第2部 少子化対策の具体的実施状況(第2章 第1節 2)

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第2章 きめ細かな少子化対策の推進(第1節 2)

第1節 結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じた支援(2)

2 妊娠・出産

(妊娠から子育てまでの切れ目のない支援体制の構築)
「子育て世代包括支援センター」の整備

2014(平成26)年度において、退院直後の母子の心身のケアや育児サポート等を行う産後ケア事業、妊産婦の相談支援を行う産前・産後サポート事業など妊娠から子育て期までの切れ目ない支援を行うための「妊娠・出産包括支援モデル事業」を29市町村で実施した。

2015(平成27)年度以降は、妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対する総合的相談支援を提供する子育て世代包括支援センターの整備を行うとともに、地域の実情に応じて、「産後ケア事業」や「産前・産後サポート事業」を実施するなど、妊娠期から子育て期にわたるまでの切れ目のない支援を提供する体制の構築に向けた取組を推進している。

なお、2016(平成28)年度においては、「児童福祉法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第63号)により子育て世代包括支援センターを「母子保健法」(昭和40年法律第141号)に位置付けるとともに、2017(平成29)年8月に、子育て世代包括支援センターの業務ガイドラインを策定した。

子育て世代包括支援センターの実施か所数は、2018(平成30)年4月1日時点で1,436か所(761市町村)となっているが、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)に基づき、2020(令和2)年度末までに全国展開を目指している。(第2-2-2図)

第2-2-2図 子育て世代包括支援センターの全国展開

産婦健康診査事業の実施

産後の初期段階における母子に対する支援を強化する観点から、2017(平成29)年度から、産婦健康診査の費用を助成している。

乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)等の実施

乳児家庭の孤立化防止や養育上の諸問題への支援を図るため、乳児がいる全ての家庭を訪問し、子育て支援に関する情報提供や養育環境等の把握、育児に関する不安や悩みの相談等の援助を行う「乳児家庭全戸訪問事業」(2017(平成29)年4月現在、1,734市区町村(99.6%)で実施)や、養育支援が特に必要な家庭を訪問し養育に関する相談、指導、助言等により養育能力を向上させるための支援を行う「養育支援訪問事業」(2017年4月現在、1,476市区町村(84.8%)で実施)を推進するなどにより、子育て家庭に対する切れ目のない支援を行っている。

特に、養育支援訪問事業では、出産後の養育について出産前から支援を行うことが特に必要と認められる妊婦も対象としており、早期からの支援を行っている。

(妊娠・出産等に関するハラスメントの防止等)
指針の周知徹底及び企業の指導

妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの防止のため、男女雇用機会均等法で禁止されている「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」に該当する具体的な内容を示した「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」の周知に加え、企業に対する指導の強化・徹底を行った。また、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法において事業主に義務付けられている職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントの防止措置の必要性等についての理解を深めるため、説明会の開催により周知を行うとともに、事業主に対する行政指導等を実施している。

女性労働者の妊娠中及び出産後の母性健康管理の推進

男女雇用機会均等法に基づいた母性健康管理の措置(健康診査の受診等に必要な時間の確保及び医師等の指導事項を守るために必要な措置を講じること)及び「労働基準法」(昭和22年法律第49号)の母性保護規定(産前産後休業、危険有害業務の就業制限等)について、事業主、女性労働者、医療関係者等に対し周知徹底を図っている。

また、事業主が母性健康管理の措置を適切に講じるよう指導を行うとともに、女性労働者に対して出された医師等の指導事項を的確に事業主に伝えるための「母性健康管理指導事項連絡カード」の利用を促進している。

さらに、企業や働く女性に対して母性健康管理に関する情報を提供する支援サイト「妊娠・出産をサポートする 女性にやさしい職場づくりナビ1」により、制度の周知を図っている。


1 https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/

(妊娠・出産に関する経済的負担の軽減と相談支援の充実)
妊婦健診や出産・産前産後休業期間中に係る経済的負担の軽減

妊婦に対する健康診査については、2008(平成20)年度第2次補正予算等で、必要な回数(14回程度)を受けられるよう支援の拡充を図り、その後も補正予算において必要額を確保し、2012(平成24)年度まで「妊婦健康診査臨時特例交付金」により都道府県の基金事業を通じて支援した。2013(平成25)年度以降は、基金事業が一般財源化され、地方財政措置が講じられている。

また、妊娠の早期届出(それに伴う母子健康手帳の早期交付)及び妊婦健診の適正な受診について、リーフレットの作成・配布等を通じて広く国民に周知を図っている。

「出産育児一時金制度」については、2011(平成23)年4月以降、引き続き、支給額を原則42万円としている。また、社会保険の加入者は、産前産後休業をしている期間について、事業主が申出をしたときに、健康保険及び厚生年金保険の保険料の免除を受けることができる。2019(平成31)年4月以降、国民年金の第1号被保険者についても、産前産後休業をしている期間について、保険料の免除を受けることができるようになる。

産科医療補償制度の整備

安心して産科医療が受けられる環境整備の一環として、2009(平成21)年1月から、「産科医療補償制度」が実施されている。同制度は、お産に関連して発症した重度脳性麻痺児とその家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、事故原因の分析を行い、将来の同種事故の防止に資する情報を提供すること等により、紛争の防止・早期解決及び産科医療の質の向上を図ることを目的としている。

相談支援体制の整備(妊娠・出産、人工妊娠中絶等)

生涯を通じた女性の健康支援(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の視点も踏まえつつ、妊娠や出産、人工妊娠中絶等の適切な相談支援体制を整備することが求められている。

このため、妊娠や出産、人工妊娠中絶等の悩みを抱える方に対して、訪問指導等の母子保健事業を活用した相談支援のほか、「女性健康支援センター事業」(2018(平成30)年度:73地方公共団体)等において、相談支援を行っている。

また、国立研究開発法人国立成育医療研究センターのプレコンセプションケアセンターにおいては、女性やカップルに対して将来の妊娠のための健康管理に関する情報を提供することを目的に、相談、検診、情報発信、調査を行っている。

(周産期医療の確保・充実等)
出産環境の確保

安心して子供を生み育てることができるよう、特定の地域や診療科での勤務を条件とする「地域枠」を活用した医学部入学定員の増加や地域医療支援センターによる医師不足病院への医師確保支援等を通じて産科医の確保を図っている。

また、分娩施設が少ない地域において、新規に分娩施設を開設する場合などの施設や設備の整備に対する財政支援を行うとともに、2017(平成29)年度からは産科医の確保が困難な医療機関に産科医を派遣する場合の財政支援を行うなど、分娩可能な産科医療機関の確保に取り組んでいる。

助産師の活用

助産師を活用し、地域において安心・安全な出産ができる体制を確保するため、2018(平成30)年度は、就業助産師の偏在解消、助産実践能力の強化、助産学生等の実習施設確保及び助産所と連携する医療機関の確実な確保を図る目的で、「助産師出向支援導入事業」を実施している。

周産期医療体制の整備・救急搬送受入体制の確保

周産期医療体制については、リスクの高い妊産婦や新生児などに高度な医療が適切に提供されるよう、周産期医療の中核となる総合周産期母子医療センター及び地域周産期母子医療センターを整備し、地域の分娩施設等との連携の確保等により、充実を図っている。成育医療分野では、国の医療政策として、国立研究開発法人国立成育医療研究センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関等とが協力しつつ、医療の質の向上のための研究の推進や標準的医療等の普及に取り組んでいる。特に、国立研究開発法人国立成育医療研究センターでは、生殖、妊娠、胎児期、周産期、新生児期、小児期、思春期、成人期に至る一連のサイクルを想定して、健全な次世代を育成するため、高度先駆的医療、小児がん・小児難病・希少疾患・小児精神疾患、ハイリスク分娩、胎児・新生児疾患、新生児・小児期外科疾患に対する医療と小児救命救急医療の提供、小児期・周産期疾患の基礎研究と臨床研究、教育研修及び国内外の医療機関等への医療情報の発信に取り組んでいる。

周産期救急医療については、総合周産期母子医療センターや地域周産期母子医療センターの整備等を進めてきたところであり、新生児集中治療室(NICU)は目標であった出生1万人当たり25~30床を2014(平成26)年度に達成できた。妊産婦死亡率(出産10万対)は2010(平成22)年の4.1から2017(平成29)年の3.4、新生児死亡率(出生1000対)は2010年の1.1から2017年の0.9と改善が図られてきた。また、総合周産期母子医療センターの機能について、可能であれば自施設又は他施設の関係診療科と連携して産科合併症以外の合併症を有する母体に対応することとしてきた。さらに、周産期医療体制のあり方に関する検討会における意見の取りまとめ(2016(平成28)年)を踏まえて、精神疾患を合併する妊産婦へも対応可能な体制を整えることとした。

(不妊治療等への支援)
不妊専門相談センターの整備

不妊治療や不育症治療に関する情報提供や相談体制を強化するため、専門医等が、不妊や不育症に関する医学的な相談や、心の悩みの相談等を行う「不妊専門相談センター事業」を実施している(2018(平成30)年度:67地方公共団体)。

不妊治療に係る経済的負担の軽減等

2004(平成16)年度から、配偶者間の不妊治療に要する費用の一部を助成して、経済的負担の軽減を図っている(2017(平成29)年度支給実績:13万9,752件)。この助成事業については、2016(平成28)年1月から、早期の受診を促すため、出産に至る割合が高い初回治療の助成額を15万円から30万円に拡充するとともに、不妊の原因が男性にある場合に精子回収を目的とした手術療法を実施した場合、高額な医療費の負担を軽減するため、更に15万円を上限に上乗せして助成している。また、夫婦ともに不妊治療が必要な場合は、医療費も更に高額になることから、その経済的負担を軽減するため、2019(令和元)年度当初予算において、男性不妊の初回治療にかかる助成の拡充(15万円→30万円)を行った。

(健康な体づくり、母子感染予防対策)
母子保健・母子感染予防対策の推進

21世紀における母子保健分野での国民運動計画である「健やか親子21(第2次)」を2015(平成27)年度から推進し、母子保健サービスの一層の充実を図っている。第2次計画(2015~2024(令和6)年度)では、10年後に目指す姿として「すべての子どもが健やかに育つ社会」を掲げ、その実現に向けて取組を進めている。

また、母子感染予防対策として、「HTLV-12母子感染対策事業」を実施し、都道府県における母子感染対策協議会の設置や、母子感染予防のための保健指導等の支援体制の整備を図っている。

なお、現在の風しんの発生状況等を踏まえ、出生児の先天性風しん症候群(CRS)3を防ぐために、風しんの患者数が多い東京都、神奈川県、大阪府等の7都府県で、妊娠を希望する女性等に対して風しん抗体検査を受けるよう周知するとともに、医療機関に対するワクチンの供給量を増やす取組等を行った。加えて、感染拡大自体を防ぐために、2019(平成31)年2月より、抗体保有率の低い世代の男性を対象に風しん抗体検査及び予防接種法に基づく定期接種を行う等の追加的対策を実施している。


2 HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルスI型)とは、血液中の白血球の一つであるリンパ球に感染するウイルスであり、感染は主に母乳を介した母子感染による。HTLV-1に感染していても約95%の方は生涯HTLV-1による病気になることはない。しかし、一部の方は血液や神経の病気、又は眼の病気などを発症する場合がある。

3 風しんに対して免疫のない女性が、特に妊娠初期に罹患した場合に出生児に引き起こされる障害。先天性心疾患、難聴、白内障が三大症状。

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