第2部 少子化対策の具体的実施状況(第2章 第3節 1)

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第2章 ライフステージの各段階における施策(第3節 1)

第3節 妊娠・出産(1)

1 妊娠前からの支援

(妊娠・出産等に関する医学的・科学的な知識の提供等)
女性健康支援センターにおける相談指導

女性健康支援センターにおいて、妊娠・出産等の各ライフステージに応じた身体的・精神的な悩みについて、医師、保健師又は助産師等による相談指導を行う。

(不妊治療等への支援)

不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は約5.5組に一組1、2019年に日本国内で体外受精・顕微授精により生まれた出生児は6万598人2となっている。不妊は身近な問題であり、不妊治療に係る経済的負担の軽減や、不妊治療と仕事の両立のための職場環境の整備など、男女問わず不妊に悩む方への支援を行っている。


1 国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査(夫婦調査)」(2015年)

2 公益社団法人日本産科婦人科学会「ARTデータブック」(2019年)

不妊専門相談センターの整備

不妊専門相談センター事業において、不妊治療や不育症治療に関する情報提供や相談体制を強化するため、専門医等が、不妊や不育症に関する医学的な相談や、心の悩みの相談等を実施している(2021年8月1日時点:84地方公共団体)。

2021年度からは、不妊症・不育症の方への相談支援の充実を図るため、不妊専門相談センターと地方公共団体及び医療関係団体等で構成される協議会の設置を図るほか、流産・死産に対するグリーフケアを含む相談支援、不妊症・不育症に悩む方への寄り添った支援を行うピアサポート活動や、不妊専門相談センターを拠点としたカウンセラーの配置等の推進を図っている。

不妊治療に係る経済的負担の軽減等

「全世代型社会保障改革の方針」(2020年12月15日閣議決定)において、子供を持ちたいという方々の気持ちに寄り添い、不妊治療への保険適用を早急に実現することとされた。一般不妊治療(タイミング法及び人工受精)及び生殖補助医療については、有効性・安全性等の確認されたものについては保険診療に位置づけられるとともに、有効性・安全性等について、引き続きエビデンスの集積が必要とされたものの一部については先進医療として実施される方向で、保険適用に向けた作業を進めている。2021年度は、2020年度に実施した調査研究や、学会が策定した生殖医療ガイドラインの内容等を踏まえ、中央社会保険医療協議会において保険適用に向けた具体的な議論を行うとともに、保険医療機関から申請があったものについては、先進医療会議において技術的な審議を行った。(第2-2-2図)

第2-2-2図 不妊治療の保険適用 工程表

また、2004年度から、高額な費用がかかる特定の不妊治療に要する費用の一部を助成して、経済的負担の軽減を図っている(2020年度支給実績:13万5,480件)。この助成事業については、保険適用までの間、大幅な拡充を行うこととし、2020年度第3次補正予算において、2021年1月1日以降終了する治療について所得制限の撤廃や助成額の増額(1回30万円)等の措置を講じた。さらに、2021年度補正予算において、保険適用の円滑な実施に向け、移行期の治療計画に支障が生じないよう、年度をまたぐ一回の治療を助成金の対象とする経過措置を講じた。

内閣官房副長官を座長とした関係省庁による「不育症対策に関するプロジェクトチーム」による検討報告(2020年11月30日)を踏まえ、既に保険適用されている検査の保険診療としての実施を促す観点から、2021年度から不育症検査費用助成事業を創設し、研究段階にある不育症検査のエビデンスを集積し、将来的な保険適用を目指すため、先進医療として実施される不育症検査に要する費用への助成を行っている。

不妊治療と仕事の両立のための職場環境の整備

不妊治療と仕事との両立について、職場での理解を深めながら事業主の取組を促進するため、事業主、人事労務担当者を対象としたセミナーを2021年10月からオンデマンドで配信した。また、次世代育成支援対策推進法に基づき、常時雇用する労働者数101人以上の企業に策定が義務づけられている「一般事業主行動計画」の策定に当たり盛り込むことが望ましい事項に、「不妊治療を受ける労働者に配慮した措置の実施」を追加した。特定事業主について特定事業主行動計画の策定に当たり盛り込むことが望ましい事項として、「不妊治療を受けやすい職場環境の醸成等」を追加した(2021年4月適用)。

さらに次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん」認定の仕組みを活用し、不妊治療と仕事との両立に関する取組を行うインセンティブを設ける観点から、優良な取組を行っている企業を認定する制度を新設した。

国家公務員については、人事院において、2021年8月、国家公務員の給与についての勧告時に併せて行った公務員人事管理に関する報告において、不妊治療と仕事の両立を支援するため、非常勤職員も含めた職員の不妊治療のための休暇を新設することを表明し、同年12月、休暇の新設等の措置を講じるための人事院規則等を公布し、2022年1月から施行した。休暇の期間は原則として年に5日(体外受精等に係る通院等の場合は更に5日加算)とし、有給とした。施行に向けて、人事院においては、休暇の通称を「出生サポート休暇」とし、休暇を利用しやすくするため、リーフレット、職員向けQ&A等を活用して周知啓発を行った。今後も、政府全体として不妊治療を受けやすい職場環境の整備を図っていく。

フェムテック3等の活用による就業継続支援

妊娠・出産等のライフイベントと仕事との両立、女性特有の健康課題解決等により、働く女性が能力を最大限発揮し、いきいきと活躍することを目的として、フェムテック等の製品・サービスを活用し、フェムテック企業、導入企業、医療機関、 地方公共団体等が連携して実施するサポートサービス事業の費用を、経済産業省から採択を受けた補助事務局が一部補助を行う。2021年度は全国20事業を対象に補助事業を実施するとともに、ウェブサイトの開設やオンライン報告会(一般公開)の開催を行った。


3 Female(女性)と Technology(技術)からなる造語。生理や更年期などの女性特有の悩みについて、先進的な技術を用いた製品・サービスにより対応するもの。

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