意識・能力を有する若者を育成することがますます重要な課題となっている。経済産業省では、2009(平成21)年度から大学におけるゼミや研究室等の取組を通した「社会人基礎力」の育成事例を、学生自身によるプレゼンテーションによって発表し、各取組の中で社会人基礎力等がどれくらい向上したかを評価する「人生100年時代の社会人基礎力育成グランプリ」(2018年度で12回目)を開催している。2018年度は2017年度に提唱した「人生100年時代の社会人基礎力」を踏まえて、「人生100年時代の社会人基礎力育成グランプリ」を開催し、45校(58チーム)が参加し、最も高い「人生100年時代の社会人基礎力」の成長がみられたチームを経済産業大臣賞として表彰している。

文部科学省では、2010(平成22)年に「大学設置基準」(昭和31年10月22日文部省令第28号)等を改正し、2011年度から、全ての大学と短期大学において、当該大学及び学部等の教育上の目的に応じ、学生が卒業後自らの資質を向上させ、社会的及び職業的自立を図るために必要な能力を培うよう取り組むこととなっている。2015(平成27)年度に学部段階においてキャリア教育を実施している大学数は723大学(97%)となっており、勤労観・職業観の育成を目的とした授業科目の開設については2009年の491大学(67%)から650大学(87%)となっている。

・新卒者・既卒者の就職支援

厚生労働省では「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭和45年法律第98号。以下「若者雇用促進法」という。)に基づき、〈1〉新卒者の募集を行う企業による職場情報の提供、〈2〉若者の雇用管理が優良な中小企業を認定する「ユースエール認定制度」等の取組を促進するとともに、ハローワークにおいて一定の労働関係法令違反を繰り返す事業所等の新卒求人を受け付けない求人不受理を実施している。

また、新卒者・既卒者の就職支援のため、全国56か所の新卒応援ハローワーク等において、ジョブサポーターによるきめ細かな就職支援を実施するとともに、大学等との連携による学校への出張相談などを行っている。

さらに、卒業後3年以内の既卒者の就職を促進するため、若者雇用促進法に基づく「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第406号。以下「事業主等指針」という。)において、学校等の新規卒業予定者の募集を行う場合は、学校等の卒業者が卒業後少なくとも3年間は応募できるものとすること等を定め、その周知に取り組んでいる。また、既卒者等の新規学卒枠での応募機会の拡大及び採用・定着の促進を図るため、2016(平成28)年2月より、既卒者及び中退者を対象とした助成金制度を創設し、当該助成金を活用した既卒者等の応募機会の拡大を推進した。

その他、新卒者等が希望する地域において働き続けることができる環境を整備するため、2018年3月に事業主等指針を改正し、事業主等が講ずべき措置として、新たに地域限定正社員制度の積極的な導入等を盛り込み、その周知啓発に取り組んだ。

経済産業省では、中小企業・小規模事業者の人材の確保を支援することを目的に、地域特性に合わせ、各地の中小企業・小規模事業者が必要とする人材を地域内外から発掘し、紹介、定着等を行う「地域中小企業人材確保支援等事業」を行っている。

・就職経路の複線化に対応した多様な就職システムの整備

フリーター等の正社員就職の推進のため、全国のハローワークでのきめ細かな職業相談・職業紹介、職業訓練の情報提供・相談などを実施している。また、支援拠点として、「わかものハローワーク」(2018年4月1日現在、全国28か所)、「わかもの支援コーナー」「わかもの支援窓口」を設置し、若者の就職支援を実施している。

また、2008(平成20)年度から職業訓練受講者を中心に活用されてきたジョブ・カードについて、2015年10月には、ジョブ・カードを「生涯を通じたキャリアプランニング」及び「職業能力証明」のツールとして見直し、2018年4月には、ジョブ・カードの更なる利便性の向上を図るため、一部の項目等を見直すとともに、様式に所要の調整を加えることを可能にするなどの改正を行った。併せて、求職活動やキャリア選択等の場面におけるジョブ・カードの活用促進のため、ジョブ・カード制度総合サイト等を通じた周知広報等を実施している。

その他様々な要因により働くことに悩みを抱えている若者の職業的自立を支援するため、2006(平成18)年度から、地方公共団体との協働により地域の若者支援機関から成るネットワークを構築するとともに、その拠点となる地域若者サポートステーションを全国に175か所設置し、若者の置かれた状況に応じたキャリアコンサルタントなどによる専門的な相談や各種プログラムの実施など、多様な就労支援メニューを提供している。

・若年者に対する技能啓発の推進

公共職業能力開発施設、認定職業訓練施設及び工業高校等において技能を習得中の若者(原則20歳以下)であり、企業等に就職していない者を対象に、技能競技を通じ、これら若年者に目標を付与し、技能を向上させることにより就業促進を図り、併せて若年技能者の裾野の拡大を図ることを目的として「若年者ものづくり競技大会」を実施している。直近では、2018年8月に石川県産業展示館(金沢市)を主会場として、「第13回若年者ものづくり競技大会」を開催し、全15職種の競技に全国から445名の選手が参加した。

また、工業高校や職業訓練校等で技能を学ぶ学生や訓練生等を主な対象に、若年技能者の人材育成を目的として3級技能検定を実施しているが、さらなる受検機会の拡大を図るため、受検ニーズの高い職種について年2回の試験を実施するなど、若年者の技能離れの防止や若年技能者の職場への定着化に努めている。加えて、2017年度から、「ものづくり分野」の技能検定の2級又は3級の実技試験を受検する35歳未満の者に対して、受検手数料を最大9,000円減額する措置を実施している。


1 https://kakehashi.mext.go.jp/

非正規雇用対策の推進

非正規雇用労働者の数は近年増加傾向にあり、2018(平成30)年において、非正規雇用の労働者数は2,120万人、役員を除く雇用者に占める割合は3分の1を超える状況である。非正規雇用の労働者は、正規雇用の労働者と比較して、〈1〉雇用が不安定、〈2〉賃金が低い、〈3〉能力開発機会が乏しい、といった課題がある。

雇用情勢が着実に改善しているタイミングを捉え、正社員を希望する人の正社員転換や非正規雇用を選択する人の処遇改善を推進することが重要である。このため、厚生労働大臣を本部長とする「正社員転換・待遇改善実現本部」において「正社員転換・待遇改善実現プラン」を2016(平成28)年1月に策定した。各都道府県労働局にも本部を設置し、同年3月までにそれぞれの「地域プラン」を策定した。これらのプランに基づき、非正規雇用労働者の正社員転換・処遇改善を強力に推進している。

また、正社員転換を進めるとともに、正規・非正規にかかわらず労働者が安心して生活ができる環境整備を推進することとしている。さらに、派遣労働者、有期契約労働者、パートタイム労働者といった非正規雇用の態様ごとに、以下のとおり必要な施策を講じている。

派遣労働者については、2018年9月に「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律(平成27年法律第73号。以下「平成27年改正労働者派遣法」という。)」の施行から3年が経過し、期間制限ルールや雇用安定措置等の平成27年改正労働者派遣法により設けられた新たな制度が順次適用されていることから、法令違反が生じないよう、積極的な周知や相談対応を行っている。具体的には、派遣労働者、派遣元事業主、派遣先の対象者別に、制度の内容に関するリーフレットを作成し、都道府県労働局を通じた周知を進めるとともに、派遣労働者向けのQ&Aや、SNS等により、困ったときには都道府県労働局へ相談するよう派遣労働者に対して呼びかけている。

有期契約労働者については、労働契約法に基づく「無期転換ルール」(有期労働契約が、更新等により通算5年を超えた場合に、労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み)について、その円滑な導入が図られるよう、これまで「無期転換ルール取組促進キャンペーン」を実施したほか、「無期転換ルール緊急相談ダイヤル」(0570-069276(円満に無期になろう))の開設による相談対応の強化、先行導入した企業の好事例、支援策等をまとめたポータルサイト2やSNS等を活用した情報発信、無期転換ルールの導入手順等をまとめたハンドブックの配布、全国47都道府県でのセミナー開催など、あらゆる機会を活用して無期転換ルールの周知・啓発及び導入支援を行った。さらに、無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的での雇止め等を把握した場合には、啓発指導を行っている。

パートタイム労働者については、多様な就業実態に応じた正社員との均等・均衡待遇の確保や、正社員への転換の推進等を内容とする「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成5年法律第76号。以下「パートタイム労働法」という。)に基づき、事業主への行政指導や専門家による相談・援助等を実施している。

また、2016年9月に「働き方改革実現会議」が開催され、同年12月に、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差がどのような場合に不合理とされるか等を事例等で示す「同一労働同一賃金ガイドライン案」が示された。さらに、2017(平成29)年3月に策定された「働き方改革実行計画」では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消を目指し、その根拠を整備する法改正を行うこととしている。同計画に基づき、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保に向け、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」について、同年9月に労働政策審議会に諮問し、答申を得た。これを受け、パートタイム労働法、労働契約法、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(昭和60年法律第88号)の改正等を内容とする法律案が2018年4月に国会に提出され、同国会において成立し、同年7月6日に公布された。「同一労働同一賃金ガイドライン案」についても、同審議会での議論を経て、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(平成30年厚生労働省告示第430号)として、同年12月28日に告示されている。


2 https://muki.mhlw.go.jp/

(高齢世代から若者世代への経済的支援の促進)
結婚・子育て資金や教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度

将来の経済的不安が若年層に結婚・出産を躊躇させる大きな要因の一つとなっていることを踏まえ、両親や祖父母の資産を早期に移転することを通じて、子や孫の結婚・出産・子育てを支援することを目的として、祖父母等から孫等に対して結婚・子育て資金の一括贈与を行った場合について、贈与税を非課税とする制度が2015(平成27)年4月から実施されている。本制度は、2016(平成28)年度税制改正において、非課税の対象となる一部の費目につき、対象範囲の明確化を行い、2019(令和元)年度税制改正において、その適用期限を2021(令和3)年3月31日までに延長することや、2019年4月1日以降に贈与するものについては受贈者である孫等に所得要件が課されることとされた。

また、金融資産の世代間移転を促進し、子育て世代を支援することを目的として、祖父母等から孫等に対して教育資金の一括贈与を行った場合についても、贈与税を非課税とする制度が2013(平成25)年4月から実施されている。本制度も、2019年度税制改正において、教育資金管理契約の終了年齢につき、従来の30歳から、就学等の継続を条件に最大で40歳まで引き上げられるとともに、受贈者である孫等に所得要件が課される等、制度の適正化が行われた上で、その適用期限を2021年3月31日までに延長することとされた。

(若年者や低所得者への経済的負担の軽減)
若年者や低所得者への経済的負担の軽減

公営住宅においては、子育て世帯等について、入居者選考に際し、地域の実情を踏まえた地方公共団体の判断により優先入居の取扱いを行っている。

トピックス:教育資金及び結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置について

現在、家計資産の約6割を60歳以上の世代が保有している一方で、将来の経済的不安が若年層に結婚・出産を躊躇させ、子育ての不安を生じさせている大きな要因の一つとなっている。こうした状況を踏まえ、両親や祖父母等の資産を早期に移転することを通じて、子や孫等の結婚・出産・子育ての支援等を行うため、(1)教育資金、(2)結婚・子育て資金の2つについて贈与税非課税措置が実施されている。

具体的には、両親や祖父母等(贈与者)が子・孫等(受贈者)の教育資金(結婚・子育て資金)に充てるために金銭等を拠出し、金融機関に信託等を行う。受贈者は、対象費目の支払いをした場合、領収書等を金融機関に提出し、金融機関の確認を受けた上で専用口座から払出しを受ける(事前に専用口座から払出しを受けて、後から領収書等を金融機関に提出し、確認を受ける方法も選択可)。

これらの制度については、教育資金は2013(平成25)年度、結婚・子育て資金は2015(平成27)年度にそれぞれ導入され、2019(令和元)年度税制改正において、受贈者側に所得要件を追加するなどの見直しを行った上で、共に以下の内容で適用期限が2021(令和3)年3月31日までに延長されている。

以下、それぞれの制度について紹介する。

1.教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

(1)受贈者

教育資金管理契約を締結する日において30歳未満である者

※信託等をする日の属する年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、本制度を利用することができない。

(2)非課税限度額

受贈者1人につき1,500万円(うち、学校等以外に支払う金銭は500万円)

(3)対象費目

<1> 学校等の設置者に対して直接支払われる金銭
 入学金、授業料、入園料、保育料、施設整備費及び入学(園)試験の検定料など

<2> 学校等以外の者に直接支払われる金銭であって、教育のために支払われるものとして社会通念上相当と認められるもの
 教育に関する役務の提供の対価や施設の使用料など

※ただし、受贈者が23歳に達した日の翌日以後に支払われる金銭については、対象外となるものがある。

2.結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置

(1)受贈者

結婚・子育て資金管理契約を締結する日において20歳以上50歳未満である者

※信託等をする日の属する年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、本制度を利用することができない。

(2)非課税限度額

受贈者1人につき1,000万円(うち、結婚資金については300万円)

(3)対象費目

<1> 結婚に関する費用
 婚礼に係る費用、家賃等に係る費用、引っ越しに係る費用

<2> 妊娠・出産・育児関係の費目
 不妊治療に係る費用、妊娠に係る費用、出産に係る費用、産後ケアに係る費用、子(未就学児)の医療費に係る費用、子(未就学児)の育児に係る費用

結婚・出産・子育て・教育等に伴う経済的な負担の軽減は、引き続き少子化対策の主要な課題であり、これらの制度の一層の活用がその一助となることが期待される。

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