第2部 少子化対策の具体的実施状況(第1章 第1節 1)

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第1章 重点課題(第1節 1)

第1節 結婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける環境をつくる(1)

1 若い世代が将来に展望を持てる雇用環境等の整備

(経済的基盤の安定)
若者の雇用の安定

24歳以下の若者の完全失業率は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、2020年には4.6%(前年比0.8ポイント増)、25~34歳については3.9%(前年比0.7ポイント増)と、前年よりも上昇している1。また、フリーター数は、2020年平均で136万人(前年差2万人減)となっている2

第二の就職氷河期世代を作らないためにも、新卒応援ハローワーク等において、就職支援ナビゲーターによる担当者制の個別支援や大学等との連携による学校への出張相談など、就職に向けたきめ細かな支援を引き続き行う。また、「青少年の雇用の促進等に関する法律」(昭和45年法律第98号。以下「若者雇用促進法」という。)に基づく指針を踏まえ、少なくとも卒業後3年以内の既卒者が新卒者の採用枠に応募できるよう改めて周知徹底などの取組を進める。

・新卒者・既卒者の就職支援

厚生労働省では若者雇用促進法に基づき、〈1〉新卒者の募集を行う企業による職場情報の提供、〈2〉若者の雇用管理が優良な中小企業を認定する「ユースエール認定制度」等の取組を促進するとともに、「職業安定法」(昭和22年法律第141号)に基づき、ハローワークにおいて一定の労働関係法令違反を繰り返す事業所等の求人を受け付けない求人不受理を実施している。

新卒者・既卒者の就職支援については、全国56か所の新卒応援ハローワーク等において、就職支援ナビゲーターによる担当者制のきめ細かな就職支援を実施するとともに、大学等との連携による学校への出張相談などを行っている。また、特にコミュニケーション等に課題を抱える新卒者等を在学中から効果的・集中的に支援することを目的として、新卒応援ハローワーク等において公認心理師等と連携した特別支援チームによる支援を実施している。

さらに、卒業後3年以内の既卒者の就職を促進するため、若者雇用促進法に基づく「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第406号)において、学校等の新規卒業予定者の募集を行う場合は、学校等の卒業者が卒業後少なくとも3年間は応募できるものとすること等を定め、その周知に取り組んでいる。

・就職経路の複線化に対応した多様な就職システムの整備

フリーターの正社員就職の推進のため、全国のハローワークでのきめ細かな職業相談・職業紹介、職業訓練の情報提供・相談などを実施している。また、支援拠点として、「わかものハローワーク」(2021年4月1日現在、全国25か所)、「わかもの支援コーナー」「わかもの支援窓口」を設置し、就職支援ナビゲーターによる担当者制の就職支援等を実施している。

また、希望する仕事に就くために必要な職業スキルや知識などを習得することができる公的職業訓練、非正規雇用労働者の正社員転換や待遇改善など企業内でのキャリアアップの促進に関する取組を実施した事業主を支援するキャリアアップ助成金制度や、雇用する労働者に対し職務に関連した専門的な知識及び技能を習得させるための職業訓練等に要した経費等の一部を助成する「人材開発支援助成金(特別育成訓練コース)制度」も実施している。

さらに、2015年10月から、ジョブ・カードを「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」のツールとして活用し、個人のキャリアアップや、多様な人材の円滑な就職などを促進しており、2020年3月末現在、ジョブ・カード作成者数は約251万人に達している。

そのほか様々な要因により働くことに悩みを抱えている若者の職業的自立を支援するため、2006年度から、地方公共団体との協働により地域の若者支援機関から構成されるネットワークを構築するとともに、その拠点となる地域若者サポートステーションを全国に設置(177か所(2021年4月1日現在))し、若者の置かれた状況に応じたキャリアコンサルタントなどによる専門的な相談や各種プログラムの実施など、多様な就労支援メニューを提供している。2020年度からは、就職氷河期世代支援の一環として、全ての地域若者サポートステーションにおいて、40歳代の無業者に対する相談体制を整備するとともに、これらの無業者の把握、地域若者サポートステーションへの誘導の手法の一環として、福祉機関等へのアウトリーチを積極的に実施している。

・若年者に対する技能啓発の推進

公共職業能力開発施設、認定職業訓練施設及び工業高校等において技能を習得中の若者(原則20歳以下)であって、企業等に就職していない者を対象に、技能競技を通じ、これら若年者に目標を付与し、技能を向上させることにより就業促進を図り、併せて若年技能者の裾野の拡大、技能尊重気運の醸成を図ることを目的として「若年者ものづくり競技大会」を実施している。2019年7月~8月に福岡県で開催された「第14回若年者ものづくり競技大会」では、全15職種の競技に全国から443名の選手が参加したが、2020年7月に広島県で開催を予定していた「第15回若年者ものづくり競技大会」は、新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、中止となった。

また、工業高校や職業訓練校等で技能を学ぶ学生や訓練生等を主な対象に、若年技能者の人材育成を目的として3級技能検定を実施しているが、更なる受検機会の拡大を図るため、受検ニーズの高い職種について年2回の試験を実施するなど、若年者の技能離れの防止や若年技能者の職場への定着化に努めている。ただし、2020年度は新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、一部の試験が中止となった。加えて、2017年度から、「ものづくり分野」の技能検定の2級又は3級の実技試験を受検する35歳未満の者に対して、受検手数料を最大9,000円減額する措置を実施している。


1 総務省「労働力調査(基本集計)」

2 総務省「労働力調査(詳細集計)」

非正規雇用対策の推進

非正規雇用労働者の数は近年おおむね増加傾向にあり、雇用者の約4割を占める状況にあるが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、2020年には、2,090万人と、前年比で減少した。

厚生労働省では、感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指して、事業主への支援、労働移動への支援、求職者へのきめ細かな支援の拡充などに総合的に取り組む「ウィズ・ポストコロナ時代を見据えた雇用対策パッケージ」を策定した。

新型コロナウイルス感染症の影響が、非正規雇用労働者に大きく生じていること等も踏まえ、同パッケージでは、特に非正規雇用労働者等の円滑な就労のため、ハローワークにおいて、求職者のニーズに合った積極的な求人の開拓や、専門担当者による就労・定着に向けた丁寧なマッチング支援を実施している。また、求職者支援訓練の対象人員枠拡充や、新型コロナウイルス感染症の影響による離職者を一定期間試行雇用する事業主に対する賃金助成制度の創設、紹介予定派遣を通じた正社員化に取り組む派遣元事業主への助成対象の拡充等に取り組んだ。

また、非正規雇用の労働者は、正規雇用の労働者と比較して、〈1〉賃金が低い、〈2〉能力開発機会が乏しい、〈3〉福利厚生等が不十分といった課題がある。

正社員を希望する人の正社員転換や非正規雇用を選択する人の処遇改善を推進することが重要である。このため、厚生労働大臣を本部長とする「正社員転換・待遇改善実現本部」において「正社員転換・待遇改善実現プラン」を2016年1月に策定した。各都道府県労働局にも本部を設置し、同年3月までにそれぞれの「地域プラン」を策定した。これらのプランに基づき、非正規雇用労働者の正社員転換・処遇改善を強力に推進している(2019年1月に「正社員転換・待遇改善実現プラン」を改定している)。

また、正社員転換を進めるとともに、正規雇用・非正規雇用にかかわらず、どのような働き方を選択しても公正な待遇が受けられるようにし、労働者が自分のライフスタイルに合わせて多様な働き方を選択できるようにすることが重要である。2018年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法律第71号)によって改正された「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成5年法律第76号。以下「パートタイム・有期雇用労働法」という。)及び「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(昭和60年法律第88号)では、<1>不合理な待遇差を解消するための規定の整備、<2>労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、<3>行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)が整備され、2020年4月1日に施行された(パートタイム・有期雇用労働法の中小企業への適用は2021年4月1日。)。

さらに、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(平成30年厚生労働省告示第430号。いわゆる「同一労働同一賃金ガイドライン」。)では、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で待遇差が存在する場合に、いかなる待遇差が不合理なものであり、いかなる待遇差が不合理なものでないのか、原則となる考え方及び具体例を示した。

中小企業への適用に向けては、事業主が何から着手すべきかを解説する「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」や、各種手当・福利厚生・教育訓練・賞与・基本給について、具体例を付しながら不合理な待遇差解消のための点検・検討手順を詳細に示した「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル」等を策定し、周知を行っている。

加えて、企業における非正規雇用労働者の待遇改善等を支援するため、2018年度より47都道府県に「働き方改革推進支援センター」を設置し、労務管理の専門家による個別相談やセミナー等を実施している。

このほか、派遣労働者、有期雇用労働者、パートタイム労働者といった非正規雇用の態様ごとに、以下のとおり必要な施策を講じている。

派遣労働者については、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」(平成27年法律第73号)により設けられた期間制限ルールや、派遣元事業主に対する雇用安定措置、派遣労働者のキャリア形成を図る教育訓練等の義務付けについて、派遣労働者、派遣元事業主、派遣先の対象者別にリーフレットにより周知を実施している。

有期雇用労働者については、「労働契約法」(平成19年法律第128号)に基づく「無期転換ルール」(有期労働契約が、更新等により通算5年を超えた場合に、労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換させる仕組み。)について、その円滑な導入が図られるよう、先行導入した企業の好事例、支援策等をまとめたポータルサイト3やSNS等を活用した情報発信、「無期転換ルール」の導入手順等をまとめたハンドブックの配布、オンライン等でのセミナー開催など、あらゆる機会を活用して「無期転換ルール」の周知・啓発及び導入支援を行った。さらに、「無期転換ルール」の適用を意図的に避ける目的での雇止め等を把握した場合には、啓発指導を行っている。

パートタイム労働者・有期雇用労働者については、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成5年法律第76号)及び改正後のパートタイム・有期雇用労働法に基づき、事業主への行政指導や専門家による相談・援助等を実施している。


3 https://muki.mhlw.go.jp/

結婚・子育て資金や教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の実施等

将来の経済的不安が若年層に結婚・出産を躊躇させる大きな要因の一つとなっていることを踏まえ、両親や祖父母の資産を早期に移転することを通じて、子や孫の結婚・出産・子育てを支援することを目的として、祖父母等から孫等に対して結婚・子育て資金の一括贈与を行った場合について、贈与税を非課税とする制度が2015年4月から実施されている。本制度は、2021年度税制改正において、受贈者となる孫等の年齢を「20~50歳」から「18~50歳」に引き下げる等の措置の拡充を行うとともに、贈与者死亡時の残高に係る相続税額への2割加算を適用する見直しを行った上で、その適用期限を2023年3月31日までに延長することとされた。

また、金融資産の世代間移転を促進し、子育て世代を支援することを目的として、祖父母等から孫等に対して教育資金の一括贈与を行った場合についても、贈与税を非課税とする制度が2013年4月から実施されている。本制度も、2021年度税制改正において、贈与者死亡時の残高に係る相続税額への2割加算の適用等、所要の見直しを行った上で、その適用期限を2023年3月31日までに延長することとされた。

このほか、新たに2021年度税制改正において、地方公共団体等がベビーシッター等の子育て支援サービスに係る利用料の補助を行う場合、この給付が所得税法上雑所得として計上され、所得税・個人住民税の課税対象となっていたところ、これを非課税とすること、「産後ケア事業」として行われる資産の譲渡等について、社会福祉事業に類するものとして消費税を非課税とすることとされた。

トピックス:子育て支援に要する費用に係る税制上の措置の創設

夫婦が理想の子供数を持たない理由として、「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」(56.3%)、「これ以上、育児の心理的、肉体的負担に耐えられないから」(17.6%)4が占める割合は高く、子育てにかかる経済的負担の軽減や子育て支援の充実等、これまで様々な施策が進められてきた。

一部の地方公共団体においては、独自の子育て支援策として上乗せで子育て支援サービスの利用料に関する補助を行っているが、この給付は、原則、雑所得として課税所得となることから、結果として、地方公共団体が行う子育て支援策としての効果が薄れるなどの指摘がされてきた。

さらに、2020年度に入って、新型コロナウイルス感染症の流行により、通常の認可保育所等の利用が困難になりベビーシッターを代替措置として利用するケースも生じており、コロナ禍において、より一層の子育て支援サービスの充実が求められている。

このような状況を踏まえ、「少子化社会対策大綱」(2020年5月29 日閣議決定)においては、「社会状況や適用実態、国や地方公共団体が行うベビーシッター等に関する利用者の負担軽減措置について検証しながら、今後の支援の在り方について、検討を行う」こととされた。これを受けて、地方公共団体が行う子育て支援サービスの実態を把握した上で、2021年度税制改正要望において、「子育て支援に要する費用に係る税制上の措置」の創設を要望した。

要望の結果、保育を主とする国や地方公共団体からの子育てに係る施設・サービスの利用料に対する助成等について、子育て支援の観点から、所得税・個人住民税を非課税とすることが認められた。

非課税の対象となるのは、

<1>ベビーシッターの利用料に対する助成

<2>認可外保育施設等の利用料に対する助成

<3>一時預かり・病児保育などの子を預ける施設の利用料に対する助成

※上記の助成と一体として行われる助成も対象となる(例:生活援助・家事支援、保育施設等の副食費・交通費等)。

である。

本措置が、子育て家庭の負担軽減の一助となることが期待される。


4 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2015年)

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