第2部 少子化対策の具体的実施状況(第1章 第4節 2)

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第1章 重点課題(第4節 2)

第4節 結婚、妊娠・出産、子供・子育てに温かい社会をつくる(2)

2 妊娠中の方や子供連れに優しい施設や外出しやすい環境の整備

公共交通機関での子供連れ家族への配慮などの環境整備

公共交通事業者等が行う子育てを応援する取組事例を広く共有し、関係者のさらなる取組の強化を図ることを目的として、2018年11月から「子育てにやさしい移動に関する協議会」を開催している。同協議会において、二人乗りベビーカーについて、一定条件のもとで折りたたまずに使用できるよう取り扱うことを基本とすることとした「乗合バスにおける二人乗りベビーカーの利用について」を2020年3月に取りまとめた。

子育てバリアフリーの推進

・ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進

どこでも、だれでも、自由に、使いやすくというユニバーサルデザインの考え方を踏まえた、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー法」という。)に基づき、施設等(旅客施設、車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物等)の新設等の際の「移動等円滑化基準」への適合義務、既存の施設等に対する適合努力義務を定めている。

こうした中、2020年通常国会(第201回国会)において、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会1のレガシーとしての共生社会の実現に向け、ハード対策に加え、移動等円滑化に係る「心のバリアフリー」の観点からの施策の充実などソフトの対策を強化するための「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和2年法律第28号)が成立し、2021年4月に全面施行した。

また、バリアフリー法に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(令和2年国家公安委員会、総務省、文部科学省、国土交通省告示第1号)に係るバリアフリー整備目標について、障害当事者団体や有識者の参画する検討会において議論を重ね、ハード・ソフト両面でのバリアフリー化をより一層推進する観点から、各施設等について地方部を含めたバリアフリー化の一層の促進、聴覚障害及び知的障害・精神障害・発達障害に係るバリアフリーの進捗状況の見える化、「心のバリアフリー」の推進等を図るとともに、新型コロナウイルス感染症による影響への対応等も考慮して、時代の変化により早く対応するため、目標期間をおおむね5年間とする最終とりまとめを2020年11月に公表し、新たなバリアフリー整備目標を2021年4月に施行した。

加えて、「交通政策基本法」(平成25年法律第92号)に基づく「交通政策基本計画」においても、バリアフリー化等の推進を目標の一つとして掲げている。

また、市町村が作成する移動等円滑化促進方針及び基本構想に基づき、移動等円滑化促進地区及び重点整備地区において面的かつ一体的なバリアフリー化を推進するとともに、バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め協力を求める「心のバリアフリー」を推進するため、高齢者、障害者等の介助体験や疑似体験を行う「バリアフリー教室」の開催や、高齢者障害者等用施設等の適正利用を推進しているほか、移動等円滑化基準やガイドラインの見直し等、バリアフリー施策のスパイラルアップ(段階的・継続的な発展)を図っている。

今後も妊婦や子供連れ等誰もがスムーズに移動でき、暮らしやすい街づくりを促進していくため、幅広い取組を実施していくこととしている。

・建築物におけるバリアフリー化の推進

不特定かつ多数の者が利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する建築物について、一定規模以上の新築・増改築・用途変更をしようとする際に建築主に基準への適合義務を課すことにより、建築物のバリアフリー化を推進している。なお、誘導基準に適合する建築計画については所管行政庁が認定をすることができ、これにより認定を受けた一定の建築物について、助成制度等の支援措置を講じることにより、整備の促進を図っている。2020年度までに6,286件の建築物について認定がなされている。

また、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」により、乳幼児用の椅子・ベッドを設けた便所や授乳・おむつ替えのためのスペース等の乳幼児連れの利用者に配慮した設計の考え方や優良な設計事例等について、建築主や設計者等に周知することでバリアフリー化を促進している。

・公共交通機関のバリアフリー化の推進

公共交通事業者等に対して、旅客施設の新設・大規模な改良及び車両等の新規導入の際に「移動等円滑化基準」に適合させることを義務付け、既存施設については同基準への適合努力義務が課されているところ、これらのハード対策に加え、バリアフリー化された旅客施設や車両等を使用した役務の提供の方法に関するソフト基準の遵守を新たに義務付けるなど、「心のバリアフリー」の観点からのソフト対策を強化することとしている。さらに、鉄道駅等旅客ターミナル、旅客船のバリアフリー化やノンステップバス、リフト付きバス、福祉タクシーの導入等に対する支援措置を実施している。

また、公共交通機関のバリアフリー化の一環として、ベビーカーを使用しやすい環境づくりに努めている。

・都市公園及び河川空間等のバリアフリー化の推進

公園管理者等に対して、園路及び広場、駐車場、便所等の特定公園施設の新設、増設又は改築を行う際に「移動等円滑化基準」に適合させることを義務付ける等により、都市公園におけるより一層のバリアフリー化を推進している。また、「社会資本整備総合交付金」等により、妊婦、子供及び子供連れの人にも配慮しつつ、全ての人々の健康運動や遊びの場、休息、交流の場等となる都市公園の整備を推進している。

また、水辺空間において、治水上及び河川利用上の安全・安心に係る河川管理施設の整備により、良好な水辺空間の形成を推進している。さらに、妊婦、子供及び子供連れの人が日常生活の中で海辺に近づき、身近に自然と触れ合えるようにするため、バリアフリーに配慮した海岸保全施設の整備を行っている。

・自然公園等のユニバーサルデザイン化の推進

国立公園等においては、主要な利用施設であるビジターセンター、園路、公衆トイレ等についてユニバーサルデザイン化を推進するなど、乳幼児連れ利用者等にも配慮した自然とのふれあいの場を提供している。


1 2021年に開催が延期となった。

道路交通環境の整備

妊婦、子供及び子供連れの人等の歩行者の通行が優先される道路において、警察と道路管理者が検討段階から緊密に連携して、最高速度30キロメートル毎時の区域規制と物理的デバイスとの適切な組合せにより交通安全の向上を図ろうとする区域を「ゾーン30プラス」として設定し、人優先の安全・安心な通行空間の整備の更なる推進を図るとともに、外周幹線道路の交通を円滑化するための交差点改良やハンプや狭さくの設置等によるエリア内への通過車両の抑制対策を実施している。

また、通学路については、2021年に実施した合同点検の結果を踏まえ、学校、教育委員会、道路管理者、警察等が連携して、速度規制や登下校時間帯に限った車両通行止め、通学路の変更、スクールガード等による登下校時の見守り活動の実施等によるソフト面での対策に加え、歩道やガードレール、信号機、横断歩道等の交通安全施設等の整備等によるハード面での対策を適切に組み合わせるなど、地域の実情に対応した、効果的な対策を検討し、可能なものから速やかに実施している。加えて、未就学児を中心に子供が日常的に集団で移動する経路についても、2019年に実施した緊急安全点検の結果を踏まえ、必要な対策を順次行っている。

さらに、過去10年間で自転車が関係する事故件数は約半数に減少しているが、自転車対歩行者の事故件数は横ばいで推移している状況である。

国土交通省と警察庁は、車道通行を基本とした安全な自転車通行空間を早期に確保するため、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」(2016年7月一部改定)の周知を図っている。また、「第2次自転車活用推進計画」(2021年5月28日閣議決定)に基づき、自転車の交通ルール遵守の効果的な啓発や、歩行者・自転車・自動車の適切な分離等、安全で快適な自転車利用環境の創出に向けた取組を推進している。

このほか、バリアフリー法に基づき、都道府県公安委員会では、音響信号機、歩行者感応信号機等のバリアフリー対応型信号機等の整備を推進するとともに、道路管理者では、駅、官公庁施設、病院等を結ぶ道路や駅前広場等において、高齢者、障害者、妊婦や子供連れを始めとする誰もが安心して通行できるよう、幅の広い歩道の整備や、歩道の段差・傾斜・勾配の改善、無電柱化等による歩行空間のバリアフリー化に努めている。

また、全国の高速道路のサービスエリア及び国が整備した「道の駅」において、子育て応援の目的から24時間利用可能なベビーコーナーの設置、屋根付きの優先駐車スペースの確保等を実施しており、高速道路のサービスエリアについては整備が完了した。

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