被災者代表

標柱に向かってことばを述べる被災者代表

被災者代表のことば

    あの大震災から8年が経ちました。
    東日本大震災により亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、亡くなられた方々とその御遺族の皆様に対しまして、被災者を代表してお悔やみを申し上げます。
    8年前の今日、私の暮らす楢葉町は、大きな揺れとそれに伴う津波、そして原子力発電所の事故という未曾有の災害に見舞われました。
    余震の続く中で、原発事故による避難指示が町内全域に出されたことから、親戚を訪ねて県外まで避難した記憶は今でも鮮明に残っています。
    「すぐに帰れるだろう」。そんな淡い期待を抱きながらの避難生活は、気づけば3年半にわたり、住み慣れたふるさとが壊れていく様を、遠くから見守るしかない苦しい避難生活を余儀なくされました。
    そんなある日、避難生活を送る私たちのもとに、ある贈り物が届きました。それは、ある小学校の児童たちが大切に育てた「藍」の種とかわいらしい文字でしたためられた藍の育て方の手紙でした。長い避難生活を送っていた私たちにとって、その種と手紙は希望の光となりました。
    私たちは、「藍」を楢葉町の復興のシンボルとして育てようと誓い、避難指示が解除されたばかりの町に戻って、荒れた花壇を耕し、種をまき、水やりを続け、ようやくその希望を実らせることができました。
    大震災と長い避難生活によって奪われていた希望が、この「愛」の種によって、再び輝きを取り戻し、復興への原動力となって、今、私たちに前に進む勇気を与えてくれています。
    私たちは、このような全国の皆様からの励ましや御支援によって、復興への一歩を踏み出すことができました。この場をお借りして、福島に思いを寄せて下さる方々に対し、心より感謝を申し上げます。
    結びに、大震災で犠牲となられた皆様のご冥福をひたすらにお祈り申し上げますとともに、被災地の一日も早い復興と被災された方々のご平安をお祈りし、被災者代表のことばといたします。
    


    平成31年3月11日
被災者代表  髙原 カネ子