第1部 少子化対策の現状(第2章 第2節 3)
第2章 少子化対策の取組(第2節 3)
第2節 新型コロナウイルス感染症影響下における少子化の現状と対策【特集】(3)
3 新型コロナウイルス感染症を踏まえた少子化対策の主な取組
新型コロナウイルス感染症の影響下にある中で、多くの方が日常や将来に不安を感じている。新型コロナウイルス感染症が結婚・子育て世代に与える影響を注視し、不安に寄り添いながら、安心して結婚、妊娠・出産、子育てができる環境整備に引き続き取り組むことが必要である。
政府では、これまでも、新型コロナウイルス感染症を踏まえた対応として、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」1や「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」2、「国民の命と暮らしを守る安心と希望のための総合経済対策」3などに基づき、妊産婦に対する感染対策の徹底や妊娠中の女性労働者に配慮した休みやすい環境整備、電話やオンラインを活用した妊産婦や乳幼児に対する相談支援や保健指導、保育所等の臨時休園等に伴う保育料の減免に係る財政支援、学校の臨時休業等に対応するための環境整備4、子育て世帯やひとり親世帯への臨時特別給付金の支給、子供の見守り体制の強化、テレワークの強力な推進等に取り組んできた5。
以下では、新型コロナウイルス感染症を踏まえ、2021年度補正予算及び2022年度予算で措置した少子化対策の主な取組を、ライフステージごとに紹介する。
1 2020年3月28日新型コロナウイルス感染症対策本部決定。基本的対処方針は、感染状況等を考慮した上で、累次の変更が行われている。
2 2020年4月20日閣議決定
3 2020年12月8日閣議決定
4 放課後児童クラブ及びファミリー・サポート・センター事業における学校の臨時休業等に伴う対応に対する財政支援、新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金・支援金の支給、小学校等の臨時休業等に伴う企業主導型ベビーシッター利用者支援事業の特例措置の実施、特別支援学校等の臨時休業に伴う放課後等デイサービスへの支援等事業の実施など。
5 新型コロナウイルス感染症の影響を受けている子育て世帯等を支援し、安心して妊娠・出産・子育てができる環境を整備するため、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、子育て世帯等に対する給付金の支給の横出し、オンラインを活用した妊産婦に対する情報提供などに取り組んだ地方公共団体もある。
(1)結婚
○地方公共団体による総合的な結婚支援の取組に対する支援
・地域少子化対策重点推進交付金により、地方公共団体が取り組む結婚支援、結婚・子育てに温かい社会づくり・機運醸成の取組を支援している。
・2022年度は、地方公共団体が行う結婚新生活支援事業(家賃や引越費用など、結婚に伴う新生活のスタートアップに係るコストを補助する事業)について、新居のリフォームに係る費用を補助対象経費に追加する等、支援内容を充実するとともに、AI活用を始めとするマッチングシステムの高度化やアプリ・SNS活用による子育て支援情報の「見える化」等を重点的に支援する(補助率を2分の1から3分の2にかさ上げ)。また、オンラインによる結婚支援・子育て相談など、コロナ禍での新たな取組を推進する。
○新規学卒者等への就職支援
・新型コロナウイルス感染症の影響により特定の業種における採用抑制等があったことを一因として、2021年3月新卒者の就職率は前年度から大幅に低下している。
2022年3月新卒者の就職内定率は前年度よりやや改善傾向にはあるものの、現下の状況に不安を抱える学生等が少なくないことから、引き続き、新卒応援ハローワーク等における就職支援ナビゲーターによる個別支援等、就職に向けたきめ細かな支援を実施する。また、卒業・修了後少なくとも3年以内の既卒者が新卒者の採用枠に応募できるよう改めて周知徹底などの取組を進める。
(2)妊娠・出産
○妊産婦・乳幼児への総合的な支援
・新型コロナウイルス感染症の流行が続く中で、妊産婦の方々は、自身のみならず胎児・新生児の健康への不安に加え、予定していた里帰り出産や立ち会い出産が困難となったり、対面での保健指導を受けにくい状況になったりするなど、妊娠・出産や産後の育児等に不安を抱えて日々を過ごしている。
このため、不安を抱える妊産婦に対する電話・訪問による支援や、分娩前の新型コロナウイルス感染症検査費用の補助、電話やオンラインによる相談支援・保健指導等の実施、里帰り出産が困難な妊産婦に対する民間の育児等支援サービス等の利用料補助など、妊産婦に寄り添った支援を総合的に実施する。あわせて、集団健康診査の受診を控える傾向にある幼児健康診査について、個別健康診査への切替えに対する支援等を行う。
○新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置及び助成制度による有給休暇の取得支援
・妊娠中の女性労働者が、安心して休暇を取得して出産し、出産後も継続して活躍できる職場環境を整備するため、新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として医師等の指導により休業が必要とされた妊娠中の労働者に関して、有給の休暇制度を整備し、当該休暇を取得させた事業主に対する助成を行う(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置及び助成制度は2023年3月31日まで)。
(3)子育て
○非正規雇用労働者・子育て中の女性等の円滑な就労に向けた支援
・新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中で、非正規雇用労働者や女性の雇用環境を取り巻く厳しい状況が続いている。
ハローワークにおける相談支援体制の強化や、子育て中の女性等に対するマザーズハローワーク等でのマッチング支援、紹介予定派遣を活用した研修・就労支援事業、トライアル雇用助成金の拡充、キャリアアップ助成金の活用による正社員化促進などにより、新型コロナウイルス感染症の影響を受ける求職者のニーズに応じた就職支援を実施する。
○子育て世帯への臨時特別給付
・新型コロナウイルス感染症が長期化しその影響が様々な人々に及ぶ中、子育て世帯については、我が国の子供たちを力強く支援し、その未来を拓く観点から、児童を養育している者の年収が960万円以上の世帯を除き、0歳から高校3年生までの子供たちに1人当たり10万円相当の給付を行った。児童手当の仕組みを活用することで2021年内にほぼ全ての市町村において支給が開始された。
○高校生等奨学給付金による支援
・新型コロナウイルス感染症の影響により生活が困窮している世帯の高校生等の学びを支えるため、高校生等奨学給付金について、2020年度から、家計急変により住民税非課税相当となった世帯についても支援の対象とするとともに、2022年度予算においては、ICT端末の持ち帰り等への対応に伴う通信費相当額の増額など、その充実に努めている。
○高等教育の修学支援
・高等教育の修学支援新制度及び日本学生支援機構の貸与型奨学金において、新型コロナウイルス感染症の影響により家計が急変し、修学が困難になった学生等について、随時申込を可能としている。
○保育所等、幼稚園、地域子ども・子育て支援事業における感染拡大防止対策に係る支援
・保育所等、幼稚園、地域子ども・子育て支援事業において、感染症に対する強い体制を整え、感染症対策を徹底しつつ、事業を継続的に提供していくため、職員が感染症対策の徹底を図りながら事業を継続的に実施していくために必要な経費(かかり増し経費等)や、マスク・消毒液等の購入等に必要な経費に対して、補助を行う。
引き続き、事態の推移を見極め、必要に応じて柔軟に対応する。