第2部 少子化対策の具体的実施状況(第2章 第1節 5)

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第2章 きめ細かな少子化対策の推進(第1節 5)

第1節 結婚、妊娠・出産、子育ての各段階に応じた支援(5)

5 教育

キャリア教育の推進

若者のライフプランニングを支援するため、高校生が進路選択に当たって、就職のみならず結婚、出産、育児などのライフイベントを踏まえた生活の在り方についても総合的に考えることができるよう、調査研究を踏まえ教材を作成し、ライフデザイン構築のための学びを推進している。

「ニッポン一億総活躍プラン」(2016(平成28)年6月2日閣議決定)に基づき、内閣府、文部科学省及び厚生労働省が連携しながら、高校生のキャリア形成支援教材「高校生のライフプランニング」を作成し、2018(平成30)年11月に地方公共団体等に周知を図った。

学校教育段階からの妊娠・出産等に関する医学的・科学的に正しい知識の教育

高校生向けの健康教育に関する啓発教材「健康な生活を送るために」において、個人が将来のライフデザインを描けるようにするため、その前提となる、妊娠・出産等に関する医学的・科学的に正しい知識等について盛り込んでいる1


1 http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/08111805.htm

性に関する科学的な知識の普及

「生涯を通じた女性の健康支援事業」では、保健所、市町村保健センター等において、妊娠、避妊や性感染症を含めた女性の心身の健康に関する相談指導のほか、女性のライフステージに応じた健康教育等を実施している。

また、「性感染症に関する特定感染症予防指針」においては、性感染症は、10歳代半ばから20歳代にかけての若年層における発生の割合が高いことから、性感染症から自分の身体を守るための正確な情報提供を適切な媒体を用いて行うことで、広く理解を得ることが重要であり、保健所等が行う健康教育にあっては、教育関係者及び保護者等と十分に連携し、学校における教育と連動した普及啓発を行うこととしている。

さらに、学校教育においては、体育科、保健体育科を中心に学校教育活動全体を通じて、児童生徒の発達の段階に応じて性に関する科学的な知識を理解させる。なお、指導に当たっては、児童生徒の発達の段階を踏まえること、学校全体で共通理解を図ること、保護者の理解を得ることなどに配慮すること、集団指導と個別指導の連携を密にして効果的に行うことなどに配慮することが大切である。

妊娠や家庭・家族の役割に関する教育・啓発普及

学習指導要領においては、学校における性に関する指導として、児童生徒が妊娠、出産などに関する知識を確実に身に付け、適切な行動を取ることができるようにすることを目的としており、これに基づき保健体育科を中心に学校教育活動全体を通して指導が行われている。

また、児童生徒に、家族の一員として家庭生活を大切にする心情を育むことや、子育てや心の安らぎなどの家族・家庭の機能を理解させるとともに、これからの生活を展望し、課題をもって主体的によりよい生活を工夫できる資質・能力を身に付けさせることが重要である。このため、小学校、中学校、高等学校において、発達の段階を踏まえ、関連する教科等を中心に、家族・家庭の意義や役割への理解を深める教育がなされている。

2017(平成29)年3月に小・中学校学習指導要領を、2018(平成30)年3月に高等学校学習指導要領を改訂し、例えば、小学校家庭科では、家庭生活が家族の協力によって営まれていること、中学校技術・家庭科では、家族や地域の人々と協力・協働して家庭生活を営む必要があること、高等学校家庭科では、家族・家庭の機能や子育て支援などについて、教育内容の充実が図られたところである。

・乳幼児と触れ合う機会の提供

乳幼児と接する機会の少ない中学生、高校生等が、乳幼児と出会い、触れ合うことは、他者への関心や共感能力を高め、乳幼児を身近な存在として意識し、愛着の感情を醸成している。

・学校・家庭・地域における取組の推進

将来の親となる世代が子供や家族・家庭について考え、子供とともに育つ機会を提供するとともに、国民一人一人が家族・家庭や子育ての意義について理解を深められるようにすることが重要である。学校教育においては、子供たちに乳幼児との触れ合いの機会を提供し、将来親となった際に必要となる子育ての態度を育てるとともに、少子化とそれがもたらす社会への影響、子育てや男女が協力して家庭を築くことの大切さなどについても理解を深めさせることが重要である。

このため、小学校、中学校、高等学校の各学校段階で、関係する教科等において相互の連携を図りながら子育てへの理解を深める教育が実施されている。

家庭や地域における取組としては、夫婦で共同して子育てをすることの大切さや命の大切さなどについて、保護者が理解を深められるよう、地域が主体的に実施する家庭教育に関する取組を支援している。

トピックス:体験型ライフデザインプログラム

「ニッポン一億総活躍プラン」(2016(平成28)年6月2日閣議決定)においては、希望出生率1.8の実現に向けた取組の一つとして、若者のライフデザインに基づくキャリアプランの構築を促進することとされている。こうした取組の多くは、学校等での講義形式であるが、ここではその発展型として、体験型の学びを通じて参加者が人生設計をする機会を提供する例を2つ紹介する。

埼玉県 ライフデザイン構築支援カリキュラム

埼玉県は、婚姻率や合計特殊出生率が日本全体と比較しても低く、低下傾向にあることから、これまで少子化対策・結婚支援に取り組んできた。その一環として、2018(平成30)年度、ライフデザイン構築支援事業を実施した。

当該事業の中で、若い世代に意識調査を実施したところ、夫婦・家族のロールモデルが少ないこと、家事育児の負担・夫婦の分担、仕事・キャリアとの両立に関する不安を抱いていることなどがわかった。そこで、この課題を解消するため、「ライフデザイン構築支援カリキュラム」を策定した。

対象は埼玉県在住、在学、在勤の学生、社会人のうち18歳から29歳の未婚の男女で、2日間のプログラムを2回実施した。

同カリキュラムでは、参加者が子育て中の家庭を訪問し、実際の家庭生活の体験を通して、「仕事」と「家庭」の在り方を考える「家族留学」、県内の愛和病院と同院が運営する産後ケア施設(パタニティ・マタニティハウス)の見学、子育て中の同施設の利用者との交流及びライフプランナーによるライフプラン講座が行われた。

「家族留学」では、参加者が留学先となる家庭で半日子供と遊んだり、家事を手伝ったり、食事をしたりして過ごす。参加者にとっては、子育て家庭を体験すること自体が新鮮だが、加えて、互いに率直な会話をする中で、多様な家族の在り方や働き方を知ることができる。

愛和病院の見学では、施設を見学し説明を聞くことで、産婦の負担の大きさや産後ケアの重要性を知ることができる。また、同院のパタニティ・マタニティハウスの見学では、0~1歳児の子育て中の利用者から、子育てに関する様々な生の声を聞くこともできる。

参加者は、2日間のカリキュラムを通じ、多くの気づきを得て、そのことが自身のライフデザインを考えることにつながっている。実際、参加者からは、「家庭内における家事・育児の分担や仕事との両立方法を学ぶことができた」、「子供を育てるイメージがより明確になった」、「ライフプランを考える上での選択肢が広がった」など好評の声があがっている。

家族留学の様子

家族留学の様子

愛和病院見学の様子

愛和病院見学の様子

このカリキュラム以外にも、例えば、県内保育所の取組に興味を持つ18歳から29歳の未婚の男女を対象に、企業と連携した企業内保育所における保育体験なども実施しており、埼玉県としては、引き続き若い世代向けのライフデザイン構築支援に力を入れていく方針である。

滋賀県 学生アイディア提案事業

滋賀県は、2015(平成27)年3月に策定された「淡海子ども・若者プラン」に基づき、子供が生まれる前から自立するまでの切れ目ない支援を行うため、様々な取組を行っている。そのひとつとして、県内に13の大学があり人口に対し学生の数が多いという特色を生かし、大学と自治体が連携し、大学生等の若い世代に対し、仕事と家庭の両立支援を含む将来を見据えたライフデザインを考える機会を提供する事業を2016(平成28)年度から実施しており、2018(平成30)年度においては、地元放送局「びわ湖放送」と協力し、大学生自らがライフイベントに係る番組制作に参画するという「学生アイディア提案事業」を行った。

大学生たちは、4回のワークショップにおいて、ライフデザイン講座と併せカメラワーク等の番組制作のノウハウを学んだ上で、番組内容について検討を行った。学生たちからは、4分という限られた時間の中でリアリティのある内容にするため、「多様なライフデザインがあることを踏まえ、大学生同士の会話仕立てで身近なテーマを切り口に進行していくのはどうか」という提案があり、番組は「ミニドラマ」と「本音トーク」の2部構成となった。「ミニドラマ」では、大学の先輩・後輩が結婚、出産、子育てについての費用も含めて話し合う様子をドラマ仕立てで撮影した。「本音トーク」では、結婚の希望や子供を持つことについて、大学生たちがそれぞれの考えを語り合う形とした。番組を通じて、「多様な選択肢があることを踏まえた上で、未来を予測し備える、自分を幸せにするためのライフデザインの大切さを知ってほしい」というメッセージを視聴者に伝えていく狙いだ。

学生たちは、出演者として撮影にも参加し、出来上がった番組は今後テレビで放映されるほか、県内大学におけるライフデザイン講座でも活用される予定である。

滋賀県としては、これまでの取組を通じて構築された大学とのネットワークを大きな財産として捉えており、今後もこのネットワークを生かしながら、ライフデザイン事業を含む少子化対策を地域全体で推進していくこととしている。

番組の撮影の様子

番組の撮影の様子

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