第2部 少子化対策の具体的実施状況(第1章 第1節 5)

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第1章 重点課題(第1節 5)

第1節 結婚・子育て世代が将来にわたる展望を描ける環境をつくる(5)

5 男性の家事・育児参画の促進

育児休業など男性の育児参画の促進

仕事と家庭の両立については、男女を問わず推進していくことが求められる。父親が子育ての喜びを実感し、子育ての責任を認識しながら、積極的に子育てに関わるよう促していくことが一層求められている。現在のところ、男性が子育てや家事に十分に関わっていないことが、女性の継続就業を困難にし、少子化の一因ともなっていると考えられる。実際、男性の育児休業取得率については、「少子化社会対策大綱」(2020年5月29日閣議決定)において、2025年には30%にすることを目標としているが、現状、12.65%(2020年)にとどまっている。

2021年6月に公布された、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律」において、有期雇用労働者の育休等取得要件の改正のほかにも、男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産等の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け、育児休業給付に関する所要の規定の整備等を内容とする改正を行っており、2022年4月から順次施行されるため、円滑な施行に向けて、改正法の周知を行っている。

また、男性の育児休業や育児目的休暇の取得に向けた職場風土づくりに取り組み、育児休業等の取得者が生じた事業主に対し支給する「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」により、男性の育児休業等の取得促進に取り組む事業主を支援している。

健康保険及び厚生年金保険の保険料については、「全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第66号)により、2022年10月以降、当該月の末日時点で育児休業等を取得している場合に加えて、育児休業等開始日の属する月内に2週間以上の育児休業等を取得した場合にも当該月の保険料を免除する等の改正を行った。

「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)に基づき定められた行動計画策定指針においては、男性の子育て目的の休暇の取得促進を図るため、子供が生まれる際や子育てを行う際取得することができる企業独自の休暇制度の創設、子供が生まれる際や子育てを行う際の時間単位付与制度の活用も含めた年次有給休暇や、配偶者の産後8週間以内の期間における育児休業の取得促進を図る等、雇用環境の整備に関する事項を行動計画の内容に盛り込むことが望ましいとしている。

また、「少子化社会対策大綱」(2020年5月29日閣議決定)においては、配偶者の出産後2か月以内に半日又は1日以上の休みを取得した男性の割合を2025年には80%にすることを目標として、男性が「子供が生まれる日」、「子供を自宅に迎える日」、「出生届を出す日」などに休暇を取得することを促進する「さんきゅうパパプロジェクト」を推進している。(第2-1-9図)

第2-1-9図 さんきゅうパパプロジェクト

具体的には、晩産化や共働き夫婦の増加などによるライフスタイルの変化とともに、出産や子育てが多様化しつつある中で、妊娠・出産・子育てに際して、男性ができることを考えるきっかけとなるよう「ハンドブック『さんきゅうパパ準備BOOK』」を作成し、各種イベント等において地方公共団体、企業・団体、子育て中の父親・母親等に対して配布すること等により理解の促進を図っている1

2019年度に実施した男性の子育て目的の休暇取得に関する調査研究によると、配偶者の出産後2か月以内に半日又は1日以上の休みを取得した男性の割合は58.7%となっている。この結果を踏まえ、今後、より積極的に「さんきゅうパパプロジェクト」について周知することとしている。


1 https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/sankyu_papa.html

男性国家公務員の育児に伴う休暇・休業の取得促進

男性国家公務員の育児休業取得率については、「第5次男女共同参画基本計画」(2020年12月25日閣議決定)における男性の育児休業に関する目標(2025年に30%)の達成を目指すとともに、「男の産休」(配偶者出産休暇及び育児参加のための休暇)についても、全ての男性職員による両休暇合計5日以上の取得達成に向け、引き続き男性職員や管理職員等への意識啓発、取得促進を強力に推進することとしている。

また、2020年度から、子が生まれた全ての男性職員が1か月以上を目途に育児に伴う休暇・休業を取得できることを目指し、具体的には、管理職員が対象となる男性職員本人の意向に沿った取得計画を作成することや、業務分担の見直しを行いつつ、1か月以上の取得を勧奨する等の取組を行っている(「国家公務員の男性職員による育児に伴う休暇・休業の取得促進に関する方針」(2019年12月27日女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会決定))。直近の調査結果(2020年4月から6月までに子が生まれた男性職員に係る子の出生後1年以内の取得状況等についての調査結果)によれば、対象職員の99.0%が育児に伴う休暇・休業を取得し、取得者の88.8%が1か月以上の休暇・休業を取得しているなど、取組は着実に浸透しているところ、引き続き男性の育児参画を促進するための環境整備を進めている。

男性の家事・育児に関する啓発普及、意識改革

学校教育においては、男女相互の理解と協力、男女が社会の対等な構成員であること、男女が協力して、家族の一員としての役割を果たし家庭を築くことの重要性などについて、中学校の特別活動や高等学校の公民科、家庭科など関係する教科等を中心に学校教育全体を通じて指導が行われている。

家庭や地域における取組としては、男女が協力して家事・育児を実施する大切さについて保護者が理解を深められるよう、地域の多様な人材を活用した家庭教育支援チーム等が地域の実情に応じて行う家庭教育支援に関する取組(男性の育児をテーマにした講座や企業等へ出向いて行う講座の実施などを含む)を推進するため、当該取組に対する補助事業(地域における家庭教育支援基盤構築事業)等を実施している。

また、2021年度に、「仕事と子育て等の両立を阻害する慣行等調査」を実施し、仕事と子育て等の両立を阻害したり、父親の育児参画を阻んだりする身近な慣行等について、事例の収集を行ったほか、メールマガジン「『カエル!ジャパン』通信」を月2回配信し、男性の家事・育児への参画を促進する企業の好事例の提供や地方公共団体のイベント案内等を行っている。

男性が育児をより積極的に楽しみ、かつ、育児休業を取得しやすい社会の実現を目指す「イクメンプロジェクト」の一環として、参加型の公式サイト2の運営や男性の育児休業取得に関する情報を記載したハンドブックの配布等により「イクメン」を広めている。さらに、企業・労働者向け動画の公開を行うことで、企業において男性の仕事と育児の両立支援の取組が進むよう、好事例の普及を図っている。


2 https://ikumen-project.mhlw.go.jp/

トピックス:男性の育休取得と家事・育児参画促進

1.男性の家事・育児参画の促進をめぐる状況

男性の育児休業取得率については、現状、12.65%(2020年)となっている。2021年6月に育児・介護休業法が改正され、育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産等の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付けや、有期雇用労働者の育休等取得要件の緩和のほか、男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設等が2022年4月から順次施行される。

また、男性が育児休業を取得するだけではなく、男女共に子育てを担うことが重要であり、この課題に取り組む地方公共団体も増えてきている。本トピックスでは、岐阜市の取組を紹介する。

2.ぎふし共育都市プロジェクト

岐阜市では2019年度から、男女が共に子育てができるまちを目指す「ぎふし共育都市プロジェクト」3を実施している。その一環として、子育てを控えるプレパパ、子育て中のパパを対象に、家事・育児参画への意識改革や、実践的なスキルの取得を目的とした講座を「パパ大学」と名付けて開催するなど、男性の育児参画により夫婦で共に子育てを行う「共育」を推進している。2021年度は抱っこやベビーサインなど赤ちゃんとの接し方を学ぶ講座や、簡単・時短をテーマにした料理・お掃除講座などを開催した。受講者からは「育児への不安が解消された」「子どもとの時間の大切さを認識した」といった声が寄せられているほか、受講者の9割以上が「今後、家事・育児を積極的に実施していきたい」と回答している。また、パートナーとの参加を促すため、プレママ・ママ向け講座も同時に開催しており、受講者から「夫婦で色々なことを話す良い機会になった」との声も寄せられた。

ほかにもこのプロジェクトの中で、男性の育児参画や女性の活躍を応援する企業を「ぎふし共育・女性活躍企業」に認定しており、2022年3月末時点で94社が認定を受けている。認定企業のうち、特に顕著な取組を行っている企業については、「岐阜市男女共同参画優良事業者」として表彰しており、2021年度はフレックスタイムの運用に取り組む企業など、3社を表彰した。

3.「地域少子化対策重点推進交付金」による支援

男性が子育てや家事に十分に関わっていないことが、女性の継続就業を困難にし、少子化の一因ともなっていると考えられるが、男性の育休取得を促進するに当たっては、経営者や職場・上司の理解促進、企業風土の改善が不可欠であるとともに、「とるだけ育休」を防ぐため、父親の家事・育児参画への意識改革や、スキルの取得が必要となる。内閣府では「地域少子化対策重点推進交付金」により、地方公共団体が行う結婚、妊娠・出産、子育ての取組を支援しており、2022年度については、「ぎふし共育都市プロジェクト」のように、企業と個人両方に働きかけを行い、男性の育休取得と家事・育児参画を多面的に促進する取組を、新たな重点課題として支援(補助率を2分の1から3分の2にかさ上げ)することとしている。

パパ大学の様子

ぎふし共育都市プロジェクトポスター

3 ぎふし共育都市プロジェクトホームページ
https://we-hug-gifu.com/

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