第2部 少子化対策の具体的実施状況(第1章 第5節 1)
第1章 重点課題(第5節 1)
第5節 地域の実情に即した取組の強化(1)
1 地域の強みを活かした取組支援
地方公共団体の取組の支援
2013年度補正予算で創設された「地域少子化対策強化交付金」(2015年度補正予算より「地域少子化対策重点推進交付金」に名称変更)では、結婚支援とともに、男性の家事・育児への参画を促進する取組や、乳幼児との触れ合い体験、「子育て支援パスポート事業」など、地域の課題と実情を踏まえ地方公共団体が行う結婚、妊娠・出産、乳児期を中心とする子育てに温かい社会づくり・機運の醸成の取組を支援している。
2019年度においては、「少子化克服戦略会議提言」(2018年6月4日少子化克服戦略会議決定)も踏まえ、これに資する結婚、妊娠・出産、乳児期を中心とする子育てに温かい社会づくり・機運の醸成の取組を支援した。また、ワーク・ライフ・バランス等の推進に資する多様な交流の機会の提供など、地方公共団体と連携した企業・団体・学校等の自主的な参加による取組等を引き続き支援した。さらに、2019年度からは、選定した都道府県を対象に有識者などを当該自治体に派遣して助言を行う等により、都道府県及び管内市区町村における同交付金を活用した取組が促進されるよう、重点的・継続的に支援している。
なお、「地域少子化対策」に関しては、内閣府内で申請等窓口を共同化しつつ、結婚に関する取組や結婚、妊娠・出産、乳児期を中心とする子育てに温かい社会づくり・機運の醸成の取組を「地域少子化対策重点推進交付金」で支援し、これらの支援対象以外の官民協働、地域間連携、政策間連携等を通じた先導的な取組を「地方創生推進交付金」で支援している。
地域と連携した取組の促進
2016年4月からスタートした「子育て支援パスポート事業」の全国共通展開については、同年10月から新たに5都府県が参加して合計46都道府県となり、2017年4月からは全47都道府県で相互利用が可能となった。
同事業は、都道府県等地方公共団体と協賛企業・店舗において授乳やおむつ交換場所の提供、ミルクのお湯の提供等の乳幼児連れの外出サポート(フレンドリー・メニュー)や子育て世帯に対するポイント付加サービス、商品代や飲食代等の各種割引等のサービスを提供しているものである。国においても地域ぐるみで子育てを応援しようとする社会的機運の醸成のため、各都道府県と連携し、協賛店舗の拡大、サービス内容の充実など同事業の充実・強化を図っている1。
また、2019年度も「子育て応援コンソーシアム」2を開催し、団体や企業、特定非営利活動法人等が連携し、社会全体で子育てを応援する機運の醸成を図った。
1 子育て支援パスポート事業(参照)
第2部第1章第3節「多子世帯向け子育て支援パスポート事業の充実」
第2部第2章第2節「子育て支援パスポート事業の全国展開」
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/passport/pass_tenkai.html
「子育て支援員」の養成
「子ども・子育て支援新制度」の施行に伴い、小規模保育など地域のニーズに応じた幅広い子育て支援分野において、子供が健やかに成長できる環境や体制が確保されるよう、支援の担い手となる人材を確保することが必要である。
このため、2015年度より、都道府県・市町村等において、地域で子育て支援の仕事に関心を持ち、子育て支援分野の各事業等に従事することを希望する者等に対し、必要となる知識や技能等を修得するための全国共通の「子育て支援員研修事業」を地域の実情に応じて実施している。
地域の退職者や高齢者等の人材活用・世代間交流
高齢者に就業機会・社会参加の場を提供するシルバー人材センターにおいて、乳幼児の世話や保育施設への送迎などの育児支援、就学児童に対する放課後・土日における学習・生活指導等の支援を実施しており、経験豊かな高齢者が地域における子育ての担い手として活躍している。
また、母親クラブや子育てサークルなど、地域住民の自主的な参加により活動している地域組織においては、登下校時の子供の見守り活動や公園の遊具の安全点検、親子やお年寄との交流機会の提供、子供とともに食の大切さを学ぶ文化活動などを行い、子供を地域全体で支え、見守り、育てる活動を積極的に展開している。
トピックス:子育てに便利なベビーテック
1.ベビーテックとは
ベビーテックとは、英語で Baby Techと記載するとおり、Baby(赤ちゃん)とTechnology(技術)を組み合わせた造語である。
主にアメリカにおいて広まっている考え方で、毎年1月にラスベガスで行われる世界最大の家電中心の電子機器の見本市「CES」(Consumer Electronics Show)では、2016年より、Baby Tech Awardとして5部門(「健康と安全」、「睡眠」、「妊娠」、「子育て」、「遊びと学び」)から1社ずつ表彰されている。
2.日本におけるベビーテック
日本において「ベビーテック」という言葉は、明確な定義が世間一般に浸透している様子は見られないものの、広義に、妊娠から始まる赤ちゃんに関する技術全般を指すような使い方がなされている。
2018年には、ベビーテック製品を扱う複数の企業により、「子育Tech委員会」という団体が発足した。同団体の活動方針は、「子育てにテクノロジーを使って、心身ともにゆとりある子育てになる『子育Tech』を認知し、周りの目などの精神的障壁なくテクノロジーを利用できる環境にする」ことである。
日本では、「手間をかけることを愛情とする」雰囲気が根強いことから、「手間を省く」ことに関する罪悪感等の精神的障壁がある。例えば、「育児中に携帯電話等を使う」、「携帯電話等でアプリを利用する」ことに対し、否定的な人は少なくない。このような雰囲気をなくして子育てにテクノロジーをいかすことで、家事・育児の効率化が進めば、赤ちゃんと向き合う時間が増え、ゆとりある子育てにつながることが期待される。
3.ベビーテックの活用と今後
内閣府で2019年度に開催した「子育て応援コンソーシアム」(第4、5回)では、下記企業より、子育てに便利なベビーテックとして、子育ての省力化につながる製品の発表があった。
- 株式会社リキッド・デザイン・システムズ【非接触型のベビーセンサー】
- 株式会社AsMama【子育て仲間とつながるアプリ】
- 株式会社エムティーアイ【母子手帳のアプリ化】
- 子育Tech委員会(株式会社カラダノート)【「子育Tech委員会」所属各社の製品等】
- ユニファ株式会社【保育施設における幼児用センサーや自動撮影機能】
このようなベビーテック製品は、対象が保育園等から家庭にも拡大している。今後、更に利用が進むことで、男性やシニア層、地域の人たちを含む子育ての担い手が多様化し、いわゆる母親の「ワンオペ育児」等の孤立の解消が図られることを期待するとともに、「子育ては母親が行うもの」、「手間をかけることが愛情」のような精神的障壁が取り除かれ、子育てを行う人を応援し、社会全体で子供を育てる機運が醸成されるよう、引き続き、政府も取組を進めていく。

