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第2部 第1章 アメリカ (1/7)

1.調査概要

(1)アメリカにおける青少年のインターネット環境の現状

アメリカにおける13歳~18歳の青少年のインターネット利用状況を見ると、スマートフォンの所有率は67%と、3分の2程度の青少年が保有している。また、利用時間と用途を見ると、SNSの利用率は45%で、1日の平均利用時間が1時間11分であるのに対して、モバイルゲームの利用率は27%で、平均利用時間も25分程度と短い。

スマートフォン所有率ならびにSNS利用率の増加に伴い、アメリカでも18歳未満の青少年のインターネット利用環境において様々な問題が生じている。例えば、不適切なコンテンツの利用、コミュニケーションツールであるTwitterやFacebook等のSNS上のいじめ問題、リベンジポルノ等の性的被害等が、重要な問題として認識されている。

2016年の調査によれば、33.8%はネットいじめ被害の経験があるとしている。また、17年の統計調査を見ると、性的搾取・性犯罪について、全体の46%が17歳未満でセクストーション被害を受けた経験があるという結果が出ている。その他、テロリストの勧誘に寄与することが懸念される「不適切・有害な情報の閲覧」「児童のID窃盗」が問題となっている。ソーシャルメディアを通じたいじめや差別等の問題は事業者による取組も行われている。他方、13年11月にサービスを開始したYik Yakは、いじめや差別の温床となり、16年の利用者が前年比で76%減少し、17年5月には閉鎖に追い込まれた。

(2)アメリカの青少年インターネット利用上の問題に対する取組の状況

アメリカにおける青少年保護のスキームは、1議会による立法や教育・啓発活動等の対応、2民間の事業者による取組、3業界団体による取組、4家庭での取組という、大別すると4つの方面から対策が講じられている。

ア 行政側の対応状況

上記で挙げた個別の問題について、ネットいじめについては、全州にいじめに適用される法律が存在するものの、ネットいじめに関する規定がある法は少ない。性的搾取・性犯罪について、セクストーション・セクスティングについては、全米で何らかの法規制が制定されている。児童ポルノ法が適用される州では、性的画像の所持・配信・宣伝を犯したことになり、懲役刑等の可能性もある。リベンジポルノについても、2017年12月の時点で38州においてリベンジポルノに関する法律が整備されている。

次に具体的な措置や施策を見ると、連邦政府の立法措置としては、児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)等、有害なウェブサイトの遮断を目的としたものが目立つ。州レベルでは、事業者に対する規制や青少年の個人情報保護等に力点を置いたもの等もみられる。

例えば、カリフォルニア州の2014年学生オンライン個人情報保護法(Student Online Personal Information Protection Act)では、ウェブサイト運営者やオンラインサービス事業者に対して青少年の個人情報を商業目的の広告やマーケティングで利用することを禁じている。一方で、連邦政府レベルの教育・啓発では、連邦捜査局(FBI)によるFBI Safe Online Surfing (SOS) Internet Challengeのように年齢に応じたクイズ形式で啓発するサイトを提供する等の工夫もみられる。

イ 民間事業者の取組

民間事業者の取組では、青少年に対してインターネットを安全に利用するための啓発活動が目立つ。例えば、GoogleがiKeepSafe、ConnectSafely、FOSI(Family Online Safety Institute)という3つのNPOと協力した Be Internet Awesomeという取組がある。

また、Facebookではリベンジポルノ対策として2017年4月に写真適合技術を導入、通報により削除された写真や動画が、その後も繰り返し共有されないようにブロックする仕組みを提供している。不適切・有害情報の閲覧への対策としては、Twitterによるアカウント停止、YouTubeの動画削除等、独自の規制を強化する動きがある。

ウ 業界団体の取組

業界団体による取組としては、ゲームやツールによる青少年に対する啓発活動の他に、民間事業者から児童の性的搾取等を報告させるような全米失踪・被搾取児童センター(NCMEC)によるNetSmartz、NetSmartzKidsウェブサイト等がある。また、コモンセンスメディアは、各種コンテンツレイティング、安全な利用に関する教育・啓発活動、研究を実施しており、Amazon.com Inc.、Apple Inc.、AT&T Inc.等の主要企業が提携企業として名を連ねている。

エ 各家庭の取組

家庭での取組についてはアメリカの場合、フィルタリング、話し合いやルール設定等、親の介入度合いが高い現状がある。具体的な統計として、2014年~15年に13歳~17歳の子供1を持つ親を対象とした調査によれば、以下のような結果がみられた。

  • 約6割の親がウェブサイトやSNSのプロファイルをチェックしたことがある
  • 5割以上の親がFacebook等のSNSで子供のフォローをしている。
  • 5割以上の親が通話履歴やテキストメッセージをチェックしたことがある。
  • 13歳、14歳の子供に対して、46%の親がペアレンタルコントロールによるネット制御を実施している。

(3)「青少年」の定義と関連法令

アメリカにおける青少年の定義は、法律や州によって異なるが、総じて18歳未満とする場合と、21 歳未満とする場合の2通りがある。例えば、1974 年に制定され2010年に改正された児童虐待防止及び対処措置法(Child Abuse Prevention and Treatment Act)において、児童は18歳未満とされている一方、移民国籍法(Immigration and Nationality Act:INA)に関連する2002年の児童地位保護法(Child Status Protection Act:CSPA)においては21歳未満とされている。未成年(minor又はjuvenile)の定義は各州において法律で規定されており、全50州のうち、カリフォルニア、フロリダ、ニューヨーク州等を含む44州では 、基本的に18歳未満としている。ただし、18歳になっても義務教育(12年生)が終了していない場合、通常は「義務教育終了時又は19歳のどちらか先に達した方が適用される」等の但し書きが追記されている2

なお、選挙権は通常18歳で付与されるが、近年これを若年化しようとする動きがあり、カリフォルニア州バークレー市や、メリーランド州ハイアッツビル市では、地方自治体の教育理事会や地方議会等の選挙に限り、16歳から投票権を与えている。また、イリノイ州やメイン州等、多くの州では、大統領予備選挙の投票権を17歳から付与している3。同様に、アルコールの購入及び飲酒は21歳4、運転免許の仮免許は16歳、通常免許は17歳~18 歳が下限となっている5が、これらについても詳細は州法で規定されているため、内容は州によって異なる。

一方、青少年(youth)の国際的な定義として、国連は児童から成人に移行する年齢である15歳~24歳と規定しており、統計調査で活用されている。ただし、同じ国際機関であるユニセフの児童の権利に関する条約6は、18歳未満の者を児童7と定義しており、青少年の定義は、地理、経済、社会的な背景で必要に応じて異なる8

本章では、青少年は基本的に「18歳未満の者」を指すものとする。なお、アメリカでは思春期の青少年を指す語として「ティーン(またはティーンエイジャー)」が用いられ、同語はアメリカで一般的な中学・高校生(学区によって学制が異なるが、第6学年から中学生とする5・2・4制の学区が多い)に当たる12歳から17歳を指す場合が多い。ただし、以上のような定義は調査・統計ごとに異なる場合があるため、必要に応じ適宜注釈を加える。

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