第1部 少子化対策の現状(第2章 第2節 2)

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第2章 少子化対策の取組(第2節 2)

第2節 新型コロナウイルス感染症影響下における少子化の現状と対策【特集】(2)

2 新型コロナウイルス感染症影響下における結婚、出産の推移、結婚や子育てに関する意識の変化

新型コロナウイルス感染症の影響が続く中で、婚姻件数及び妊娠届出数についても、2020年同様、減少傾向が続いている。

(1)婚姻件数

婚姻件数1については、2019年5月のいわゆる「令和婚」、2020年2月の令和2年2月婚の影響で増加がみられたが、新型コロナウイルス感染症の流行が本格化し、1回目の緊急事態宣言が発出される中、2020年の3月から5月にかけて大幅に減少した。その後、緊急事態宣言の解除により、減少幅が緩やかになった時期もあるが、2021年1月から12月までの婚姻件数の累計(速報値)は51万4,242組であり、前年の53万7,583組と比較して4.3%減少した。1950年以来の減少率となった2020年の12.7%と比べて、減少傾向が緩やかになっている。2021年の婚姻件数の動向については、概ね、例年並み、若しくは例年を下回る水準で推移している。

図表1 婚姻件数の推移


1 厚生労働省「人口動態統計速報」。速報の数値は、各種届出書等から市区町村で作成された人口動態調査票の作成枚数であり、日本における日本人、日本における外国人、外国における日本人及び前年以前に発生した事象を含むものである。

(2)妊娠届出数

妊娠した者は母子保健法2に基づき市町村に妊娠の届出をすることとなっている。厚生労働省が2019年1月から2021年7月までの妊娠届出数の状況について地方公共団体に照会し取りまとめた結果3によると、2021年1月から7月までの妊娠届出数の累計は50万7,075件であり、前年同期間の51万1,355件と比較して0.8%減少した。

図表2 妊娠届出数の推移


2 昭和40年法律第141号

3 厚生労働省「妊娠届出数の状況について」(2021年11月26日公表)。妊娠届出は、母子健康手帳の交付や妊婦健康診査、両親学級、産前産後サポート事業などの母子保健サービスが適切に住民に行き届くよう、市町村が妊娠している者を早期に把握するための制度である。法令上、妊娠届出時期について時限は定められていないが、厚生労働省では、妊娠11週以下の時期の届出を勧奨しており、2019年度には93.5%の妊婦が、妊娠11週までに届出を行っている。なお、多胎妊娠の場合、児の数にかかわらず1件として届出がなされる。

(3)出生数

出生数4については、2021年1月から12月までの出生数の累計(速報値)は84万2,897人であり、前年の87万2,683人と比較して3.4%減少し、過去最低となった5。2021年1月は対前年同月比14.6%減少、2月は10.3%減少となっており、妊娠から出産までの期間を踏まえると、2020年12月頃から新型コロナウイルス感染症の影響が出始めているものと考えられる。その後は、毎月およそ7万人から8万人の間という2020年と同水準、若しくは前年より低い水準で推移している。

中長期的には、2021年の婚姻件数が低調であるため、2022年の第1子出生や、2020年の婚姻控えによる第2子、第3子の落ち込みの影響で平常時に期待される水準を下回る可能性が考えられるとの指摘6もあり、今後の推移を注視していく必要がある。

図表3 出生数の推移


4 厚生労働省「人口動態統計速報」

5 本来、令和婚や令和2年2月婚による婚姻件数増加により出生数増加も期待できたはずであるため、これらの要因がなければ、コロナ禍において出生数の減少幅が拡大していた可能性があるとの見方もある(岩澤他(2021)「新型コロナウイルス感染拡大と人口変動:何が分かり、何が起きるのか」国立社会保障・人口問題研究所Working Paper Series No.51 July 2021参照。)。

6 上記の指摘がある一方、海外の先進国の状況をみると、緊急事態状況が緩和されると出生増に転じているため、抑制分が短期的に取り戻される可能性もあるとの見方もある(岩澤他(2021)「新型コロナウイルス感染症拡大と人口変動:何が分かり、何が起きるのか」国立社会保障・人口問題研究所Working Paper Series July 2021参照。)。

(4)結婚や子育てに関する意識の変化

新型コロナウイルス感染症の影響下で、外出自粛や人との接触機会の減少、テレワーク・在宅勤務の普及など、人々の生活意識・行動が変化する中で、若い世代や子育て世代の結婚・子育てに関する意識も変化している可能性がある。

新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年12月)に比べて不安が増していることをみると、20歳代では、他の世代と比べて、「生活の維持、収入」「仕事」「人間関係、社会との交流」「結婚、家庭」に関する不安が増している傾向がみられる。一方、30歳代では、ほかの世代と比べて、「生活の維持、収入」「仕事」「結婚、家庭」に関する不安が増している傾向がみられるのは、20歳代と同様であるが、「人間関係、社会との交流」に関する不安はそれほど増しておらず、「子どもの育児、教育」に関する不安が増している傾向がみられるのは、20歳代と異なっている。

「結婚、家庭」の不安の高まりは、20歳代で15%程度、30歳代で10%程度と、20歳代の方が若干高い傾向がみられる一方で、「子どもの育児、教育」に関する不安の高まりについては、20歳代でおよそ7%から8%と1割にも満たないのに対して、30歳代では2割程度を占めている。

図表4 新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年12月)に比べて不安が増していること

次に、新型コロナウイルス感染症拡大前と比較した結婚への関心の高さの変化についてみると、20歳代、30歳代ともに約6割の未婚者が「変わらない」と回答している。一方で、結婚に対して「関心が高まった」と回答した未婚者の割合の推移は、20歳代と30歳代で大きな傾向の違いはみられない。「関心がやや高くなった」と回答した未婚者の割合は、20歳代では20%台から24%台、30歳代では15%台から20%台の水準で推移しており、30歳代より20歳代の方が、結婚への関心が高まっている傾向がみられる。

図表5 新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年12月)からの結婚への関心の変化(未婚者)

次に、新型コロナウイルス感染症拡大前からの新たな出会いの変化についてみると、2021年4~5月時点で出会いを探している未婚者のうち、約6割(63.0%)が「変化なし」と回答する一方、約3割(30.4%)が「新たな出会いが減少した又は非常に減少した」と回答しており、新型コロナウイルス感染症流行下で出会いの機会が減少していることがうかがえる。

図表6 新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年12月)からの出会いの数の変化(未婚者で出会いを探している人)

(5)家族と過ごす時間や家事・育児時間の変化

新型コロナウイルス感染症流行下で在宅時間が増える中、テレワークの普及により、柔軟な働き方の推進や、男性の家事・育児の参画促進等が期待されているところである。実際、18歳未満の子を持つ親について、家族と過ごす時間の変化をみると、1回目の緊急事態宣言期間中であった2020年5~6月時点(70.3%)と比べると割合は減少しているものの、5割弱(46.0%~48.9%)は、程度の差はあれ、新型コロナウイルス感染症拡大前より家族と過ごす時間が増加したと回答している。

図表7 新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年12月)からの家族と過ごす時間の変化(18歳未満の子を持つ親)

また、家事・育児時間の変化をみると、男女ともにおよそ20%から40%の割合で、新型コロナウイルス感染症拡大前より家事・育児時間が増加したと回答している。男女別に家事・育児時間の変化をみると、2020年12月時点の調査結果を除き、男性より女性の方が「大幅に増加(51%以上増加)」及び「増加(21%~50%増加)」と回答する割合が2倍近くなっている。

図表8 新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年12月)からの家事・育児時間の変化(18歳未満の子を持つ親)

我が国では、固定的な性別役割分担意識を背景として、家事・育児の負担が女性に偏っている現状があるが、こうした現状が変わらないまま、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い在宅時間が増える中、女性の家事・育児の負担がより重くなっている状況がうかがえる。

一方、家事・育児の役割分担の変化をみると、2021年4~5月時点で、半数以上(57.5%)は変化はないとする中、約2割(20.7%)が程度の差はあれ、夫の役割が増加したと回答している。夫の働き方別に家事・育児の役割分担の変化をみると、テレワークをしている夫(36.8%)が通常の働き方をしている夫(15.8%)より、2倍以上の割合で夫の役割が増加したと回答している。また、夫のテレワークにより妻との家事・育児の分担が図られ二人目の子供を持つことへの決心がつく、あるいは、テレワークによる子育て中の業務範囲の拡大や勤務可能な時間の増加で可能性が広がったとする肯定的な意見もある7

テレワークの普及とともに、家族が一緒に過ごす時間が増えたことが、家庭内の家事・育児の分担を見直すきっかけとなっている状況もうかがえ、こうした変化を一過性のものとせず、ポストコロナにおいても継続性のあるものとしていくことが期待される。

図表9 新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年12月)からの家事・育児の役割分担の変化(2021年4-5月)

図表10 新型コロナウイルス感染症拡大前(2019年12月)からの夫の働き方(テレワーク実施)と家事・育児の役割分担の変化(2021年4-5月)


7 内閣府子ども・子育て本部 「第4回少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」(2022年2月7日)労働政策研究・研修機構 堀副統括研究員資料を参照。

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