薬物乱用対策解説 薬物との闘いは一生続く ~終わらない薬物との闘い~

薬物との闘いは一生続く

薬物乱用対策マンガ 「たった一度の過ち」 前編 薬物乱用対策マンガ 「たった一度の過ち」 後編薬物乱用対策解説 薬物との闘いは一生続く ~終わらない薬物との闘い~

覚醒剤、大麻、麻薬、シンナーなどの有機溶剤、そして危険ドラッグなどの薬物。
これらの薬物を使用すると、気分が高揚したり、幻覚を見たり、逆に気分が落ち着いたりという作用があります。そのため、「勉強や仕事の疲れから現実逃避したい」、「パーティーなどで盛り上がりたい」などといった軽い気持ちで使ってしまうという人が少なくありません。
しかしこれらの薬物は、一度使いはじめると自分の力ではやめられなくなってしまいます。それは薬物の乱用によって「薬物依存」という状態に陥ってしまうためです。最悪の場合、薬物が及ぼす身体への影響によって、命を失うこともあります。また、社会的制裁を受け、普通に暮らしていくことができなくなることもあります。
そのようなことに陥らないために、「薬物依存」の正体や、薬物乱用の危険性を正しく理解して、「薬物乱用に手を染めない」ということを肝に銘じてほしいと思います。

脳が「一度覚えた快感」は「一生忘れない」。これが薬物依存の正体

イラスト解説薬物依存のサイクル

みなさんは「薬物依存」とはどういうものかご存じですか?
多くの人は、いわゆる「禁断症状」(最近は離脱症状と呼びます)など、薬物が直接身体に与える影響によって、やめられない状態になってしまうと考えているのではないでしょうか。強制的に薬物を断つ環境を作って、薬物を体外に排出してしまえば、薬物依存は治る、と考えている人も少なくないでしょう。

しかし、近年の研究で、薬物依存は薬物使用による快感を脳が記憶していることによって起こるということがわかってきました。
人は快感を得ると、脳内で神経伝達物質ドーパミンが分泌されて、中脳の脳内報酬系という部分に作用します。報酬系は刺激を受けると「また同じ快感を味わいたい」という欲求が生まれます。その欲求を満たしていくと、どんどん強い刺激を欲するようになり、やめられなくなっていきます。そして、それが一度脳に刻まれてしまうと、一生忘れられなくなってしまいます。
薬物依存の正体はこの「精神依存」なのです。そしてこの精神依存は一生治らないと考えられています。

実際、覚醒剤の使用や所持等で検挙された人のうち、再犯者、つまり再び覚醒剤事犯で検挙される人の割合は約65%(平成26年度統計)に上っています。刑務所で服役し、深く反省した人であっても、出所後すぐに薬物を使ってしまうという人も少なくないのです。

「大麻は害がないから大丈夫」。それは大きな間違いです。

大麻事犯検挙状況 年齢層別グラフ

覚醒剤や麻薬と比較して、大麻には依存性や身体への害がないなどということがまことしやかに言われています。また、海外では使用が許されている国があり、最近になって使用を解禁する国も出てきています。その影響もあり、特に最近ではわが国でも学生や若い人の乱用が増えつつあり、実際、大麻事犯による検挙者は30歳未満の若者の割合が高いという結果がでています。

大麻には依存性がない、というのは本当のことなのでしょうか。
大麻を乱用すると、脳に快感状態をもたらします。つまり、他の薬物と同じような影響を脳に与えるので、結果的には薬物依存をもたらします。大麻に依存性がないということは真実ではないのです。

大麻の乱用をきっかけに、覚醒剤や麻薬などの薬物に移行していく人もおり、大麻が他の薬物乱用の「入口」となる場合もあります。
また、大麻乱用の結果、知覚の変化や情緒の不安定をもたらしたり、何もやる気が無くなってしまう「無動機症候群」に陥ることもあります。
つまり大麻乱用の有害性は他の薬物となんら変わらないのです。

「人に迷惑をかけないからいいじゃない」。

こっそり使えば他人には迷惑をかけないからいいだろう。そう考える人もいるかもしれません。しかし、マンガでも描かれているように、実際には家族も巻き込み、自分のみならず、身近にいる大切な人たちの人生もめちゃくちゃにしてしまうのです。

薬物依存が進むと、慢性的な薬物中毒になります。その結果、脳や内臓が蝕まれて健康を害したり、薬物によって引き起こされる幻覚や妄想から周囲に暴力をふるったり、重大な事件や事故を起こしてしまうこともあります。また、たった1回の使用で重篤な健康被害に陥ってしまうこともあるのです。

それだけではありません。先にも紹介したとおり、薬物事犯は残念ながら再犯率が高い犯罪ですから、薬物を使っていれば、いつかは検挙されることになります。
つまり、学生であろうとも、社会人であろうとも、刑罰を受けることとなります。そうなってしまったら社会的にどう見られるでしょうか。
刑罰を受けるということは、それは社会的な制裁を受けるということでもあります。

学生時代に描いていた夢も、社会人としての目標も、実現することは叶わなくなるでしょう。

あなたは、そんな悲しい未来を望みますか?

イラストカット

薬物に誘われたらどうする?

先輩や友人などから薬物に誘われたらどうすればよいのでしょうか。マンガの主人公のように、危ないと感じてはいても、「仲間外れにされたくない」とか「先輩には逆らえない」といった気持ちがまさってしまい、その場から逃れられない人もいるかもしれません。
しかし、その場の雰囲気に流されて、あるいは一時の快楽のために薬物に手を出してしまうと、もう後戻りはできません。あなたに薬物を勧めるような人は、あなたにとって「大切な人」には絶対になり得ません。「一番大切なものは何か」を今一度、考えてみましょう。
また、薬物乱用への甘い誘い文句や、断り方の例もあわせてお読みください。

薬物乱用防止読本「薬物乱用は『ダメ。ゼッタイ。』健康に生きようパート29(青少年向け)」(厚生労働省) (PDF形式:9.20MB)別ウィンドウで開きます

「一人」で抱え込まない。相談に乗ってくれる場所があります。

もし、今薬物を使っていて、やめたいのにやめられないと悩んでいる方。家族が薬物を使っているかもしれないと悩んでいる方。一人で悩みを抱え込まないでください。 都道府県の精神保健福祉センターや警察、そして民間の支援団体が薬物乱用の問題について親身になって相談に乗ってくれます。

薬物問題相談窓口の詳細

薬物には手を出さない。 すでに手を出してしまったのなら、すぐやめるための行動をとりましょう。 そうすれば、薬物乱用の結果、必ずやってくる悲しい未来を迎えずに済みますから。

資料ダウンロード

「薬物は一人では絶対にやめられない。

薬物依存症は再発性の高いいわば「病気」の一種です。一度経験した人は一人になってしまうと、再発の可能性が非常に高くなります。したがって再発を防ぐには孤立化を防ぐことが大切です。

1985年。ダルクは日本初の民間運営薬物依存者リハビリ施設として東京の日暮里でスタートしました。実際に薬物依存を経験した人が、薬物依存者の話し相手となって、指導・教育をしていきます。お互いの相互作用によって、お互いが薬物依存から回復していくことができるという効果があります。
実は私もダルクを始める数年前に覚せい剤取締法違反で裁判を受けました。その時に支援者を通じて回復プログラムに触れる機会があり、それがダルク設立にもつながりました。それ以来薬物を使ったことはありませんが、いまだに再発の恐怖と向き合っています。なんとか再発しなくて済んでいるのはダルクの活動をしているからと実感しています。それぐらい薬物依存症は本当に一生涯治らないものなのです。
最近は違法薬物のみならず、さまざまな医薬品の過剰摂取による薬物依存の回復のためにダルクを訪れる人も増えてきています。若い人も少なくありません。 若い人に一つだけ声を大にして言うなら、「薬物で気分を変えてはいけない」と伝えたいと思います。一度でも経験したらやめられなくなってしまうのが薬物依存症ですから。

日本ダルク本部代表 近藤恒夫様写真

1941年、秋田県生まれ。85年、東京・荒川区に薬物依存者の社会復帰を支援する施設「ダルク」を設立。現在、全国58カ所の関連施設を運営している。また、薬物依存に対する正しい知識などの啓発活動にも力を注ぎ、法務省の依頼で刑務所内の薬物教育プログラム作りに参画。再発防止に向けた教育の講師として活躍する。昨年からは「JICA」(国際協力機構)の支援事業でフィリピンの貧困層を対象とした薬物依存者に対する支援もスタートした。95年、東京弁護士会人権賞受賞、2001年、著書『薬物依存を超えて』で吉川英治文化賞を受賞。