第2部 少子化対策の具体的実施状況(第2章 第3節 3)

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第2章 ライフステージの各段階における施策(第3節 3)

第3節 妊娠・出産(3)

3 安全かつ安心して妊娠・出産できる環境の整備

(妊娠・出産に関する経済的負担の軽減)
妊婦健診や出産・産前産後休業期間中に係る経済的負担の軽減

妊婦に対する健康診査については、2013年度より、安心・安全な出産のために必要とされる受診回数(14回程度)に係る健診費用について、地方財政措置が講じられている。また、2015年4月より、妊婦健康診査を子ども・子育て支援法に基づく「地域子ども・子育て支援事業」に位置付け、また、当該改正に伴い、「妊婦に対する健康診査についての望ましい基準」(平成27年厚生労働省告示第226号)において、その実施時期、回数及び内容等を定めている。妊娠の早期届出(それに伴う母子健康手帳の早期交付)及び妊婦健診の適正な受診について、リーフレットの作成・配布等を通じて広く国民に周知を図っている。

健康保険や国民健康保険などの被保険者又はその被扶養者が出産したときには、出産に要する経済的負担を軽減するため、各医療保険者から原則42万円(産科医療補償制度対象外の分娩の場合は40.4万円)の出産育児一時金が支給される。出産育児一時金については、2020年12月に社会保障審議会医療保険部会において取りまとめられた「議論の整理」を踏まえ、出産に係る経済的負担をさらに軽減するため、費用実態を踏まえた支給額の検討やサービス選択肢の確保を段階的に進めていくこととしている。また、2022年1月より産科医療補償制度の見直しに伴い掛金が4,000円引き下げられるが、少子化対策としての重要性に鑑み、出産育児一時金の支給総額は維持し、本人の給付分を4,000円引き上げること(本人の給付分40.8万円、産科医療補償制度の掛金1.2万円)としている。

また、社会保険の加入者は、産前産後休業をしている期間について、事業主が申出をしたときに、健康保険及び厚生年金保険の保険料の免除を受けることができる。2019年4月以降、国民年金の第1号被保険者についても、産前産後期間について、保険料の免除を受けることができるようになっている。

産科医療補償制度の整備

安心して産科医療が受けられる環境整備の一環として、2009年1月から、「産科医療補償制度」が実施されている。同制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児とその家族の経済的負担を速やかに補償するとともに、事故原因の分析を行い、将来の同種事故の防止に資する情報を提供すること等により、紛争の防止・早期解決及び産科医療の質の向上を図ることを目的としている。

また、補償対象基準について医学的な見地から見直しを求める意見があり、有識者からなる検討会等で議論の上、2022年1月以降に出生した児については、低酸素状況を要件としている個別審査を廃止し、一般審査に統合して、「在胎週数が28週以上であること」を基準とする見直しが行われた。

(周産期医療の確保・充実等)
出産環境の確保

安心して子供を生み育てることができるよう、医学部定員内への特定の地域や診療科での勤務を条件とする地域枠の設定や地域医療支援センターによる医師不足病院への医師確保支援、産科医の確保が困難な医療機関に産科医を派遣する場合の財政支援等を通じて産科医の確保を図っている。

また、2019年度中に、各都道府県が産科医師確保計画を策定し、2020年度から同計画を基に、医療提供体制の見直しや医師派遣等の施策を進めている。

助産師の活用

助産師を活用し、地域において安心・安全な出産ができる体制を確保するため、就業助産師の偏在解消、助産実践能力の強化、助産学生等の実習施設確保及び助産所と連携する医療機関の確実な確保を図る目的で、「助産師活用推進事業」を実施している。

周産期医療体制の整備・救急搬送受入体制の確保

周産期医療体制については、リスクの高い妊産婦や新生児などに高度な医療が適切に提供されるよう、周産期医療の中核となる総合周産期母子医療センター及び地域周産期母子医療センターを整備し、地域の分娩施設等との連携の確保等により、充実を図っている。成育医療分野では、国の医療政策として、国立研究開発法人国立成育医療研究センター及び独立行政法人国立病院機構の設置する医療機関等とが協力しつつ、医療の質の向上のための研究の推進や標準的医療等の普及に取り組んでいる。特に、国立研究開発法人国立成育医療研究センターでは、生殖、妊娠、胎児期、周産期、新生児期、小児期、思春期、成人期に至る一連のサイクルを想定して、健全な次世代を育成するため、高度先駆的医療、小児がん・小児難病・希少疾患・小児精神疾患、ハイリスク分娩、胎児・新生児疾患、新生児・小児期外科疾患に対する医療と小児救命救急医療の提供、小児期・周産期疾患の基礎研究と臨床研究、教育研修及び国内外の医療機関等への医療情報の発信に取り組んでいる。

周産期救急医療については、総合周産期母子医療センターや地域周産期母子医療センターの整備等を進めてきたところであり、新生児集中治療室(NICU)は目標であった出生1万人当たり25~30床を2017年度に全都道府県で達成できた。妊産婦死亡率(出産10万対)は2010年の4.1から2019年の3.3、新生児死亡率(出生1000対)は2010年の1.1から2019年の0.9と改善が図られてきた。また、総合周産期母子医療センターの機能について、可能であれば自施設又は他施設の関係診療科と連携して産科合併症以外の合併症を有する母体に対応することとしてきた。さらに、2020年度から、妊婦が安心安全に受診できるよう産科及び産婦人科以外の診療科の医師に対する研修の実施等、妊婦の診療に係る医療体制整備の充実を図っている。

(健康な体づくり、母子感染予防対策)
母子保健・母子感染予防対策の推進

21世紀における母子保健分野での国民運動計画である「健やか親子21(第2次)」を2015年度から推進し、母子保健サービスの一層の充実を図っている。第2次計画(2015~2024年度)では、10年後に目指す姿として「すべての子どもが健やかに育つ社会」を掲げ、その実現に向けて、成育基本法の趣旨を踏まえ、関係する取組を進めている。

また、母子感染予防対策として、「HTLV-11母子感染対策事業」を実施し、都道府県における母子感染対策協議会の設置や、母子感染予防のための保健指導等の支援体制の整備を図っている。

なお、現在の風しんの発生状況等を踏まえ、2019年2月より、抗体保有率の低い世代の男性を対象に風しん抗体検査及び「予防接種法」(昭和23年法律第68号)に基づく定期接種を行うなどの追加的対策を実施している。


1 HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)とは、血液中の白血球の一つであるリンパ球に感染するウイルスであり、感染は主に母乳を介した母子感染による。HTLV-1に感染していても約95%の方は生涯HTLV-1による病気になることはない。しかし、一部の方は血液や神経の病気、又は眼の病気などを発症する場合がある。

(マタニティハラスメントの防止等)
マタニティハラスメント等の防止

妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの防止のため、男女雇用機会均等法で禁止されている「妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い」に該当する具体的な内容を示した「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成18年厚生労働省告示第614号)の周知に加え、事業主に対する指導を行った。また、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法において事業主に義務付けられている職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントの防止措置の必要性等についての理解を深めるため、12月を「職場のハラスメント撲滅月間」と定め、集中的な周知・広報を行うとともに、事業主に対する行政指導等を実施している。

女性労働者の妊娠中及び出産後の母性健康管理の推進

男女雇用機会均等法に基づいた母性健康管理の措置(健康診査の受診等に必要な時間の確保及び医師等の指導事項を守るために必要な措置を講じること)及び労働基準法の母性保護規定(産前産後休業、危険有害業務の就業制限等)について、事業主、女性労働者、医療関係者等に対し周知徹底を図っている。

また、事業主が母性健康管理の措置を適切に講じるよう指導を行うとともに、女性労働者に対して出された医師等の指導事項を的確に事業主に伝えるための「母性健康管理指導事項連絡カード」の利用を促進している。

さらに、企業や働く女性に対して母性健康管理に関する情報を提供する支援サイト「妊娠・出産をサポートする 女性にやさしい職場づくりナビ2」により、制度の周知を図っている。

新型コロナウイルス感染症の関係では、2020年5月に「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成9年労働省告示第105号)を改正し、妊娠中の女性労働者が新型コロナウイルス感染症に関する心理的なストレスに関して医師等から指導を受けた場合に休業等の必要な措置を講じるよう、事業主に義務付けた。また、この措置により休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が安心して休暇を取得して出産し、出産後も継続して活躍することができるよう、職場環境整備を行う事業主への助成制度を創設した(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置及び助成制度は2022年1月31日まで。)。


2 https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/

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