第1部 少子化対策の現状(第2章 第2節 4)

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第2章 少子化対策の取組(第2節 4)

第2節 少子化対策における新型コロナウイルス感染症の影響及びそれらへの対応について【特集】(4)

4 新型コロナウイルス感染症流行下における新たなつながりや支援の萌芽

新型コロナウイルス感染症の流行が続く中で、少子化対策に関わる分野において、これまで対面で行ってきた各種のイベントや相談支援などをオンラインで行う取組が広がっている。以下では、オンラインを活用した結婚支援、子育て支援、子どもの学習支援の取組事例を紹介する。

(1)結婚支援-オンラインを活用した婚活イベントの実施

結婚を希望しているがその希望がかなえられていない人たちからの「出会いの場がない」という意見を地域の課題と捉え、婚活イベントを実施している地方公共団体がある。2020年度に実施した調査では、新型コロナウイルス感染症対策として、婚活イベントを対面からオンラインに変更する事例が報告されている1。この一例として、長野県駒ヶ根市が行ったオンラインによる婚活イベントの事例を取り上げ、オンラインで実施したことで得られた知見を紹介する。

駒ヶ根市では、市が直営する結婚相談所が中心となり、結婚に関する相談業務を行うほか、婚活イベント(2016年度から実施)などを実施することにより、結婚支援に取り組んできた。駒ヶ根市では、2019年度までは、参加者が一堂に会する形(対面)で婚活イベントを実施してきたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から「三つの密(密閉・密集・密接)」を回避するために、2020年6月から、オンラインで参加者が会話を行う形式を開始した。結婚相談所の職員は、婚活イベントのコーディネーターとして、参加者の緊張を解きほぐすように語り掛けるとともに、参加者どうしの会話を引き出すといったような話しやすい雰囲気づくりを行っている。駒ヶ根市がオンラインで実施するために、準備したものは、オンライン会議のアプリケーションの契約と、Wi-Fi環境の整備である。婚活イベントの参加者は、個人のパソコン又はスマートフォンを利用して、イベントに参加している。

駒ヶ根市では2020年度に、婚活イベントを計16回実施している2が、このうち8回を対面で、8回をオンラインで実施している。参加者に直接会う喜びを感じていただいたり、実際に一緒に体験していただいたりする内容のものは対面で、対面が苦手な参加者や、遠方の参加者を対象とした内容のものはオンラインで実施している。オンラインでの実施に伴い、カップルの成立を促すための工夫として、結婚相談所から参加者に対する支援(イベントの前にはオンライン接続の確認を兼ねた参加者との面談、イベント後には参加者へのフォロー等)を手厚くしている。

駒ヶ根市では、対面からオンラインに変更したことによる主なメリットとして、次の4点を挙げている。

<1>参加者が趣味などを話題にする際、自宅にあるものを画面越しに見せ合うことができるため、対面式のイベントでの会話だけのときよりもお互いのことを知ることができる。

<2>対面で実施した場合、会場借料が発生するが、オンラインではこの経費がないため、参加費を安価(2千円程度)に設定することができる。

<3>オンラインでは参加者が自宅から参加できるので、参加者にとってはイベント会場までの移動がなくて済む。

<4>対面が苦手で、対面の婚活イベントに参加していなかった方が、オンラインの婚活イベントに参加している。

一方、対面からオンラインに変更したことによる主なデメリットは、次の2点である。

<1>パソコン等の通信環境によって、参加者の声が聞き取りづらいことがある。

<2>気になった人どうしが連絡先を交換するのは、対面の方がしやすいという参加者の意見がある。

駒ヶ根市では、オンラインで実施して得られた知見を、次回の企画・立案にいかし、オンラインを活用した、より効果的な結婚支援の実施に努めている。

婚活イベントをオンラインで実施することは、「三つの密」を回避するという新型コロナウイルス感染症対策として始めたことであるが、その取組から、次年度以降につながるような事業の質を高める成果・知見が得られている。

オンライン婚活イベントの様子(画面を通じて参加者に語り掛ける結婚相談所職員)

1 内閣府「地方自治体における少子化対策の取組状況に関する調査」(2021年3月)によれば、2020年度に婚活イベントを「実施している」「検討中(延期を含む)」と回答した地方公共団体のうち、「対面ではなくオンラインに変更している」と回答した都道府県は14、市区町村は68であった。

2 2020年度に駒ヶ根市が実施しているこの取組には、地域少子化対策重点推進交付金が活用されている。

(2)新たな親子の交流の場づくり-オンラインによる子育て支援

地域子育て支援拠点は、子育て中の親子が気軽に集い、相互交流や子育ての不安・悩みを相談できる場として、子育て支援センターや子育てひろばといった名称で、広く全国で実施されている。地域子育て支援拠点では、<1>子育て親子の交流の場の提供と交流の促進、<2>子育て等に関する相談、援助の実施、<3>地域の子育て関連情報の提供、<4>子育て及び子育て支援に関する講習等の実施という四つの基本事業を核として、地域の身近な場所で、乳幼児のいる子育て中の親子の交流や育児相談、情報提供等を実施している。

新型コロナウイルス感染症が流行する中で、2020年4月の緊急事態宣言発出時には、多くの地域子育て支援拠点が臨時休館となった。これまでのような対面での交流や相談支援が難しくなる中で、外出自粛による「巣ごもり育児」が続く地域の親子の孤立を防ぎ、親子が外部とのつながりを持ちながら安心して日々を過ごせるよう、それぞれの地域子育て支援拠点で工夫を凝らした取組が行われた。その特徴的な取組の一つが、オンラインによる子育て支援の取組である。

オンラインによる子育て支援に積極的に取り組んでいる地域子育て支援拠点の一つに、香川県坂出市の「さかいで子育て支援センター まろっ子ひろば」(運営主体:認定NPO法人わははネット)がある。まろっ子ひろばは、子育てひろば(保護者と0~3歳の子供・妊娠中の方のための遊び場)、屋外ひろば(保護者と0~6歳の子供のための遊び場)、子育て相談、一時預かりといった事業を通じて、妊娠中の方、就学前の子供と保護者の遊び場・交流の場を提供するとともに、子育てに関する相談や情報提供などを行う施設である。2019年度の利用登録者数は約1,700名、年間の延べ利用者数は約15,400名に上り、地域の親子が集う憩いの場として、毎日多くの利用者が訪れる。

まろっ子ひろばでは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、2020年3月から対面でのイベントの開催を自粛するとともに、同年4月15日から5月末まで施設を休館した。

休館中も施設にはスタッフが常駐し、支援が途切れないよう、電話での子育て相談や一時預かりを継続して行った。あわせて、外出自粛により自宅で過ごす時間が長くなり、子供も親も心身共に疲れが出てくる中で、ひろばに遊びに来られなくとも、地域の親子が外の世界とつながりリフレッシュできるよう、オンラインを活用して、コロナ禍での新たな親子の交流の場づくりに取り組んだ。

例えば、オンライン会議システムを活用して、「おしゃべり会」「子育て座談会」などを開催した。ひろばスタッフが進行役を務め、参加者が自由に近況を語り合う「おしゃべり会」、月齢・年齢に応じた子育ての悩みに、専門家(臨床発達心理士)がオンラインで答える「子育て座談会」は、これまで対面で行ってきた子育て支援を新たにオンラインで行おうとするものである。事前にホームページやSNSで広く告知し参加者を募集するとともに、当日は進行役のスタッフが参加者ひとりひとりに丁寧に声を掛け、安心して発言できる雰囲気づくりに取り組んだ。これらのほか、生後6か月未満の子供を育てている子育て家庭を対象にした助産師による子育て相談など、オンライン会議システムを活用して様々なオンラインイベントを行った。

また、SNSのライブ配信機能を活用して、「おうちdeひろば」「赤ちゃんひろば」を開催した。外出自粛が続く中で、家にいながら少しでも普段のひろばの雰囲気を感じられるよう、ひろばスタッフが手遊び歌、読み聞かせ、ふれあい遊びなど、親子で楽しめる遊びをリアルタイムで配信した。

さらに、まろっ子ひろばでは、以前からホームページやSNSを積極的に活用し、イベントの告知やひろばの様子の発信を行っていたが、コロナ禍において、SNSでのタイムリーな情報発信により力を入れて取り組んだ。例えば、自粛期間中に親子が家庭で遊べるよう、牛乳パックや紙コップなど、身近な材料を使った手作りおもちゃの作り方を発信したり、自粛期間中の子育て家庭の困りごとや悩みについてアンケート調査を実施しその結果を共有したりするなどした。

まろっ子ひろばは、2020年6月から、感染防止策を徹底しながら施設を再開した。施設再開後も、ひろばでの対面による交流や相談支援に加えて、利用者のニーズに応じた様々なオンラインイベントを開催するとともに、SNSでの情報発信に積極的に取り組んでいる。利用者からも、「顔なじみのスタッフの顔が見られてほっとしたり、元気が出た」「子どもと家の中で過ごす遊びの参考になった」といった好意的な反応が寄せられている。

地域子育て支援拠点は、乳幼児とその保護者が、気軽に遊びに行き、息抜きや相談ができる場である。新型コロナウイルス感染症が流行する中で、様々な不安や孤独感を抱えている子育て家庭に寄り添うため、対面での子育て支援を補完するべく始められたオンライン子育て支援は、ウィズコロナ、ポストコロナにおける地域子育て支援拠点での新たな子育て支援の可能性を拓く取組である。対面での支援とオンラインでの支援を効果的に組み合わせることで、コロナ禍における子育て家庭の様々なニーズに対応していくことが期待される。

「おうちdeひろば」の様子(オンラインでの参加者の様子)

「おうちdeひろば」の様子(画面を通じて参加者に語り掛けるスタッフ)
(3)学びの継続-オンラインによる学習支援

子供の貧困対策については、これまでも、NPO法人等が、子供の学習支援、子ども食堂の取組、子供の居場所づくり支援などを行ってきた。今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、全国的規模の休業が実施されるなど経済活動の停滞を招き、それに伴う保護者の減収や失業により、子供の貧困問題も一層深刻化している。困難な状況にある子供たちが社会的に孤立して必要な支援が受けられず、一層困難な状況に置かれることを防ぐことが必要である。

こうした状況の中で、「子供の未来応援基金」では、これまで草の根で貧困の状況にある子供たちに寄り添った支援を行ってきたNPO法人等が、感染症対策を行いつつ必要な支援を継続していけるよう、2020年7月に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大への対応に伴う緊急支援事業として、「新しい生活様式」に即した支援事業への助成を行った。支援対象の類型は、「様々な学びを支援する事業」、「居場所の提供・相談支援を行う事業」、「衣食住など生活の支援を行う事業」、「児童又はその保護者の就労を支援する事業」、「児童養護施設等の退所者等や里親・特別養子縁組に関する支援事業」、「その他、貧困の連鎖の解消につながる事業」となっている。以下では、「様々な学びを支援する事業」の中から、オンラインによる学習支援事業として、NPO法人キッズドアの事例を取り上げる。

2020年3月から5月末まで、新型コロナウイルス感染症感染予防のために学校が長期休校となる中、無料学習会や子供の居場所も閉所となり、また、学校再開後も「三つの密(密閉・密集・密接)」を避ける運用のために、十分な学習時間を確保することが難しい状況が生じた。こうした状況の中、キッズドアでは、困窮家庭の子供たちを対象にオンラインによる学習支援を行うことで、コロナ禍においても学びが継続できる体制を構築し、2020年5月から2021年2月中旬までに390回延べ2000人以上の子供にオンライン学習支援を行った3。不要不急の外出自粛が求められる中、自宅で過ごす時間が増え、様々な事情により家庭で安心して過ごせず外出自粛等によるストレスを緩和することができない子供の中には、孤立を感じる子供も多かった。このため、キッズドアの学習支援では、スタッフとの対話を通じて子供たちの悩みをヒアリングするなどしてストレスの緩和に努めたほか、チャットアプリの活用によりいつでも学習の質問や相談を行える体制をとった。

オンライン学習支援の効果として、スタッフとの交流が、休校により学校に行けない子供たちの精神的な支えとなったこと、遠方のボランティアが支援活動に参加することができるようになり支援活動の幅が広がったことがあげられている。

このように、生活の困窮や外出自粛の長期化などにより、望まない孤独や孤立で不安を抱える方々に対して、各地でNPO法人等がきめ細かな対応を行っている。

孤独・孤立の問題は、新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する中で、一層その深刻さを増している。孤独・孤立対策を担当する大臣の下、2021年2月19 日、内閣官房に孤独・孤立対策担当室が設置され、政府一体となって孤独・孤立の問題に取り組む体制が整えられた。

孤独・孤立の問題に対して、NPO 法人を始め官民の様々な団体が、地域等において相談事業などの支援活動を行っている。こうした相談事業を一層充実するとともに、支援団体が活用しやすくなるよう、官民あるいは民民のネットワークなどのつながりをより強くしていくことにより、必要な支援が必要とする方々に一層的確に届くようにしていくことが必要である。

2021年3月に取りまとめられた「非正規雇用労働者等に対する緊急支援策について」では、「NPO等を通じた孤独・孤立、自殺対策等」が一つの柱とされ、孤独・孤立に悩んでいる方への相談支援、居場所づくりの活動や、自殺防止の取組を行っている団体など、孤独・孤立対策に取り組む幅広い分野のNPO法人等に対する当面の緊急支援策が盛り込まれた。子供の貧困対策についても、子供の学習支援、子ども食堂、フードバンクなどの取組を行うNPO法人等を支援するとともに、地域子供の未来応援交付金による支援を拡充し、子ども食堂や学習支援といった子供たちと支援を結び付けるつながりの場をNPO法人等に委託して整備する地方公共団体を緊急的に支援することとされた。こうした取組を通じ、子供たちに寄り添った支援が行われることが期待される。

これまで、イギリスにおいて孤独問題の担当国務大臣が置かれていたが、複数の海外メディアから坂本孤独・孤立対策担当大臣への取材が行われるなど、我が国の孤独・孤立対策は、世界でも注目を集めている。これまでも各府省庁において様々な支援策を行ってきたが、担当大臣の下で、社会的不安に寄り添い、深刻化する孤独・孤立の問題について総合的な対策を推進していく。

オンラインによる学習支援の様子

3 並行して感染症対策を講じた学習支援も実施されており、スタッフ及びボランティアの出勤前の検温及び体温チェック、参加する子供の参加時の体温チェック(非接触型体温計)、体調や咳、味覚などについてのチェック、来室時の手洗い、手指アルコール消毒、マスク及びフェイスシールドの着用、学習会開始前の消毒、密にならない座席配置、定員減、教室の換気の徹底等の対策が図られている。

おわりに

新型コロナウイルス感染症が流行する中で、多くの方が日常や将来に不安を抱えながら日々を過ごしている。引き続き、新型コロナウイルス感染症が結婚・子育て世代に与える影響を注視し、不安に寄り添いながら、安心して結婚、妊娠・出産、子育てができる環境整備に取り組む。

同時に、新型コロナウイルス感染症の流行を機に、オンラインを活用した新たなつながりや支援の萌芽がみられるとともに、人々の日常生活や意識・行動に様々な変化が生じている4。引き続き、少子化社会対策大綱に基づき、新型コロナウイルス感染症への対応にも留意しながら、ポストコロナ、ウィズコロナの社会経済、国民生活、人々の意識・行動の変容も見据えつつ、結婚、妊娠・出産、子育てのライフステージに応じた総合的な少子化対策を進めていく。


4 例えば、2020年12月に内閣府が行った「第2回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によれば、テレワークを始めとする柔軟な働き方が広がり、感染症拡大前よりも生活を重視するように変化した人の割合は、全体で35.0%(20歳代で40.2%、30歳代で41.1%、40歳代で33.3%)となっている。また、感染拡大前よりも結婚への関心を高めた人の割合は、全体で23.1%(20歳代で34.2%、30歳代で28.7%)となっている。さらに、子育て世帯の46.0%が感染症拡大前よりも家族と過ごす時間が増加し、そのうち87.5%が現在の家族と過ごす時間を今後も保ちたいと考えている。

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