第1部 少子化対策の現状(第2章 第2節 2)

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第2章 少子化対策の取組(第2節 2)

第2節 新たな少子化社会対策大綱の策定~新しい令和の時代にふさわしい少子化対策へ~【特集】(2)

2 新たな少子化社会対策大綱の策定

(1)深刻さを増す少子化

2019年の出生数は90万人を割り込み、「86万ショック」とも呼ぶべき状況。合計特殊出生率も1.36と前年から0.06低下した。危機的な少子化の進展が浮き彫りになる中、深刻さを増す少子化の問題は、社会経済に多大な影響を及ぼし、新型コロナウイルス感染症を乗り越えた先にも存在し続ける国民共通の困難である。この困難に真正面から立ち向かい、子供や家族が大事にされる社会への転換が急務である。

(2)新たな大綱における主な施策

少子化の背景には、核家族化の進展など家族を取り巻く環境の多様化や、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因が絡み合っている。

こうした少子化の問題に取り組むための基本方針となる新たな大綱では、基本的な目標として「希望出生率1.8」の実現を掲げ、そのための具体的な道筋として、結婚支援、妊娠・出産への支援、男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備、地域・社会による子育て支援、多子世帯への支援を含む経済的支援など、ライフステージに応じた総合的な少子化対策に大胆に取り組むこととしている。

新たな大綱においては、具体的に、以下の施策などを盛り込んでいる。

結婚支援

・地方公共団体が行う、出会いの機会・場の提供、結婚に関する相談・支援や支援者の養成、ライフプランニング支援などの総合的な結婚支援の一層の取組を支援する。その際、広域的な自治体間連携、AIを活用したシステムと相談員による相談を組み合わせた結婚支援等を促進する。また、結婚に伴う新生活のスタートアップに係る経済的負担を軽減することで、結婚の後押しをする。加えて、結婚支援に取り組むNPOを始めとする民間団体との連携強化を図る。これらの取組に当たっては、結婚は個人の自由な意思決定に基づくものである点に十分留意する。

妊娠・出産への支援
(不妊治療への支援)

・不妊治療の経済的負担の軽減を図るため、高額の医療費がかかる不妊治療(体外受精、顕微授精)に要する費用に対する助成を行うとともに、適応症と効果が明らかな治療には広く医療保険の適用を検討し、支援を拡充する。そのため、まずは2020年度に調査研究等を通じて不妊治療に関する実態把握を行うとともに、効果的な治療に対する医療保険の適用の在り方を含め、不妊治療の経済的負担の軽減を図る方策等についての検討のための調査研究を行う。あわせて、不妊治療における安全管理のための体制の確保が図られるようにする。

(妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援)

・安心・安全で健やかな妊娠・出産、産後を支援するため、成育基本法1を踏まえ、妊娠期から子育て期までの切れ目ない支援体制の充実に取り組む。

・特に、妊娠期から子育て期にわたるまでの様々なニーズに対して総合的相談支援を提供するワンストップ拠点(子育て世代包括支援センター)の整備を図る。また、2019年に成立した母子保健法改正法2を踏まえ、出産後の母子に対して、心身のケア等を行う産後ケア事業について、2024年度末までの全国展開を目指す。このほか、産前・産後サポート事業の実施を図る。

男女共に仕事と子育てを両立できる環境の整備
(男性の家事・育児参画の促進)

・男性の育児休業取得率を2025年に30%とする目標に向けて、労働者に対する育児休業制度等の個別の周知・広報や、育児のために休みやすい環境の整備、配偶者の出産直後の時期の休業を促進する枠組みの検討など、男性の育児休業取得や育児参画を促進するための取組を総合的に推進する。

・2020年の雇用保険法3改正により、子を養育するために休業した労働者の雇用と生活の安定を図るための給付と位置付けられた育児休業給付について、上述の男性の育児休業の取得促進等についての総合的な取組の実施状況も踏まえつつ、中長期的な観点から、その充実を含め、他の子育て支援制度の在り方も併せた効果的な制度の在り方を総合的に検討する。

(待機児童解消)

・就労希望者の潜在的な保育ニーズに対応し、就労しながら子育てしたい家庭を支えるため、「子育て安心プラン」4に基づき、2020年度末までに待機児童解消を図り、女性就業率8割に対応できるよう、約32万人分の保育の受け皿を確保する。

・2021年度以降の保育の受け皿確保について、必要な者に適切な保育が提供されるよう、第2期市町村子ども・子育て支援事業計画における「量の見込み」の結果等を踏まえ検討するとともに、各地方公共団体の特性に応じたきめ細かな支援を行う。

地域・社会による子育て支援

・「子ども・子育て支援新制度」を着実に実施し、実施主体である市町村が住民のニーズを把握した上で、地域の実情に応じて子ども・子育て支援の充実を図る。また、その更なる「質の向上」(職員の配置改善等)を図るため、消費税分以外も含め、適切に財源を確保していく。

保護者の就業形態や就業の有無等にかかわらず、子育て家庭の多様なニーズに対応する、多様な保育・子育て支援を提供し、地域の実情に応じてそれらの充実を図る。特に、幅広いニーズが見込まれる一時預かり事業やファミリー・サポート・センター事業、広く地域に開かれた施設である認定こども園や地域子育て支援拠点などにおける子育て支援の一層の強化を図る。また、病児保育をはじめ多様な保育について、地域の実情に応じてそれらの充実を図るとともに、保育を希望する保護者がニーズにあった保育につながるよう、相談対応や情報提供等、保護者に寄り添った支援を行う。さらに、保育施設への送迎や、保育施設の開始前・終了後の子供の預かりなど、地域におけるきめ細かな子育て支援を推進する。あわせて、子育て家庭の負担軽減に資するよう、家事の負担を軽減する商品やサービスを積極的に活用できる環境づくりを推進する。

多子世帯への支援を含む経済的支援
(児童手当)

・児童手当について、多子世帯や子供の年齢に応じた給付の拡充・重点化が必要との指摘も含め、財源確保の具体的な方策と併せて、子供の数や所得水準に応じた効果的な給付の在り方を検討する。

(高等教育の修学支援)

・高等教育の修学支援新制度について、少子化対策として実施していることに鑑み、その成果や実施状況を踏まえ、多子世帯に更に配慮した制度の充実を検討する。

(幼児教育・保育の無償化)

・2019年10月から実施されている、3歳から5歳までの子供及び0歳から2歳までの住民税非課税世帯の子供についての幼稚園、保育所、認定こども園等の費用の無償化を着実に実施する。


さらに、新型コロナウイルス感染症は、安心して子供を生み育てられる環境整備の重要性を改めて浮き彫りにしており、非常時の対応にも留意しながら、事態の収束後に見込まれる社会経済や国民生活の変容も見通しつつ、取組を進めることとしている。

新たな大綱に基づく施策の具体化に速やかに取り組み、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む隘路の打破に強力に取り組んでいく。

第1-2-5図 少子化社会対策大綱のポイント


1 「成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律」(平成30年法律第104号)

2 「母子保健法の一部を改正する法律」(令和元年法律第69号)

3 「雇用保険法」(昭和49年法律第116号)

4 「子育て安心プラン」(2017年6月公表)

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